Photo by Nick Morrison on Unsplash
世界が注目するSDGs。マーケティングに取り入れれば、企業の強みになるだろう。企業がSDGsに取り組むメリットやマーケティングに活用する具体的な方法を解説。幅広い分野の成功事例から、成功のヒントを学ぼう。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート
SDGsとは、「Sustainable Development Goals」の頭文字を取ったもの。日本語では「持続可能な開発目標」と表現される。持続可能な社会を実現するための国際社会共通の目標であり、150を超える加盟国首脳により、2015年9月に採択された。
SDGsには、世界が取り組むべき17の課題と、より具体的な169のターゲットが定められている。2030年を目標達成年とし、そのために誰一人取り残さない取り組みを求めているのだ。国はもちろん、企業や一般消費者も例外ではない。
では具体的に、SDGsは我々に、どのような行動を求めているのか。国際社会が共通して取り組むべき、17の目標を見てみよう。
1. 貧困をなくそう
2. 飢餓をゼロに
3. すべての人に健康と福祉を
4. 質の高い教育をみんなに
5. ジェンダー平等を実現しよう
6. 安全な水とトイレを世界中に
7. エネルギーをみんなに。そしてクリーンに
8. 働きがいも経済成長も
9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
10. 人や国の不平等をなくそう
11. 住み続けられるまちづくりを
12. つくる責任、つかう責任
13. 気候変動に具体的な対策を
14. 海の豊かさを守ろう
15. 陸の豊かさも守ろう
16. 平和と公正をすべての人に
17. パートナーシップで目標を達成しよう
SDGsに掲げられる目標は、そのすべてが独立しているわけではない。さまざまな目標が、複雑に絡み合っているものだ。だからこそ、国や企業、個人が、それぞれの視点での積極的な行動を求められている。
SDGsに対してどの程度の取り組みが行われているのか。判断するための指標の一つがSDGsランキングである。SDSN(Sustainable Development Solutions Network)が毎年発表する「Sustainable Development Report(持続可能な開発レポート)」において、世界各国の取り組みが数値化され、ランキングとして掲載されている。
2022年のランキングによると、日本の順位は193国中19位。スコアは79.58であった。「4.質の高い教育をみんなに」や「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」、「16.平和と公正をすべての人に」においては十分な結果を残した反面、以下の項目では課題が残ると判断された。
5.ジェンダー平等の実現
12.つくる責任、つかう責任
13.気候変動に具体的な対策を
14.海の豊かさを守ろう
15.陸の豊かさを守ろう
17.パートナーシップで目標を達成しよう
これらに対してどう取り組んでいくのかが、今後の日本の課題と言える。
世界に目を向けてみると、1位フィンランド、2位デンマーク、3位スウェーデンと北欧諸国の名前が並ぶ。1位のフィンランドのスコアは86.51で、日本とは7ポイント近くの差がある。この差をどう詰めていくのか、より具体的な取り組みを推進していく必要があるだろう。(※1)
世界共通の目的であるSDGsには、日本企業としても多くのメリットが期待できる。企業としての取り組みのなかで得られる利益を、具体的に解説しよう。
SDGsを通じて各種社会問題への注目度が高まっているなか、「各企業がどのような取り組みを行っているのか?」は常に注目されるポイントである。具体的な取り組みを行い、それをうまく内外へアピールすることで、企業およびブランドのイメージ向上につながるだろう。
SDGs達成のための努力は、企業として社会への責任を果たす姿勢につながるだろう。先進的な取り組みに対して好感を持ってもらえれば、消費者からはもちろん、求職者からの注目度も高まるはずだ。同じく先進的な視点を持つ優秀な人材が集いやすく、人材確保が有利になる。
