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世界が抱える国際問題(社会問題)は、日本で暮らしていると現実味を感じないことも多い。しかし、実際は対岸の火事ではなく、グローバル時代を生きる一員として、ひとりひとりが課題に向き合うことこそ、解決への近道だ。知っておきたい代表的な「国際問題」一覧を、取り組み方法とあわせて解説する。
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「国際問題」とは、国や地域を越えて影響を及ぼす、さまざまな問題の総称。たとえば、貧困や難民などの社会的問題、紛争やテロなどの政治的問題、気候変動や資源の枯渇などの環境的問題、そのほか人権や経済に関わる問題など、テーマは多岐にわたる。
既存の問題が深刻化したり、新しい課題が生まれたりと、国際問題は常に変化し続けているため、私たちは日頃から関心を持ち継続的に学ぶ必要がある。
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国際社会が解決するべき問題には、どんなものがあるのか。世界が直面している国際問題の一例を挙げよう。
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世界銀行が定義している絶対的貧困者(衣食住において、最低限の生活すら送ることができないレベルの貧困)の数は、おもにアフリカのサハラ砂漠より南を中心に、世界で7億人を超えるといわれる。
1日1.9ドル以下の生活、日本円に換算すると約200円以下の生活を指す絶対的貧困の背景には、テロや紛争、政治腐敗により生まれる貧富の差などの社会的問題が存在する。
貧困は、教育を受けられない人々を生み出す。近年、先進国においても、経済格差による貧困および教育の欠如が大きな問題となっている。
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教育不足は、経済的に自立するための情報や仕事が得られず、一生暮らしを豊かにするチャンスが奪われるだけでなく、さまざまな危険を回避できず、命を落とすことさえある。
紛争地域や貧困家庭では、その日を生きることが精一杯のため、教育のことまで考えられない現状がある。子どもは、労働の担い手である。
そもそも学校が側にない、あっても舗装すらされていない危険な通学路であったり、教師が不足していることも珍しくない。
また、宗教や児童婚の風習から、女性への教育は不要と考える国や地域もある。
国際労働機関(ILO)がユニセフと発表した報告書によると、児童労働に従事している子どもの数は世界で1億6,000万人にのぼり、さらに数百万人の子どもたちが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で新たに児童労働に従事させられるリスクに直面していると指摘。(※1)
発展途上国で起きている児童労働の問題は、日本も決して無関係とは言い切れない。2014年バングラデシュの縫製工場で起こった崩落事故では、働いていた子どもたちが亡くなったが、そこでつくられていたのは、先進国に輸出するためのファストファッションだったと言われている。
ほかにも、ガーナのカカオ農園で子どもたちが児童労働をさせられていて、そのカカオでつくられたチョコレートが先進国に輸出されているといった事例もある。
世界全体では4,000万人以上の人々が、人身売買や人身取引の犠牲に遭っていると考えられている。このうち約4割が国境を渡って売買されており、過半数以上を占めるのが性的搾取で、被害者の大半は女性や小さな子どもたち。また、貧困国では生きるために臓器売買をしている地域もある。
2020年、アメリカのジョージア州で、行方不明になっていた子どもたち39人が発見された(※2)。アメリカでは2019年の一年間だけで42万件以上もの、子どもの行方不明に関する事件が報告されている。そのなかには、性的な目的や人身売買を目的とした誘拐も含まれている。
2019年に起きた、ナイジェリアの「赤ちゃん工場」と呼ばれる事件(※3)。ナイジェリアのラゴスに「仕事がある」と騙されて連れてこられた若い女性たちが監禁され、男性たちに無理やり性行為をされて妊娠。生まれた子どもが売買されるといった人身売買の事件だった。摘発された場所が「赤ちゃん工場」と呼ばれていた。
