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日増しに注目度を高める「エシカルファッション」。これまでのファッションとは何が違うのか、詳しく解説する。言葉の意味や10の基準、ブランドの取り組み事例、認証制度、アパレル業界が抱える環境問題、人権問題の解決手法として注目される理由などを幅広く学ぼう。
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エシカルファッションとは、エシカル消費に基づいて製造・流通・販売されるファッションを意味する言葉だ。劣悪な就業環境や地球環境への負荷など、ファストファッションの広がりとともに波及した社会問題を解決するためのキーワードとして注目される。
エシカルファッションの英語表記は「Ethical Fashion」であり、Ethicalとは「倫理的・道徳的」を意味する言葉だ。つまりエシカル消費とは、倫理的・道徳的な消費のことである。人や環境はもちろん、地域経済の活性化や雇用など、社会全体に配慮した消費活動を指している。
エシカルファッションには、オーガニックコットンなど人体や環境にやさしい素材が用いられる。また洋服が店頭に並ぶまでの過程において、労働力の搾取や人権侵害が行われていないかどうかも重要なポイントだ。
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エシカルファッションが推進されるようになったきっかけは、2013年に発生した「ラナプラザの悲劇」だ。ラナプラザとはバングラデシュのビルの名前であり、世界の名だたるファッションブランドの縫製工場が入っていた。
著名なファストファッションブランドは低価格で自社の洋服を提供するために安価な労働力を確保する必要があった。そこでアジアでも貧しい国であるバングラデシュは、低賃金で多くの労働力を確保できる絶好の場所だったのだ。ところが多くの女性従業員が働いていたラナプラザは、ある日突然崩落。この事故によって、1,100人以上の死者と2,500人以上の負傷者が出た。
事故をきっかけに、従業員たちの劣悪な労働環境やファッション業界のゆがんだ構造がクローズアップされはじめ、エシカルファッションを求める流れが高まっていった。ラナプラザの悲劇については、以下の記事も参考にしてみてほしい。
ラナプラザの悲劇で露呈した労働環境問題以外にも、アパレル業界が抱える課題は多い。アパレル業界が原材料調達から製造段階までに排出する環境負荷の総量は、1年間で二酸化炭素約90,000kt、水消費量は約83億m3(立法メートル)にもおよぶ。
さらに、洋服ごみに関する問題も無視できない。1日あたりに焼却・埋め立てされる衣服の量は、平均約1,300t。SDGs(持続可能な開発目標)推進においても、解決するべき課題のひとつと言えるだろう。(※1)
(c)TRUECOSTMOVIE
大量生産・大量消費が基本のファストファッションではなく、人と環境に配慮したエシカルファッションが広がれば、業界が抱える問題の解決につながる。ラナプラザの悲劇やSDGsをきっかけに、エシカルファッションへと舵を切ったファッションブランドは多い。
2004年に設立されたエシカルファッション推進団体「Ethical Fashion Forum(エシカル・ファッション・フォーラム)」では、エシカルファッションの基準を次のように定めている。(※2)