ESG投資が注目されるいま、SDGsに対してどのような取り組みを行っているのか、投資家たちも注目している。具体的な取り組みをアピールできれば、資金調達も容易になるだろう。
地球温暖化に貧困、ジェンダー平等に自然破壊など、我々が抱える社会課題は非常に多い。これらの課題を解決するための取り組みが、新たなビジネスチャンスにつながっていくだろう。これまでにはない視点で、今後の社会を担う新たな商品・サービス・アイデアが生まれる可能性もあるのだ。
SDGsを通じて社会課題を解決するための取り組みを進めていけば、自然と理解は深まっていくだろう。消費者や社会が何を求めているのかを理解できれば、国際的な競争力も得られるはずだ。
これから先も長く事業を継続していくためにも、SDGsの取り組みは重要な意味を持っている。企業として具体的な取り組みを推進することが、事業継続性を向上させるポイントになるだろう。
社会問題を無視したまま事業活動を続けても、近い将来、そのままの形で継続していくのは難しくなるだろう。たとえば環境問題や貧困問題を無視し、企業としての利益のみを追求したところで、ステークホルダーからの共感は得られない。資金や人材はもちろん、原料や流通経路の確保さえ難しくなってしまう恐れがある。
より多角的な目線で事業継続性を考えるなら、SDGsの取り組みは欠かせないものと言えるだろう。
SDGsへの関心が高まっているいま、自社の経営方針にSDGsの観点を組み込む事例が増加している。経営方針の主軸にSDGsを絡めることで、「企業がどのような方向性で事業活動を行っているのか」について、効果的にアピールできるだろう。
SDGsのどの目的に対して、どのような取り組みを行っているのか。基本方針として明らかにすれば、同じくSDGsに注目する企業や消費者、投資家たちからの関心を得られるだろう。
商品やブランドをアピールする際、広告活動にSDGsを取り入れる方法も効果的だ。自社商品やブランドがSDGsにどうかかわっているのか、具体的に伝えてみよう。従来の宣伝活動とは異なる視点で、新たな魅力を伝えられるはずだ。
各種社会問題への関心が高まっているいま、「商品そのもの」や「価格」だけではなく、その「背景」や「社会問題への具体的な取り組み」に注目する人が増えてきている。
SDGsをコンセプトにした広告・販促物で新たな魅力をアピールできれば、優良顧客の獲得にもつながるだろう。「SDGsの取り組み」という企業姿勢への共感から、商品・ブランドに愛着を持ってもらえれば、過度な価格競争に巻き込まれる恐れもない。
SDGs関連のイベント開催も、優れたマーケティング活動の一つである。多くの参加者に「SDGsの取り組みを積極的に行っている企業」というイメージを受け付けられるだろう。一般消費者向けのイベントはもちろん、企業向けのイベントも効果的だ。SDGsへの関心が高い他企業との、新たなつながりを得られるはずだ。
自社のみでイベントを開催するのが難しい場合は、人気SDGsイベントの協賛もおすすめ。イベント会場で参加者の心をつかむ独自のPRを行えば、優れたマーケティング効果を発揮するだろう。
ジャパンSDGsアワードとは、SDGs達成に資する優れた取り組みを行う企業・団体を表彰する制度のこと。平成29年に第1回が開催された。「SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞」「SDGs副本部長(内閣官房長官)賞」「SDGs副本部長(外務大臣)賞」「SDGsパートナーシップ賞(特別賞)」の4つの賞が設けられ、個性的で優れた取り組みを行っている企業・団体が毎年表彰されている。2022年には第6回の公募が行われた。(※2)
ジャパンSDGsアワードへのエントリーそのものが、「SDGsに対して積極的に取り組んでいる」という姿勢アピールにつながるだろう。その取り組みが表彰されれば、企業名や取り組み内容の認知度は非常に高まる。より幅広い層へのPRに効果的だ。
SDGsをマーケティングに活用し、実際に成功した企業は多い。具体的な事例を5つ紹介するので、参考にしてみてほしい。
第5回ジャパンSDGsアワードにて、SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞を受賞したのが株式会社ユーグレナの取り組みだ。
