産業と技術革新の
基盤をつくろう
レジリエントなインフラを構築し、
だれもが参画できる持続可能な産業化を促進し、
イノベーションを推進する
- 9.1
- 経済発展と人間の幸福をサポートするため、すべての人々が容易かつ公平に利用できることに重点を置きながら、地域内および国境を越えたインフラを含む、質が高く信頼性があり持続可能でレジリエントなインフラを開発する。
- 9.2
- だれもが参画できる持続可能な産業化を促進し、2030 年までに、各国の状況に応じて雇用や GDP に占める産業セクターの割合を大幅に増やす。後発開発途上国ではその割合を倍にする。
- 9.3
-
より多くの小規模製造業やその他の企業が、特に開発途上国で、利用しやすい融資などの金融サービスを受けることができ、バリューチェーン*や市場に組み込まれるようにする。
*バリューチェーン:企業活動における業務の流れを、調達、製造、販売、保守などと機能単位に分割してとらえ、各機能単位が生み出す価値を分析して最大化することを目指す考え方。
- 9.4
- 2030 年までに、インフラを改良し持続可能な産業につくり変える。そのために、すべての国々が自国の能力に応じた取り組みを行いながら、資源利用効率の向上とクリーンで環境に配慮した技術・産業プロセスの導入を拡大する。
- 9.5
- 2030 年までに、開発途上国をはじめとするすべての国々で科学研究を強化し、産業セクターの技術能力を向上させる。そのために、イノベーションを促進し、100 万人あたりの研究開発従事者の数を大幅に増やし、官民による研究開発費を増加する。
- 9.a
- アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国、小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能でレジリエントなインフラ開発を促進する。
- 9.b
- 開発途上国の国内における技術開発、研究、イノベーションを、特に産業の多様化を促し商品の価値を高めるための政策環境を保障することなどによって支援する。
- 9.c
- 情報通信技術(ICT)へのアクセスを大幅に増やし、2020 年までに、後発開発途上国でだれもが当たり前のようにインターネットを使えるようにする。
- 9.1.1
- 全季節利用可能な道路の2km圏内に住んでいる地方の人口の割合
- 9.1.2
- 旅客と貨物量(交通手段別)
- 9.2.1
- GDPに占める製造業付加価値の割合及び一人当たり製造業付加価値
- 9.2.2
- 全産業就業者数に占める製造業就業者数の割合
- 9.3.1
- 産業の合計付加価値のうち小規模産業の占める割合
- 9.3.2
- ローン又は与信枠が設定された小規模製造業の割合
- 9.4.1
- 付加価値の単位当たりのCO2排出量
- 9.5.1
- GDPに占める研究開発への支出
- 9.5.2
- 100万人当たりの研究者(フルタイム相当)
- 9.a.1
- インフラへの公的国際支援の総額(ODAその他公的フロー)
- 9.b.1
- 全付加価値における中位並びに先端テクノロジー産業の付加価値の割合
- 9.c.1
- モバイルネットワークにアクセス可能な人口の割合(技術別)
DEFINITION 産業と技術革新とは
#産業 #技術革新 #イノベーション
産業の定義
「産業」とは、生活の必需品や役割を生産する活動のこと。農業や鉱業、工業など物品を生産する活動のほか、運輸や商業、金融など有形の物は生み出さないがサービスを提供するものなど、多岐に渡る。(※1)
日本では、自然界と関わり作物をつくったり採取する第1次産業、それを加工する第2次産業、前述のどちらにもあてはまらない第3次産業の3つに分類されている。
技術革新の定義
「技術革新」は、1911年に経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターによって定義された「イノベーション」の日本語訳である。イノベーションには、技術に限らず、仕組みの変革や新しいものの創造なども含まれる。
内閣府は「平成27年 年次経済財政報告」において、イノベーションが経済成長につながることで、企業収益や雇用機会の増加、賃金の上昇が起こるとしている。
イノベーションが従来の産業の構造を変え、労働生産性を向上させ、多くの雇用と高い収入水準の仕事をも生み出すことで、消費を拡大し経済の好循環が起こるのだ。
インフラと産業・イノベーションの相関性
SDGsにおいては、製造業の発展とイノベーション、この2つから生まれる産業の発展には「レジリエント(強靭)なインフラ」が必要とされる。
レジリエントとは、柔軟性があるさまを表し、「強くしなやかで、変化や逆境にも適応できる、または元の状態に回復できる」ことを意味している。自然災害などの突発的な状況が起っても決して壊れないインフラの整備は、非常に困難だ。しかし持続可能な社会を達成するためには、ダメージを受けても適応し、人の手ですぐに復旧できるインフラが重要なのだ。
TOPIC インフラの現状
現在でも開発途上国では、衛生施設、水道、電力などの基礎インフラさえ普及していない。上下水道では、衛生的な水を利用できない人口は2017年時点で世界の約11%、約8億4,400万人にのぼる。(※2)
電力供給インフラのない未電化地域は、2018年時点でサブサハラアフリカ(サハラ砂漠以南の地域)や南アジアに多く、世界で約8億6,000万人もの人々が、電気の供給を受けずに暮らしている。(※3)
経済発展のためには、効率のよいエネルギー利用や、人や物資を安全に運ぶ道路、空港、港等など地域・越境インフラが必要となる。しかし、いかなる天候でも交通できるよう整備された道路を利用できない人々は、未だに多数いる。
なお、イノベーションや最新の情報に容易にアクセスするための重要なインフラであるインターネットは、2020年の報告によると、全世界の人口のうち55%しか利用できる状況にない。(※4)
