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SDGsのゴール1に掲げられる貧困問題。世界の現状を知るため、貧困の定義とともに2022年の貧困国ランキングを紹介する。なぜ貧困問題は解決しないのか。世界から貧困がなくならない理由と、現在行われている世界の取り組みに注目してみよう。
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貧困国について知るためには、まず「貧困とは何か?」を具体的に知る必要がある。ひと言で「貧困」と言っても、実はその定義はさまざまである。ここでは、世界貧困ラインを軸に、貧困とはどういった状態なのか具体的に見ていこう。
世界貧困ラインとは、世界銀行が定めている貧困の定義を指す。2015年以降、世界銀行は1日あたり「1.90ドル」という数値を採用。この数値以下で生活する層を、貧困層と定義している。1.90ドルという数値は、購買力平価(PPP)に基づき定められたもので、定期的に見直しが行われている。1.90ドルという数値が採用されたのは、2015年からである。
1.90ドルという数値を使って貧困層の割合を定義した2017年のデータによると、世界の10.74%が貧困層に当てはまっている。地域別にみると、サハラ以南のアフリカの国々の割合が41.18%と、突出して高いことがわかる。(※1)
ではここからは、世界の貧困国に注目してみよう。World Economic Outlook (April 2022)を参照し、1人あたりのGDPに注目した貧困国ランキングを、30位まで紹介する。最新のランキング(2023年)はこちら。
1位 | ブルンジ | 855.613ドル |
2位 | 南スーダン | 927.541ドル |
3位 | 中央アフリカ共和国 | 1,101.771ドル |
4位 | コンゴ民主共和国 | 1,315.937ドル |
5位 | ソマリア | 1,321.959ドル |
6位 | ニジェール | 1,434.720ドル |
7位 | モザンビーク | 1,438.697ドル |
8位 | マラウイ | 1,602.739ドル |
9位 | チャド | 1,704.613ドル |
10位 | マダガスカル | 1,777.651ドル |
11位 | リベリア | 1,779.365ドル |
12位 | シエラレオネ | 1,957.577ドル |
13位 | イエメン | 2,077.661ドル |
14位 | エリトリア | 2,101.426ドル |
15位 | キリバス | 2,148.421ドル |
16位 | ソロモン諸島 | 2,385.153ドル |
17位 | ジンバブエ | 2,523.028ドル |
18位 | マリ | 2,575.407ドル |
19位 | トーゴ | 2,599.138ドル |
20位 | ガンビア | 2,645.763ドル |
21位 | ブルキナファソ | 2,663.385ドル |
22位 | ギニアビサウ | 2,783.968ドル |
23位 | ルワンダ | 2,807.560ドル |
24位 | バヌアツ | 2,850.587ドル |
25位 | ウガンダ | 2,960.521ドル |
26位 | ギニア | 3,029.433ドル |
27位 | レソト | 3,033.984ドル |
28位 | ハイチ | 3,188.932ドル |
29位 | 東ティモール | 3,339.202ドル |
30位 | コモロ | 3,355.314ドル |
※ World Economic Outlook database: April 2022(Gross domestic product per capita, current prices Purchasing power parity; international dollars)
同ランキングにおいて、日本は158位、1人当たりのGDPは48813.674ドルである。貧困国の実態をより詳細に把握するため、参考にしてみてほしい。(※2)
世界が抱える貧困問題の実情は、国によってさまざまである。「貧困=開発途上国」といったイメージもあるが、実際には、先進国にも貧困問題は存在している。先進国と途上国、それぞれが抱える貧困問題の現状に目を向けてみよう。
世界的に見れば、生きるのが困難なほどの「絶対的貧困」は減少傾向にある。一方で、先進国を中心に拡大しているのが、「相対的貧困」に関する問題である。相対的貧困とは、「自分が属する集団のなかで、一定の所得ラインを下回る状態」を指す言葉だ。具体的には、世帯所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分より下の人々を示す。
