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サステナブルマーケティングは、今後の企業活動において注目されるキーワードである。企業が取り組む意義やメリット・デメリットについてわかりやすく解説する。積極的に取り組み、成功を収めている企業事例からも学んでみよう。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
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サステナブルマーケティングとは、近年注目される「サステナビリティ」を活かしたマーケティング手法を指す。サステナビリティは日本語で、「持続可能性」と訳される。資源や環境、社会や人をひたすらに消費するのではなく、いい状態を維持し続けられる未来をイメージするといいだろう。
サステナビリティという言葉が注目されるきっかけになったのは、2015年に採択されたSDGsである。2030年の目標達成に向けてさまざまな取り組みが行われ、サステナブルマーケティングに積極的に取り組む企業、注目するステークホルダーが増えているのだ。
サステナブルマーケティングと似た意味の言葉に、エシカルマーケティングがある。エシカルは日本語で「倫理的な」の意味。自分の欲求のためだけに消費活動をするのではなく、環境や社会への影響を考慮し、よりいい選択をしようとする「エシカル消費」が注目されている。そんな変化に対して、各企業が積極的に取り入れているのがエシカルマーケティングだ。
エシカルマーケティングにおいて、企業が売り出すのは「商品やサービスの特徴や価格」だけではない。むしろ、「企業として果たすべき社会的責任」や「地球環境に対する価値観・倫理観」に基づいた施策を行っていく。
エシカルマーケティングとサステナブルマーケティングの間に、大きな隔たりはない。サステナビリティを実現するためのサポートをするのがエシカルマーケティングであり、企業としての戦略と言えるだろう。
サステナブルマーケティングは、これからの事業活動に欠かせない視点である。なぜその重要性が増しているのか、2つの視点から解説しよう。
少し前までの、大量生産・大量消費が当たり前の時代から、消費者意識は確実に変化。自身の消費活動が、環境や社会にどのような影響を与えるのか。先々を見据え、商品やサービスを選択する人が増えている。サステナブルマーケティングを意識しない企業は、こうした消費者意識の変化に対応できないだろう。
とくに若い世代は、SDGsへの関心も高い。資源の無駄遣いや、環境への影響を考慮しない商品・サービスは敬遠されがちだ。サステナブルマーケティングで、消費者意識に刺さる事業活動を展開する必要がある。
投資の世界において、近年注目されているのが以下の3つの要素だ。
・E(Environment) 環境配慮
・S(Society) 社会配慮
・G(Governance) 法令遵守
これらの項目に対し、積極的な取り組みを行う企業に対して行われるのが、ESG投資である。
GSIA(Global Sustainable Investment Alliance)が発表した「Global Sustainable Investment Review2020」によると、2020年の世界のESG投資総額は全体で35兆3千億ドル。2016年の22兆8千億ドル、2018年の30兆6千億ドルと比較すると、急激に増加していることがわかる。こうした流れは、今後も続くと考えられるだろう。日本においても、それは例外ではない。(※1)
事業用資金を調達するためにも、サステナビリティやESGは欠かせない視点だ。
サステナブルマーケティングについてより深く学ぶため、そのメリットにも注目してみよう。企業がサステナブルマーケティングを取り入れるメリットは、以下の3つである。
サステナブルマーケティングを取り入れれば、持続可能性を重視する企業姿勢をアピールできる。「利益追求だけではなく、社会的責任や環境問題に対して積極的な取り組みを行う企業」として、イメージを向上させられるだろう。
