「ステークホルダーエンゲージメント」とは? CSR上の目的と取り組みの具体例

オフィスの仕事場

ステークホルダーエンゲージメントとは、利害関係者であるステークホルダーの期待や要望、関心を把握すること。これからの企業経営に必要不可欠と考えられている、ステークホルダーエンゲージメントの重要性と、企業の具体的な取り組みを紹介する。

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2021.01.12
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ステークホルダーエンゲージメントとは

ステークホルダーエンゲージメント(Stakeholder Engagement)とは、ステークホルダーの期待や要望、関心を把握することを意味する言葉。

事業活動の見直しやCSR計画の作成、重要課題の特定など、事業活動の方針を決める際に、企業によって、情報収集やトレンド観察、ステークホルダーからの信頼獲得など、さまざまな目的に応じて行われる組織的な試みとして活用される。

とくに、社会問題、環境問題においては、ステークホルダーの声を拾って対応していくことが、信頼を勝ち取り、企業の説明責任を果たすうえで重要だと考えられ始めている。

ステークホルダー(Stakeholder)とは

講演でメモを取る人たち

Photo by The Climate Reality Project on Unsplash

ステークホルダー(Stakeholder)とは、利害関係者を意味する言葉。事業者が活動を行うことで影響を受ける、あらゆる利害関係者のことを指すビジネス用語として使われる。

たとえば、株主、顧客、従業員、取引先、地域社会などが、代表的なステークホルダーとして挙げられる。ステークホルダーの対象者は、企業と利害が一致する必要性はないため、競合企業や、取引のある金融機関、行政機関のほか、NPOなどもステークホルダーになる場合もある。

つまり、事業者となんらかの関係性があり、利益または損失など、影響を及ぼす可能性のあるものはステークホルダーになりうるのだ。ステークホルダーが具体的に何を指し示すかは、その文脈によって変わるが、事業者にとってステークホルダーは注視し、進んで理解すべき存在だと言えるだろう(※1)。

似た言葉として「ストックホルダー」「シェアホルダー」があるが、これらは株主を限定して示す言葉であり、注意が必要だ。

ステークホルダーエンゲージメントの目的と重要性

目的

ステークホルダーエンゲージメントの目的は、事業者の評判を良くするためや維持するために行われるものではない。

事業やプロジェクトの目標を達成すること、事業活動等の見直しや計画策定のための情報収集やトレンド調査、ステークホルダーとの良好な関係を築くことなどを目的として行われるものである。

重要性やメリット

企業の社会的責任の観点において、ステークホルダーを重視し、ステークホルダーエンゲージメントを実施することは重要とされている。

とくにグローバル企業や先進的な取り組みを行う企業では、ステークホルダーエンゲージメントを行うメリットは大きいと考えており、積極的にステークホルダーに自社の取り組みを説明し、フィードバックを求め、さまざまな意見を広く収集して、企業経営に取り入れているのだ。

具体的な取り組みの事例

図示されたグローバルな経営プラン

Photo by Markus Spiske on Unsplash

ステークホルダーエンゲージメントの具体例としては、株主総会やIR説明会、株主向け見学会、お客様相談室の設置、セミナーや展示会の開催、地域貢献活動、アンケートの実施、懇親会など、さまざまなものが挙げられる。

以下に日本企業の取り組み事例を3つ紹介する。

音楽を通じた地域コミュニケーション(ヤマハ株式会社)

楽器産業、音楽機器事業を中心に展開するヤマハ株式会社では、「感動を・ともに・創る」を実現するため、ステークホルダーとの対話を通じて、意見を募り、経営に反映させている。なかでも特徴的なのが、「音楽の街づくり事業」と呼ばれるプロジェクトだ。

音楽が持つ「人と人をつなげる力」を使って、地域の活性化や企業と社会の共有価値の創造を手伝うもので、自治体や企業、地域コミュニティーなどが抱えている課題を解決するため、音楽をツールにした市民参加型のプロジェクトやイベント、街づくりのためのプログラムを提案・支援している(※2)。

ステークホルダー地域住民
取り組み内容地域・自治体との情報交換会/工場見学/従業員の地域活動への参加
目的地域コミュニティー発展への寄与、地域コミュニティーリーダーの創出、青少年育成支援

生産拠点とのコミュニケーション(ミズノ株式会社)

スポーツ用品を製造・販売するミズノ株式会社では、「フェアプレー」「フレンドシップ」「ファイティング・スピリット」を大切にし、持続可能な社会の実現と美しい地球環境の保全に貢献するためにはさまざまなステークホルダーとの協力が欠かないとし、各ステークホルダーの意見を広く取り入れている。とくに、海外を含む生産拠点とのコミュニケーションが積極的に行われている(※3)。

ステークホルダー生産に係るサプライヤー・現地スタッフ
取り組み内容訪問監査、個別対話など積極的なコミュニケーション、フォローアップミーティング
目的委託先工場で働く労働者の人権や労働安全衛生の確保、工場の環境保全活動推進を含むCSR調達活動の推進

交通安全活動を含む地域社会貢献 (株式会社SUBARU)

自動車の製造、販売を手がける株式会社SUBARUでは、事業所を置く地域の人々とコミュニケーションを図り、経営理念である「存在感と魅力ある企業」を実現する目的でステークホルダーエンゲージメントを実施している。

群馬県太田市では、取引先、周辺地域住民と一体となり、地域の発展とよりよい街づくりを目指して1995年からボランティア活動、文化活動、教育活動、市民生活活動に取り組んでいる。また栃木県宇都宮市では、宇都宮製作所周辺で従業員が交通安全指導活動を行う、一日署長として安全運転の呼びかけを行うなど、自動車メーカーとして交通安全活動に力を入れている。

ステークホルダー事業所周辺の地域住民
取り組み内容安全教室や交通指導による交通安全啓発、従業員による清掃活動、地域住民との交流イベント開催
目的各地域の発展や信頼関係づくり

ステークホルダーエンゲージメントはこれからの企業に欠かせない取り組み

経営状況のグラフ推移

Photo by Markus Spiske on Unsplash

ステークホルダーエンゲージメントを行うためには、まず最初に、ステークホルダーの洗い出しが必要だ。

顧客や株主といったふだんから意識しているステークホルダーのほかに、まだ気づいていないステークホルダーがいないかどうか、洗い出しを行い、しっかりと把握、理解することがエンゲージメント強化につながる。

ステークホルダーエンゲージメントを経営に役立てるには、一度やって終わりではなく、継続して行うことも大切となる。

ステークホルダーエンゲージメントを積み重ねることは、ステークホルダーとの関係性を強化し、利益追求だけにとどまらない真の企業価値の創造につながっていく。サービスの向上だけでなく、社会的責任も求められるこれからの企業活動において、ステークホルダーエンゲージメントは、欠かせない重要な取り組みとなっていくに違いない。

※掲載している情報は、2021年1月12日時点のものです。

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