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B Corp(B Corporation)とは、米国の非営利団体B Labによる国際認証制度。厳格な評価のもと、環境や社会に配慮した公益性の高い企業に与えられる。取得方法や取得のメリットを解説し、認証を受けた企業や日本での現状について紹介する。
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「B Corp(Bコープ)」とは、「B Corporation(Bコーポレーション)」を略したもので、社会や環境に配慮した公益性の高い企業に対する国際的な認証制度のこと。運営は、米国の非営利団体のB Labがおこなっている。「B」は「Benefit(利益)」の意味で、社会や環境、従業員、顧客といったすべてのステークホルダーに対する利益を表している。
フェアトレード認証やLEED認証などは商品や建物を認証する制度であるのに対し、B Corpは企業のあり方を認証する制度だ。具体的には、環境や社会に配慮した事業をおこない、透明性や説明責任などといった、B Labが定めた厳しい基準をクリアした企業に対して与えられる認証だ。
世界で多様な社会問題が発生しているいま、政府やNPO・NGOだけで問題を解決することは難しい。B Corpは、株主利益だけでなく公益を優先する企業を評価することで、社会に貢献する企業を増やしていくためのしくみでもある。
同じくB Corpと省略され、B Corporationと混合されやすいものに「ベネフィット・コーポレーション」がある。ベネフィット・コーポレーションは、米国内の一部の州で法制化されている法人形態のことであり、B Corporationとは異なるものだ。
B Corpの認証を受けるには、B Labが無料で提供するオンライン認証試験「B Impact Assessment(Bインパクト・アセスメント)」を受け、200の質問のうち80点以上を獲得する必要がある。この認証試験は無料で受けられる。
そのほかに、B Corp認証を受けるための法的な要件について、企業に関する質問に回答する。さらに、その企業がある国や地域、法人規模等により異なるが、B Corporationの規定に沿った定款文書をつくり、サインする。
これらを提出後、B Labが電話でのレビューをおこなう。これらのプロセスを経て、無事に審査が通れば、認証を取得することができる。すべてのプロセスが完了するまで、かかる期間は6~10か月ほど。
なお、B Corp認証の日本語ページはないため、申請等はすべて英語でおこなう必要がある。
認証取得後には、企業の収益に応じた年会費をB Labに納める必要がある。認証の更新は3年ごとにおこなわれ、その際は「B Impact Assessment」を受けて評価を更新しなければならない。また自社の取り組みに関する「B Impact Report(Bインパクト・レポート)」の提出と公開を求められる。
これまでB Corpの日本支部がなかったため、B Corpを取得したい企業は英語での各種申請等を行う必要があった。だがB Corpへの注目の高まりもあり、2024年、B Labの日本支部に相当する組織「B Market Builder Japan(BMBJ)」が設立された。日本語による、B Corpの勉強会、取得のサポートなど、問い合わせもしやすくなるだろう。
認証試験「B Impact Assessment(Bインパクト・アセスメント)」で出題される200の質問は、コミュニティ、環境、顧客、ガバナンス、従業員の5分野における企業パフォーマンスを測定するためのものだ。
完了までの所要時間は1〜3時間ほどだ。質問内容には、以下のようなものがある。社会や環境に対して企業が与えるインパクトや、企業の透明性・説明責任を評価する内容になっている。
・従業員に企業の財務状況が公開されているか?
・業界における社会や環境基準改善に向けて取り組みをおこなっているか?
・管理職における女性、マイノリティ、障害者、低所得コミュニティーなどの割合は?
・企業における省エネ率は?
・企業で消費する再生可能エネルギーの割合は?
・事業で排出される廃棄物量を記録しているか?
・従業員の有休休暇・病気休暇などは年間何日?
・従業員の学びの機会に対する、経済的なサポートの割合は?
