グリーンウォッシュとは、環境に配慮した取り組みを行っているとうたっているが、実態が伴っていないこと。具体的にどんな事例があるか、何が問題なのか、注意するポイントとともにわかりやすく解説。グリーンウォッシュには騙されないよう、見分ける基準を手に入れよう。
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グリーンウォッシュ(もしくは、グリーンウォッシング)とは、環境に配慮した印象を与えるワード「グリーン」と、漆喰が壁などの表面を白く塗って覆うことから、うわべを取り繕う「ホワイトウォッシュ」をかけ合わせた造語。つまり、環境に配慮しているように見せかけているが、実はそうではないものを指す。
1980年代の欧米で、環境活動家などから言われるようになった言葉とされるグリーンウォッシュ。それは当時、一般の人にもエコへの意識が高まっていた背景があるだろう。
企業がブランドイメージをアップさせたいという身勝手な目的で、中身のともなわない見かけだけのエコを謳うケースが出てきたのだ。
最大の問題点は、エコをうたう商品やサービスが、実際にはエコと言えないことだろう。環境への負荷が大きいことや、健康への悪影響などから、なにかとやり玉にあがりやすいファストフード。エコ意識が高いヨーロッパでは、2009年にマクドナルドの象徴的ともいえるロゴを赤と黄色から、黄色と緑に代えて話題となった。
米企業キンバリー・クラークは環境にやさしいパッケージを用い、「ピュアでナチュラル」なおむつだとして販売。だが、実際には他の商品と同様に石油製品でできていたという例もある。
このようなまやかしが起きるのは、エコやサステナブルが企業には魅力的なコンテンツだから。企業イメージが上がれば商品は売れ、株価も上がる。エコならば、多少価格が張っても消費者が喜んで買い、企業は潤うといった具合に。
前述のマクドナルドやキンバリー・クラークが特別なわけではない。グリーンウォッシュは、私たちのすぐそばまで忍び寄っている。
買う側が、本当にその製品は環境に負荷をかけていないか、科学的にきちんと証明されているものなのかを能動的に調べ、チェックする必要があるだろう。その習慣をつけるためにも、どのような仕組みでエコが偽装されるのかを知ることもいいだろう。
たとえば、日本でもファンが多い、北欧のファッションブランド「H&M」。サステナブルなファッションとして2019年に発表された「コンシャスコレクション」が、本当はサステナブルかどうかが疑わしいとして、ノルウェーの消費者庁から違法として指摘されたことがあった。
コカ・コーラは、地球温暖化を防ぐ枠組みについて議論する「COP27(国連気候変動枠組条約の締約国会議)」を後援。しかし同社は年間1200億本もの使い捨てペットボトルを生産し、世界でもトップクラスの環境汚染企業のひとつと指摘されている。そのため、グリーンウォッシュの批判が巻き起こった。
マクドナルドは2019年、イギリスでプラスチックストローを紙製に切り替えたが、その紙製ストローをリサイクルせずにいたことが問題視された。
2020年に公開され話題となったドキュメンタリー映画「グリーン・ライ エコの嘘」は、環境にやさしいことをうたう商品の実態を探るストーリー。ブラジル、ドイツ、アメリカなど世界をめぐっていくなかで、環境問題にひそむ嘘に切り込んでいる。
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グリーンウォッシュに引っかからないため、いくつか見分ける方法がある。キーになるのが「10の定義」と「7つの罪」だ。
まず、「10の定義」。どちらかというと、商品を製造する側が、グリーンウォッシュ企業と見られないための定義だが、知っておいて損はない。
「エコ・フレンドリー」などのあいまいな言葉は避ける。
環境に負荷をかけている製造ラインで、グリーン商品をつくることは事実上不可能。
完全にグリーンな商品にはなりえない。
あたかも環境によいように導くイメージ図など。工業排水から汚水ではなく花が咲き乱れていたりするようなものがそれにあたる。
ごく一部に限られた環境活動を過大に評価、強調するが、全体では環境によい結果につながっていない。本末転倒。
そもそものレベルの低さを棚に上げ「〇産業で最高レベル」などと謳う。環境活動が遅れている産業の起こりがちな比較。
危険な商品をグリーン化する。健康に害があるタバコを、「エコ・フレンドリーなタバコ」などと表現しても意味がない。
科学者だけが分かるような専門用語を羅列するだけ。消費者に伝わらないのでは表示は無意味だ。
〇〇認証、●●推薦のような「ラベル」を見ることがあるだろう。第三者が与えてくれたかのように見える承認も、実は生産している企業が独自につくっていることがあるという。自画自賛は信頼に値するだろうか?
