異常気象の原因とは? 対策や事例、もたらす影響について解説

大雨が降っている異常気象のイメージ

Photo by Guillaume Bourdages

地球温暖化や人間活動の影響など、さまざまな原因が考えられている、異常気象。本記事では、異常気象がもたらす影響や世界が講じている対策、2023年〜2024年に発生した事例などを紹介していく。

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2024.08.20
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異常気象とは

洪水の中を歩いている人々のイメージ

Photo by Jonathan Ford on Unsplash

日本だけでなく、世界中で深刻な問題となっている異常気象。大雨や洪水、山火事などさまざまな現象が起きているが、なぜこのような異常気象が発生してしまうのだろうか。

本記事では、異常気象の定義や原因を解説しながら、近年の事例を挙げて地球環境や生態系におよぼす影響や対策について紹介していく。

異常気象の定義とは

気象庁の定義よると異常気象とは、「過去に経験した現象から大きく外れた現象のこと」を指す。具体的には、大雨や暴風等の激しい数時間の気象から、数か月も続く干ばつ、極端な冷夏・暖冬まで含むほか、気象災害も異常気象に含む場合があるそうだ。

過去に起きたことがないような気象を指しているわけではなく、「ある場所(地域)・ある時期(週、月、季節)において30年に1回以下で発生する現象」を異常気象としており、昔からごく稀に発生していた気象を指している(※1)。

異常気象によって引き起こされるもの

異常気象によって引き起こされるものには、熱波や寒波、大雨、干ばつ、洪水、ハリケーンなどがある。これらの現象の多くは、気温や気象パターンの長期的な変化による「気候変動」によって起こるとされており、その要因の1つには「地球温暖化」が大きく影響しているといわれている(※2)。

異常気象が起こる原因とは

ここからは、異常気象が起こる原因について具体的に解説していこう。

自然の要因

異常気象が起こる理由としてさまざまな要因が考えられているが、その1つがエルニーニョ現象やラニーニャ現象などの気候変動現象や、偏西風が通常とことなる位置を流れる状態が続いたこと、熱帯地域の対流活動の影響が遠い場所に伝わったことなど、自然のゆらぎによるものだ。

エルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より高くなり、その状態が1年程度続く現象のこと。逆に、同じ海域で海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象と呼ばれており、それぞれ数年おきに発生している(※3)。

人間活動の影響

人間活動によって二酸化炭素を排出しているイメージ

Photo by Chris LeBoutillier on Unsplash

異常気象が起こる原因には、人間活動も影響している。なぜなら、異常気象の原因のひとつである地球温暖化は、人間活動の影響によるものだからだ。

それまで温暖化の原因についてはさまざまな説があったが、2021年、世界の科学者でつくる国連のIPCCが8年ぶりに公表した報告書で、「人間の影響が大気・海洋および陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない」と断言した(※4)。

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地球温暖化と異常気象は関係ある?

地球温暖化のイメージ

Photo by Wesley Tingey on Unsplash

近年の猛暑や豪雨などの異常気象は、温室効果ガス排出量の増加に伴う地球温暖化が原因のひとつと考えられている。

地球の平均気温が上昇すると、海や地面から蒸発する水分が増加するため、気温が1℃上がると水蒸気の量が約7%増えるといわれている。

水蒸気が増えると雨量も増加するため、大雨や豪雨が発生しやすくなる。それによって、土砂災害や洪水などにもつながってしまうのだ。

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異常気象がもらたす影響

異常気象は、私たちの生活や地球環境にどのような影響をもたらすのだろうか。

自然災害の増加

異常気象の発生が増えると、自然災害が起きる可能性も高くなってしまう。熱波や寒波、大雨、干ばつ、ハリケーンなど、異常気象自体が自然災害となるケースも多いが、大雨による洪水や土砂崩れ、干ばつによって乾燥が進んだことによる山火事など、異常気象が広く影響をおよぼし、さらなる自然災害を発生させる。

生態系への影響

寝ているコアラのイメージ

Photo by Jordan Whitt on Unsplash

異常気象による自然環境の変化は、多くの生物にも影響をおよぼしている。近年とくに深刻化しているのが、オーストラリアを襲う森林火災だ。これらは干ばつがもたらしたものと考えられており、ユーカリの森を枯死させると同時に、森に住む多くのコアラが命を落としている。

