サステナビリティを実現した新しい渋谷PARCOのかたち

渋谷パルコ4階

アート、ファッションの発信地として、ユースカルチャーを牽引してきた渋谷PARCOの4階が“サステナブル”をコンセプトにリニューアルした。新しい商業施設のあり方はどんなものなのか、開業時より意識してきたという想いとは。 今回のリニューアルを担当した株式会社パルコ マーケットクリエイション部の箱田氏に話を聞いた。

ELEMINIST Editor

エレミニスト編集部

日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。

2022.12.01
SOCIETY
学び

エシカルインフルエンサーとは? マーケティング起用のメリットや取り組みを解説

“新しい商業施設のあり方とは?”という問いを常に考え、挑戦を続ける

渋谷パルコ マーケットクリエイション部の箱田氏

箱田 耕平さん/株式会社パルコ マーケットクリエイション部 兼 渋谷R & D 担当

渋谷PARCOといえば、ファッション、アートの先端を提案しつづけてきた、若者に人気のファッションビルだ。この秋、その4階が大幅リニューアルした。テーマは2つ。「商業施設のあり方とは?」「サステナブルとは?」。開業当初から投げかけていたというこの問いに、今回リニューアルを担当した株式会社パルコ マーケットクリエイション部の箱田氏が答えてくれた。

「まず、わかりやすくプロダクトとしてサステナビリティに取り組んでいるブランドを多く入れたのが特徴です。例えば、《ネストローブ》による『UpcycleLino ™』の取り組みだったり、《ヌーディージーンズ》のように商品自体がサステナブルなものを扱っているショップを集結させました。

もう一つは、渋谷PARCOとしてサステナビリティを考えた時、商業施設が常々抱えている問題です。フロアやショップのリニューアルをするとき、工事期間中は壁を建ているため中が見えず、それが取り外されると新しいお店ができあがっているため、その過程はブラックボックスになっています。これは元々あったお店の内装を壊して、次のショップがお金をかけて新しい内装をつくるわけですが、やはり解体によってたくさんのごみが発生します。これはサスティナビリティの観点でいえば、真逆の動きです。これを解決したい、というのが今回のテーマでもありました。

そこで、設計事務所DAIKEI MILLSを中心とする社会プロジェクト『SKWAT(スクワット)』とグラフィックデザイナーの加瀬透さんと一緒に“仮説的広場”をコンセプトにフロアを構成しました。その中では、アーティスト・コレクティブChim↑Pom from Smappa!Groupが実験的な“商品”を販売するショップ《金三昧》や、博物館のバックヤードをイメージした什器に木、土、金属、紙、石などのマテリアルによって区分されたものを保存・販売する《Archives》など、商業施設ではなかなか見ることのできない面白い価値提案をされている方々に出店していただいています」

——新規ショップオープンするには、内装などコストもかかりますが、これなら予算を抑えられるというブランド側のメリットもありますね。

「そうなんです。これまで、新店をつくるにはコストがかかるので規模感が大きいブランドしか一緒に取り組めないという側面がありましたが、今回はある程度内側を整えているので、内装の投資をなるべく抑えながら、最低限のコストでお店をオープンさせることができます。そのため、商業施設には縁遠かった、デザインが優れているのに規模の小さい新進気鋭のブランドとも、一緒に取り組むことができるようになったというのもこのリニューアルの狙いです」

——見たこともないような新しいブランドを取り入れていく、というのは渋谷PARCOのイメージでもあります。

「そこは元々大事にしています。ファッションだけではなく、カテゴリーにも柔軟性を持たせています。渋谷PARCOの特徴として、ハイブランドやコンテンポラリーなアートがある一方で、キャラクターのIPコンテンツやアイドルコンテンツがあったりとジャンルの広さは意識しています」

アートやファッションを入り口に、若い世代がサステナブルを考えるきっかけになりたい

渋谷パルコ4階フロア

共用通路との境界線をはっきりと仕切らないことで、公共性を表現している。什器が統一されていることで、各ショップのディスプレイの個性が光る。

——“仮説的広場”として「SKWAT」とつくったという内装ですが、お店と共用部分の境界線があいまいなのは新しいですね。

「従来の商業施設にはないような空間、いわゆる公共性や屋外の要素をキーワードとして、レンガを想起させるグラフィックデザインをあしらった単管パイプでショップを構成しています。将来的に、また違う空間をつくりたい場合、単管パイプを取り外して再構成するだけなので、お店を大きく壊す必要がありません。また、各ショップの単管とつながったベンチが共用スペースに飛び出しています。主役は共用通路の空間であり、そこが売り場につながっているという少し不思議な空間にチャレンジしてみました」


——たしかに新しい試みです。ベンチは具体的にどのような楽しみ方を提案しているのですか?