客観的な事実に照らし合わせて、初めて本当に環境によいかどうかが分かる。エビデンスがないものは、いくらよいことを言ったとして信用に値しない。
データを捏造するケースも実際にあるという。数字をうのみにしてはいけない。
定義の裏返しが、「7つの罪」と言えるだろう。
1、隠れたトレードオフの罪
一部の属性のみをことさらに強調し、その製品がグリーンであると主張する。
2、証明しないことの罪
グリーンであると言いながら、実際にはなにも証明していないこともある。
3、あいまいさの罪
定義・意味の幅があり、消費者に誤解を与えることがある。
4、偽りのラベル崇拝の罪
定義の「架空の友人」ではないが、あたかも第三者認証があるように思わせる表現のこと。
5、的外れの罪
嘘を言っているわけではないないが、消費者に重要度が低い部分だけアピールすること。
6、「かろうじてよい」罪
商品カテゴリー内ではよいとされるが、俯瞰するとよいとは言い切れない、または誤解を招きかねない表現のこと。
7、嘘をつく罪
消費者に“嘘”をつくこと。環境によいことが何もないという場合もあり得る。
一人ひとりが、消費者として賢くなることはもちろん。だが、企業もまたイメージだけを先行させるのではなく、基礎からエコな企業体質への変換が求められる時代だ。
資材の調達から、製造過程、商品がユーザーの手元に届くまでをトータルで環境に配慮した仕組みにシフトしていくときだろう。
イギリスのある調査では、無作為に抽出したウェブサイトのうち40%で、誤解を与えかねない表現があった。これを受けて、イギリス政府は2021年に「グリーン・クレーム・コード」を制定した。企業が環境対策をうたう際、その表現がガイドラインで示されている。
アメリカ・カリフォルニア州議会は、リサイクルできない製品やリサイクル品ではない製品に対するリサイクルマークの表示を禁止。現行のリサイクルマークの使用基準を厳しくする法案を可決した。グリーンウォッシュの防止につなげる狙いがある。
米国の権威あるメリアム・ウェブスター辞典に、「グリーンウォッシュ」をはじめとする環境問題にまつわる単語が追加された。グリーンウォッシュについて、「製品や政策、慣習などを実際よりも環境にやさしく、あるいは環境への負荷が少ないように見せる動詞」として定義されている。
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環境によいものを買いたいという、意識を持つことはとても大切だ。だが、自分のお金を払う際、「なんとなく良さそう」という理由で、買ってしまったらもったいない。
少し手間がかかるかもしれないが、必要なものを手に入れるとき、それがどこから生まれ、どこでどのように作られてきたかを知ることが重要。エレミニストとして、本当に地球や人にやさしい商品を選べば、満足度も高まる。そのアイテムを大切に丁寧に使う行動にもつながる。
エコやサステナブルは、セレブリティも盛んに取り入れる時代のトレンドだ。たくさんの人が求めるものは、企業にとって魅力的。いい金儲けの機会だと考える企業も哀しいかな存在する。
グリーンで、環境によさそうな文句も書いてある。デザインもやさしい。だが、本当にそれはサステナブルなアイテムだろうか?
ペイする前に、もう一度冷静になってチェックしてみよう。そのひとつのアクションが、大きな企業や地球環境の未来を変えていく大切な一歩になるのだから。
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