商品やサービスそのものの特徴だけではなく、「この企業が提供するなら」という視点で選んでもらえるようになれば、それは大きな強みになる。業界内での影響力も増していくはずだ。
サステナビリティを意識する人が増えているいま、サステナブルマーケティングは、ステークホルダーからも注目されている。取引先企業や投資家、そして消費者への影響力が強まり、よりいい関係性を築ける可能性もある。
投資家たちから好意的な視線を寄せられるようになれば、資金調達も容易になるだろう。サステナビリティの実現に向けて注力する企業姿勢に共感する人が増えれば、同じような意志を持つ優秀な人材も集いやすくなる。
サステナブルマーケティングでは、企業側が消費者に一方的に押し付けるのではなく、両者が協力して取り組む必要がある。サステナビリティを実現するためには、消費者が何を求めているのか、素早く正確に把握しなければならない。
企業が消費者に対して積極的に歩み寄ることで、新たな関係性を確立。これまでとのマーケティングとは、異なる方向からの魅力発信も可能になるだろう。
一方で、忘れてはいけないのがサステナブルマーケティングのリスクである。企業がどのような点に注意しなければならないのか、詳しく解説する。
サステナブルマーケティングは、これからの事業活動に欠かせない視点である。しかしやり方を間違えれば、見せかけだけで実態が伴っていない「ウォッシュ」を疑われ、かえってイメージ低下につながりかねない。
ウォッシュが注目されるようになったきっかけは、SDGsウォッシュだろう。SDGsへの注目度が高まっているいま、「SDGsの取り組みを行っていないにもかかわらず、やっているように見せかける」「実態以上の成果を強調する」といったケースも多い。こうした問題が発覚すると、企業やブランドに対するイメージは急降下。株価暴落につながる恐れもあるだろう。
サステナブルマーケティングにおいても、同様の問題が懸念される。やり方を間違え、ウォッシュを疑われるような事態になれば、その影響は計り知れない。サステナビリティを重視する人々が増えているからこそ、注意しなければならない。根拠のない情報拡散や、デメリットを隠したメリットの強調、誇張表現などは避けるべきだろう。
サステナブルマーケティングでは、企業から消費者への一方的な押し付けは禁物である。思うようなマーケティングができない可能性があり、また消費者からの好感度が低下する恐れもあるだろう。
マーケティング手法が多様化するいま、消費者は企業の姿勢に注目している。消費者との関わりのなかで、企業に対する共感を自然に育めるようなマーケティングを意識しよう。
ここからは、サステナブルマーケティングに取り組み、成功した企業事例を紹介する。ぜひ参考にしてみてほしい。
各種日用品を扱う花王株式会社。花王株式会社では、「サステナブルなライフスタイルの推進」を目的に、サステナブルな原材料を活用した製品を開発。世界各地に届けている。
世界的な人口増加や急激な都市化が進むなか、衛生的な生活環境を維持するために欠かせないのが洗浄剤である。そのニーズに対応するため、花王は原材料の変更に注目。これまでは「洗浄剤の原料としての活用は難しい」と判断されていた材料に注目し、新しい洗浄基剤「バイオIOS」を開発した。環境にやさしく洗浄力の高い洗剤の提供や多用途利用に向けた研究などを通じて、その影響力を増している。
ウォーターサーバーのレンタル事業を営むウォータースタンド株式会社。持続可能な社会の実現に向けて「ボトルフリープロジェクト」というユニークな取り組みを行っている。使い捨てプラスチック削減に向けパートナーと協働する取り組みを通して、サステナビリティを重視する姿勢をアピール。イメージ向上につなげている。
全従業員に対してマイボトルを配布する「マイボトルキャンペーン」や、国際ボランティア会の学校建設事業・図書館事業への支援などにも、積極的に取り組んでいる。
京都のふろしき・和雑貨のメーカーである山田繊維株式会社は、使い捨ての包装資材の削減を目的に、「ふろしき」の有用性をアピールするための各種取り組みを行っている。企業や教育施設でのワークショップも積極的に開講。歴史や文化、活用方法を世間に広げている。