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B Corpの認証を取得すると、公益性のある企業と認められることなる。それ以外にさまざまなメリットを受けられる。
労働人口の半数近くを占めるミレニアル世代の多くは、仕事において収入を求めるだけでなく、社会や環境への影響を考慮している。
ミレニアル世代におこなわれたグローバル調査で、ビジネスを始めたり関係性を深めたりする際、ミレニアル世代の42%は、企業や商品が社会や環境へいい影響を与えるかどうかを重視すると答えている。(※1)
そのためB Corpの認証を受けることで、これからの社会を担うミレニアル世代にとって、就職先候補になりやすくなると期待できるだろう。
B Corpに認証されると、「社会や環境にいい影響を与える企業」として、ブランド価値や社会的信用を獲得できる。これにより、エシカル感度の高いユーザーにアプローチが可能となり、売上の増加にもつながるだろう。
B Corpは、世界で認められている国際認証制度だ。国際基準に準拠していることを証明できるため、海外でのビジネスチャンスを狙う企業にとって、メリットが大きいと言える。
B Corpの認証を受けた企業は、世界100か国8,677社以上にのぼる(2024年5月時点)。以前は米国やカナダ、オーストラリア、欧州諸国に多く見られたが、最近では中国や韓国、台湾、シンガポールといったアジア圏にも徐々に広がりを見せている。
日本でB Corpの認証を受けている企業はまだ少なく、41社にとどまっている。その原因として、認証を取得するためのプロセスがすべて英語であるため、認証取得へのハードルが高いことが挙げられたが、2024年にはB Lab日本支部が設立されたため、今後は日本でもB Corp認証を取得する企業が増えていくとみられる。
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2012年に米カリフォルニア州でB Corpの認証を初めて取得したのが、アウトドア用品のパタゴニアだ。以来、10年近くの間、B Corpの認証基準を満たし、環境にやさしいブランドとして広く世界で知られるようになっている。(※2)
「ISSEI MIYAKE MEN」の元デザイナー・高橋悠介氏による新ブランド「CFCL」は、B Corpの取得に向けて申請中だ。取得できれば、B Corpの認証を受けた日本初のアパレルブランドとなる。
CFCLは、「Clothing For Contemporary Life(現代生活のための衣服)」をコンセプトに、時代に左右されない衣服を提供するブランドだ。3Dコンピューター・ニッティングの技術を取り入れると同時に、衣服としての機能性、環境への配慮、最適な国産素材の選択、流通経路の透明性を追求している。
アメリカを拠点としたアパレルブランド「Frank&Eileen」は、2021年に認証を取得した。
同企業は、高品質な自然由来の素材を使用し、エシカルな製造業者と協力しながら長く愛され続ける洋服を制作している。また、女性が営む女性主導の企業であり、2020年には女子教育を支援するために、10年間で1000万ドルを投資することを約束している。
アメリカを拠点に再生可能な食品容器を製造・販売する「Klean Kanteen」は、B Corp認証を取得している。プラスチックの原料となる化学物質BPA(ビスフェノールA)を含まない、ステンレス製の飲料ボトルや食品容器を製造しており、世界各国で販売している。
アメリカ発祥のシューズブランド「Allbirds」は、天然素材やリサイクル素材を使用している。そのほか、素材調達・デザイン・製造・管理・廃棄に至るまでのすべての過程で排出されるカーボンフットプリント(温室効果ガス)を測定し、その削減に取り組んでいる。また、すべての商品に排出量の表記を進めている。
オーストラリア・メルボルンを拠点とするブランド「memobottle」は、使い捨てされるペットボトルの代替品として、繰り返し使えてスタイリッシュな形状のエコボトルを製造・販売している。また、井戸を掘り安全な飲料水の確保に取り組む非営利団体Water.orgをサポートしている。
ドイツ・ベルリンを拠点とし、検索エンジンを運営する「Ecosia GmbH」は、広告収入の利益のうち80%以上を、森林再生活動をおこなう非営利団体に寄付している。ユーザーはEcosiaで検索をすることで植林活動に貢献できる。2009年の創業以来、およそ300万ドル(約3億円)を寄付している。
国連サミットで採択されたSDGs達成のため、世界の動きは社会や環境に配慮したものに変化しつつある。そしてB Corpは、企業が社会でどうあるべきか、企業のあり方を再考する一つのきっかけを提供しているのだ。
日本でのB Corpの認知度は高くないが、世界では認証企業が着実に増えてきている。今後、日本でも取得企業が増えれば、「せっかくならB Corp認証のものを買おう」というように、B Corpが商品やサービスを取捨選択する際の基準の一つになっていくだろう。
エシカルでミニマルな商品を紹介する『ELEINIST SHOP』では、B Corp認証のアイテムをラインナップしているので、一度見てみてはいかがだろう。
参考
※1 The Deloitte Global Millennial Survey 2019
※2 B Lab|パタゴニア
※ Certified B Corporation
※ The B Impact Assessment
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