重要課題を意味する「マテリアリティ」はなぜ必要なのか CSRやサステナビリティ観点での重要性

会議中にメモをとる人々

いま注目されるビジネス用語のひとつが「マテリアリティ」である。「重要課題」と訳されるケースも多いが、その意味や目的は伝わりにくい。マテリアリティが意味するところや、企業にとってなぜ必要なのか、各社の具体的事例までを解説する。

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2021.03.04
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マテリアリティの意味と語源とは

下から見上げた高層ビル群

Photo by Sean Pollock on Unsplash

「マテリアリティ」とは、組織にとっての重要課題を示す言葉である。世界にはさまざまな課題が山積しているが、そのすべてに対して全力で取り組むのは難しいだろう。どんな課題を優先的に考え、積極的に取り組んでいくのかには、企業としての特徴が表れる。

企業活動を行ううえで、社会的な課題に与える影響は決して少なくないだろう。それらを考慮したうえで、自社で取り組むべき課題に優先順位をつけ、わかりやすく示したものがマテリアリティだ。

マテリアリティは、企業ごとに特定し、外部に向けて発信されるものだ。特定までのプロセスも含め、公開されるケースも多い。「どういった課題を重要視しているのか?」だけではなく、「なぜその課題を重要視しているのか?」までをわかりやすく示すことで、ステークホルダーの意思決定にも役立つだろう。

ちなみにマテリアリティとは、もともと財務報告において使われていた言葉だ。財務情報の欠落や誤情報の発信といったトラブルが起きれば、投資家たちの意志決定に極めて重大な影響を与えかねない。こうした事態を避けるため、情報を「マテリアル」として位置付け、必要な情報がすべて揃っていることを保証してきた。

時は流れ、現代社会における「重要な情報」とは、財務指標だけに限らない。社会や環境に対してどう取り組んでいるのかという点も、将来の企業価値を推し量るための重要な情報である。こうした意識変化から、マテリアリティという言葉が用いられる場面は、以前よりも幅広くなってきている。

マテリアリティ(重要課題)という概念の必要性

近年、企業サイトなどで目にする機会も増えたマテリアリティ。ではなぜこのような概念が必要で、各企業がこぞって公開するようになったのだろうか?

マテリアリティが必要とされるのは、CSRやサステナビリティの取り組みを、外部に向けてわかりやすく発信するためだ。わざわざ発信するようになった理由は、ステークホルダーたちにある。非財務指標への関心が高まったことにより、マテリアリティの重要性も増しているのだ。

単純に「儲ければいい」という価値観だけで、ステークホルダーを動かすのは難しい。より長期的な視点で安定経営を目指すためには、「どんな課題に関心を抱き、その解決のために具体的に何を行っているのか?」を公表し、関心を抱いてもらう必要があるのだ。非経済指標への無関心は、長期的に見れば、企業にとってのリスクでしかない。

またマテリアリティの設定には、企業としての特徴を再確認できるというメリットもある。どのような企業文化があり、どんな強み・弱みを持っているかがわかれば、これから先どう歩んでいくべきなのか、見直す機会にもなるだろう。

企業を存続していくために、重要なのは投資家だけではない。より幅広いステークホルダーが求める情報を積極的に開示し、対話の中から信頼関係を深めていくことが重要である。マテリアリティはそのための重要な役割を果たしているのだ。

これまでは、「とりあえず」という形でマテリアリティを設定する企業も多かったが、残念ながら戦略的に意味がない。それに気付いた企業から積極的に、改善に向けて取り組んでいる。これこそが、近年マテリアリティの改善や公表が積極的に行われている理由なのだ。

マテリアリティとSDGsの関連性

Christina @ wocintechchat.com on Unsplash

Photo by 会議室でディスカッションをする人々

各企業がSDGsに対してどう取り組んでいるのか、社会的な関心が高まっている。取り組み内容や結果を公表する際にも、マテリアリティが使われている。

・SDGsのどの目標に対して、どのような課題を認識しているのか
・そのためにどのような取り組みを行うのか
・それによって、どのような社会が実現できるのか
・取り組みを行った結果、どうなったのか

企業としてのさらなる成長を目指すのであれば、ステークホルダーに向けたわかりやすい情報公開は必須である。マテリアリティは、そのための第一歩と言えるだろう。企業として向かうべき先がどの目標に対応しているのか、どのような社会課題が考えられるのかを、明確にできる。

ビジネスにおけるマテリアリティ事例3つ

新時代に対応する「学童クラブ オンライン」

株式会社ベネッセホールディングスは、これからの時代に求められる「新しい学び」を、データやテクノロジーを駆使した「新しい学び方」とともに子どもたちに届けることをマテリアリティに設定。ウィズコロナの時代にも安心して学べる環境を提供するため、「学童クラブオンライン」をスタートした。多様な配信コンテンツで、子どもたちの学びの機会を提供している。

生活を支える「路面モニタリングサービス」

リコーグループでは、マテリアリティのひとつに「生活の質の向上」を設定。そのための具体的な活動として、老朽化した道路のひび割れ率・わだち掘れ量・平たん性の自動算出が可能な撮影システムを開発した。人手不足や効率性の観点から、老朽化しても放置される道路が増えている中、社会インフラの安全性の確保に役立つシステムだ(※1)。

環境維持に向けた「リボンカッティング方式」

マテリアリティのひとつに「地球環境との共生」を挙げる住友商事。ロシア極東における総合林産事業において、リボンカッティング方式を採用している。効率のみを重視するのではなく、あえて親木を残して伐採し、種子が残り育つ環境を維持する方式だ。目先の利益だけに囚われるのではなく、持続可能で環境に配慮した森林経営に取り組んでいる(※2)。

マテリアリティは企業の未来を判断するためのヒント

大企業を中心に、積極的に設置・公表されているマテリアリティ。経済指標だけではなく、非経済指標について各企業がどう考え、どのような取り組みを行っているかを知るための、具体的なヒントである。ステークホルダーとして、各企業とこれから先どのような関係性を築き上げていくのか、指針のひとつとして活用してみてはいかがだろうか。

※1 老朽化している社会インフラの維持管理を効率化
https://jp.ricoh.com/sustainability/materiality/action/plan_002.html
※2 マテリアリティごとの具体事例
https://www.sumitomocorp.com/ja/jp/sustainability/material-issues/case

※掲載している情報は、2021年3月4日時点のものです。

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