食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のこと。毎日お茶碗1杯の食品ロスを生み出している日本は、食品ロス大国だ。この記事では、食品ロスとフードロスの意味の違いや、世界の食品ロスランキング、削減に向けた取り組みや対策、支援の方法を紹介したい。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
知識をもって体験することで地球を変える|ELEMINIST Followersのビーチクリーンレポート
「食品ロス」とは、本来食べられるのに捨てられてしまう食品のこと。賞味期限が切れたものや食べ残しなどを意味する。
また「食品ロス」と混同されやすい言葉に、「フードロス(Food Loss)」や「フードウェイスト(Food Waste)」がある。これらは厳密に意味が異なる。
国連食糧農業機関(FAO)の資料によると、「フードロス」は収穫/屠畜/漁獲後から小売の直前段階に至るまでのフードサプライチェーンの途上で発生するものを指す。加工や製造の段階で出る調理くずや加工残さなども含まれる。(※1)
一方、「フードウェイスト」は小売・消費段階で発生する食品の廃棄を指す。スーパーやコンビニエンスストアの売れ残りもフードウェイストのひとつであるほか、家庭で廃棄される食品もフードウェイストにあたる。もったいないのはもちろん、食料資源の無駄遣いであり環境に与える影響も大きい。
「食品ロス」は、「フードロス」と「フードウェイスト」をあわせたもの指すケースが多い。農林水産省などの省庁でも「食品ロス」という言葉を主に使用している。
Photo by Brooke Cagle on Unsplash
「UNEP Food Waste Index Report 2021」によると、世界の食品ロスは9億3,100万tだった。このうち61%が家庭から排出されており、外食産業は26%、小売業は13%と続いている。
「食品ロス」「フードロス」という言葉から、スーパーやコンビニエンスストア、飲食店などの事業系から排出されるものとイメージする方も多いかもしれない。しかし実際には、家庭で発生するロスが非常に多い。
次に日本の状況について見てみよう。日本で2019年度に生まれた食品ロスは、年間約612万t。国民一人当たりに換算すると、毎日お茶碗1杯(約132g)の食品を捨てていることと同じ。これは年間で約48kgにのぼる。一人が1年で食べる米の量に近い。とてもショッキングな数字だ。
このうち、家庭から出るフードロスが半数を占める。2017年度は284万tで、過去5年間を振り返ってみてもあまり増減していない。世界と同じく、家庭からの食品ロスが非常に多いことがわかる。
一方、食品製造業といった事業系のフードロスは年間約328万t。内訳を見ると、食品製造業と外食産業で約75%だ。
国は、2030年度までにフードロスを2020年の半分にするという目標を「食品リサイクル法」で定めている。食品リサイクル法では、フードロスの発生抑制という考え方をもとに、賞味期限の延長や表記の変更などの新しい取組みが進められている。
世界各国の食品ロス推計量をもとにした「食品ロスランキング」を紹介しよう。ランキング1位は中国、2位はインド、3位はナイジェリアだ。日本は14位だが、人口を考えると食品ロスは非常に多い。日本の一人あたりの年間廃棄量は、ランキング1位の中国と同等だという。
詳しいランキング結果や、世界・日本の取り組みについては下記記事を参考にしてほしい。
食品ロスが問題視されるようになったきっかけの一つに、2009年の大手コンビニチェーンの見切り販売の取扱いに関する事件がある。
コンビニチェーン本部がオーナーに対し、賞味期限間近の商品を安く販売することを制限していたが、公正取引委員会がこれを不当と判断した。 2000年前後には、フードバンクが相次いで発足。フードバンクとは、さまざまな理由で廃棄される食品を企業から回収し、必要としている団体や家庭などに無償で提供する活動だ。
食べられる食品が廃棄される理由は、包装の印字ミスや過剰在庫など品質に関係ないものが多い。 世界では2011年、FAO(国連食料農業機関)が世界の食品ロスと食品廃棄物に関するレポートを発表し、食品ロスやフードロスというキーワードが広く知られるようになった。
2015年の国連サミットで採択されたSDGs(持続可能な開発目標)でも、「食品ロス」問題に取り組む内容が盛り込まれている。
目標12「つくる責任 つかう責任」では、世界人口を賄うのに十分な量の食料が世界ではつくられているのに関わらず、約3分の1は廃棄され深刻な飢餓が起きている。そのような問題を解決するためにも、必要な分だけをつくるシステムと私たちの生活習慣の見直しも必要だ。このようなSDGsもきっかけとなり、国内でも食品ロス・フードロスに対する問題意識が高まっている。
