ベレン宣言をわかりやすく解説 内容や目的、アマゾンの現状も紹介

広大な敷地に広がる森林

Photo by Ivars Utināns on Unsplash

アマゾン流域に位置する8カ国の共同声明として、2023年8月8日に発表された「ベレン宣言」。アマゾン熱帯雨林の森林破壊を阻止し、保護するための共通の枠組みとして採択された。本記事では、ベレン宣言の内容や意義、世界最大のアマゾン熱帯雨林と気候変動の関わりについて解説する。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2024.04.06

ベレン宣言とは?

森林伐採で大量の木が積まれている様子

Photo by Dan Smedley on Unsplash

ベレン宣言とは、2023年8月8日に発表された、アマゾン熱帯雨林を保護するための共同声明のこと。アマゾン川河口付近に位置する、ブラジル北部の都市ベレンで採択されたことから、ベレン宣言の名前がついている。

ベレン宣言には、アマゾンの森林破壊に対して連携して対処するための枠組みや、保護対策の指針が盛り込まれている。2021年に、イギリスのグラスゴーで開催されたCOP26では、「2030年までに森林破壊を終わらせる」と約束する文書に、世界100カ国超の首脳が署名した。(※1)森林破壊に関する世界的な動きがあるなかで、アマゾンの熱帯雨林をめぐって共通の枠組みがまとまったのは初のことである。

アマゾン流域8か国が加盟 アマゾン協力条約機構の首脳会議とは?

椅子がたくさん並べられた会議室

Photo by Benjamin Child on Unsplash

ベレン宣言は、2023年8月8日から2日間の日程で開催された、アマゾン協力条約機構(ACTO)に加盟する各国の地域首脳会議のなかで発表された。参加国は、ブラジル・ボリビア・コロンビア・エクアドル・ガイアナ・ペルー・スリナム・ベネズエラの8カ国。いずれもアマゾン流域に位置しており、熱帯雨林を共有する国々だ。

ACTOの首脳会議の開催は、実に14年ぶり。主なテーマは森林破壊への対処であり、地球全体の課題である気候変動問題への危機感を共有した。

議長国は、アマゾン熱帯雨林の約6割を有するブラジルが務めた。ルラ大統領は、首脳会議開幕前に、2030年までに森林破壊を終わらせることを共通の目標にする旨を呼びかけていたが、結果として、理想にとどまり、目標としての合意には至らなかった。(※2)

ACTO加盟各国は、共通の枠組みをつくり、協力体制を強めていく一方で、各国ごとの独自の目標を追求していくこととなった。

世界最大の熱帯雨林アマゾンがなくなったら…?

豊かな森林が広がる水域

Photo by Dave Hoefler on Unsplash

今回のベレン宣言の中心にある、アマゾンの熱帯雨林。ここでは、アマゾンが地球に与える影響を見ていこう。以下で、アマゾンの現状や抱える問題、気候変動問題との関わりについて解説する。

面積550万㎢の熱帯雨林

アマゾン熱帯雨林は、南米大陸に位置し、9カ国にまたがっている。550万㎢の広さを誇る世界最大の熱帯雨林であり、地球上の熱帯林の約半分を占めるとされている。アマゾン川や支流から成る広大な水域として形づくられており、豊かな森林資源を有しているのが特徴だ。(※3)

生物多様性の宝庫であり、アマゾン熱帯雨林にのみ存在する固有種も多い。約300万種の動植物・昆虫・魚が生息するほか、約100万人の先住民族が暮らしている(※5)。

過去最悪のスピードで進む森林伐採

アマゾン熱帯雨林の開発が本格的にはじまったのは、1940年代に、ブラジル政府による「アマゾン開発計画」が動きはじめたのがきっかけだ。商業価値のある木の伐採や、農地転換などにより、現在までにもとの面積の15%が消失したとする見方もある。(※4)

