気候変動に
具体的な対策を
気候変動とその影響に
立ち向かうため、
緊急対策を実施する
- 13.1
- すべての国々で気候関連の災害や自然災害に対するレジリエンスと適応力を強化する。
- 13.2
- 気候変動対策を、国の政策や戦略、計画に統合する。
- 13.3
- 気候変動の緩和策と適応策、影響の軽減、早期警戒に関する教育、啓発、人的能力、組織の対応能力を改善する。
- 13.a
- 重要な緩和行動と、その実施における透明性確保に関する開発途上国のニーズに対応するため、2020年までにあらゆる供給源から年間1,000億ドルを共同で調達するという目標への、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)を締約した先進国によるコミットメントを実施し、可能な限り早く資本を投入して「緑の気候基金」の本格的な運用を開始する。
- 13.b
- 女性や若者、地域コミュニティや社会の主流から取り残されたコミュニティに焦点を当てることを含め、後発開発途上国や小島嶼開発途上国で、気候変動関連の効果的な計画策定・管理の能力を向上させるしくみを推進する。
- 13.1.1
- 10万人当たりの災害による死者数、行方不明者数、直接的負傷者数
- 13.1.2
- 仙台防災枠組み2015-2030に沿った国家レベルの防災戦略を採択し実行している国の数
- 13.1.3
- 国家防災戦略に沿った地方レベルの防災戦略を採択し実行している地方政府の割合
- 13.2.1
- 国連気候変動枠組条約事務局に報告されている国が決定する貢献、長期戦略、国内適応計画及び適応報告書を有する国の数
- 13.2.2
- 年間温室効果ガス総排出量
- 13.3.1
- (i)地球市民教育及び(ii)持続可能な開発のための教育が、(a)各国の教育政策、(b) カリキュラム、(c) 教師の教育、及び(d)児童・生徒・学生の達成度評価に関して、主流化されているレベル
- 13.a.1
- 2025年までの1,000億ドルコミットメントという継続的な既存の集団動員目標に関連して、1年当たりに提供及び動員された金額(米ドル)
DEFINITION 気候変動とは
#気候変動 #異常気象 #地球温暖化 #気候変動適応策 #気候変動緩和策
地球を取り巻く大気の状態を表す言葉には「天気」「天候」「気候」などいくつかの種類が存在する。これらは気象条件の平均期間によって使い分けられる。天気とは数時間から数日、天候は1週間から1ヵ月程度、気候となると1年単位の状態を指す。また砂漠の雪や大型の台風など、特定の地域の特定の期間において、30年に一度以下の頻度で発生する現象を異常気象という。
地球の大気には、二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスがわずかに含まれている。太陽のエネルギーで暖められた地球の表面からは赤外線のエネルギーが放射され、温室効果ガスが吸収することで大気が暖められる。
しかしこんにち、人間社会のさまざまな活動によって温室効果ガスの排出量が増加したことで、世界の多くの地域で気温上昇がみられる。異常気象が発生する頻度や確率が高まっている。
TOPIC 気候変動の現状
現在、地表の熱量が上昇している。観測上では産業革命後の1880年頃から2020年10月にかけて、地球の気温は1.2度上昇した。(※1)
この約150年という地球の歴史でみればとても短い間に起きている急激な気温の変化には、18世紀中ごろに英国で起きた産業革命以降、人間が石炭や石油などの化石燃料を利用したことによって排出された二酸化炭素が影響している。産業革命以降、大気中の二酸化炭素は急激に上昇し、2019年時点では48%増加しているという事実もある。(※2)
このまま人間が二酸化炭素の排出を続ければ、2100年には地球の気温は、2000年に比べ、最大4.8℃上昇すると予測されている。(※3) 何も対策をしなければ、人間社会や自然生態系にもさらに甚大な被害を及ぼすことになる。すでに約1℃の上昇により気候変動の被害は世界中で拡大している。
この被害は、特に気象災害に脆弱な途上国の貧困層や、農業や漁業など自然に頼った生計手段で生活している人々により大きな影響を与えている。このため各国では温暖化の抑制を急務とし、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの削減目標を掲げて努力を続けている。
TOPIC 気候変動による おもな3つの影響
気候変動による影響は広範囲にまでひろがる。ここでは主に3つを紹介する。
1. 気象災害の増加
気候変動によって自然災害が多発すると予想されている。
代表的なものでは洪水が挙げられる。海面温度や気温上昇によって対流圏の水蒸気が増加し、低気圧、高気圧の配置も大きく変わって、前線や台風(ハリケーンなど)による豪雨、局所的な豪雨が規模、頻度を増し、激甚な水害が多発すると予想されている。
温暖化が豪雨を誘発する一方で、弱い雨の頻度が減り、干ばつに悩まされる地域も増える。こうした干ばつの増える地域では、水不足だけでなく、土地が乾燥して森林火災なども起きやすくなる。
2. 海面の上昇、島国の消滅
地球温暖化によって気温が上がれば、海水の膨張だけでなく、グリーンランドや西南極の氷が溶け、さらなる海面上昇へとつながると危惧されている。2021年に発表された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第6次評価報告書によれば、近年の海面上昇率は1901年から1971年の間に比べて約3倍のスピードで上昇していることがわかった。2100年には海面が0.28〜0.55m上昇する可能性が高く、2100年までに約2メートル、2150年までに5メートル上昇する可能性も否定できないという。(※4)
海面上昇は、海抜の低い南太平洋の島々に浸水被害をもたらし、国によっては国土全体が海中に沈むことも懸念されている。2050年には、インドネシアの首都・ジャカルタやキリバス共和国の多くの島々が水没するといわれている。そうなれば人々は住む土地を失い、環境難民となって他国への移住を余儀なくされる。
3. 生態系の変化
急激な気温の変化により、北極の氷が溶け、ホッキョクグマの個体数が減少する可能性が危惧されている(一方、専門家の間ではホッキョクグマは減少していないとするデータも存在する)。さらに干ばつや多雨により植物の生育にも影響が発生している。
多量の二酸化炭素が溶け込むことによる海水の酸化や温度上昇は、長期的には動物プランクトン、サンゴ、貝類、甲殻類の生育や繁殖を阻害し、さらにこれを餌とする多くの海洋生物の生息数を減らすとも危惧されている。国際自然保護連合(IUCN)の報告によれば、気候変動の影響で絶滅の危機に瀕している野生生物は、2020年時点で4,000種以上にのぼるとされている。(※5)
TOPIC 原因となる 温室効果ガス
気候変動や地球温暖化の原因となる温室効果ガスには、いくつかの種類がある。代表的なものは、二酸化炭素(CO2)とメタン(CH4)。この2種は気象庁によると地球温暖化に与える影響の81%を占めるという。(※6)
そのほかにも一酸化二窒素(N2O)やフロン、代替フロンなども温室効果ガスに含まれる。国連環境計画(UNEP)の「排出ギャップ報告書2020年版」によれば、2019年の世界の温室効果ガスの排出量はCO2換算で過去最高の59.1Gtにのぼった。(※7)
太陽が地上を温めると、地表からエネルギーが放射される。その一部が大気中の炭酸ガスなどの温室効果ガスによって吸収・再放射されることで、地表はこれまでの適度な平均気温をたもってきたが、大気中の温室効果ガス濃度が高くなると温室効果が強化され、地表の温度が上昇してしまう。これが温室効果ガスにより気温が上昇する理由のひとつだ。
TOPIC COP21で 脱炭素化へ
2015年12月に仏・パリで国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)が開催され、約200ヵ国が「パリ協定」に合意した。「京都議定書」が2020年に終了するのを控え、その後継として2021年以降の国際的な気候変動対策を定めたものだ。
パリ協定は、世界の平均気温上昇を産業革命以前と比較して、2℃より低く抑え、1.5℃に抑える努力を追求することを目的としている。この実現のため、21世紀末のなるべく早期に世界全体の温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする「脱炭素化」を目標に、世界各国での取り組みが始まった。
この目標を達成するためには、各国が積極的に対策を行っていく必要がある。パリ協定では、主に以下のプロセスが定められた。
1. すべての国が国別目標を5年ごとに提出、更新する。その際目標を深掘りする。
2. すべての国が排出削減の実施状況を共通のルールで国連に報告し、検証を受ける。
