ESGの意味とは? SDGsとの違いや投資の種類、取り組み事例をわかりやすく解説

ノートパソコンを操作する人の手

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ESG投資やESG経営で注目される「ESG」。そもそもどういった意味なのか、あらためて学ぶ。類似語との違いやESG投資の種類、ESG経営のメリット・デメリットも解説。中長期的な視点を身につけていこう。

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2022.08.30
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ESGの意味とは

ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(統治)」という3つの単語の頭文字を組み合わせた言葉だ。「企業を中長期的に成長させ続けていくためには、これら3つの視点が欠かせない」という考え方を意味している。

数多くの社会問題が表面化するいま、自社の利益のみを追求する姿勢は、いずれ必ず限界を迎えるだろう。経営戦略のなかにESGの観点が見られない企業に対して、投資家たちは「企業として長期的成長の見込みがない」「企業価値を損なうリスクがある」と判断しがちだ。企業のESGに着目して投資先を選択する手法を、ESG投資と言う。

ESGやESG投資が注目されるきっかけになったのは、2006年に発表された「責任投資原則(PRI)」である。当時の国連事務総長コフィー・アナン氏が、投資判断の新たな観点としてESGを紹介したことが、大きなターニングポイントになった。

ESGを知る上で欠かせないのは、3つの単語それぞれが、具体的に何を意味しているのかという視点である。「Environment(環境)」は二酸化炭素排出量の削減、再生エネルギーの使用など、「Social(社会)」は職場環境における人権対応や地域貢献活動を。そして「Governance(統治)」は、法令順守や情報開示を指す。これらの点を理解しておこう。

ESGの類似語 SDGs・CSR・SRIとの違いは?

企業経営関連には、ESG以外にも多くの類似語がある。それらとの違いについても把握しておこう。

SDGs(持続可能な開発目標)との違い

SDGsとは、持続可能な社会を実現するための17の目標と169のターゲット、そして232の指標を指す言葉である。英語表記は「Sustainable Development Goals」で、それぞれの頭文字をとってSDGsと呼ばれている。2015年9月の国連サミットにて、加盟国193カ国の全会一致で採択された。

ESGが「企業」の持続可能性を見極めるための視点の一つであるのに対して、SDGsは国際社会全体が取り組んでいくべき国際目標である。SDGsは「誰一人取り残さない」ことを理念としており、国や個人にも具体的な活動を求めている。ESGを意識するのは、主に投資家たちだろう。

とはいえ、SDGs達成のためには、各企業の具体的行動も非常に重要な意味を果たす。とくに「Environment(環境)」や「Social(社会)」という観点は、SDGsとの関連性も深いと言えるだろう。

CSR(企業の社会的責任)との違い

CSRとは、英語の「Corporate Social Responsibility」の頭文字をとった言葉だ。企業活動における社会的責任を指す。各企業がそれぞれ、自社が担うべき社会的責任について考え、CSRをつくり上げる仕組みだ。

CSRとESGは、企業が担う社会的役割について明らかにするもので、両者は密接に関わっている。どちらも持続可能な社会の実現を目指すために必要だ。企業からの視点がCSRであり、投資家からの視点がESGと言えるだろう。

CSRを語る上で欠かせない「マテリアリティ」については、以下の記事で解説している。あわせてチェックしてみてほしい。

重要課題を意味する「マテリアリティ」はなぜ必要なのか CSRやサステナビリティ観点での重要性

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SRI(社会的責任投資)との違い

SRIとは、「Socially Responsible Investment」の頭文字をとった言葉だ。日本語では、「社会的責任投資」と訳す。倫理的・宗教的な考えから投資先を見極める視点で、ESGとは共通点も多い。

SRIとESGの違いを挙げるとするなら、「倫理観」だろう。投資家たちは倫理的判断に基づいて、投資対象を決定する。それに対してESGで注目されるのは、あくまでも環境・社会・統治の3つである。たとえ倫理観にそぐわない(社会にとって望ましくない)事業であっても、投資対象になる可能性がある。

両者の違いについてさらに深く知りたい場合には、以下の記事で詳しく解説している。

3分でわかる「SRI(社会的責任投資)」とは? サステナブルな投資の歴史と従来型との違い

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ESG投資の種類7つ それぞれの特徴

ひと言でESG投資と言っても、その種類はさまざまである。「Global Sustainable Investment Alliance(GSIA)」では、以下の7つの分類を紹介している。