このほかにも、端材や販売不可能商品を活用するための「むす美サステナブルプロジェクト」や、障がいのある方たちのアーティスト活動支援にも注力。サステナビリティを通じて社会貢献をするとともに、自社商品の魅力を広く伝えている。
海の環境問題として、近年注目される海洋プラスチック。株式会社SUSTAINABLE JAPANは、海洋浮遊ごみ回収機SEABIN(シービン)による海洋ごみの回収や、さらなる普及のための各種活動を行っている。さらに、回収プラスチックの二次製品製造販売を手がけている。
環境を破壊するごみを回収するとともに、そのごみの価値も上昇。製品として加工し販売することで、サステナブルマーケティングを成功させた。
日本人に欠かせない調味料であるしょうゆ。大手メーカーであるキッコーマン株式会社では、しょうゆをつくったあとに残る「しょうゆかす」に注目し、サステナブルな取り組みを行っている。
栄養成分を多く含む「しょうゆかす」は、古くから燃料や肥料、家畜用飼料として活用されてきた。キッコーマンではその100%を再活用し、畜産農家へと提供。無駄のない活用方法を実現している。
また製紙メーカーとの協働で、新たな技術を開発。非木材紙に混ぜて紙製品化し、名刺などに利用している。資源の有効活用や飢餓ゼロに向けた取り組みを積極的に推進中だ。こうした取り組みを、食品メーカーとしてのイメージ向上につなげている。
小川珈琲株式会社では、コーヒー豆やコーヒー栽培を通じて、サステナブルマーケティングを実施。店舗で扱うコーヒー豆には、フェアトレード商品を採用している。
開発途上国で栽培されたコーヒー豆が安価な価格で買いたたかれないよう、公正・公平な貿易方法を採用。経済活動を通じて、生産者の生活や貧困撲滅を支援している。「企業利益だけではなく、本当の意味でおいしいコーヒーを、持続可能な形で提供する」という企業の姿勢が、多くの顧客から支持されているのだ。
またコーヒー栽培を通した渡り鳥の保護や有機栽培による自然保護にも注目が集まる。サステナビリティに対する多角的な取り組みで、その知名度を高めた。
岡山ビューホテルでは、子どもの貧困問題を支援するための取り組みを実施。「子ども食堂」や「ひとり親家庭の食事会&ワークショップ」を通じて、地域の人との関わりを築き上げている。ホテルという場を地域支援に使う際には、コスト面での問題を無視できない。岡山ビューホテルの場合、エシカル商品の売上金の一部を充てることで開催資金を確保している。
サステナブルな取り組みを複数組み合わせ、目的を達成する仕組みが評価対象に。持続可能な仕組みとして注目され、ホテルの知名度アップにも役立っている。
大阪にあるテンセンス株式会社が提供しているのは「エコプレッソ」という個性的な商品だ。エスプレッソを飲むためのカップをクッキーで製造。「カップまで食べられる」という新たな視点で、使い捨てカップの削減に貢献している。カップの洗浄も必要ないため、水資源の節約や洗剤による環境破壊のストップにもつながるだろう。
これまでにない斬新な取り組みはSNSを通じて拡散。日本だけではなく、世界からも注目された。SDGs達成に向けた取り組みとしても評価され、一気に人気が爆発。多くのメディアに取り上げられ、会社は急成長を遂げた。サステナブルマーケティングの成功事例の一つと言える。
企業として今後も成長し続けていくため、サステナブルマーケティングは欠かせない戦略と言えるだろう。持続可能性を意識したマーケティングを取り入れれば、多くのメリットを期待できる。不透明な社会情勢のなか、企業の成長戦略としても役立つはずだ。
とはいえ、実際にサステナブルマーケティングを取り入れる際には、その実践方法や見せ方に注意しなければならない。やり方を間違え「ウォッシュ」と判断されるような事態になれば、企業価値が下がる恐れもあるだろう。企業と消費者が協力し、商品やサービス・ブランドを、ともに成長させられるような環境が理想的である。
サステナブルな暮らしをガイドするメディアプラットフォーム「ELEMINIST」では、企業のサステナブルマーケティングを多角的にサポートしている。私たちが提供するサービスについて詳しく知りたい方は、以下のページから導入事例やサポート内容に目を通してみてほしい。
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