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人や社会、地球環境、地域に配慮した消費を指す「エシカル消費」。消費者の意識が変わりつつあるいま、企業がエシカルに対して本気で取り組むことが求められている。では、企業がエシカルに取り組むメリットとは何なのだろうか?15の企業の取り組み事例とともに、考えていこう。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
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エシカル消費とは「エシカル」「消費」を組み合わせた言葉で、地域の活性化や雇用などを含む、人や社会、地球環境、地域に配慮した消費のことである。
現在地球上では、貧困や人権問題、自然破壊など、さまざまな問題を抱えている。そうした課題の解決に向けて取り組む事業者によって生まれた商品やサービスを、消費者一人ひとりが課題を考慮したうえで選んで消費する、という考え方である。
また、エシカル消費は、2015年9月に国連で採択された、持続可能な開発目標(SDGs)の17のゴールのうち、とくにゴール12「つくる責任 つかう責任」に関連する取り組みであり、SDGsの達成にも重要な考え方である。
エシカル消費をすることで、人間はもちろん、動物や植物、みんなが暮らしやすい社会につながっていくのだ。
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企業がエシカルに取り組むことの重要性は認知され始めているものの、まだまだ取り組んでいる企業は少ないのが現状だ。だからこそ、いち早く参入することで社会からの注目度が高まり、競合他社と差別化できるといえるだろう。
エシカルやSDGsなどの考え方が広く知られ始めているいま、消費者の商品やサービスの選び方は確実に変化している。同じような商品であれば、より社会や地球環境のためになる商品を積極的に選ぶ消費者も少なくないだろう。
従来のやり方や仕組みを変えて、エシカルに取り組むことは企業にとって容易でない。それでも、エシカルに取り組む姿勢は、消費者にいいイメージを与えるはずだ。
企業がエシカルに取り組むということは、エシカル消費を意識して会社を見直す、ということ。それは新しい商品やサービスが生まれるチャンスでもある。
いままでとは違う視点で消費者を意識することで、これまでにない製品やサービス、これまでとは異なる生産や流通の方法が求められることが予想される。それによって、新しいチャンスをつかむきっかけになることもあるだろう。
エシカル消費を重視してサービスや商品を選ぶ消費者も少なくない。そしてそういった消費者は、今後増えていくことが予想される。
たとえば、オーガニックに関わる商品を展開することで、“オーガニック商品”しか購入しない消費者も、顧客となり得る。このように、企業がエシカルに取り組むことで、従来にはなかった顧客層の獲得が期待できるだろう。
2020年にローンチした株式会社 資生堂のスキンケアブランド「BAUM(バウム)」。リサイクル材を活用したり、CO2排出量削減のための取り組みを行ったり、環境に配慮した数多くの取り組みを進めているメーカー「カリモク家具」ででた端材を、パッケージにアップサイクルしている。
この木製パーツは、レフィル交換すれば、そのままずっと使い続けることが可能。家具のように長年愛用して、使いこむほど手になじみ、風合いの変化を楽しめるそうだ。化粧品パッケージに木材を使うという斬新な試みは、バウムのテーマ「樹木との共生」を体現しているほか、日本の森林が抱える問題に、化粧品を通して興味を持ってもらいたいという思いが込められている。
オルビス株式会社は、クリーンとサイエンスをかけ合わせ、「環境にいいもの=肌に効果的なもの」となるスキンケア開発のため新ブランド「CLEANENCE(クリーンエンス)」を7月1日にローンチする。
クリーンエンスでは、環境に配慮した持続可能な3つの取り組み「Care for nature」「Care for environment」「Care for society」を実施。
不要とされる果実や植物から、サイエンスによって効果的な成分に生まれ変わる「アップサイクル原料」の活用のほか、資源の循環を意識した資材選定に尽力。一部商品には、バイオマスプラスチックを使用し、パッケージの外箱は古紙 100%のFCS認証紙を採用している。また、社会課題と向き合う団体の支援や協業を強化し、ものの価値を問い・捉えなおし、新たな価値へと生まれ変わらせる取り組みに努めるとしている。
2023年5月には、ライオン株式会社と協働し取り組んできた、水平リサイクル(使用済みの容器を再び同じ種類の容器に戻す)により、再生材料を一部に使用したつめかえパックを初めて製品化することに成功。
花王株式会社では、資源循環型社会の実現に向け、事業活動に伴い使用・排出されるプラスチック包装容器に関して、2040年までに「ごみゼロ」、2050年までに「ごみネガティブ」を目標に掲げている。その取り組みの一環として、プラスチック包装容器資源循環型社会の実現に向け、リデュースイノベーション、リサイクルイノベーションを推進。
