「世界経済フォーラム(WEF)」は2019年12月、男女格差を分析した「ジェンダーギャップ指数2020」を発表。日本は153カ国中121位という結果となった。この記事では主要国のランキングと分野別のスコア、そしてジェンダー格差が引き起こす問題点について解説する。
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「ジェンダーギャップ指数」とは、男女格差を測る指標のひとつ。世界経済フォーラム(World Economic Forum/WEF)が2006年から毎年公表している「Global Gender Gap Report」(※1)の中で示される指数だ。
このレポートは、男女格差を解消することを目的に、各国のジェンダーギャップによる格差を数値化してランク付けされている。
2019年12月に発表された「ジェンダー・ギャップ指数2020」によると、日本の総合スコアは0.652で153カ国中121位。前年の110位からランクダウンするという結果になった(※2)。2024年のランキングはこちらから。
順位 | 国名 | スコア |
---|---|---|
1 | アイスランド | 0.877 |
2 | ノルウェー | 0.842 |
3 | フィンランド | 0.832 |
4 | スウェーデン | 0.820 |
5 | ニカラグア | 0.804 |
6 | ニュージーランド | 0.799 |
7 | アイルランド | 0.798 |
8 | スペイン | 0.795 |
9 | ルワンダ | 0.791 |
10 | ドイツ | 0.787 |
15 | フランス | 0.781 |
17 | 南アフリカ | 0.780 |
19 | カナダ | 0.772 |
21 | イギリス | 0.767 |
25 | メキシコ | 0.754 |
30 | アルゼンチン | 0.746 |
44 | オーストラリア | 0.731 |
53 | アメリカ | 0.724 |
76 | イタリア | 0.707 |
81 | ロシア | 0.767 |
85 | インドネシア | 0.700 |
92 | ブラジル | 0.691 |
106 | 中国 | 0.676 |
108 | 韓国 | 0.672 |
112 | インド | 0.668 |
121 | 日本 | 0.652 |
130 | トルコ | 0.635 |
146 | サウジアラビア | 0.599 |
※ 上位国及び主な国の順位
「ジェンダーギャップ指数2020」(※3)のランキングは、1位アイスランド、2位ノルウェー、3位フィンランドと、北欧の国々が上位を占める結果となった。
世界経済フォーラムによると、教育・健康面の男女格差は比較的少ないものの、政治・経済における格差が大きいという。新興国と発展途上国では格差が悪化する傾向にあったが、世界全体で見ると2018年時点で男女格差の完全解消までに108年掛かるとされていた期間が、99.5年に縮小したそうだ。
ジェンダーギャップ指数は、「女性÷男性」の計算によって割り出される。男女が平等であれば「1」、格差が大きければ「0」に近づく。世界経済フォーラムによるレポートは、政治・経済・教育・健康の4つの分野をスコア化し、そこから算出された総合スコアをもとに、各国の男⼥平等のランキングを作成している。
日本の121位というランキング結果はG7では最下位で、ジェンダー・ギャップは先進国最大だ。分野別スコアを見てみると、経済は0.598(115位)、政治は0.049(144位)、教育は0.983(91位)、健康は0.979(40位)だった。
分野 | スコア(順位) | 昨年のスコア(順位) |
---|---|---|
経済 | 0.598(115位) | 0.595(117位) |
政治 | 0.049(144位) | 0.081(125位) |
教育 | 0.983(91位) | 0.994(65位) |
健康 | 0.979(40位) | 0.979(41位) |
欧米を中心とする上位国と比較したとき、女性の政治参加度の低さや女性管理職の少なさ、家庭における女性の負担(無報酬労働)の多さ、伝統的な社会の構造や風習などが男女格差の原因として挙げられるとの分析が多い。
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女性は雇用の機会を与えられないことも多く、世界の労働人口のうち女性の数はわずか3分の1だという。また、子育てとの両立の難しさから、キャリアアップへの道が断たれてしまうことで、潜在的に優秀な人材の損失につながっているといえる。
世界的に見ても男女の賃金格差はいまだ解消されていない。厚生労働省によると、日本国内の2018年における女性の賃金は、入社時点ですでに男性の86%程度の水準にとどまり、勤続年数が長くなるにつれて差が広がっているという。
発展途上国ではいまだ学校に通えない女児がいるのが現状だ。先進国においても、高等教育に進むと格差が生じていることも少なくない。
政治において意思決定場面での女性の参加率の低さは、女性差別に対する不十分な法整備につながりかねない。
女性に対する暴力や虐待も、男女不平等であることが要因のひとつである。セクハラ・モラハラ問題なども無意識的な差別といえる。
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2016年に安倍内閣が成長戦略の柱として施行した「女性活躍推進法」。これは、女性が働きやすい環境づくりを企業に求める法律だ。「採用や昇進についての平等」「仕事と家庭が両立できる環境づくり」「「仕事と家庭の両立について意思決定できる」を基本原則とし、女性が自身の意志によってキャリアを構築していける社会づくりを目指す取り組み。
厚生労働省による、育児を行う男性を推進していく「育MENプロジェクト」。子育ては女性がするものというイメージにより、女性は子どもを生むと退職したり育休や時短勤務によって職場から離れる傾向があるが、男性が育児休暇などを取得することで、男女の仕事と育児の両立を支援する取り組みだ。
2018年に、民主政治の発展に寄与するため「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律」が施行された。女性の議会への参画が進むことで性別による社会的偏見がなくなり、男性も女性も互いの個性や能力を生かし合い、誰もが暮らしやすく、生きやすい社会となることを目指している。
国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)は、17の目標のひとつに「ジェンダー平等」を掲げており、男女格差の解消と女性のエンパワーメントが実現が不可欠である。男女格差は昔からあるものだが、今後積極的に取り組まなければなければ、世界の国々のさらなる発展や、持続可能な環境を整えることは難しい。
日本においては、政治や経済の中核を担う女性リーダーの育成が課題となっていきそうだ。まずは「男性は外で働く」「家事や育児は女性がする」という社会的役割の偏見を取り払い、男女で支え合う環境を構築していきたい。
※1 Mind the 100 Year Gap|WEF
https://www.weforum.org/reports/gender-gap-2020-report-100-years-pay-equality
※2 「共同参画」2020年3・4月号|男女共同参画局
https://www.gender.go.jp/public/kyodosankaku/2019/202003/202003_07.html
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