「PARCOは元々イタリア語の“公園”が語源です。さまざまな方が集まれる環境を目指しました。例えば、リニューアル前の渋谷PARCO B1Fにパルコブックセンターがありましたが、そこは待ち合わせや暇つぶしに利用する方が多くいらっしゃいました。同じようにここで時間を潰してもらったり、6Fに《Nintendo TOKYO》がありますが、ベビーカーでお子様連れのママさんがお買い物した後に座って休むなど、レストスペースとしても使っていただきたいですね」

渋谷パルコ マーケットクリエイション部の箱田氏

単管パイプとジョイント(接合部品)で構成されたショップ。通路側にはベンチを配し「ショッピング以外での目的としても楽しんでいただけるようになっています」と箱田氏。

——リニューアルに際して「リユース」、「リプロダクト」、「ハンドクラフト」の3Rをコンセプトにされた理由を教えてください。

「これは渋谷PARCOが、ポップアップやサービス提供の中で、開業時からやってきたもので、今後も積極的に発信していきたいテーマです。“リプロダクト”ですが、《ネストローブ》『​​UpcycleLino ™ 』のように、使われなくなった生地をもう一度断裁してそこからまた新しいデザインをつくるとか、ファニチャーブランドの《GMKR〈ゴミカラ〉》のように廃材を分解してまた椅子にするといったものです。古いリサイクルショップからプロダクトを買い、そこからまた新しい価値を付けて、全く違うものに生まれ変わらせるということは、かなり市民権を得ていると思います。

“リユース”とはヴィンテージのことで、循環という意味でサステナブルです。実は4階には元々《RINKAN》という買取カウンターがあったり、《ソールジャック》という靴に特化し、ソールの交換などができるお店もあります。今後ヴィンテージのリユース的な動きと連動してカスタムなど幅を広げていきたいと思っています。最後の“ハンドクラフト”は、クリエイターさん自身の手づくりに加え、小さな工房で手作業でつくっている魅力的なプロダクトも多いので、サポートできないかと考えています」

——これからチャレンジしたいことはありますか?

「まずはこのプロジェクトを継続させることですね。それから屋上や4階外の広場でマルシェ的なイベントや体験型の企画を積極的にやっていきたいです。また、今回タイ料理店《CHOMPOO》で親鶏肉を活用したメニューを出していますが、ファッションや雑貨だけではなく、フードなどライフスタイル全般において体験型のイベントなどを開催していけたらと思っています。私たちは何かを教える、というものではなく、来店していただいた方々がサステナブルについて考えるきっかけになるような入り口づくりをしたいと思っているんです」

渋谷PARCO独自の「3R」でセレクトしたサステナブルなブランド

渋谷PARCO独自の視点で選ばれた3R、「リユース」、「リプロダクト」、「ハンドクラフト」で4階フロアをリエディット。サステナブルを意識する注目のブランドをピックアップした。

nest Robe / CONFECT ネストローブ / コンフェクト

「SLOW MADE IN JAPAN」をコンセプトに掲げ、ファッション業界はスピード感やトレンドを重視されることが多い中で、あえてシャトル機などの低速機を使うなど、ゆっくりと時間をかけて丁寧なものづくりを心がけるブランド。リネンを中心に、コットン、ウール、麻など天然素材のみを使用。洋服をつくる際に出る「裁断くず」を一度細く粉砕し、綿状にして再度糸にして、新たな服をつくる「UpcycleLino ™ 」のラインは、渋谷PARCO店ではフルラインアップで展開。

Nudie Jeans ヌーディー ジーンズ

2001年にスウェーデンで誕生したヌーディージーンズは「ファッションにおける環境への問題点を軽減させる」ことを念頭に、2012年にはすべてのアイテムを100% オーガニックコットンに変更。さらにジーンズは、永久リペア保証で何度も修理しながらずっと履きつづけられるサービスを実施。履き終わったものは回収・下取りし、リサイクルという形でリペアや洗いをかけてユーズド品として販売するといったリユースラインも展開している。

