「地球が私たちの唯一の株主」パタゴニアの次の50年に向けたスタート

パタゴニア創業者 イヴォン・シュイナード

Photo by © Campbell Brewer

パタゴニアは9月15日、新しい組織「the Patagonia Purpose Trust」と「the Holdfast Collective」にパタゴニアの所有権をすべて譲渡した。これによりパタゴニアの事業に再投資されない資金のすべてが地球を守るために配当金として支払われる。

ELEMINIST Press

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2022.09.26

「株式公開に進む(Going public)」のではなく「目的に進む(Going purpose)」

パタゴニア本社 ベンチュラ キャンパス

パタゴニア本社 ベンチュラ キャンパス ©Kyle Sparks

米国カリフォルニア州ベンチュラで9月15日(日本時間)、パタゴニアの創業者イヴォン・シュイナード氏が責任ある事業という試みを始めてから50年近くが経過したこの日、パタゴニアは会社の新たな所有形態を発表した。

シュイナード・ファミリーは、2つの新しい組織である「The Patagonia Purpose Trust」と「the Holdfast Collective」にパタゴニアのすべての所有権を譲渡し、即時有効となった。

これによる最大のメリットは、パタゴニアの事業に再投資されない資金のすべてが地球を守るために配当金として支払われることだ。

「The Patagonia Purpose Trust」は会社のすべての議決権付株式(全株式の2%)を保有し、パタゴニアの目的とバリューを大切に継続していくためのより永久的な法的基盤を形成するために存在する。

また創業者の志から決して逸脱しないよう「営利企業として資本主義が地球の役に立つことを証明する」というパタゴニアが最善を尽くして継続すべきことを推進するのをより確実にするとしている。

「the Holdfast Collective」は、すベての無決議権株式(全株式の98%)を保有し、受領した資金のすべてを自然や生物多様性を保護し、活発なコミュニティをサポートし、環境危機と闘うために使用するという。

毎年パタゴニアが事業に再投資しなかった余剰利益を配当金として支払い、危機との闘いに役立てていく。パタゴニアは事業の健全性に応じて、年間約1億米ドルの配当を支払うことを想定している。

パタゴニア創業者 イヴォン・シュイナード

パタゴニア創業者 イヴォン・シュイナード ©Campbell Brewer

パタゴニア創業者であり全オーナー、そして現取締役会構成員でもあるイヴォン・シュイナード氏は次のように述べている。

「私たちが責任あるビジネスという実験を始めてから50年近くが経ちました。この先50年の地球の繁栄を願うのなら、私たち全員が、いま手にしているリソースでできることをすべて行うことが不可欠です。

ビジネスリーダーになりたいと思ったことはありませんが、私はこの役割でなすべきことを行っています。私たちは自然から価値あるものを収奪して富に変換するのではなく、パタゴニアが生み出した富をその源を守るために使用します。地球を唯一の株主にするのです。私は真剣です。この地球を守ります」

人間と地球を第一に考えたビジネス 「私たちが最大限努力すれば地球を救うことができる」

The Patagonia Purpose Trustのイラスト

パタゴニアは、Bコーポレーション認証を今後も維持し、毎年売上の1%を草の根の活動団体へ寄付すること継続していく。

会社の経営陣に変更はなく、今後もライアン・ゲラート氏がCEOを務め、シュイナード・ファミリーは、引続き、クリス・トンプキンス氏、ダン・エメット氏、アヤナ・エリザベス・ジョンソン氏、チャールズ・コン氏(取締役会議長)、ライアン・ゲラート氏(CEO)とともにパタゴニアの取締役を務める。

また、会社の支配株主である「The Patagonia Purpose Trust」に指針を示し、取締役会構成員の選任や取締役会の監督をし「the Holdfast Collective」が実施する慈善活動を指導する。

パタゴニアの取締役会と「The Patagonia Purpose Trust」とが協働することで、パタゴニアがその目的と価値観に忠実であり続け、長期的な成功が継続できるように取り組んでいく。

パタゴニアのCEOであり取締役会のメンバーでもあるライアン・ゲラート氏は次のように述べている。

「2年前、シュイナード・ファミリーは私たちの数人に『大きな2つの目標に取り組む新たな組織形態を構築する』という課題を提示しました。彼らは、私たちがパタゴニアの事業の目的を守ること、環境危機と闘うためのより多くの資金を即時かつ永久的に提供できるようにすることの両方を望んでいました。

私たちはこの新たな組織形態でその両方を実現できると確信していますし、人間と地球を第一に考えたビジネスを営む新たな方法がさらに引き出されることを願っています」

1972年頃のイヴォン・シュイナード

1972年頃のイヴォン・シュイナード ©Tom Frost

パタゴニアは2022年9月15日、全世界を対象とした社内集会でこのニュースを最初に従業員に共有。その直後、ウェブサイトを更新し、創業者イヴォン・シュイナード氏からのメッセージとともに「地球が私たちの唯一の株主」となったことを公表した。

パタゴニア取締役会構成員からは次のような追加コメントが寄せられている。

「私が初めてイヴォンと出会ったのは彼が24歳の時でした。その彼もあと少しで84歳になろうとしています。その間ずっと、彼のビジョンが揺らぐことは決してありませんでした。

彼自身のやり方で、彼自身の条件で物事を進めたいと思っていました。そしていま、健康状態が良好なうちに、会社の将来と地球の将来のための計画を立てておくことを望みました。

私は、彼とその家族が協力してつくり上げたこの計画が地殻変動を起こすと考えています。これにより、会社の競争力はさらに高まり、世界中の従業員は目的に向かって永遠に力を発揮できるでしょう」(クリス・マクディビット・トンプキンス氏)

「新しい科学レポートを読むたびに、気候危機は私たちが考えていたよりも急速に起こり、そしてより深刻であることがわかります。これ以上ないほどの危機なのです。私たちが自然を守り、コミュニティを支えたいと思うのならば、各企業は現在主流の経済モデルに固執し続けることはできません。

パタゴニアは何十年かけてこのモデルを打破し続け、とうとうこれを完全に脱却しました。私はいま、『次はどの企業が乗り出すのか」という点に注目しています」(アヤナ・エリザベス・ジョンソン氏)

「現在の資本主義のシステムは、不平等の拡大や取り返しのつかないさまざまな環境破壊など、莫大な犠牲を払って利益を得ています。この世界は文字通り火の海なのです。

目的への深いコミットメントを通じて資本主義の次世代モデルを創造する企業は、より多くの投資を集め、より優秀な従業員を惹きつけ、お客様のロイヤリティを高めるだけではありません。私たちがより良い世界の実現を望むならば、そのような企業がビジネスの未来を担うのです。そして、イヴォンが今行っていることがこの将来のはじまりとなるでしょう」(チャールズ・コン氏・取締役会議長)

「50年近くビジネスを営んでいる会社の創業者として、ビジネスがコミュニティや従業員に対して与えうる、良い影響と悪い影響の両方を見てきました。

しかし、私たちも他企業も、地球に与える影響を低減するための有意義な措置を講じていますが、パタゴニアの新しい所有形態は、現存するあらゆる形態の先を行くまったく新しいモデルです。これこそが、私の生涯の友人であり、環境活動の仲間でもあるイヴォン・シュイナードの志に忠実な形なのです」(ダン・エメット氏)

お問い合わせ先/パタゴニア
https://www.patagonia.jp/ownership/

※掲載している情報は、2022年9月26日時点のものです。

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