悪質な犯罪は、日本を含む先進国でも起こっている。長期間にわたり拘束されたり、搾取された被害者の心のケアも重要な課題だ。
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残念ながら、世界ではテロや紛争が絶えない。争いの原因は、歴史的背景や内政事情、利害関係が複雑に絡み合っているため、同じ国で何度もくり返されたり、長期化する場合が多い。
このような紛争下の子どもたちは、無差別に殺され、時には人間の盾として使われたり、子ども兵(少年兵)として戦闘を強要されている。紛争が長引くと貧困もさらに進む。世界では、6人に1人の子どもが、暴力的な思想に染まる可能性のある紛争影響下で暮らしている。
難民とは、紛争や迫害によって故郷を追われ、さらに国外に逃れた人々のことを指す。
国外にはまだ出ていないが、故郷を離れて避難民キャンプで生活をしている人々は、国内避難民などと呼ばれる。国連UNHCR協会によると、2022年末時点で故郷を追われた人の数は約1億840万人 (※4)。
難民を支えるため、多くの政府機関やボランティア団体が支援活動を行っているが、増え続ける難民の数に対応が追いついておらず、食料不足による栄養失調、慢性的な水不足や劣悪な衛生環境、感染症のような病気にかかるリスクや医療体制の不備、教育面などの問題が山積みだ。
2021年、飢餓人口は最大8億2,800万人にのぼり、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)のパンデミック以降、増大したことが「世界の食料安全保障と栄養の現状2022(SOFI)」報告書で明らかになった(※5)。
飢餓の原因には、気候変動が農作物に影響を及ぼしていることや、干ばつ・洪水などの自然災害により、食料の確保を困難にしていることが挙げられる。
さらに、紛争や戦争のような不安定な内政が影響し、貧困層にまで十分な食べ物が行きわたらないこともある。
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貧しい国や地域での飢餓が問題視される一方、近年は世界で肥満の問題も深刻化している。世界肥満連合(WOF)は、肥満防止の措置を講じなければ、2035年までに世界の人口の半数以上が肥満または過体重に分類されることになると警告した(※6)。
先進国だけでなく、発展途上にある国の中流階級の人たちも、食の欧米化やファストフード、甘いスナックの普及で不健康な食生活から肥満になり、糖尿病をはじめとした生活習慣病になる人も増えている。
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国連の世界人口予測によると、地球の総人口は現在の77億6000万人から2030年には85億5100万人に達し、2055年には100億人を突破するという。
人口が増えるペースがもっとも速いのは、サハラ砂漠より南のアフリカ。ほかの地域に比べて高い出生率をキープしている。さらに2100年には、アフリカの人口が世界人口の3割以上を占める見通し。人口爆発で、食料だけでなく資源不足もより深刻化するだろう。
20世紀は石油を巡って戦争が起こったが、21世紀は水を巡った戦争が起きると言われている。地球温暖化による気温変動とあわせて、環境破壊による水の汚染も深刻化している。
2030年には、世界人口の47%が水不足になるとユネスコが予測している。
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医療にアクセスできないことが原因で、助かる命までも落としている人は、世界全体の死亡者数の半分を占めている。ほとんどが発展途上国で起きており、医療問題は命と健康を守る緊急性の高い社会問題だ。
テロや紛争では、医療が崩壊していること、増え続ける難民に対し医療提供が行き届いていない問題など、課題は山積み。人の移動が自由になった現代において、新たなパンデミックを引き起こすリスクも懸念されている。
大気中の二酸化炭素(CO2)をはじめとした温室効果ガスが増大し、気温の上昇や気候の変化(地球温暖化)が起こっている。
このままいけば、100年後には4度程の気温上昇が予測されており、海面上昇による移住を余儀なくされたり、猛暑や洪水による災害被害の増大、さらに予測不能な変化を引き起こす可能性がある。とくに貧困国ではその影響に対応する力もなく、さらなる貧困や飢餓、紛争のリスクが増大する。
