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気候変動とは、気候が変化し、それによりさまざまな影響が起こること。このまま地球温暖化が進行し、気候が変動すれば、私たちの生活は大きく変わる。地球でいままで通りの生活を維持することは、難しくなるだろう。本記事では、気候変動の意味や原因、私たちへの影響や対策をわかりやすく解説する。
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気候変動とは、気温や気象パターンが数十年単位の長期にわたって変化することを指す。学校でのプール中止のニュースを巡り、「平成は寒くて中止」「令和は暑くて中止」といった対比が話題となったが、これはまさに気候変動が関係している。記録的猛暑によって、気候変動を実感している人は多いだろう。
環境省によると、気候変動とは「地球の大気の組成を変化させる人間活動に直接又は間接に起因する気候の変化であって、比較可能な期間において観測される気候の自然な変動に対して追加的に生ずるもの」だと定義されている。(※1)
気候変動の要因はさまざまだ。以下で、主なものを紹介する。
気候変動は、自然的要因によって生じることがある。自然的要因とは、太陽活動の変化や地球の自転軸の変化、大規模な火山噴火、海洋の変動など。太陽から受け取る熱量が変わったり、大気中の微粒子が増加したりなどに起因し、温暖化や寒冷化が起きる。これは、長い歴史のなかでも繰り返されてきたことだ。
1800年代以降の気候変動は、人為的要因が大きいと考えられている。地球温暖化が深刻なのは周知の事実だが、主な原因は温室効果ガスの排出や森林破壊をはじめとする私たちの活動だ。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の第6次評価報告書では、人間活動が地球温暖化を引き起こしてきたことに「疑う余地がない」と断定されている。また、人為的な気候変動が世界中のすべての地域において、気象と気候の極端現象に影響をおよぼしている旨が言及された。(※2)
気候変動と混同されがちな言葉に「地球温暖化」がある。地球温暖化は、地球の温度が上昇する現象だ。一方で、気候変動は、温度だけでなく、降水量などを含めた大気の状態が変化することを指す。地球温暖化は、気候変動のなかの一現象と捉えるとわかりやすい。
また、地球温暖化は気候変動がもたらす問題のはじまりに過ぎないという見方もある。地球はあらゆるものがつながって成り立っているため、一変化があらゆる変化につながるという考え方だ。(※3)
気象庁によると、異常気象とは、過去に経験した現象から大きく外れた現象を指す。定義としては、「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節)において30年に1回以下で発生する現象」。(※4)稀に見る、ピンポイントの気温や降水量のことを指している。
一方で、気候変動は、長い期間における大気の状態の変化を指す。
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地球の気候が大きく変わってしまうことで、地球上での暮らしにもさまざまな影響がおよぶ。昨今、この影響が急速に拡大している点が問題視されている。以下では、気候変動がもたらす影響や問題について紹介する。
気候のパターンが大きく変化することで、自然界のバランスが崩れ、異常気象や自然災害の増加を招きやすくなる。
地球温暖化が進むにつれて、あらゆる陸地で猛暑日や熱波が増加している。山火事の発生率にも大きく関わっている。さらに、気温上昇によって空気中の水分が増加し、降水量が増加。それに伴い洪水が増える。海水の温度が上昇すると、暴風雨やハリケーンは強くなる。
地球温暖化によって、気温だけでなく海水の温度も上昇している。水が膨張し、海水は増加。氷河や氷床が溶けることにより、さらに海面は上昇する。
海面が上昇すると、海抜が低い国や島国の多くの人の生活が危ぶまれる。高潮や浸水、産業構造の崩壊などにより、生活が立ち行かなくなるだろう。
気候変動によって、陸や海の多くの生物の生息域が失われ、生態系が崩壊している。気候変動の影響を受けている絶滅危惧種は、2000年時点で15種だったが、2020年には4,000種超に。
現在、さまざまな原因により、過去にない速度で生物が絶滅している。今後数十年で、100万種の生物が絶滅する可能性がある。(※5)
気候変動が食料生産高に大きな影響をおよぼしている。気温の上昇や自然災害の増加が、農業・漁業・牧畜などに大きく関わることは想像に難くない。収穫量の減少や疾病の発生などの問題は、すでに世界のさまざまな地域で起きている。食料供給に影響がおよび、飢餓や栄養不足の世界的な増加につながる。
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気候変動の要因には、自然的要因と人為的要因があるが、現在問題視されているのは、後者である。私たち人間の活動によって、気候変動が起きているという認識だ。
気候変動には温室効果ガスが大きく関係しているが、具体的には何が原因になっているのだろうか。以下で、主要な原因を3つ紹介する。
地球の温度は、温室効果ガスが一定量あることによって保たれている。しかし、温室効果ガスの濃度が上がりすぎることにより、太陽の熱が閉じ込められてしまう。大気が暖められ、気温が上がり、気候が変動してしまうのだ。(※6)
温室効果ガスの排出の大きな原因は、化石燃料の燃焼。化石燃料の燃焼による温室効果ガスの排出は、世界の温室効果ガス排出量の75%超を占めるとされている。(※7)
森林伐採は、温室効果ガスの排出につながっている。森林に貯蔵されていた炭素が放出されるのに加え、CO2の吸収源が減少してしまう。農地開発や過剰伐採、森林火災などによる森林の喪失は、さまざまな問題をはらんでいるが、地球温暖化との関わりも深い。
私たちが手に取るあらゆる製品の生産過程において、多くのエネルギーが使われている。プラスチックをはじめ、素材の生産に化石燃料が使われることもあり、製造における温室効果ガスの排出は深刻だ。