バングラデシュの貧困農家に対して、緑豆の栽培方法を伝授。市場価格よりも高い価格での安定購入で、雇用創出と所得増に貢献した。一方で、国連世界食糧計画(WFP)と連携。バングラデシュでのノウハウを活用しロヒンギャ難民の生活を支援した。難民キャンプ近くの小規模農家2,000人の雇用を創出。さらには3万人の難民に対して、1年半分に相当する緑豆を供給した。(※3)
貧困問題の解決と難民支援という2つの取り組みを同時に行うプロジェクトを通じ、株式会社ユーグレナの知名度は大幅に向上。日本国内だけではなく、海外からも注目されている。
味の素グループで2012年より行われているのが「学校給食プロジェクト」である。農村部を中心とした深刻な栄養不足と、都市部における子どもたちの肥満という二重負荷が問題視されるベトナム。子どもたちの栄養改善と健康維持を目的にスタートした取り組みだ。(※4)
すでに家庭向けの風味調味料を発売していたベトナム味の素社。家庭での食事環境を考えるなかで、子どもたちの栄養状態、そして学校給食の現状へと意識が向かいプロジェクトをスタートさせた。その後、全国へと普及が進んだ。
SDGsの取り組みを通じて、味の素株式会社は海外におけるブランド価値の向上を実現。学校給食を通じて自社の存在をアピールすることで、子どもたちが成長したあとの販売戦略にもつなげている。
各種環境問題から、SDGsへの取り組みが注目されるアパレル業界。そのなかでも、積極的な取り組みを行っているのが株式会社ユニクロである。「服のチカラ」で世界をいい方向へ変えていくという理念のもと、さまざまな取り組みを実践中だ。
「RE.UNIQLO」では、全商品のリサイクルおよびリユースを推進。使われなくなったユニクロのダウン商品を世界中で回収し、新たな製品によみがえらせている。限られた資源を有効活用することで、環境負荷を低減。ダウン商品に限らず、対象商品を拡大する予定だ。
全国のユニクロ店舗にRE.UNIQLO回収ボックスを設置することで、企業としての取り組み姿勢を強くアピール。「SDGsに配慮するアパレル企業」として、消費者や投資家の注目を集めている。
大手メディア事業者として、SDGsをテーマにしたレギュラーミニ番組を制作・放送したフジテレビジョン。第2回ジャパンSDGsアワードにてSDGsパートナーシップ賞(特別賞)を受賞した。テレビならではの「発信力」と「クリエイティブな力」を活かし、積極的に情報を配信。SDGsの知名度向上に貢献するとともに、「積極的に取り組むメディア」としてブランド力を高めた。(※5)
番組では、あらゆる立場に置かれた人の姿を放送。視聴者に対して、ダイバーシティかつインクルーシブな社会を提示した。SDGsに対する意識向上だけではなく、より具体的な意識改革のきっかけにつながった。
乳酸菌飲料の製造・販売で世界の健康を後押しする株式会社ヤクルト。女性を登用した独自システム「ヤクルト・レディ」が、注目されている。女性が働きやすい環境を多角的な視点で創出することで、就労機会の確保や収入増加、子女の教育機会の拡大に貢献。女性の社会進出や能力向上を後押ししている。
女性を活用した地域密着型の経営モデルは、日本だけではなく海外からも注目される。世界中の人々の、健康生活の実現や福祉の増進をサポートするとともに、市場を拡大。商品はもちろん、ビジネスモデルそのものを定着させることで、持続可能な事業を展開している。
我々が抱える社会問題は、待ったなしの状況と言えるだろう。2030年を達成目標としたSDGsへの注目は、今後もさらに高まっていくと思われる。だからこそ、企業として具体的な取り組みを行い、それをマーケティング活動につなげる工夫が必須である。事業継続性を考える上でも、欠かせない視点と言えるだろう。
サステナブルな暮らしをガイドするメディアプラットフォーム「ELEMINIST」では、企業のSDGsマーケティングを多角的にサポートしている。私たちが提供するサービスについて詳しく知りたい方は、以下のページから導入事例やサポート内容に目を通してみてほしい。
※1 Rankings|Sustainable Development Report
※2 ジャパンSDGsアワード|外務省
※3 株式会社ユーグレナ|外務省
※4 世界各地の「食・栄養」分野の課題解決に向けて|味の素株式会社
※5 株式会社フジテレビジョン|外務省
ELEMINIST Recommends