地球温暖化の原因となる、CO2。工業化が進んだ日本を含む先進国が、全体の排出量で大きな割合を占める。石油や石炭による化学燃料の燃焼や、経済成長が続く中国やインドなど新興国でのエネルギー需要の増加が、CO2濃度を上昇させている。このまま排出量削減が実現できない場合、深刻な事態を招く恐れがあると警鐘が鳴らされている。
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気候変動や地球温暖化で指摘されているのが、人為的な要因だ。人類の経済活動によって大量に排出された温室効果ガスが関係しているということは、世界中の科学者がほぼ一致で見解を出している。
このまま進めば、2030年以降、年間25万人を超える死者が出ると言われている。農作物への影響も深刻で、とくにアジア地域で収穫が減少し、何十万人もの死亡につながると懸念されている。
相次ぐ台風や強烈な豪雨、記録的な猛暑に寒波、洪水、干ばつ、山火事などの被害は、生活を脅かしている。世界気象機関(WMO)では、多発する異常気象は地球温暖化がもたらす高温や降水パターンの変化が原因であると分析。
手遅れになる前に、世界全体が具体的な対策を講じるべきであり、私たちは危機意識を持ちながら、適切な備えをすることが求められている。
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地球上のエネルギー問題を解決するために、SDGsの目標7では「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」という目標が掲げられている。
我々の生活や産業を支えている石油、天然ガス、石炭などの資源は、限られたものだ。これまで通りのペースで人類が消費を続けていくと、石油は2070年に、天然ガスは2072年に枯渇し、また100年後の2170年には石炭が枯渇することがわかっている。
国際社会が取り組むべきは、化石燃料エネルギーから自然エネルギーへの転換であろう。日本ではまだまだ自然エネルギーの普及率は低いが、ヨーロッパでは普及率が年々高まっている。
たとえばドイツでは、太陽光や風力、バイオマスなどの自然エネルギーがすでに化石燃料のエネルギー比率を上回っている。
男性と女性には、それぞれの役割があるというステレオタイプな価値観で、社会的・文化的に偏見や不平等な扱いをうけることをジェンダー格差という。
男性優位が顕著な発展途上国では、教育を受けられず読み書きができない女性は全体の半数以上おり、貧困層からいつまでも抜け出せない。
また世界で3人に1人の女性がなんらかの暴力を受けており、医療アクセスが整わないため、望まない妊娠や出産で1日に800人が死亡しているなど、男女差別による問題が存在している。
先進国においても、男女間の収入格差や役職・昇進についても、経済的格差がある。
人種とは、人を肌の色や骨格、毛髪など体の特徴で分けた区分。差別の対象は、体の特徴だけに留まらず、階級、宗教、民族などさまざまな背景のもと、経済的、社会的に権利が侵害されている。人種差別を動機とする犯罪や暴力が、世界各地で相次いでいる。
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国際NGOオックスファムによる2019年のレポートでは、世界でもっとも裕福なトップ26人が、世界でもっとも所得が低い半数にあたる約38億人の総資産と同額の富を保有しているという報告がある。とてつもない所得の格差は、世界の社会問題として改善が求められている。
中国やインドの巨大新興国では、都市部と農村部の所得格差や、国の政策により恩恵を受ける人が限られる不条理な環境がある。開発途上国においても、国政の問題だけでなく、先進国との貿易の際に取引価格が引下げられ適切な収入を得られない格差問題がある。
国連食糧農業機関によると、世界では人間が食べる目的で生産された食糧のうちおよそ3分の1にあたる13億トンが毎年廃棄されている。廃棄処分のため排出される温室効果ガスは、およそ36億トン。食品ロスが世界の飢餓や貧困に与える影響、さらには気候変動など環境破壊につながっている。