これまでは、内容物を濃縮化することによる製品のコンパクト化や、つめかえ・つけかえ製品の開発・普及を行ってきた。しかし、難しいとされてきた使用済みつめかえパックを水平リサイクルし、再度容器にできると示せたことは、さらにエシカル消費を促すための大きな一歩になったはずだ。
5年連続で「World's Most Ethical Companies(世界でもっとも倫理的な企業)」の1社に選定されているソニーでは、「環境負荷ゼロ」を実現するため、環境計画「Road to Zero」を推進。環境に関わる「気候変動」「資源」「化学物質」「生物多様性」4つの視点から事業活動と製品のライフサイクル全体を通じた目標を設定し、それに向けて活動している。
製品のライフサイクル全般で温室効果ガスの排出量削減のほか、環境配慮製品やサービスを開発・提供。省エネルギー化や再生可能エネルギーの導入を推進するほか、バージンプラスチックの使用量を削減するために、ホームオーディオ製品では再生プラスチックを採用している。数年にわたり研究を重ね、環境への配慮と音質のどちらも妥協しない、独自の再生プラスチックを開発した。
スポーツアパレル業界初のISO14001(環境マネジメントシステム)の認証を取得し、環境破壊や気候変動との関わりを考えながら、サステナブルな社会の実現に取り組んでいる「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)」。
その取り組みのひとつが、楽しみながら地球の緑を守る「GREEN IS GOOD」。この環境プログラムには、不要になった服を回収してアップサイクルする「GREEN CYCLE」、環境負荷の低い素材を採用する「GREEN MATERIAL」、長く使えるものづくりをサポートする「GREEN MIND」を3本柱に展開している。
環境保護活動だけではなく、大洪水や地震による被災地支援から、アウトドアブランドならではの知見を生かした地域振興まで幅広い活動を行っている。
いまほどSDGsが多くの人に認知される前から、オーガニックコトン100%やリサイクル素材の採用、フェアトレード縫製の採用など、環境や労働者に配慮した取り組みを行ってきた「Patagonia(パタゴニア)」。現在では、環境負荷が少ない染料の開発や、廃棄物を新たな原料に変えるケミカルリサイクルの取り組みを実施している。
また、パタゴニアでは、世界中にある農場・工場など、すべてのサプライチェーンの情報を開示。そこで働く人々に公正かつ合法に賃金を支払い、安全に労働できる環境にあるか確認する社会的責任についても明言。劣悪な環境下で働く人々がいるアパレル業界の問題に、明確な姿勢を示している。
これまで、サステナブルな商品やサービスを選択しやすい売り場づくりや、梱包資材の見直し、自社拠点の再生可能エネルギー化といった取り組みを推進してきた株式会社ZOZO。
「お客様に、ファッションに関するサステナビリティへの関心をさらに持ってもらいたい」という想いから、「elove by ZOZO」においてファッションに関するサステナブル情報を発信。循環型ファッションブランドの代表へのインタビューや、サステナブルなコスメブランドの取り組みなどをシェアしている。
顧客にサステナブルファッションや環境・社会問題の情報を伝えることで、ワクワクするファッションをいつまでも楽しむことができるよう、サステナブルな視点で「選ぶ」ことで、ともに未来を描いていこうと語りかけている。
エシカルでサステナブルな製品開発や店舗展開、化粧品の動物実験反対、コミュニティフェアトレードなど、世の中をより良くするための多くの社会活動を実施してきた「THE BODY SHOP(ザボディショップ)」。
2023年3月には、旗艦店である新宿店をサステナブルで画期的な「チェンジメーカーズワークショップストア」としてリニューアルオープンした。
「チェンジメーカーズワークショップストア」は、循環型の店舗。店舗環境には、リサイクル可能な素材や廃棄予定の再生プラスチック、古材やFSC 認証を受けた木材、堆肥化可能な容器等、ほぼ100%サステナブルなアップサイクルや再生に適した素材を使用している。
天井の梁やレジカウンターなど店舗環境の一部には、長野県諏訪市で、古材と古道具を販売する建築建材のリサイクルショップを営んでいる「リビルディングセンタージャパン」から調達した木材を再利用。さらに、日本独自の取り組みとして、東海旅客鉄道株式会社の提供する、引退した東海道新幹線の車両アルミをリサイクルして店舗内装へ活用するなど、サステナブルな店舗環境を実現した。
アサヒ飲料株式会社は、アサヒ飲料が将来世代にワクワクと笑顔をつなげていくための活動「100YEARS GIFT(100年ギフト)」の一環として、自動販売機を活用したCO2の資源循環モデルの実証実験を開始。
この実験は、大気中のCO2の吸収を可能とした新たな自動販売機を設置し、吸収したCO2を肥料やコンクリートなどの工業原料に活用することで、脱炭素社会の実現に貢献するという、国内初の取り組みである。
CO2を吸収しても自動販売機の稼働に影響はなく、大気中のCO2を吸収する木と同じような役割を果たすそう。1台当たりのCO2年間吸収量は稼働電力由来のCO2排出量の最大20%を見込んでおり、スギ(林齢56〜60年)に置き換えると約20本分の年間吸収量に相当する。
自動販売機から吸収したCO2は、この取り組みに賛同する各自治体や企業と共創しながら、さまざまな工業原料として活用することを計画している。