作物の不作や食糧の枯渇

稲のイメージ

Photo by Paz Arando on Unsplash

日本だけ見ても、異常気象に伴う豪雨や暖冬、干ばつなどの自然災害の頻発により、作物の栽培、収穫に影響が出ている。世界でも同様、またはそれ以上の被害が出ており、食料の枯渇も深刻な問題となっている。

命の危機や健康被害

異常気象は、私たちの健康を脅かすほか、命に関わる重大な被害をもたらすこともある。日本でも、近年は夏になると猛暑による熱中症で救急搬送される人が後をたたない。さらに、頻発している豪雨による洪水や土砂崩れで命を落とす被害も多数出ている。

経済の損失

異常気象は、経済にも影響をもたらしている。世界的な保険市場ロイズ・オブ・ロンドン(ロイズ保険組合)は、2023年、気候変動に伴う異常気象により農産物の不作や食品・飲料不足が増加すれば、今後5年で世界的に5兆ドルの経済損失が生じる可能性があるとの試算を示した(※5)。

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異常気象の発生状況と近年の傾向

ここからは、異常気象の発生状況と近年の傾向について見ていこう。

世界の異常気象の発生状況

世界気象機関(WMO)によると、暴風雨や洪水、干ばつといった異常気象による災害の発生件数は、1970年から2019年の50年間で5倍近くに増加しているそうだ(※6)。

また、気象庁のデータによると、2023年は世界各地で年平均気温が平年より高く、東アジア東部、中国南部からオーストラリア北東部、インド南部、中央アジア南部、アラビア半島など多くの地域で異常高温となる月が多かった(※7)。

日本の異常気象の発生状況

傘の内側から外を見ているイメージ

Photo by freddie marriage on Unsplash

日本においても、近年、異常気象は激甚化・頻発化している。気象庁によれば、1日の降水量が200ミリ以上の大雨を観測した日数は、1901年以降の統計期間において増加傾向にあり、その最初の30年と直近の30年とを比較すると、約1.7倍に増加しているそうだ(※全国51の観測地点)。

また、1時間降水量50ミリ以上の短時間強雨の発生頻度も、1976年以降の統計期間において増加傾向にあり、その最初の10年と直近の10年を比較すると、約1.4倍に増加しているという(※全国約1,300の観測地点)(※8)。

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2023年・2024年の異常気象の事例

日本でも世界でも、近年異常気象が頻発化していることを理解したところで、2023年・2024年の事例も確認していこう。

愛媛県|土砂災害

2024年7月11日夜から12日朝にかけて、九州および四国地方に大雨が発生。12日未明には、大雨の影響で愛媛県松山市にある松山城の斜面が崩れ、ふもとの住宅やマンションを襲い、命を奪うほどの被害が出てしまった。

秋田県|河川氾濫

2023年7月14日から7月16日にかけて、東北地方を大雨が襲った。とくに秋田県では、複数の地点で24時間降水量が観測史上1位を記録するほどの大雨となり、県内各地で河川が氾濫。それによって家屋の浸水や土砂崩れが発生した。

アメリカ合衆国(ハワイ)|山火事

ハワイ・マウイ島では、2023年8月8日から大規模な山火事が発生。島西部の観光地ラハイナでは、多くの人が亡くなり、2,200以上の建物が損壊、約9平方キロが焼けるなど大きな被害を受けた。

この山火事の原因は特定されていないが、老朽化した送電線が強風で損傷し、出火したとの見方が出ている。しかし、ここまで燃え広がり甚大な被害となったのは、2023年異常な高温に加えて降水量が少なく、大気や土壌が乾燥していて、島の約8割が“干ばつ状態”にあったことが影響たと考えられているのだ(※9)。

ブラジル|干ばつ

2023年、南米のアマゾン川が流れるブラジルの北部一帯で、観測史上で最悪といわれる干ばつの被害が発生。河川が干上がったことにより魚が大量死したほか、川の水位が極端に低下し船が出せないため、水運などに頼っているこの地域の人々の生活に深刻な影響をおよぼした。

