「地球が沸騰している時代」がやってきた 世界の猛暑・自然災害の原因は?

国連総長が表現した「地球が沸騰している」イメージ

Photo by Sam te Kiefte on Unsplash

世界各国が熱波に見舞われた2023年7月。世界の平均気温が観測史上もっとも高い月となった。国連のアントニオ・グテーレス事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が来た」と警告。世界の異常気象や気候変動の原因、私たちができるアクションについて解説する。

今西香月

環境&美容系フリーライター

慶應義塾大学 環境情報学部卒。SUNY Solar Energy Basics修了。 カリフォルニア&NY在住10年、現地での最新のサステナブル情報にアンテナを張ってライター活動中

2023.08.16
SOCIETY
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2023年7月は史上もっとも暑い月 国連総長が警告「地球が沸騰する時代が到来した」

国連総長が「地球が沸騰している」と警告したように猛暑が続く世界の様子

Photo by Victor He on Unsplash

40℃を超える猛暑が、世界各国のニューノーマルになりつつある。

欧州連合(EU)の気象情報機関によれば、7月6日には世界の平均気温が17.08℃と過去最高を更新。2023年7月の世界の平均気温は16.95℃と、これまででもっとも高かった2019年7月の16.63℃を上回り、観測史上もっとも暑い月となったことが明らかとなった。

気候の観測記録があるのは1940年以降だが、2023年7月は、過去12万5000年のなかでも、もっとも暑いものだったと言われている。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は7月27日、世界の平均気温が観測史上もっとも高くなるとの見通しを受けて、「地球温暖化の時代は終わり、地球が沸騰する時代が到来した」と警告した。

事実、米国南西部、メキシコ、南ヨーロッパ、中国を含む北半球の複数の地域で極度の熱波が発生している。

ヨーロッパ

イタリア、スペイン、ギリシャなどのヨーロッパ南部は、猛烈な熱波に見舞われ、45℃を超える暑さ続きで、熱中症で運ばれる人や山火事が相次いでいる。

イタリアでは、「ケルベロス」と名付けられた熱波に続いて、2度目の熱波「カロン」も到来。イタリア南部のシチリア島では46~47℃まで気温が上昇している。気候科学者のハンナ・クローク氏は、「南ヨーロッパ上空で膨張した熱気がイタリアと周辺諸国を巨大なピザ窯に変えた」と述べている。

アメリカ

ヒートドーム現象

容赦ない熱波に見舞われるカリフォルニア州南西部。すでに、テキサス州、フロリダ州、アリゾナ州では数週間にわたって危険なほどの暑さが続いている。

長引く熱波により、高温の空気が巨大な高気圧の下に閉じ込められる「ヒートドーム」現象が激化。国立気象局は、ヒートドームを「これまででもっとも強力な高気圧の一つ」と呼び、非常に脅威だと警戒を強めた。フェニックスでは、連日43℃の高温を記録。多くの企業や公園が閉鎖、営業時間の変更などを余儀なくされている。

海面水温が38.4℃と風呂並みに上昇

またフロリダ州キーズの海では、海面水温が38.4℃まで上昇。風呂並みの温度まで上昇し、これは世界的な記録になる可能性が高いと報じられている。

ハワイ・マウイ島では史上最悪の山火事

ハワイ州マウイ島では8月上旬に山火事が発生。ハリケーンによる強風によって火が拡大し、ラハイナの街の大半が燃え、死者は96人にものぼり(8月15日時点)、過去100年でも史上最大の被害になっている。山火事の原因はまだ明らかにはなっていないものの、極度の乾燥状態にあったことが一因とみられている。

ハワイ・マウイ島の山火事 寄付・支援する方法と私たちにできること

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日本

日本全土も記録的な暑さに見舞われている。海の日の7月17日には、15時までの最高温度で、山梨県甲州市勝沼で38.8℃まで到達。5地域で38℃台を記録した。

8月に入ってからも、各地で体温を超える、40℃に迫る暑さの日が続いている。暦の上では秋のはじまりにあたる立秋(8月7日頃)も暑さは続き、気象庁などでは「危険な暑さ」「災害級の暑さ」などと表現して、注意を呼びかけている。

世界の猛暑の原因は? 人類の責任

猛暑が続いて干ばつが起きている様子

Photo by redcharlie | @redcharlie1 on Unsplash

これだけの記録的な猛暑が続くと、その原因について真剣に考える必要があるだろう。

その主な原因は、地球温暖化だ。以前、気象庁気象研究所、東京大学大気海洋研究所、国立環境研究所の研究チームは、2018年の猛暑について、温室効果ガスの排出にともなう地球温暖化を考慮しなければ起こりえなかったと結論づけている。

地球温暖化が進めば、猛暑、干ばつ、洪水などの異常気象が頻発することが指摘されているのだ。そして地球温暖化は、CO2などの温室効果ガスの排出によって起きる。

2022年4月にIPCCが発表した第6次報告書によれば、産業革命以前に比べた地球の平均気温上昇を1.5℃に抑えるパリ協定の目標に対して「すでに1.1℃上昇。現状のペースだと20年後には1.5℃を越え、2100年には3.2℃上昇する」と予測。

また、先月の記者会見で、国連のグテーレス事務総長は相次ぐ熱波や山火事を「人類の責任」と伝え、世界各国の指導者に気候変動対策の強化を求めた。

「2100年の地球は3.2℃暑くなる」IPCC報告書 地球を救う5つの対策は

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私たちが考えたい・実践したいこれからのこと

気候変動の対策は、政府や企業だけに任せるのではなく、私たちが「自分ごと」ととらえて個人レベルで行うことも大切だ。以下で紹介する、CO2の排出量を減らすアクションは、いずれもすぐに実践できる身近なものばかり。何から始めればいいか迷った方は、ぜひ参考にしてみてほしい。

・エコバッグやマイボトルを持ち歩く
・自動車に乗らない(バスや電車などの公共機関を利用・自転車に乗る)
・使わないコンセント、プラグは抜く
・エネルギー効率を高める(省エネ家電、LED電球に変える)
・水の無駄づかいを減らす
・リデュース、リユース、リサイクルの実践
・持続可能な食材を選ぶ(地産地消、植物性の食材)
・植林、森林保護の支援
・環境保全についての知識を深める

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猛暑や自然災害が頻発するなか、その原因は私たち自身にあることを改めて考えることが何よりも必要ではないだろうか。その本質を見つめ、私たちの行動を変えるときがやってきている。

※掲載している情報は、2023年8月16日時点のものです。

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