Photo by Alyson McPhee on Unsplash
家庭での発生原因は食べ残し、買いすぎによる直接廃棄、調理時に野菜の皮をむきすぎるといった過剰除去の3つとされている。食品別に食品ロスの発生原因を見てみると、野菜では過剰除去がもっとも多く、魚介類では食べ残し。意外なことに、果物では直接廃棄が多い。
食品製造業や卸業では、いわゆる「3分の1ルール」という商習慣の影響が大きい。「3分の1ルール」とは、賞味期間の3分の1の期限内で小売店舗に納品するという慣例だ。
この3分の1の期限内に納品できなければ、まだ食べられるにも関わらず廃棄される可能性が高い。 小売業では過剰発注や消費者の過度な鮮度志向、賞味期限の理解不足が原因と考えられている。
外食産業では食べ残しが主な原因だ。 昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19) により、外食店舗の営業が減ったことで魚介類が行き場を失っている。観光業の低迷などことから、お土産用のお菓子も過剰在庫となりフードロスにつながっている。
2019年10月に施行された「食品ロスの削減の推進に関する法律(食品ロス削減推進法)」は、企業や消費者、地方自治体が協力してフードロスを減らすことを目的としたもの。社会全体の国民運動として取り組むべき課題と位置付けている。
消費者庁が主管し、企業だけでなく消費者をターゲットとしているところがポイントだ。フードロスに関する知識を広めるため、毎年10月が「食品ロス削減月間」と定められた。フードロス削減に功績のあった人を表彰したり、フードバンクや食品関連事業者の支援を行ったりしている。
農林水産省による「食品リサイクル法」は、2000年にスタート。フードロスの発生を抑制するだけでなく、飼料など別の用途にリサイクルすることを目指している。
対象は主に食品関連事業者だ。 食品製造業、卸業などの業種ごとに、リサイクル実施目標がそれぞれ設定されている。2024年までに、食品製造業は95%、食品卸売業は75%、食品小売業は60%、外食産業は50%のリサイクル率を達成するよう求めている。
Photo by Annie Spratt on Unsplash
家庭での食品ロスを減らすには、買い物、料理、食事の3つの場面でのちょっとした気配りが大切だ。
コツは、買い物では「必要な分だけ買う」、料理の際は「食べきれる量をつくる」、食事のときには「おいしく食べきる」こと。
買い物の前には、冷蔵庫の中身を写真に撮ったりメモに書き出したりして、買いすぎを防ごう。すぐ使う食品はスーパーの陳列棚の手前から取ることも有効だ。
食材を適切に保存し上手に使い切ることも大切。食品に記載してある保存方法に従うだけでなく、野菜は下処理をして冷凍するなど長く保存できるように工夫する。もし料理が残ったら、アレンジして別のメニューにつくり変えるリメイクレシピも活用したい。
おいしく食べきれる期限である「賞味期限」と、過ぎたら食べないほうがよい「消費期限」の違いを理解するなど、知識を深めることも必要だ。缶詰やお菓子など、食べきれず賞味期限に余裕のある食品であれば、フードバンクに寄贈することも検討してみよう。
「KURADASHI(クラダシ)」は、社会貢献型フードシェアリングプラットフォームとして2015年から活動している。賛同メーカーなどから協賛価格で買い取った商品を、最大97%OFFで消費者へ販売する。売り上げの一部は、社会貢献団体へと寄付される仕組みだ。
バリュードライバーズ株式会社が運営する「tabeloop(たべるーぷ)」は、いわゆる産地ロス削減にも取り組んでいる。豊漁や豊作で売り先のなくなった農水産物を、外食チェーンや食堂、地域のお祭りなどに向けて販売するプラットフォームだ。売り上げ手数料の一部が、FAOなど世界飢餓の撲滅のための活動に寄附される。
株式会社ビューティフルスマイルの「ロスゼロ」は、食品製造や流通の段階で発生するフードロスを、ストーリーとともに消費者に届けている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大によるフードロスにも早くから取組み、2020年1月から緊急対応を開始している。
食品ロスの半分は、私たちの家庭から生まれている。買いすぎやつくりすぎは、毎日のちょっとした心がけで見直すことができる。食品は廃棄する際にも多くのコストが発生することを忘れずにいたい。
「余ったら捨てればいい」のではなく、食品が食卓にのぼるまでのストーリーに想いを馳せてみよう。
参考
※1 世界食料農業白書 2019年報告|FAO
ELEMINIST Recommends