1. Countering fast, cheap fashion and damaging patterns of fashion consumption.
安価で使い捨て型の「ファストファッション」に反対する。
2. Defending fair wages, working conditions and workers’ rights.
生産する労働者の賃金や権利、労働環境を守っている。
3. Supporting sustainable livelihoods.
動植物の持続可能性を支える。
4. Addressing toxic pesticide and chemical use.
有毒農薬や化学薬品の使用問題に取り組んでいる。
5. Using and / or developing eco- friendly fabrics and components.
環境にやさしい素材を開発、または使用している。
6. Minimising water use.
水の使用を最小限にしている。
7. Recycling and addressing energy efficiency and waste.
リサイクルやエネルギー問題、ごみ問題に取り組んでいる。
8. Developing or promoting sustainability standards for fashion.
ファッションの持続可能性を開発し、広めようとしている。
9. Resources, training and / or awareness raising initiatives.
取り組みを人々に知らせ、解決策を広めようとしている。
10. Animal rights.
動物の権利を保護している。
これらとまとめると、環境・社会・人にやさしいファッションがエシカルファッションにあたるのだ。
私たち消費者の立場でエシカルファッションを見分けるためには、認証制度を手掛かりにするのがおすすめだ。エシカルファッションの認証制度には、以下のようなものがある。
「GOTS(ゴッツ)認証」は、オーガニック繊維製品のための世界基準である。ゴッツとは、「Global Organic Textile Standard」の略称だ。詳しくは、「オーガニックのコットン、ウール、麻、綿などの原料から環境的・社会的に配慮した方法で製品をつくるための基準」を指す。
認証を受けるためには、製品の95%以上(Organic表記)、もしくは70%以上(Made with Organic表記)にオーガニック繊維が使われていることや、製品の追跡可能性の確保など、非常に厳しい基準をクリアする必要がある。(※3)
認証を受けた製品にはGOTSラベルが貼られ、認証内容が記されている。
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「Bコーポレーション(Bコープ)」の正式名称は「B Corporation(B Corp)」と言い、企業に対する認証制度である。認証を受けられるのは、社会や環境に配慮した活動を行う公益性の高い企業だ。商品ではなく企業に対する認証制度である点が、Bコープの非常に大きな特徴と言えるだろう。
認証段階においては、企業活動が社会や環境に与える影響のほか、企業の透明性・説明責任についても考慮される。
「CLIMATE NEUTRAL(クライメイト・ニュートラル)」は、低炭素社会の実現を目的に立ち上げられた非営利団体である。二酸化炭素排出実質ゼロを目指し、企業やブランドに対して認証制度を提供している。クライメイト・ニュートラル認証ラベルを目印にして商品を選べば、気候変動問題に対して具体的な取り組みを行っている企業や、ブランドの応援につながるだろう。
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「1% for the Planet(1%フォー・ザ・プラネット)」は、自然保護を目的としたNPOであり、世界中で数多くの企業が参加するグローバルネットワークである。パタゴニアの創設者とブルー・リボン・フライズ社の創設者が設立したことでも話題となった。
この団体に加盟する企業や個人は、年間収益の1%をGA環境保護団体に寄付している。これは、各種環境保護対策の資金になる。加盟企業の製品を購入することで、個人でも環境保護に向けた具体的なアクションを応援できる。
年齢や性別を問わず、いつの時代にも使えるベーシックなデザインを提供する「takes.(テイクス)」。吸水性、保温性、抗菌性に優れた、竹素材100%のTAKEFU(竹布)を使用しており、オーガニックで素肌に心地いい。さらに縫い糸まで、オーガニック素材を選んで使用している。
また、糸の開発から製造、輸送、販売まで、Tシャツに関わるすべての行程でプラスチックをなるべく使わず、Tシャツが役目を終えたときは土に還るようつくられている。
スウェーデンで生まれたストリートブランド「DEDICATED.(デディケイテッド)」。使用する原料は、オーガニックコットンやペットボトルをリサイクルした糸など、環境に配慮した素材を厳選している。また、「生産者として責任あるものづくりを広めたい」という創業者の言葉どおり、製造のプロセスや縫製工場などをオンラインで公開し、トレーサビリティと透明性の確保を徹底して行っている。
2021年からスタートした日本ラインでは、スウェーデン本社で定める生産や認証ルールにもとづいて、日本人の感性に合うデザインやカッティングを採用して提案している。
「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)」では、ブランド創業時から50年以上、自然環境保全のさまざまな取り組みを行っている。例えば、プロダクトの消費を削減するために全ての商品に生涯保証をつけるほか、不要になった服を回収してアップサイクルする「GREEN CYCLE」プログラムなどを実施。
またカーボンニュートラルな素材やサステナブルなダウンを使用するほか、石油資源に頼らない循環型のものづくりの実現を目指している。
『ザ・トゥルー・コスト ファストファッション 真の代償』は、華やかなファッション業界の裏側に迫ったドキュメンタリー映画である。ラナプラザの悲劇をきっかけに映画がつくられ、ファッション業界が抱える闇に光を当てた。監督はアンドリュー・モーガンである。またフェアトレードブランド「ピープルツリー」の代表、サフィア・ミニーの活動も紹介。業界全体の未来についても考える作品に仕上がっている。
「そもそもエシカルって何?」。そんなふうに思っている人におすすめなのが、エシカル協会代表理事の末吉里花さんが筆を取った『はじめてのエシカル』。エシカルファッションだけではなく、エシカル消費とは何かをわかりやすく解説している。
食品の選び方やファッションとの付き合い方といった身近な話題を中心に、日々の暮らしのなかで実践できる工夫を幅広く紹介。まさにエシカル消費の入門書といえる一冊だ。
ファッション業界が抱える問題や、エシカルファッションについては、SDGsからも学べるだろう。環境問題については 「13.気候変動に具体的な対策を」「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」の3つの目標が関連している。
労働問題については「8.働きがいも経済成長も」「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「10.人や国の不平等をなくそう」などが、大量生産・大量消費については「12.つくる責任つかう責任」に関わっている。
SDGs達成のために何をするべきなのか、あらためて見つめ直すことで、エシカルファッションの重要性が見えてくるだろう。詳しくはELEMINISTのSDGs特集を読んでみてほしい。
私たちにとって身近なファッションは、長らく大量生産、大量消費が当たり前とされてきた。「流行が変わるたびに洋服を買い替える」という習慣に対して疑問を抱いたことがなかった方も多いのではないだろうか。しかしいま、新たな変化が求められている。
アパレル業界が社会や環境に与える影響は、極めて大きい。そしてその責任の一端は、私たち消費者が担っているのである。エシカルファッションについて知り、その意義を学び、実践してみよう。不幸な事故や不当な搾取を繰り返さないためにも、ライフスタイル全体を変えていくべき時期に差しかかっている。
※1 SUSTAINABLE FASHION これからのファッションを持続可能に|環境省
※2 About the Ethical Fashion Forum|Ethical Fashion Forum
※3 GOTS認証詳細|NPO法人 日本オーガニックコットン協会
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