日本古来からつづく「自然と寄り添う」姿勢がベース BAUMを通して知る樹木の循環

「自然との共生」をコンセプトにする資生堂のブランド「BAUM(バウム)」

Photo by BAUM

ビューティ業界のサステナビリティ

2020年にローンチした資生堂の「BAUM(バウム)」。家具の製造工程で出る小さな木材(端材)をパッケージにアップサイクルし、店頭では極力ごみを出さない工夫をするなど、資源を循環して大切に利用できる取り組みを行っている。同ブランドのテーマ「樹木との共生」について、紐解いていく。

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2022.11.15
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<SUMMARY>
取組の概要:「樹木との共生」をテーマに、樹木の資源の循環を目指すBAUMをスタート
きっかけ:日本で古来からある「自然とともに生きる」思想を大切にしていきたいと考えたこと
背景にある課題:国土の約7割を占める森林を守るためには適切な管理が必要

着目したのは、日本に古くからある「自然とともに暮らす思想」

資生堂「BAUM」の木製パッケージに生まれ変わった、カリモクの家具の端材

Photo by BAUM

木製家具メーカーで出る端材が、BAUMのパッケージに生まれ変わった。

BAUMといえば、木でできた温かみのあるパッケージが特徴的だ。化粧品のパッケージに木材を使う型破りな試みを行ったのは、BAUMのテーマ樹木との共生」をわかりやすく体現した取り組みのひとつと言える。

ブランド誕生の出発点となったのは、日本に古来からある「自然とともに生きる思想」だったという。グローバル ブランド マネージャーの西脇文美氏は、日本人ならではの自然への向き合い方について、庭づくりを例に挙げてこう説明してくれた。

「欧米では、草木を規則的に配置して美しくつくりこんだ庭が好まれますよね。それに対して、日本の庭園は左右非対称で、土地や自然の特徴を活かして構成されています。日本では、欧米とは違い、自然と調和することを重んじ、ともに生きていくという考えがあるのではないでしょうか」(西脇氏、以下同)

食事のときには、自然の恵みに感謝して「いただきます」と言い、ものを最後まで使う「もったいない」の精神が根付いてきた。島国で資源が有限であるからこそ、その限られた資源をいただき、循環させながら使ってきた。これは、「サステナブル」や「SDGs」の言葉が広まったここ何年かのことではなく、もともと日本で自然と受け継がれてきた価値観なのだろう。

「日本の企業として新しい価値をつくっていくと考えたとき、日本ならではのそのような思想を大切にしていくべきだと考えました。そして『自然とともに生きることを軸とした価値づくりをはじめていったんです」

長い時間軸で将来を見据える 循環を象徴する「樹木」の存在

「BAUMの森」

Photo by BAUM

BAUMが植樹活動を行っている岩手県の「BAUMの森」。

自然との共生」がコンセプトとして浮かびあがるなか、注目したのが樹木の存在だ。農林水産省のデータによると、日本は国土の67%が森林で、およそ3分の2が森林ということになる。それだけ、日本人にとって森林は身近な存在であり、樹木は昔から建物や家具などに使われてきた。

「木は、切って資源として使っても、再び植えて育てることができます。資源の『循環』をわかりやすく伝えられる素材だと思いました。それに、木は何百年、何千年と生きていくものなので、長期視点で将来に目を向けるきっかけになると思ったんです」

こうして生まれたのが、BAUMのブランドテーマである「樹木との共生」だ。また、このテーマには、日本の森林が抱える問題に、化粧品を通して興味を持ってもらいたいという思いもあったそうだ。

資生堂「BAUM」の店頭にディスプレイされているオークの苗木

Photo by BAUM

BAUMの店頭にはオークの苗木がディスプレイされている。この苗木は後日、植樹される。

森林を守るためには、適切な管理が必要となる。例えば、成長にともなって一部の木を間引いていく「間伐(かんばつ)」。木の密度を調整することで森林内に適度に日光がさしこみ、木の生育が良くなる効果がある。

また間伐を適切に行うことで、高齢の木ばかりではなく新しい木を植えることができ、土砂崩れを防いだり二酸化炭素を吸収したりする、森林本来の機能が維持できるという。つまり、森林に適切な新陳代謝があってこそ、本来の役割や働きを担いながら樹木が生き生きと生育できるというわけだ。

しかし、林業従事者が少なくなり高齢化が深刻化している。さらに、日本で使われる木材の大部分が輸入品であることなどから、日本の林業は厳しい状況におかれているという。

「海洋プラスチックや気候変動の問題はよくメディアで取り上げられるので、環境問題のひとつとして日本でも広く認識されていますよね。一方、林業の課題については、あまり光があたっていません。BAUMを通して、そんな林業が抱える問題にも興味を持ってもらうきっかけになればいいなと思っています」

家具の端材を化粧品のパッケージにアップサイクル

家具の端材からつくられる「BAUM」の木製パッケージ

Photo by BAUM

木目や色合いなどが一つひとつで異なるのも、木製パッケージならではの魅力。

「樹木との共生」がテーマに決まると、いよいよ具体的な製品開発の段階に入る。西脇氏は、開発当初から商品には本物の木を使いたいと思っていたと話してくれた。新たに伐採した木ではなく、間伐材など、今あるけれどうまく活用されていない素材を検討するなか、木製家具メーカーのカリモク家具」との出合いが生まれた。

カリモク家具は「木とつくる幸せな暮らし」を目指し、適切に管理された森林から材料を仕入れ、国際的な森林認証制度であるFSC認証PEFCのCoC認証を取得。そのほか、リサイクル材を活用したり、CO2排出量削減のための取り組みを行ったり、環境に配慮した数多くの取り組みを進めているメーカーだ。