持続可能な社会を目指し、人々のウェルビーイングのためにカカオの可能性を最大限広げる取り組みとして2015年にスタートしたのが、「LOTTE DO Cacao PROJECT」。
ロッテのチョコレート事業の中心で、持続可能な「カカオサイクル」実現のための“先行実験の場”として、さまざまな取り組みを展開している。
その一つが、チョコレートの製造過程で出る「カカオハスク(カカオ豆の皮部分)」をアップサイクルしてつくられたクラフトジン。新たな価値を見出し、そこで得られた価値を生産者に還元していくサイクルをつくることによって、「カカオを通したしあわせの共有」の輪を広げていくことを目標としている。
スターバックス コーヒー ジャパン 株式会社は、2030年までに廃棄物を50%削減するという目標達成に向けた取り組みとして、フラペチーノ®などアイスビバレッジの店内利用時のグラス提供を、全国の約1,500店舗(※)で実施。
いつものビバレッジを楽しみながら、環境負荷低減にも参加できる取り組みとして、多くの人が賛同し、利用した結果、トライアルの時には店内のリユース率が従来の9倍になった店舗や、ごみ捨て回数が半減したことでお客様と会話する時間に充てられた、といったポジティブな成果にもつながったという。
そのほか一部店舗では、リユース容器の貸し出しとともにドリンクを提供し、店舗に返却してもらう循環型プログラムを実施。繰り返し使えるマグカップやグラス、マイタンブラーなどビバレッジを楽しみながら環境負荷低減につながるサステナブルな選択肢を提案し、お客様と一緒に大きな変化につなげていくことを目指している。
※全国1,792店舗(2022年12月末時点)のうち、客席のない店舗や収納スペースの少ない店舗などグラス提供ができない店舗を除く
無印良品を展開する株式会社良品計画では、バージンプラスチックを利用した商品の代替素材商品として、再生ポリプロピレンを使用した「ポリプロピレンファイルボックス・ダークグレー」と、一部再生パルプを使用した「硬質紙ファイルボックス」を全国の無印良品とネットストアで発売。
さらに同社ではプラスチック素材の収納用品の回収も開始。そのほか無印良品の衣料品や、プラスチックボトル、紙製ハンガー・紙製フックなどの回収も行なっている。今後、リユース・リサイクルの取り組みをますます進めていくとし、将来的には他社とも協力し、リサイクル市場を拡大していくことを目指している。
アート、ファッションの発信地として、ユースカルチャーを牽引してきた渋谷PARCOは、2022年11月、“サステナブル”をコンセプトに4階フロアをリニューアル。独自の視点で選ばれた3R、「リユース」、「リプロダクト」、「ハンドクラフト」をキーワードにリエディットした。
若い世代がサステナブルを考えるきっかけになることを目指し、商品自体がサステナブルなものを扱っているショップを集結。さらに、リニューアルに伴い商業施設が常々抱えている、解体によって発生する“大量のごみ”問題に着目。 この問題には、“仮説的広場”をコンセプトにフロアを構成し新たな価値を持たせることで対応した。
オリジナル商品の容器・包材に植物を原料にしたバイオマスプラスチックや再生PETを配合するなど、環境配慮型素材の使用を進めるとし、2030年までに60%、2050年には100%を目指している株式会社ファミリーマート。
その取り組みの一つとして、コンビニエンスウェアのデザイナー落合宏理氏監修のもとモバイルアクセサリーのパッケージデザインを一新した。同時に、素材の見直しを図りプラスチックを削減した地球にやさしい仕様に変更。これによって従来品に比べ年間で約1.6トンのプラスチック使用量を削減する見込みだ。
株式会社ロフトでは、さまざまな企業と協力しながら、使用済みの幅広い商品を回収している。
たとえば、リサイクル企業であるテラサイクルジャパン合同会社と協力し、対象ブランドの使用済みコスメ容器を回収。回収容器は、新たな原料としてリサイクルされる。
そのほか、繊維製品のリサイクル回収を関東の6店舗で実施。繊維循環プラットフォーム「BIOLOGIC LOOP(ビオロジックループ)」により、回収された繊維製品は分別、リサイクルされ再生活用されている。
さらに、株式会社パイロットコーポレーションやテラサイクルジャパン合同会社と協力し、筆記具のパッケージを含むプラスチック類を回収しリサイクルする「使用済みぺンリサイクルプログラム」も実施。全国のロフト90店舗に回収拠点をおいている。
エシカルな取り組みを行うことで、人や社会、地球環境、地域に貢献できるほか、新しいビジネスチャンスを得た企業は多い。
取り組み方はさまざまで、社内で完結させる企業もあれば、他社と協力したり、外部機関の力を借りている企業もある。どちらのやり方が正解ということはないが、客観的な視点で、自社の強みや新たな可能性を見出すことが重要だ。
従来の考え方を超えて新しい発想を生み出すのは、容易ではない。まずは、サステナブルやSDGsを専門とするマーケティングのサポートを受けながら、エシカルな取り組みへの第一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。
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