TOPIC ハイテク産業発展の 壁となる3つの壁
1. インフラの未整備
インフラには、冒頭で挙げた水道、電力やインターネットが該当する。とくに製造業やハイテク産業を推進させるためには、安定した電力供給が不可欠である。しかし開発途上国には現在も未電化地域があり、電力供給が安定していない地域も少なくない。安定した電力の供給には、大容量の発電設備の設置*や、送電網の整備が必要となる。
インターネットの利用は、新しい情報の獲得と、イノベーションのスピードに大きく影響する。インターネットに接続できない、もしくは高速のインターネット回線を利用できない地域では、各国の最新の研究データや有益な論文に触れる機会そのものが失われてしまう。こういった格差は「情報格差**」と呼ばれている。
*南アフリカを除いたアフリカ諸国の平均設備容量は、日本最小容量の沖縄電力(約200MW)の半分ほどしかない
**デジタル・ディバイドとも言う
2. 研究開発への投資
産業を振興するためには、その原動力となる研究開発への投資が必要だ。しかし、2014年の先進国における研究開発費がGDPに占める比率は2.4%であるのに対し、開発途上国では1.2%、後発開発途上国*では0.3%。研究者数にも顕著な差があり、先進国では100万人あたり3,739人の研究者がいるが、開発途上国では63人であるという。(※5)
こうした研究者の育成には、政府や企業の支援が不可欠である。しかし産業構造が食料・飲料、衣料・衣服といった基本的なものにとどまっている開発途上国などでは、その支援の土壌も生まれにくい。
*開発途上国で特に開発が遅れている国。国民の所得や人々の健康や教育、経済的脆弱性を評価し、国連総会の決議での認定される。3年毎に更新。
3. 信用取引の機会
現金や株式を担保に資金を調達する信用取引は、より大きな事業の展開や企業の市場への参入のハードルを下げる。世界において、信用取引を利用している企業は未だ37%ほどで、開発途上国ではさらにこの数字は低くなる。(※5)
信用ではなく現金や現物の取引をしている国や地域では株式・金融市場の動きが悪く、産業や経済の発展が阻害されてしまう。
TOPIC イノベーションの 現状
先進国を中心に、ハイテク産業を基にしたイノベーションが起きている国がある一方で、こうした条件が揃っていない国では、そのスタートラインに立つことさえできていない状況がある。
2018年の総務省の調査では、先進国と開発途上国のインターネット利用の世帯普及率の格差が報告されている。インターネット普及率は日本では91.1%、ヨーロッパ全体では79.1%だが、最も普及率が低いアフリカでは25.1%となっている。(※6)
ICTは、インターネットを介した情報処理・コミュニケーションのことを指す。ICTの産業、サービスは、情報の処理や共有、人のコミュニケーションを通じて教育・技術開発を一気に加速させる。
イノベーションが進んでいる国には、『The Global Innovation Index 2012』*に掲載された、イノベーション総合ランキングによると、ヨーロッパではスウェーデン(1位)やスイス(2位)、アジアではシンガポール(3位)や香港(8位)が上位にある。日本は全体の25位だ。
内閣府の2013年の白書によれば、研究開発費の支出や活発な起業、政策による環境整備、販路の拡大などの要因が複合的に影響し、イノベーションが起こるとしている。(※7)こうしたなかで、ICTやグローバル・バリュー・チェーンの形成が、イノベーション創出のスピードに大きな役割を持つ。
「グローバル・バリュー・チェーン(GVC)」は、ICTと貿易自由化により、先進国を中心に、生産工程をそれぞれ最適な国に分配することで工程を分業し、新たな付加価値の提供とコスト削減を図る流通。
先進国にとっては、環境に配慮した製品選びや輸送コストの削減、比較的安価な労働力の獲得を促し、開発途上国にとっては先進国からの技術移転による発展をもたらす。GVCに開発途上国や小企業が参加すれば、生産性拡大や雇用創出が起こり、結果としてイノベーションのスピードや国際競争力の向上につながっていくことになる。
*WIPO(World Intellectual Property Organization)とINSEAD(ビジネススクール)が調査・発表している。
TOPIC 世界の取り組み
産業化と技術革新には、知識や技術の獲得とアイデアが必要だ。この2つを行った優れた取り組みを紹介する。
デリー・メトロ
人口増加とともに経済の発展が著しい東南アジアなどでは、地域・越境インフラの構築が進んでいる。インドのデリーでは、東京地下鉄株式会社・メトロ車両株式会社らの支援によって、デリー高速輸送システムが建設された。これにより渋滞の緩和やCO2の削減が図られただけでなく、現地の技術者への安全管理や工期遵守などの労働文化の形成にも貢献した。
Watly
イタリア人とスペイン人によるベンチャー企業が「Watly(ワットリー)」という設備を発明した。Watlyは、1台で太陽光発電による「電力」と、1日に約5,000Lの「清潔な水」、そして「インターネット」の供給も可能であるという。実現すれば、開発途上国のインフラやデジタル格差解消に大きく貢献するだろう。
わたしたちがすぐに
起こせるアクション
- 家族や友だちなどに社会の課題を共有する
- 理想の社会について話し合う
- 自然災害の被災地の復興支援に関する募金に参加する
- クラウドファンディングで特定の社会課題を解決するアイデアに投資する
- 新たなアイデアを生み出すイベント「アイデアソン」に参加する
- 『社会格差はどこから?』(著:プランテルグループ/あかね書房)を読み、情報格差の実態を知る
- 再生可能エネルギーを使った電力会社を契約する
- 自宅に雨水タンクやソーラーパネルを設置する
- 先進事例を参考に社会課題の解決方法を学ぶ
- 国や自治体主催のコンペに参加する
興味がある目標をクリックしてみよう!
and Infrastructure”