Photo by yannis-h on unsplash
平和で豊かな暮らしに、質の高い教育は不可欠だ。世界や日本の教育問題については、差別や格差、不公平を撤廃するための支援が行われているが、貧困や教育環境が整っていないなどの理由で、学校にさえ通えていない子どもが数多くいる。日本と世界の教育格差や、解決策に向けた取り組みを紹介する。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
Photo by nikhita-s on unsplash
教育上で発生する問題、いわゆる「教育問題」は、世界的な課題のひとつだ。
文科省によると、日本の教育の目的は、一人ひとりの国民の人格形成と、国家・社会の形成者の育成の2点であるとされている(※1)。
本人が望む、望まないに関係なく、教育を受ける機会が等しく提供されない状況を「教育格差」と呼ぶ。世界を見渡すと、教育の質だけでなく、そもそも教育へのアクセスが整っていない国や地域が多数あり、貧困や格差のレベルなども異なる。
世界には、教育を受けられない子どもたちが大勢いるが、その半数以上がアフリカのサハラ砂漠より南の地域で暮らしている。
公益財団法人日本ユニセフ協会によると、ジェンダーの区別なくすべての子どもたちに質の高い教育を提供すること、あらゆる種類の差別と不公平を撤廃することに重点を置いて教育支援をしているが、世界中の子どもたちに教育を届けるためには、いぜん多くの課題があるという。
貧しい家庭は、食べていくことが精いっぱいで、教材費を払うことが難しい。とくに女の子は、学校に行かせてもらえる優先順位が男の子よりも低く、家事労働に従事させられる場合が多い。
また、地域の習慣や文化により、強制結婚や出産を18歳未満で経験する女の子(児童婚)は、学校に通うことができないばかりか、望まない妊娠、妻や母親としてのみ生きればよいという差別や偏見を受けることになってしまう。
整備されないままの危険な通学路、不衛生で性別のないトイレ、教員の不足など、子どもたちにとって学校が安心できる場所には、ほど遠い環境がある。
「読み・書き・計算」といった、基礎教育を受けられない状態にある人々も多くいる。
Photo by stephanie-hau on unsplash
先進国と言われる日本であっても、いじめ、引きこもり、詰込み教育、学力低下、家庭の貧困による教育格差など、教育に関して多くの問題を抱えている。
これらの問題に対しては、文部科学省をはじめ各省庁がさまざまな取り組みを行っている(※2)。
例えば、教員不足に対しては、教員の採用枠の拡大や、教員の働き方改革などを推進。子どもの学力低下に対しては、学習指導要領の改訂や、小中学校の授業時間数の見直しなどが行われている。
貧困は、決して途上国で暮らす貧しい人たちだけの問題ではない。先進国においても貧富の差は大きくなる一方だ。
国や地域にどれくらいの貧困層がいるのかを見るための指標である「相対的貧困率」(※3)。厚生労働省によると、相対的貧困率とは、一定の基準を下回る等価可処分所得(収入から税金・社会保険料等を除いたいわゆる手取り収入)しか得ていない者の割合を指す。
「2019年国民生活基礎調査の概況」によると、2018年の日本の相対的貧困率は15.7%で、日本人口の約6人に1人が相対的貧困の状態にあることがわかっている。
Photo by markus-spiske on unsplash
人格形成や成長に欠かせない学習機会や学ぶ意欲を奪われてしまう子どもたちは、将来希望する進学先を諦めたり、低収入の職業に就かざるを得なかったりと、人生の選択が圧倒的に狭まってしまう。
教育問題の背景には、以下のような根深い原因がある。
学校が近くにない、先生の数が少ない、先生の質が低いなど、そもそも教育環境が整っていない場所で暮らす子どもたちには、何の選択肢も生まれない。
家計を助けるために働かなくてはいけないという理由で、学校に通い始めても、最終学年まで通えていない子どもも大勢いる。親の教育への理解や関心が低く、学校に行かせてくれないという場合もあるという。
世界中の紛争地域に暮らす約2,700万人の子どもたちが、学校に通えていない。戦時下では、子どもたちは教育を受ける権利すら奪われてしまっている。
Photo by annie-spratt on unsplash
SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」は、あらゆる人たちに質の高い教育を受けられる環境を用意し、生涯にわたって学びを深めてもらうことで、持続可能な社会の実現につなげることを狙いとした目標。
具体的には、小中高等教育の普及、職業訓練や大学を含めた高等教育の普及、教員のスキル向上、学校施設の整備などが挙げられる。
2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、適切かつ効果的な学習成果をもたらす、無償かつ公正で質の高い初等教育及び中等教育を修了できるようにする。
2030年までに、すべての子どもが男女の区別なく、質の高い乳幼児の発達・ケア及び就学前教育にアクセスすることにより、初等教育を受ける準備が整うようにする。
2030年までに、教育におけるジェンダー格差を無くし、障がい者、先住民及び脆弱な立場にある子どもなど、脆弱層があらゆるレベルの教育や職業訓練に平等にアクセスできるようにする。
Photo by aaron-burden on unsplash
教育格差を解消するためには、まず貧困を解消せねばならないことは明白だ。
教育問題対策のひとつとして、寄付やボランティアなどのアクションのほか、世界では、国連機関、政府、企業、NGOなどの市民団体が、さまざまな取り組みを行っている。
例えば、校舎や教室の建設や修繕、教科書や学用品、奨学金の支給、教員のスキル向上のためのトレーニングの実施などが挙げられる。
世界中の子どもたちに教育を届けるための支援を行うユニセフ。学校に通えない子どもたちに対して、学習支援や居場所提供、食事提供、オンライン学習支援を行っている。
認定NPO法人 e-Educationは、途上国における子どもの教育機会の格差をなくすため、映像授業をはじめとしたICTの力を駆使。途上国の都心部と農村部における教育格差を壊しし、若者に希望の光をともす活動を行っている環境支援団体。
毎月1,000円の寄付を1年間継続すると、映像授業(タブレット端末)を高校生2人に無償で渡すことができるという。
NPO法人 Learning for Allは、学校に通えない子どもたちや、学習支援が必要な子どもたちに対して、オンラインでの個別指導や学習コンテンツの提供を行っている団体。
また、教育に関心のある大学生や社会人をボランティアとして募集し、教育の現場に参加させることで、教育の力を広げることを目指している。
さまざまな理由で生きづらさを抱える子どもたちに学習支援、居場所提供、食事提供などを行っている。月1,000円の寄付で、貧困に苦しむ子どもたちの心と学習面をサポートできるという。
教育問題には、子ども自身の問題や学校教育制度の問題、ジェンダーや貧富の差、環境基盤の問題があることをお伝えした。こうした背景から生まれる教育格差を解消するため、私たちにできることは何だろうか。
多額の寄付やボランティア活動は、誰にでもできることではないが、近所の子どもたちやクラスメイトに関心を払ったり、「子ども食堂」のような憩いの場所を地域レベルで広め支えることは、個人レベルで始められる支援の一歩といえよう。
参考
※1 文部科学省|2. 学習指導要領等が目指す姿
※2 文部科学省|1 教育課程をめぐる現状と課題
外務省|「平和と成長のための学びの戦略」の策定
※3 厚生労働省|国民生活基礎調査(貧困率) よくあるご質問
厚生労働省|「2019年国民生活基礎調査の概況」
ELEMINIST Recommends