発展途上国における食品ロスは、技術面や衛生、設備の問題で生産過程における収穫物の廃棄が多いのに対して、先進国では小売り店からの廃棄はもちろん、消費者の豊かさから家庭由来による廃棄が多いという特徴がある。
日本は食べ物を輸入に頼っているにもかかわらず、食品ロスは年間約600万トン、食糧廃棄率が世界一位だ。
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国や地域により、事情や度合いが異なるごみ問題だが、とくに発展途上国において深刻さを増している。放置しているごみのなかには、有害物質を発生するものがある。腐敗したごみからガスが出て自然発火すれば、周辺住民の住環境や健康に重大な悪影響を及ぼす。
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海洋プラスチックごみ問題は、SDGsの目標14で掲げられている「海の豊かさを守ろう」にも関係している。不適切に処分された大量のプラスチックごみの具体的な改善策が進まないなか、2050年には、海に流失するプラスチックごみは魚の量を上回ると予測されている。
海洋プラスチックごみが海洋生物に悪影響をもたらすことは言うまでもないが、その海の生き物を食べている人体への影響も計り知れない。
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終わりに、日常生活のなかで、いますぐ誰でも簡単に始められる取り組みを紹介する。
節水や節電、アニマルウェルフェアの意識を持とう。電力消費や、食用やファッションのための畜産業は、温室効果ガスを排出し、環境負荷を与えている。
食品ロスを減らそう。廃棄された食べ物が焼却処分される際には、温室効果ガスが発生する。食品ロスをなくすことは、環境負荷を抑えることにもつながる。
生ごみをなるべく減らしたり、堆肥化する。家庭で小さく始められるコンポストが注目されている。
モノを買い過ぎないこと。限りある資源をできるだけ循環させていかなければならない。まだ使えるモノであれば、捨てる前にリサイクルショップやフリマアプリで次の所有者を探してみよう。
簡易包装を心がけ、紙の使用を減らそう。マイバック・マイボトルを利用し、レジ袋を削減したり、安価なプラスティック製品の購入をひかえよう。
ジェンダーの不平等は、家庭内にも存在する。まずは、家事を分担してみよう。
自然災害は、いつ起こるかわからない。被害にあわない、または被害を最小限に抑えるために、防災マップの入手や防災セットを用意しておくなど、ひとりひとりが万が一に備えておく必要がある。
国土交通省の資料によると、自家用車が人1人を1km運ぶときのCO2排出量は133g、バスはその半分以下の54g、鉄道はさらに少なく18g。外出時や通勤時の移動手段を、自家用車から公共交通機関、自転車、徒歩に変えることで、CO2の排出量抑制に大きく貢献できる。
フェアトレードの製品を選んだり、寄付や募金をする。難民支援や教育、食糧支援を行う国際NGO「ワールド・ビジョン・ジャパン」や「難民を助ける会」、栄養・保健の支援を行うユニセフや、子どもたちに情操教育やキャリア教育の授業を提供する「国境なき子どもたち」などのサイトを参考にするといい。
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国際問題は、地球規模で取り組むべき大きな課題であり、知れば知るほどネガティブな気持ちにもなりがちだ。
世界的にみれば、恵まれた環境下にいる私たち日本人。難問に対しては、過度に悲観的にならず、ひとりひとりが身近なところから行動を変えていくことが大切だ。
小さな一歩が、やがて大きなウェーブとなって世界をよりよく変えていくと信じたい。
参考
※1 unicef|ユニセフ・ILO報告書 児童労働、世界で1億6,000万人 過去20年で初の増加、新型コロナ影響でさらに増加予測
※2 CNN .co. jp|行方不明の子ども39人を発見 米ジョージア州
※3 AFP BB News|ナイジェリア、「赤ちゃん製造工場」の実態と背景
※4 国連UNHCR|難民について
※5 国連WFP|記録的飢餓が拡大:世界の食料安全保障と栄養の現状
※6 BBC NEWS JAPAN|世界人口の半数超、2035年までに「肥満または過体重」に=世界肥満連合
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