厚生労働省が発表するデータによると、2018年度の日本の相対的貧困を示す貧困選は年所得127万円である。相対的貧困率は15.4%にのぼり、先進国のなかでも高い水準となっている。(※3)
社会のなかでも「見えづらい」とされる相対的貧困の問題は、子どもの生育に悪影響をおよぼし、教育格差を拡大させる恐れがあるだろう。はっきりとは見えなくても、貧困で苦しむ人々が増えれば、社会情勢は不安定になっていく。だからこそどう対処、解決していくかが、今後の課題と言えるだろう。
開発途上国の中には、貧困状態で非常に厳しい生活を強いられている人々が多い。世界銀行が発表しているデータによると、2000年の世界の貧困率は32.98%。それが2017年には10.74%にまで低下している。この数字だけを見れば、「途上国における貧困問題は改善している」と捉えられるかもしれない。(※4)
しかし実際には、人口が増加すれば母数は増える。割合としては減少していても、実際に厳しい貧困であえぐ人の数は増加している地域は少なくないのだ。貧困状態が続けば、命を守ることさえ難しくなる。実際に、貧困国においては子どもの死亡率が非常に高くなりがちだ。努力しても貧困から抜け出せなければ、内戦や紛争、テロのリスクも高まるだろう。
貧困問題の解決は、SDGsに掲げられた目標のひとつである。2030年までに貧困をなくすことが目標に設定されているが、2022年現在、達成状況は極めて厳しいと言わざるを得ないだろう。ではなぜ世界から貧困問題はなくならないのか。3つの理由を解説する。
貧困国で多く見られるのが、政治家や権力者たちの腐敗と汚職である。自分たちの利益ばかりを追求し、国民の生活を守ろうとしない状況下では、貧困問題を解決する術はない。当たり前のように行われる汚職は、格差拡大の要因のひとつである。力を持たない人々は、さらに厳しい生活を強いられてしまうのだ。
努力して生活基盤を整えたとしても、不安定な社会情勢の中ではいつ何が起きるかわからない。紛争問題や宗教問題を抱える地域においては、継続的な発展が妨げられ、人々の貧困につながっている。
貧困国ではその状況から、子どもたちへの教育や生活に必要な各種インフラが行き届かないケースも多い。日々の生活に追われる貧困国において、子どもたちは貴重な「働き手」である。その結果、子どもたちは教育を受ける機会を失い、貧困問題は次の世代へと受け継がれていく。社会全体の環境が整わない限り、貧困問題からの脱却は難しいだろう。
いま目の前にある貧困問題。世界は決して見てみぬふりをしているわけではない。具体的にどのような取り組みが行われているのか、チェックしてみよう。
SDGsにも掲げられた貧困撲滅。社会的役割を果たそうと、積極的な取り組みを展開する企業は多い。具体的には途上国で事業を展開し、現地の人々の所得を向上させたり、途上国における各種インフラ整備を担ったりするなど、積極的な取り組み姿勢を見せることで、企業価値の向上にもつなげている。
子どもたちの教育は、先進国と途上国の両方が抱えている課題である。貧困状態での教育格差を放置すれば、次世代への連鎖を招く可能性が高いからだ。ICTを活用した教育機会の普及や、途上国における給食の配布など、各国の状況に応じて「子どもたちが学び続けるためのサポート」が展開されている。
とくに途上国における絶対的貧困問題の解決のためには、継続的な支援が求められる。そのためには、経済的な援助が必要不可欠である。国や企業としての支援体制はもちろん、個人単位での援助も可能だ。貧困撲滅のために動いている団体は多い。どのような側面から働きかけたいのか、自身が共感できる団体への援助を検討してみよう。
世界が抱える貧困問題は、さまざまな要因が絡む複雑な問題である。その実情は国によって異なり、日本を含む先進国においても例外ではない。「貧困国」と呼ばれる国の実情を知り、自分にいま何ができるか考えてみよう。
※1 Regional aggregation using 2011 PPP and $1.9/day poverty line|THE WORLD BANK
※2 World Economic Outlook Databas|IMF
※3 Africa Food Prices Are Soaring Amid High Import Reliance(6ページ目)|IMF
※4 Regional aggregation using 2011 PPP and $1.9/day poverty line|THE WORLD BANK
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