この記録的な干ばつは、エルニーニョ現象と大西洋の海水温の上昇が重なったことが主な原因とみられている。アマゾン環境研究所の研究員は、「気候変動や気温の上昇によって、干ばつの被害が広い範囲で重大に、かつ頻繁に起こるようになっている」と話す。(※10)

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異常気象への対策

甚大な被害をもたらす異常気象に対して、世界中でさまざまな対策が講じられている。いくつかの例を紹介しよう。

政府や国際機関の取り組み

地球温暖化に対しての取り組みのひとつが、2020年以降の温暖化対策における国際的な枠組みであるパリ協定だ。パリ協定では、「世界の平均気温の上昇を、産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」ことを世界共通目標を掲げている。

そのほか、国連の持続可能な開発目標(SDGs)では、目標13「気候変動に具体的な対策を」が掲げられており、これらの目標が世界中が地球温暖化対策を取っていく指標となっている。

地域レベルでの対策の例

自治体レベルでの対策も進められている。平成28年熊本地震や平成29年九州北部豪雨、令和2年7月豪雨など、人的被害を伴う大規模災害が多い大分県では、「災害に強い人づくり・地域づくり」を施策として掲げ、防災教育の充実や地域防災力の強化に取り組んでいる。

岡山県の南西部に位置する里庄町は、平成30年7月豪雨災害で甚大な被害を受けたことをきっかけに、災害時の対応を見直し。当時の反省から、地域のインフラを最大限に活用した里庄町らしい情報伝達手段の確立や、情報配信の多重化そしてワンオペレーションの実現に取り組んでいる(※11)。

個人でできる対策

個人でできる対策としてまずやっておきたいのが、“もしものときの備え”だ。日本は異常気象だけでなく、大きな地震の発生も予測されているため、防災グッズや非常食の備蓄はもちろん、避難経路の確認や家族での安否確認の方法を決めておくなど、できることは平時のうちに備えておこう。

また、地球温暖化対策の面でも、二酸化炭素排出量削減のため自家用車ではなく、公共交通機関を積極的に利用する、再生可能エネルギーを利用するなど、できることはたくさんある。

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異常気象に関する研究と技術開発

異常気象に関する研究や技術開発も進んでいる。ここでは2つの事例を紹介しよう。

異常気象の予測技術

現在、異常気象の発生メカニズムや影響の解明と、正確な予測を行う技術開発が進んでいる。気象庁気象研究所では、長期再解析データを使って異常気象の発生メカニズムの解明を実施(※12)。メカニズム解明のほかにも、2週間から数か月先の天候を予測する季節予測モデルの精度向上にも貢献しており、異常気象を前もって予測できる技術が進化してきている。

気候変動緩和のための技術開発

地球温暖化を原因とする気候変動緩和のためにも、新しい技術が開発されている。

日本をはじめ、世界の多くの国がカーボンニュートラルの実現に取り組んでいるが、どうしても排出が避けられない分野があるのも事実だ。そこで、やむを得ず排出した分については、大気中に存在するCO2を同じ量取り除くことで、差し引きゼロを目指すという方法が考えられている。

そこで重要な二酸化炭素除去を可能にする技術が、「ネガティブエミッション技術(NETs)」だ。ネガティブエミッション技術には、植林などの「自然プロセスを人為的に加速させる手法」と「工学的プロセス」がある。

工業的プロセスでは、「DACCS」と「BECCS」の2つの技術が現在注目されている。「DACCS」は、大気中の二酸化炭素を直接回収して分離・吸収し、地中に貯留する技術、「BECCS」はバイオマスエネルギーの利用と、CCSと呼ばれる二酸化炭素を回収・貯留を組み合わせた技術のことであり、アメリカやイギリス、北欧諸国、日本などで研究開発と実証プロジェクトが進められている。(※13)。

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異常気象は地球からの警告

地球温暖化が問題視されるようになってから30年以上が経つが、問題の解決どころか年々気温は上がり、大きな被害をもたらす自然災害が頻発するようになった。さまざまな対策が講じられているものの、目標にはまだまだ届かないのが現状だ。近年起きている異常気象は、“いますぐ変化を起こさないと手遅れになる”という地球からの警告ではないだろうか。

※掲載している情報は、2024年8月20日時点のものです。

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