ネガティブ・スクリーニング

ネガティブ・スクリーニングは、特定の事業を営む企業を投資対象から外す手法である。具体的には、武器やたばこ、アルコールやギャンブル、ポルノといった業界が対象とされる。英語表記は「Negative/exclusionary screening」だ。

ポジティブ・スクリーニング

ネガティブ・スクリーニングとは反対に、ポジティブな視点に基づいて投資先企業を決定する手法。具体的には、「ESG関連の指標が高い企業は中長期的な成長が見込める」という視点だ。英語表記は「Positive/best-in-class screening」である。

国際規範スクリーニング

国際規範スクリーニングでは、ESG分野での国際基準が投資先決定のポイントになる。人権問題や環境問題など、国際基準を満たしていない企業は、投資先リストから除外される。英語表記は「Norms-based screening」だ。

ESGインテグレーション

近年、世界で広く普及しているのがESGインテグレーションだ。英語表記は「ESG integration」である。従来、投資家たちが重視していた基準は各社の財務情報だ。そこに、ESGに関連する非財務情報を加味して投資先を決定する。

サステナビリティ・テーマ投資

サステナビリティ・テーマ投資は、その名前のとおり「持続可能性」を重視して投資先を決定する手法である。英語では「Sustainability-themed investing」と表記する。具体的なテーマとしては、再生可能エネルギーや持続可能な農業などが挙げられる。

インパクト・コミュニティ投資

社会や環境に好影響を与える技術やサービスを提供する企業に対して投資するのが、インパクト・コミュニティ投資である。投資収益だけではなく、社会にもたらすポジティブなインパクトが重視される点が特徴。英語表記は「Impact/community investing」で、開発途上国などでの教育やエネルギー事業が挙げられるだろう。

エンゲージメント・議決権行使

こちらは、株主の立場で企業に対し、ESGへの対応を積極的に働きかける投資手法である。英語表記は「Corporate engagement and shareholder action」。株主総会での議決権行使や情報開示請求などを通じて、投資先企業に対する働きかけを行うものだ。

投資家が「ESG投資先としてふさわしくない」と判断すれば、ダイベストメント(投資撤退)の対象になる。近年、環境問題への関心の高まりに伴って、ダイベストメントの対象になりがちなのが化石燃料を扱う事業者だ。

世界で進むダイベストメントとは? ESG投資との関係・事例も解説

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ESG経営で生まれるメリット

ESGに配慮し、持続可能性と中長期的な発展を視野に入れたESG経営。企業にとっては、さまざまなメリットが期待できる経営手法である。3つのメリットを紹介するので、ぜひ参考にしてみてほしい。

企業イメージの向上とさらなる成長

ESG投資に注目する投資家が増えているいま、ESGを重視した経営を行えば、企業イメージの向上につながるだろう。「中長期的な成長が見込める企業」というイメージが広がれば、資金調達も容易になる可能性がある。

またESG経営がもたらすメリットは、単に「イメージ」だけではない。Social(社会)を意識して「男女平等」や「労働者の人権対応」に配慮した取り組みを行えば、働き手にとって仕事がしやすい環境に近づいていくだろう。Governance(統治)という視点のもとで積極的に「情報開示」を進めていけば、事業内容そのものも自然とクリーンな方向に向かうはずだ。

単純にイメージアップだけを狙うのではなく、まず企業としての体質を変え、それがイメージアップにつながる仕組みをつくることができるだろう。離職率の低下や、より優秀な人材の確保に役立つというメリットも期待できる。

あらゆるリスクへの対応力の向上

ESGが対象とする「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(統治)」の3つは、いずれも企業にとってリスクとなり得るポイントである。中長期的な成長に欠かせないと言われるESG。企業として、まったく取り組みを行わないことは、「中長期的な成長をあきらめる」のと同じ意味なのだ。

実際に、自然環境がもたらす各種問題や労働環境の悪化、管理体制の不備によって、生産性が著しく低下してしまう企業は多い。ESG経営によって、万が一におけるリスク対応力の向上につなげられるだろう。