2021年のブラジル国立宇宙研究所(INPE)の発表によると、ブラジルのアマゾン熱帯雨林の森林伐採は、過去15年でもっとも加速したという。(※5)2019年に政権を握ったブラジルのボルソナロ前大統領は、アマゾンの保護より開発を優先する政策をとった。その結果、森林伐採や農地転換、違法伐採の規模が拡大し、熱帯雨林の減少が続いた。

一方、2023年1月に就任したルラ大統領は森林保全に舵を切った。開発政策を修正し、保護強化を打ち出したことで、森林伐採は減少傾向にある。ブラジル政府の発表によると、2023年1月から6月にかけての熱帯雨林の減少面積は2649㎢。これはアメリカのニューヨーク市の面積の3倍以上に当たるとされ、減少傾向といっても毎年かなりの規模の熱帯雨林が消失しているのが現実だ。(※6)

アマゾンがなくなったら…?

「世界の肺」とも呼ばれるアマゾン熱帯雨林は、世界最大規模のCO2の吸収源だ。アマゾンがなくなると、CO2を900億トン大気に放つのと等しいという見方があり、この量は世界中の放出量の数年分に相当する。(※7)気候変動問題において、アマゾンがいかに重要な役割を果たしているかがわかるだろう。

地球温暖化の原因であるCO2が大量に地球上に放出されると、気候変動を抑止するどころか、地球温暖化が加速してしまう。アマゾンの消失により動植物が行き場を失うと、生物多様性の崩壊にもつながる。アマゾン熱帯雨林の存在によって保たれていた地球のバランスが、大きく崩れてしまう。そうなったときの影響は計り知れない。

保護と開発は国際的なテーマ

気候変動の抑止力であるアマゾンは、地球規模の課題を解決するために重要な位置付けにある。それゆえに、保護と開発で揺れるアマゾンの動きに全世界が関心を寄せている。私たち人類が気候問題にどう向き合っていくのかは、アマゾンを取り巻く状況によっても変わってくるといえる。

ベレン宣言の目的・意図

緑が生い茂る様子

Photo by Alenka Skvarc on Unsplash

アマゾン熱帯雨林について押さえたうえで、改めてベレン宣言の意義を考えてみたい。ブラジルのサンタカテリーナ連邦大学の研究者らは、アマゾンの崩壊を懸念している。このままでは、2050年頃には森林システムや生態系に大きな危機が到来するというのだ。(※8)

ベレン宣言の目的は、枠組みをつくることによって、「アマゾンが引き返せない状態までいくのを防ぐ」こと。また、アマゾン流域各国の連携を強めることで、世界的なサミットにおける交渉体制を強化する意味合いもある。

地球の状態が日に日に深刻になる現在、気候変動問題に関する具体的な対策が急務だ。アマゾン熱帯雨林は気候変動対策の要であり、豊かな地球のためにも欠かせない。2023年のベレン宣言では、共通目標の合意にこそ至らなかったものの、アマゾン流域各国が「アマゾンを守る」という同じ方向で連携を強めたことには大きな意義がある。

2025年COP30の開催地はベレン

2025年のCOP30は、ベレン宣言が採択されたベレンでの開催が予定されている。COP29の開催地であるアゼルバイジャンよりも先に、正式決定した形だ。国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)も、アマゾン地域であるブラジルでの開催を積極的に推進した。世界一丸となって、気候変動への取り組みを前進させたい狙いだ。(※9)

世界各地で記録的な猛暑を観測するなか、2023年7月は観測史上もっとも暑い月となった。気候変動を地球共通の課題ととらえ、CO2を減らす対策を講じない限り、地球温暖化にストップがかかることはないだろう。ベレン宣言を一例に、世界各国が連携を強め、方向を同じくして取り組みを進めることが重要だ。

COP28とは? 今回の重要テーマ3つのポイントをわかりやすく解説

関連記事

直近1年間の世界平均気温が史上最高 1.5℃を上回る

関連記事

「地球が沸騰している時代」がやってきた 世界の猛暑・自然災害の原因は?

関連記事
※掲載している情報は、2024年4月6日時点のものです。

    Read More

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends