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貧困は人類が社会を構築して以来の懸念ごとだ。いまでは世界的な課題として認識されている。「ユニセフ(国連児童基金)」によると、推定で世界の6人にひとりが極度の貧困状態にあるという。貧困が引き起こすさまざまな問題について見てみよう。
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世界銀行は「1日1.9ドル以下で生活する状態」を貧困と定義している。そしてその人数は世界の6人に1人と算出された。じつに3億5,600万人が食料や水の不足に悩み、教育や医療へのアクセスが受けられない状態にある。
とくに子どもの貧困は深刻だ。世界銀行が2020年に公表した「金銭的貧困にある子どもの世界推定(Global Estimate of Children in Monetary Poverty)」によると、極度の貧困層の約半分は子どもだという。(※1)
さらに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により、グローバルレベルで経済的な困難が広がったと見られている。世界銀行や「ユニセフ(国連児童基金)」をはじめ、多くの機関が支援に乗り出しているが、完全な貧困解消にはまだ時間がかかる見通しだ。
ひとり当たりのGDP(US)を基準に、貧困国のランキングを見てみよう。ここでは世界銀行の公式サイトで2022年10月24日に確認できる情報を用いて、ランキングを構成する。(※2)
順位 | 国 | GDP(USドル) |
---|---|---|
1位 | ブルンジ共和国 | 292.619 |
2位 | 南スーダン共和国 | 327.898 |
3位 | シエラレオネ共和国 | 493.572 |
4位 | 中央アフリカ共和国 | 495.936 |
5位 | マダガスカル共和国 | 521.578 |
6位 | マラウイ共和国 | 522.963 |
7位 | マリア連邦共和国 | 539.001 |
8位 | モザンビーク共和国 | 542.095 |
9位 | ニジェール共和国 | 561.222 |
10位 | エリトリア国 | 646.957 |
ランキングを見てみると、これらのワースト10位の国家がアフリカに集中していることがわかる。また、開発途上国というカテゴリーに分類されるのも特徴だ。(※3)
アフリカではいまだセーフティネットが行き届かない地域があり、極度の貧困が集中する理由のひとつとして考えられている。
GDPランキングのトップ3と比較してみると、アメリカ合衆国(25,346,805ドル)、中国(19,911,593ドル)、日本(4,912,147ドル)とかなり差が開いているのが現状だ。
SDGsでは数あるゴールのなか、最重要項目として「世界中の、あらゆる形の貧困を終わらせる」を設定している。貧困を人類共通の課題として重く受け止め、解決をはかるためだ。
貧困は老若男女を問わず健康や人権が確保された生活を奪い、子どもから教育の機会をも奪ってしまう。満足な教育を与えられなければ貧困から脱け出すための知識もスキルも得られない。貧困のスパイラルが起こりかねないのだ。
現状で貧困状態ではない人々も、貧困問題を遠い国や一部の地域の受難としてとらえるのではなく、社会全体の未来にかかわる課題として受け止めるべきだろう。
途上国ではさまざまな理由で紛争が発生していることが少なくない。紛争によって住居や職を失い、難民として苦しい生活を強いられる人々が貧困問題に直面する。とくに難民としての生活は職を得る機会が限られるため、さらに貧困が加速しかねない。
アフリカをはじめとした途上国のなかには、かつて植民地だった国もある。そのような国ではいまだ政治機構が未熟な傾向にあり、貧困を改善するほどの経済発展にいたらない。子どもに教育が行き届かない原因にもなる。
地震、洪水、干ばつなどの自然災害は、人命や健康だけではなく経済にも深刻な損失を与える。農地や工業に利用していた土地が被害を受け、経済活動が止まるばかりか、住居を失う人も多い。
最近で記憶に新しいのは、気候変動が原因と言われるパキスタンの洪水だ。国土の3分の1が水没するという甚大な被害が出たこの洪水で、多くの人々が職や住居を失った。また、経済的損失は日本円で約6兆円にものぼると見られている。
貧困はさまざまな問題を引き起こす。人権にかかわる問題も多く、啓発と解決のためのアプローチが必要だ。
貧困が原因で教育を受けられない子どもがいる。前述のとおり、貧困から脱け出すための知識やスキルを得にくい環境がつくり上げられてしまうのだ。
そればかりか生活のために幼い頃から働かなければならず、児童労働の問題も発生する。自らが教育を受ける機会を得なかったため、教育の重要性を理解していない大人も多い。
貧困は医療へのアクセスも遮断しかねない。経済的事情やインフラ整備の不足のため、開発途上国のなかにはマラリアをはじめとした感染症に悩む国も少なくない。多くの感染症は先進国での解決は容易だが、貧困国では医療へのアクセスが難しいのが現状だ。
貧困国では女性だということを理由にした差別が散見される。教育の機会があったとしても、優先されるのは男性という風習を持つ国が多い傾向だ。男児が病気になれば病院へ連れて行っても、女児はその限りではないというケースも。生活を支えるため、性産業に従事せざるを得ない女性もいる。
ジェンダー問題についての啓発や教育も不足しており、政治的にも女性の声は届きにくい構造であることも少なくないため、社会参加が困難になっているのも重大な問題だ。
世界には極度の貧困のなかで生活する人々がいる。とくに開発途上国の一部では深刻な貧困状態が続いている。
国際機構やNGOの積極的な活動は続いているが、問題解決にはいまだ時間と支援が必要だ。世界の貧困を遠い国の問題だと片付けず、募金や啓発運動へのアクションなどに意識を向けてみるのも個人レベルでできる大きな一助ではないだろうか。
※1Global Estimate of Children in Monetary Poverty: An Update|reliefweb
※2 GDP per capita, current prices|INTERNATIONAL MONETARY FUND
※3 開発途上国の分類(4ページ目)|独立行政法人 国際協力機構
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