3. 各国は温暖化の悪影響に対する適応計画を立て実施し、5年ごとに適応報告書を定期的に提出更新する、また途上国の削減や適応を支援するために、先進国が資金や技術を提供する、等。
TOPIC 気候変動に対する世界と日本の取り組み
気候変変動への取り組みは、気候変動そのものを抑える「気候変動緩和策」と、気候変動によって引き起こされる様々な災害等の影響に対応する「気候変動適応策」の2つに分けられる。それぞれの分野の目覚ましい取り組みを紹介する。
温暖化豪雨時代を見据えた日本の新しい治水ビジョン
国土交通省は2020年、河川整備と下水道整備を柱に進めてきた従来の治水事業から、流域全体で治水を行う「流域治水」に方針転換すると表明した。これは温暖化豪雨時代への対応を視野に入れた総合的な治水対策で、他の法律での対応も組み込んだ抜本的な取り組みだ。2021年4月には、河川の流域全体で治水の実効性を高める流域治水関連法案も可決、成立している。
流域の自然保護によって保水力を増強する「グリーンインフラ」や、市街化にともなって「雨水調整池」の整備、水田などの遊水機能を活用する「あふれさせる治水」が採用される見通しだ。
参照されるべき先行事例
全国109の一級水系で唯一、鶴見川流域だけは総合治水という名称で流域治水が実践され、大きな成果をあげている。この水系では、戦後の急激な都市化による保水力・遊水力の減少が激しく、1970年代半ばにはすでに、河川整備と下水道整備だけでは下流域の大水害を防止できない状況となっていた。
1980年、緑地保全や調整地整備、水田保全などの流域対策を組み込んだ総合治水という名称の流域治水が実践された。現在では、40~50年に一度の規模の豪雨でも下流域の大氾濫を回避できる水準まで治水安全度が向上している。今後は温暖化豪雨の多発に備え、総合治水の拡大が課題となっている。しかしこの流域の経験は、治水分野の適応策の先行例として広く参照されていくべきだろう。
鶴見川流域の総合治水の展開を基礎として、流域の地形・生態系を基盤とした総合的な対応の有効性が「流域思考」として注目を浴びている。(※8)
イギリスの野心的な気候変動対策
イギリスの気候変動対策は、世界に先駆けた取り組みとして評価が高い。2008年に策定した「気候変動法」では、2050年までに温室効果ガス排出量の80%削減(1990年比)を発表。炭素管理の向上、低炭素経済への移行促進、国際合意に基づいた世界な排出削減に向けたリーダーシップの発揮を目的とした画期的な法律だ。いまではヨーロッパの各国がイギリスの取り組みに倣った類似の法律を導入している。
さらに2020年には、2050年までに排出量を実質ゼロにするとした気候変動法の改正を実施。温室効果ガスの排出を削減しながら、経済成長を目指す「グリーン成長戦略」という国家目標のもと、G7のなかでも野心的に気候変動対策を打ち出し続けている。
2050年までに脱炭素化を目指すコスタリカ
コスタリカは、2050年までに温室効果ガスの排出量実質ゼロを目指している。化石燃料からの脱却を標榜している通り、国内で生産されているエネルギーのほとんどを水力発電を中心とした再生可能エネルギーだけでまかなっている。
2019年には新たな環境目標を発表し、2050年までの温室効果ガスの排出量ゼロに向けたアクションプランを作成した。農業のカーボンフットプリントの削減、タクシーとバス7割のEV化、ゼロエミッションカーやカーシェアリングの普及などをはじめ、雇用創出や持続可能な成長も同時に目指す。中米の小国ではあるが、先進国に先んじて脱炭素化のイニチアチブをとる存在だ。
わたしたちがすぐに
起こせるアクション
- 自動車ではなく公共交通機関を利用する
- 再生可能エネルギーを扱う電力会社に切り替える
- カーボンフットプリント計算ツールを活用し、日常生活を見直す/地産地消を心がける
- 国際環境NGOグリーンピース・ジャパンが運営する「ゼロエミッションを実現する会」に参加し、情報を収集または共有する
- Allbirdsが立ち上げたオンライン署名活動「自分の靴や服のカーボンフットプリントを知りたい」に参加する
- 候補者に気候変動への対策をヒアリングする
- 選挙の際は環境意識の高い候補者に投票する
- 流域思考を駆使して、温暖化豪雨時代の水土砂災害への適応策を学ぶ
- 自分が住んでいる場所の所属流域を知る
- ふだんから水循環の基本単位である流域という地形・生態系の視野で豪雨のもたらす水の動きを意識する
- 『生きのびるための流域思考』(著:岸由二/ちくまプリマ―書房)を読む