新たなビジネスチャンスの創出

ESGに興味を抱く企業・投資家・個人が増えているいま、ESG経営は新たなビジネスチャンスの創出につながる可能性がある。ESGがきっかけで、新たな顧客や取引先の開拓につながったり、新規事業を立ち上げたりと、短期間で急成長を遂げる企業も少なくない。

すでにヨーロッパでは、ESGに関連する法的整備が進められている。日本国内にとどまらず、グローバルに活躍できる企業を目指すのであれば、ESG経営は欠かせない要素の一つと言えそうだ。

ESG経営に潜む問題点や注意点

一方で、ESG経営には問題点や注意点も存在している。こちらもあわせてチェックしておこう。

明確なゴールを定めるのが難しい

ESG経営には、統一された評価基準というものが存在しない。まだその歴史は浅く、評価基準も乱立しているような状況だ。その中で、企業が明確なゴールを見定めるのは、決して簡単ではないだろう。

また、たとえ目標を定めたとしても、その方向に正しく努力できているかどうか、判断するのも難しいという特徴がある。目標の決定から具体的な努力まで、手探りになりやすい点が課題なのだ。

短期間で成果が出るわけではない

ESG経営を取り入れたからといって、すぐに結果につながるわけではない。ESGの主軸となるのは、環境問題や社会貢献である。より確実な成果を目指すためには、中長期的な視点での取り組みが必要不可欠だろう。

短期間で成果を出そうと急げば、誤った方向に進んでしまう恐れもある。試行錯誤を重ねつつ地道に努力することが求められ、企業体力や忍耐力も必要とされるだろう。

中小企業にとって導入しづらい

メリットも多いESG経営ではあるが、中小企業での導入は決して簡単ではない。設備や環境を整えるためには、それなりの資金が必要になるからだ。大企業のほうが、強力な資金力をもとに、より幅広い視点でESG経営を実践しやすい。中小企業にとってのハードルをどう解消していくかも、今後の課題と言えそうだ。

日本企業におけるESG経営の取り組み事例

三井不動産グループ

三井不動産グループでは、長期経営方針「VISION 2025」に基づいて、ESG経営を加速させている。「共生・共存」「多様な価値観の連繋」「持続可能な社会の実現」という理念のもと、以下の6つの目標の実現を目指している。

・街づくりを通した超スマート社会の実現
・多様な人材が活躍できる社会の実現
・健やか・安全・安心なくらしの実現
・オープンイノベーションによる新産業の創造
・環境負荷の低減とエネルギーの創出
・コンプライアンス・ガバナンスの継続的な向上

社内には「ESG推進委員会」および「ESG推進部会」を設置。部門別の年度目標を設定し、幅広い取り組みを行っている。(※1)

森永製菓グループ

森永製菓グループでは、公式サイトにてESGデータを公開している。環境面では「温室効果ガス排出量」「エネルギー」「資源と廃棄物」など、社会面では「お客様相談室に寄せられたお客様の声」や「従業員に関する詳細データ」を公開。ガバナンス面でも、コーポレートガバナンスやコンプライアンスをわかりやすく公開中だ。

誰でもいつでも自由に閲覧できる環境を整えることで、グループ全体の透明度を高めている。(※2)

花王グループ

各種生活用品を扱う花王では、生活者の目線に立ったESG戦略をモットーとしている。ESGが知られる前から、ユニバーサルデザインなどの取り組みをスタート。2009年には「環境宣言」を発表し、ステークホルダーとの協力体制のもと、環境に配慮した事業を展開してきた。

こうした取り組みを下地として、2019年にESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」を発表。

・快適な暮らしを自分らしく送るために
・思いやりのある選択を社会のために
・よりすこやかな地球のために

これら3つの基本方針のもと、具体的な経営戦略を公表している。(※3)

ESGの意味を知り今後に生かす

企業や投資家たちの間で注目されるESG。その意味を知れば、我々消費者にとっても無関係ではないことがわかる。SDGsやCSRとの関わりも深く、今後はさらに、その影響力も増していくだろう。

ESGは、企業が中長期的に成長し続けるために、欠かせない視点と捉えられている。ESG経営の意味や特徴を学び、企業選定のポイントとして活用してみてはどうだろうか。

※掲載している情報は、2022年8月30日時点のものです。

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