製品をつくればつくるほど、温室効果ガスを排出している。大量に生産し、大量に消費するのが当たり前な現代のスタイルは、地球に大きなダメージを与えているのだ。
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気候変動を抑制するのは簡単ではないが、何もしなければ、私たちは命の危機に直面することになる。具体的な対策をもって、着実に取り組みを進めていく必要がある。
以下では、世界や政府が推進する気候変動対策や、要因に紐づく取り組みを紹介する。
2015年にパリで開催された気候変動枠組条約締約国会議の21回目、すなわちCOP21では、パリ協定が採択された。パリ協定とは、2020年以降の温暖化対策における国際的な枠組みだ。京都議定書に代わる新たな枠組みであり、地球温暖化対策に関する世界各国の指針というべき存在である。
パリ協定では世界共通の目標として、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して2度以内に保つ「2度目標」と、1.5度以内に抑える「1.5度努力目標」が掲げられた。また、各国の温室効果ガス削減目標を可視化することが求められている。
いま、各国が取り組みを推進するSDGsだが、目標13には「気候変動に具体的な対策を」が掲げられている。
すべての国が気候変動対策を政策に取り入れること、気候変動抑制のために啓発を行うことなどが主な内容だ。アクションとしては、開発途上国のニーズに応えるために「緑の気候基金」を始動すること、効果的な計画策定や管理に必要な能力を向上させるための仕組みをつくることなどが記されている。(※8)
日本では、温室効果ガスの排出を削減する「緩和」、気候変動の影響による被害を軽減するための「適応」の両輪で取り組みを進めている。
具体的な排出量削減目標は次の通り。中期的目標として、2030年までに2013年度比で温室効果ガスの排出量を46%削減、長期的目標では、2050年までにネットゼロを掲げている。(※9)
温室効果ガスの削減に紐づく取り組みとしては、再生可能エネルギーの導入拡大を推進している。2023年2月には、「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定。再エネ比率36〜38%を確実に達成し、次世代再生可能エネルギー技術を社会に導入していくためのロードマップが策定された。
公共施設や空港などへの太陽光パネルの設置、洋上風力導入施策の検討、水素・アンモニア活用に向けた支援などを進めている。(※10)
デコ活とは、「脱炭素につながる新しい豊かな暮らしを創る国民運動」のこと。2050年カーボンニュートラルや、2030年の削減目標を実現するために、2022年10月から環境省が推進している。
脱炭素につながる暮らしをわかりやすく提示することで、国民の行動変容やライフスタイルの転換を後押しする。国や自治体のほか、企業や団体などと連携しながら、さまざまな提案を行っている。(※11)
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気候変動の抑制には、世界中のすべての人々の貢献が欠かせない。ここからは、私たちが個人でできるアクションを紹介する。
日常生活で使用する家電を見直すことで、CO2を削減できる。例えば、エネルギー消費量を抑えた省エネ家電の活用がそのひとつ。ほか、冷暖房の温度を見直す、お湯の使用を減らす、電気をこまめに消すなど、小さなアクションでもエネルギーを抑えられる。
自宅のエネルギーを、再生エネルギー由来のものに変えるのも、気候変動に立ち向かうためのアクションだ。大掛かりに聞こえるかもしれないが、簡単な手続きのみで切り替えられるプランが増えてきている。電力会社に確認してみよう。
自家用車を使用すると、ガソリンや軽油の燃焼により、温室効果ガスが発生する。公共交通機関を利用することで、個々の排出を削減できる。バスや電車で移動できる場合は、積極的に検討しよう。近距離移動の場合は、ぜひ自転車や徒歩を組み込んでみて。
食品の廃棄は、食材の生産や加工、輸送を経て手元に届くまでに使われた資源やエネルギーを無駄にするのと同じ。食べられるだけの量を購入し、捨てずに済むよう計画的に使用することが大切だ。廃棄時にも温室効果ガスが発生する。
肉や乳製品を生産する畜産業は、環境負荷が高いといわれている。牛のゲップからは、温室効果ガスであるメタンが発生する。土壌汚染や水質汚染などの問題も懸念されている。
対して、植物性食品の生産に由来する温室効果ガスの排出は少ない傾向にある。環境への影響を考えたい場合は、野菜や果物などの摂取比率を上げてみてもいいかもしれない。
いま持っているものを大事に使うだけでも、気候変動対策になる。製品の生産には多くの資源とエネルギーが必要。本当に必要なものだけを買い、長く愛用するスタイルにシフトしていきたいものだ。
気候変動とは、文字通り、気候が変動すること。気温や降水量が長期的に変化することで、これまで保たれていた自然界のバランスが崩れかけている。異常気象や自然災害の頻発によって、実感している人も多いだろう。
気候変動がもたらす影響は、いま目の前で起きている現象だけではない。さらに深刻な被害や社会問題とも深くつながっている。気候変動にストップをかけられるのは、いましかない。自分にできることを考えてみてほしい。
※1 気候変動に関する国際連合枠組条約
※2IPCC 第6次評価報告書(AR6)統合報告書(SYR)の概要 P3|環境省 地球環境局
※3 気候変動とは何か?|国際連合広報センター
※4 気候・異常気象について|気象庁
※5 国連報告書が世界に「警告」:100万種の生物が絶滅の危機に|国際連合広報センター
※6 気候変動と適応|気候変動適応情報プラットフォーム
※7 気候変動の原因|国際連合広報センター
※8 13.気候変動に具体的な対策を|SDGs CLUB
※9 国内外の最近の動向について(報告) P3|環境省 地球環境局
※10 今後の再生可能エネルギー政策について P1〜5|資源エネルギー庁
※11 デコ活|環境省
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