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SDGsの目標2に「飢餓をゼロに」があるが、世界における飢餓の現状はどうなっているだろう?飢餓の原因として考えられるのは、貧困、紛争、自然災害(干ばつ・洪水)だ。ただ一方で、先進国では大量の食品ロスが生まれる矛盾も生じている。飢餓の具体的な解決策とともに、飢餓について考えてみよう
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国連世界食糧計画(WFP)によると、飢餓とは「身長に対して妥当とされる最低限の体重を維持し、軽度の活動を行うのに必要なエネルギー(カロリー数)を摂取できていない状態」と定義されている。
必要なエネルギーを摂取できない状態が長く続くと、体や脳の働きが鈍くなり、物事に集中したり、アクティブに活動したりできなくなる。また免疫力も下がってしまう。とくに子どもが飢餓になると、病気とたたかう力がなくなり、はしか、下痢のような一般的な病気でも命を落とすきっかけとなってしまうのだ。
2022年に報告された数値によると、世界で飢餓に直面している人は約7億3,500万人。2021年に比べると減少したが、新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われた2020年に激増しており、いまだにコロナ前(2019年)と比べると1億人以上多い。
世界の人口は約80億人なので、およそ9%以上の人が飢餓に直面している計算になる。ただ、WFPによると、実際は世界人口の約29.6%(約24億人)が、食料への安定したアクセスがなく、中等度から重度の食料不安に陥っているという。
飢餓に直面している人口 | |
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2022年 | 7億3500万人 |
2021年 | 8億2800万人 |
2020年 | 7億8200万人 |
2019年 | 6億1300万人 |
飢餓の人口が多い国は、アジア、ラテンアメリカ、カリブ諸国、アフリカなど。とくにアフリカでは長年、飢餓が深刻で、いまでもおよそ5人に1人が飢餓に直面しており、これは世界平均の2倍以上になる。
飢餓は、アジアやアフリカなどの貧しい国の問題というイメージがあるもしれないが、日本でも飢餓の問題が年々深刻になっている。日本の相対的貧困率は15.4%(2018年)と、G7中でワースト2位。人口の6人に1人が相対的貧困とされているのだ。
日本の相対的貧困は、65歳以上の高齢者世帯、単身世帯、一人親世帯に多いことがわかっている。また、2018年の子どもの貧困率(17 歳以下)は13.5%で、7人に1人の子どもが貧困とされている。
では、これほど多くの人が飢餓に見舞われるのはなぜだろう。その原因として考えられるのが、以下の5つだ。またこれ以外にも、さまざまな原因が重なりあっている。
飢餓を引き起こすもっとも大きな原因が、貧困だ。とくに貧困が連鎖してなかなか抜け出せない慢性的貧困が問題となっている。貧しい人々は、十分な資金や土地、水がないため、自分で農業をおこなうことができず、自給自足もできない。また子どもに教育を受けさせることもできず、貧困から脱却しにくい。
また新型コロナウイルスの蔓延によって収入が途絶えたり、食料のコストが高くなったりしていることも考えられる。その結果、食事の量も質も落ち、健康的な生活を送るためには十分ではなくなってしまうのだ。
世界人口が80億人を突破する一方、多くの国や地域で格差がますます浮彫になってきている。例えば、世界人口1位のインドでは、富裕層がいる一方で、貧しい層の人々もいる。このような格差は、飢餓をもたらす原因のひとつだ。
現在、世界では紛争が起きている国や地域がある。そのような場所では、多くの人々が家や土地を捨てて避難しなければならない。自宅に戻ることもできず、帰ることができたとしても、紛争地帯は危険なため、そこで農作業をして食料を確保することは難しいだろう。
気候変動の影響も受け、世界ではさまざまな自然災害が増えている。例えば、干ばつや洪水が切れば、育てていた農作物が被害を受け、大きな損害を被る。おまけに、自宅や仕事を失うことにもなりかねない。自然災害によって生活の基盤を失うことで、それがきっかけとなって飢餓に直面するケースもある。
