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ブルーアンモニアとは、製造の過程で排出するCO2を回収・貯留した、CO2フリーのアンモニアだ。石炭火力発電などの代替燃料として期待されている。グリーンアンモニアとの違いと、ブルーアンモニアの活用事例について紹介する。
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「ブルーアンモニア」とは、クリーンなエネルギー資源として期待されている新たな燃料のこと。石油、石炭などの化石燃料は、燃焼させると温室効果ガスを排出する。それに対して、アンモニアは燃焼時に温室効果ガスを排出しないことから、代替燃料として注目されている。だが、天然ガスを原料にアンモニアを製造する際、CO2が排出されるため、環境への影響が指摘されている。
そこで、天然ガスからアンモニアを製造するときに排出されるCO2を分離、回収して、地下に貯留。こうしてできたCO2フリーのアンモニアを「ブルーアンモニア」という。
ブルーアンモニアと似た言葉に「グリーンアンモニア」と「グレーアンモニア」もある。
グリーンアンモニアは、炭素を持たないアンモニア。再生可能エネルギーでつくられた電力によって水素を製造した後、水素と窒素を合成してつくり出す。
アンモニアは燃焼してもCO2を排出しないが、天然ガスから製造する過程でCO2を排出する。このことをグレーアンモニアとよぶ。
ブルーアンモニアは代替燃料として注目されている。これまでは石油、石炭などの化石燃料が多く使われてきたが、これらは燃焼によってCO2を排出するため、地球環境を考えるとCO2を排出しないクリーンエネルギーが求められている。そのようななか、CO2フリーのブルーアンモニアは心強い存在のひとつだ。
2050年のカーボンニュートラル宣言をうけて、2021年に策定された第6次エネルギー計画では、2030年度において水素・アンモニア発電が1%と見込まれている。このように、アンモニア発電は新しいエネルギー源として期待されている。
アンモニア燃料を燃焼して、そこで発生する熱エネルギーによってタービンを回転させ電気に変えるのが「アンモニア発電」。アンモニア発電は水素発電よりも発電コストが低いこともメリットのひとつだ。
水素は次世代エネルギーのひとつだが、大量輸送が難しいという欠点がある。そこで注目されるのがアンモニアの存在。アンモニアは水素と窒素でできている成分で、すでに安全に運搬される技術が確立されている。そこで運搬が難しい水素をアンモニアのかたちに変換して輸送し、利用する現場で水素に戻すという方法が研究されている。
三井物産はオーストラリアにブルーアンモニア製造プラントを建設。製造したブルーアンモニアを日本に輸出する計画を立ている。また2023年には、サウジアラビアの鉱山会社、サウジアラビアン・マイニングと共同宣言合意に署名。ブルーアンモニアのグローバルサプライチェーンの構築を目指している。
三井物産と同様に、伊藤忠商事もアブダビ国営石油会社が販売を開始したブルーアンモニアを日本に輸入する取り組みを開始している。
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)では、「燃料アンモニア利用・生産技術開発/ブルーアンモニア製造に係る技術開発」事業で、低炭素化した燃料アンモニアの製造技術の開発をスタートしている。
日本最大の石炭火力発電企業であるJERAは、重工大手のIHIと連携して、石炭火力にアンモニアを混ぜて燃焼する実証実験を行っている。石炭にアンモニアを混ぜることで、CO2排出量を抑える目的だ。
アンモニアを次世代の燃料として利用するためには、アンモニアの安定的な確保が必要だ。例えば、現在の世界のアンモニア輸出入量は約2000万トン。これは、日本国内の石炭火力で、20%のアンモニアを混ぜて燃焼する場合に必要になる量と同等だ。つまり、今後アンモニアを活用するにはその供給が現状では足りていないことになる。
代替燃料としてのグリーンアンモニアの活用はまだ始まったばかりで、課題もある。だが、気候変動や地球温暖化が進むなか、温室効果ガスを排出しないエネルギーの開発は喫緊の課題となる。そのようななか、日本政府をはじめ、日本の大手企業もグリーンアンモニアの供給や開発を始めている。グリーンアンモニアの活用には、今後さらに期待が高まっていくことだろう。
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