金子眼鏡店 カネコガンキョウテン

1958年、眼鏡産地・福井県鯖江市に創業した老舗のブランド。眼鏡職人の技術を継承しながらハンドメイドの良さを世界に発信している。温かみがあり、細かなところに手が行き届いたアイウェアは、ひとつずつ個体差があるのも愛着が湧く。自社工場がある珍しい眼鏡ブランドで、販売後のメンテナンスや修理も職人たちが行ってくれるのも嬉しいポイント。渋谷PARCO店ではヨーロッパを中心としたデッドストックのヴィンテージも数多くラインアップ。

GMKR ゴミカラ

企業や一般家庭などから回収した廃棄品を分解し、パーツを組み合わせて椅子やテーブルなど新たなプロダクト生み出すブランド。ヴィンテージやブランドものなど次に使い手がいるようなものではなく、あくまで不要となったものをメインに、再構築することで新たな価値を生み出している。そのためほとんどが一点もので、アート性や個性を好むカルチャーピープルの遊び心をくすぐる。渋谷PARCO店ではオブジェも展開。

CHOMPOO チョンプー

「食の多様性を表現したい」という想いのもと新鮮な料理を提供する森枝 幹シェフがプロデュースする新たなタイ料理店。青いご飯を使ったカオヤブ、カレーの炊き込みご飯などタイ料理と言ってもさまざまな幅があるということを啓蒙している。注目料理は、若鶏の親鶏を使用したガパオライス。通常、日本では若鶏が好まれるが、ここで使用しているのは通常そのまま食べられることの少ない生後450日以上の親鶏。弾力がありつつ味が引き締まっており、濃厚な旨味が広がる。

VCM MARKET BOOTH ヴイシーエム マーケット ブース

日本最大級のヴィンテージ総合プラットフォーム《VCM(Vintage Collection Mall)》が手がける、マーケット型リアルショップ《VCM MARKET BOOTH》。ハイブランドのバッグなど小物を中心とした2つのヴィンテージショップが参加するゾーン、4つのショップによる服のゾーンの2つのエリアに分かれている。3ヶ月ごとにショップが入れ替わる仕組みで、現代のデザインとヴィンテージをMIXするスタイルを提案。併設された《VCM GALLERY》では、ヴィンテージの概念と親和性のあるブランドやアーティスト作品を定期的に展開。ヴィンテージは現在の大量生産とは違い、生地や染め、素材の手作業によるクオリティーの高いアイテムが多く、一生ものと出会えるかもしれない。

Mid-Century MODERN ミッド センチュリー モダン

インテリアの黄金期、1940 年代~70年代のミッドセンチュリー期につくられたインテリアを中心に扱うショップ。《イームズ》のチャールズ&レイ イームズによるハーマンミラーや《ジョージ・ネルソン》など貴重なデザインが揃う。また、《イームズ》のシェルチェアは国内屈指の品揃えです。ヴィンテージのインテリアは引っ越しなどで処分するのではなく、次の世代に引き継げるものだ。

newstaa ニュースタア

「アート作品を見るように買い物を楽しむ」をコンセプトにした服・雑貨のセレクトショップ。ハンドクラフト感がある若手クリエイターのインディペンデント作品など個性派デザインが集結。店内には10日間で切り替わるポップアップコーナーや、月3回は企画が変わるギャラリーなど、いつ訪れても新鮮な空間だ。

RYE TENDER

Photo by RYE TENDER

他にも、2階では生産過程において廃棄予定だった残糸・残布などから、衣服をつくるアップサイクルプロジェクト「RYE TENDER(ライテンダー)」が、12月4日(日)までポップアップストアを開催するなど、注目のサステナブルブランドも随時展開される予定だ。

渋谷PARCOらしさを一層体感できる新たな試み

サステナブルを合言葉に新たに生まれ変わった渋谷PARCOの4階フロア。従来の商業施設が抱えていた、廃材の問題や出店にかかるコストといった問題点を解決する新たな試みとなっている。独自の視点でのサステナブルに特化することで、これまでも力を注いできた個性的で勢いがある若手クリエイターの発掘にもさらに拍車がかかるようだ。今後もより一層、渋谷PARCOらしさが強まることに期待が高まる。

撮影/天野 拓 取材・執筆/松下尚文
取材協力/渋谷PARCO

※掲載している情報は、2022年12月1日時点のものです。

    Latest Articles

    ELEMINIST Recommends