地球温暖化が進み、気候変動が起きているなか、干ばつや洪水などの自然災害が頻発するようになってきている。気候変動も飢餓を引き起こす原因として、無視できるものではない。
これだけ世界で飢餓に苦しんでいる人が多いと、世界の食料生産が不足しているのではないかと思われるかもしれない。だが、実際は世界中の人々が十分に食べられるだけの食料が生産されている。そこで生まれているのが、主に先進国で出ている食品ロスだ。
食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のこと。賞味期限が切れたものや食べ残しなどが該当する。
国連環境計画(UNEP)によると、世界の食品ロスは9億3,100万tにものぼる。日本では2019年度に出た食品ロスは、約612万t。国民一人当たりが、毎日お茶碗1杯(約132g)の食品を捨てているのとほぼ同じ量になる。
WFPでは、「世界の食料のうち、3分の1は食品ロスで廃棄されている」と指摘。食べられずに捨てられた食料は、世界の20億人分にもなるという。飢餓に直面する人がいる一方で、無駄に食料を捨てている国がある。その矛盾は、飢餓の大きな問題のひとつと言える。
2015年の国連サミットで採択された「SDGs(持続可能な開発目標」にある17の目標のうち、目標2に「飢餓をゼロに」が定められている。飢餓は長い間世界が抱える問題のひとつとなっており、世界規模で飢餓を終わらせることが求められている。
上述したように、世界では地球上の人々が食べるのに十分な食料が生産されている。しかし、貧困、紛争、自然災害といった問題が複雑に絡み合い、食料を得られず飢餓に苦しんでいる人がいるのだ。
世界の飢餓を終わらせるために、どんな解決策があるだろう?
国連が開発したアプリ「ShareTheMeal」は、アプリをタップするだけで世界の子どもたちに食事を寄付することができる。支援したい人と、支援を必要としている人を簡単に結びつける仕組みだ。
紛争などによって避難せざるを得なかった人など、食料と栄養の支援を行っている。アクセスしにくい場所でも、全地形対応車や飛行機からの投下なども。
気象予測にもとづき準備の措置を講じるための保険が支給される。
フードバンクでは、安全に食べられるのに包装の破損、過剰在庫などの理由で、流通できない食品を企業などから寄贈してもらい、それを人々に無償で提供している。食品ロスを減らしながら、飢餓に苦しむ人々を助ける役割がある。世界各地でフードバンクの活動が行われているほか、日本でもフードバンクの活動が少しずつ注目されるようになってきている。
「TABLE FOR TWO」とは、先進国で1食とるごとに開発途上国に1食を贈るプログラム。肥満や生活習慣病の予防にカロリーを抑えた料理や食品を購入すると、1食あたり20円が「TABLE FOR TWO」を通じて、開発途上国の子どもたちの学校給食に使われる。日本では、トヨタ自動車、JALなどの企業で、この取り組みに賛同。社員食堂などで、TABLE FOR TWOの活動が行われている。
10月16日の世界食料デーに行われる、「おにぎりで世界を変える」をテーマにした寄付活動。おにぎりの写真をSNS・特設サイトに投稿すると、この取り組みに賛同した協賛企業が、投稿1枚あたり100円を提供。アフリカやアジアの子どもたちに「給食」という形でプレゼントされる仕組みだ。
日本国際飢餓対策機構(JIFH)では、飢餓のない世界「ハンガーゼロ」の実現に向けてさまざまな活動を行っている。例えば、ハンガーゼロ・サポーターは毎月継続的に募金してもらい、支援する方法だ。また、ドリンク1本につき10円が寄付される「ハンガーゼロ自販機」もある。
多くの国際団体やNPO、企業などが飢餓撲滅のために取り組んでいるが、私たちにもすぐにできるアクションがある。
・飢餓の現状について知る
・食品ロスを出さないように、買いすぎない、注文しすぎない
・フェアトレードの商品を選ぶ
・国連の「ShareTheMeal」アプリをダウンロードして寄付する
・「TABLE FOR TWO」や「おにぎりアクション」に参加する
・飢餓の解決に向けた取り組みを行う団体や企業を応援する
日本でも飢餓の問題に直面している人がいるように、飢餓は遠い国で起きていることではない。現状を知り、自分たちができることから取り組んでみてはどうだろう。
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