「カリモク家具さんでは以前より家具をつくる過程で出る小さな木材(端材)を、椅子の裏など、表から見えない家具の一部に活用されていらっしゃいましたが、もっと付加価値のある使い方ができないか模索していたところでした。そこでBAUMの考えに共感していただいたんです」

こうして、カリモク家具で出た端材をBAUMのパッケージにアップサイクルするというコラボレーションが実現した。木目も色合いも異なり、一つひとつで違う表情を見せてくれる。世界にひとつとして同じものがない木製のパッケージは、BAUMの魅力のひとつであり、いまやBAUMを象徴する存在となっている。

植樹活動からごみを出さない店頭でのアイデアも

資生堂「BAUM」の木製パーツとレフィル

Photo by BAUM

レフィルを交換すれば、木製パーツはそのまま使い続けられるデザインだ。

この木製パーツは、レフィル交換すれば、そのままずっと使い続けられる。家具のように長年愛用して、使いこむほど手になじみ、風合いの変化を楽しめるそうだ。

またBAUMでは、樹木の循環をサポートする植樹活動も行っている。店頭では、木製パーツで使われているオークの苗木を中心に育て、それを岩手県にある「BAUMオークの森」に植え、循環を目指している。

この活動は2021年から始まり、毎年600本を植樹。苗木から成木に育つまでは、70~80年という長い年月がかかるが、樹木のめぐみをいただき、その資源を循環していく活動が行われているのだ。

「BAUMの森」

Photo by BAUM

「BAUMの森」の看板には、「2021年から600本を植樹」と記されている。

さらに、BAUMでは環境負荷を軽減するため、ごみを出さないさまざまな取り組みを行っている。例えば、店頭で商品を購入する人にわたす紙製ショッピングバッグの不使用だ。

「化粧品ブランドでは、ブランドロゴが入ったアイコニックな紙製ショッピングバッグをつくるのが一般的です。でも、BAUMではできるだけごみを出さないことをポリシーにしていて、ショッピングバッグはつくらず、基本的に購入した商品はそのまま持ち帰ってもらっています」

どうしてもバッグが必要な方には、有料のエコバッグを販売し、ギフト利用したい方にはリボンを無料でわたし、商品の箱やエコバッグにそのままリボンを結んでプレゼントできるよう工夫している。

資生堂「BAUM」のエコバッグ

Photo by BAUM

有料で販売しているエコバッグ。

そのほか、商品の香りを試す試香紙についても、ごみにせずリユースできることを考え、ハンガー型にデザイン。香りを試しながら、自宅に持ち帰った後はクローゼットにかけて、ペーパーフレグランスとして使ってもらえるというアイデアだ。

資生堂「BAUM]ではごみを減らす取り組みとして、試香紙のペーパーフレグランスに

Photo by BAUM

ペーパーフレグランスにもなるBAUMの試香紙。自宅のクローゼットにかけて、香りを楽しめる。

「パンフレットなど店頭の配布物はすべてデジタル化し、レフィルのガラス容器にはリサイクルガラスを採用しました。一部のプラスチック容器にはバイオPET樹脂を使うなど、できるだけ環境に負担のかからないものを選んでいます。

私たちが大事にしているのは、BAUMで買い物してもらうことそのものが、自然環境に配慮することや樹木の循環につながるということ。BAUMを選ぶことが環境問題のサポートに貢献できると思ってもらえたら、うれしいですね」

自然由来成分90%以上 心地よい香りに癒される

「樹木との共生」をコンセプトにする資生堂の「BAUM」

Photo by BAUM

気になるBAUMの中味だが、「樹木との共生」のテーマに沿って、成分についても樹木由来にこだわって使用している。樹木といっても、幹だけに限らず、樹皮、葉、根、果実など、樹木のあらゆるパーツのさまざまな成分を抽出。これを自然由来成分90%以上の配合に導いたそう。

「化粧品なので、気持ちよく使っていただけることが大切ですよね。そこで行き着いたのが自然由来成分90%という配合でした。100%に固執しない分、パラベン、シリコン、合成着色料は使用していないことをマニフェストに明記し、安心して使っていただけるよう情報開示しています」

そんな成分に安心感を感じ、香りの良さや使っているときの気持ちよさを理由に、実際にBAUMを手にとる顧客がとても多いそうだ。

「木にはぬくもりがあって、香りがいいですよね。購入の決め手に香りの良さをあげる方がとても多いですね。また、ブランドのフィロソフィーに共感する方、インテリアの一部として購入していく方、テクスチャが心地いいという方、木が好きだからという理由で手にする方など、購入理由が実に多面的であることもBAUMならではと言えそうです」

とくに、性別を問わないジェンダーニュートラルなスキンケアブランドとして生まれたBAUMに対して、若い世代からの興味関心が大きいそうだ。

「BAUM」NEWoMan横浜店の外観

NEWoMan横浜にあるBAUMの店舗。

そんなBAUMの思いに共感する人の輪は、購入する顧客層だけでなく、製造・制作側でも生まれているそう。BAUMに関与するパートナーの多くが、BAUMの思想・活動への共感を通じて参画する例が多いという。

2022年11月3日には『アロマティック ハンドクリームS』のパッケージをリニューアル。FSC認証紙を一部に使用し、プラスチック使用量を30%削減したデザインを導入するなど、新しい試みも進めている。また2021年から始まった中国での販売に加え、今後は新市場展開も視野に入っているとのこと。「地球に配慮した取り組みを広げていきたい」というBAUMの思いは、着実に日本でも世界でも広がっているようだ。

企画・取材・編集/佐藤まきこ(ELEMINIST編集部)

※掲載している情報は、2022年11月15日時点のものです。

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