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間伐(かんばつ)とは、森林の一部の樹木を間引くことをいい、森林を保護するためには必要不可欠な作業だ。そして間伐で出た木材を間伐材という。間伐を行う理由・メリットや伐採(ばっさい)との違いは何だろうか。さらに間伐材の利用方法や事例について紹介する。
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間伐とは、森や林で樹木の成長に応じて、一部の樹木を切り取って間引くこと。樹木が成長していくと、木々が密集して過密となる。そこで、混みすぎた森や林の木の一部を切り取ることが必要になる。それを間伐という。読み方は「かんばつ」。
間伐と似た言葉に「伐採(ばっさい)」がある。伐採は、森や林の樹木を切ることを意味する。間伐は森林を健康的に保つために一部の樹木を切ることを意味するのに対して、伐採は単純に森林の木を切り倒すことを意味する。樹木を切り倒す目的に違いがある。
間伐は、大きく「定性間伐」と「定量間伐」の2種類がある。
定性間伐
定性間伐とは、樹木の形状や品質を考慮して、切り取る木を決めて伐採する方法。育ちが悪い木を選んで切り取る「下層間伐」と、逆に価値のある木を切り取る「上層間伐」がある。下層伐採は伐採による収益が低くなるが、上層伐採なら高くなる。
定量間伐
定量間伐とは、樹木の品質に関わらず、直線的に切り取る方法。切り取る樹木の選定に時間がかからないため、経済的というメリットがある。
間伐を行う理由は、森林をより健全な状態にするため。過密になった森林では、樹木同士がお互いに成長を阻害してしまう。そこで一部の樹木をあえて切り取ることで、地表まで太陽光が届くようになり、残った樹木が健康的に成長できるようになる。間伐を行うことは、森や林を守るためにとても重要な意味があるのだ。
間伐を行わなかった場合、密集した樹木が十分に成長できないため、形質不良になる。また、森林の地表まで太陽の光が届かず、下草なども生えない状態になる。すると、雨で土砂が流出したり、健康な樹木が育たないために、風や雪で樹木が簡単に折れたり、災害が発生しやすくなる。さらに、害虫や病気も発生しやすくなり、森林全体の健康状態も悪化するのだ。
日本は、国土面積(3,779万ha)の約7割(2,505万ha)を森林が占めている森林大国だ(※1)。しかし、木材価格が低くなっていることや、林業に携わる人々の高齢化などによって、間伐を適切に行われず放置されている森林が増えている。
間伐材とは、間伐で切り取られた木材のことをいう。間伐して、切り取った樹木を搬出して間伐材を利用する方法と、切り取った樹木をそのまま山に残す方法がある。山に残す方法は「切り捨て間伐」と呼ばれている。
上述したように、間伐は森林を健康的に守るためには、必要不可欠な作業だ。そして、これまでは切り取った樹木をそのままにする「切り捨て間伐」も多かったが、最近は間伐材を有効に利用しようという動きが活発になってきている。いくつかの例を紹介しよう。
日本の木製家具メーカーのカリモク家具では、間伐材を使ったコレクションも提案している。間伐材は、供給が不安定であることや、強度にバラつきがあるなどの欠点があるが、そのような色の変化などを上手にデザインとして取り込んでいる。
福島県の鉄道林で出た間伐材から、ヘミセルロースという成分を抽出。生分解性バイオプラスチックタンブラーに開発する試みも行われている。東北地域の復興のための一環として取り組まれている。
プラスチックの使用量を削減しようと、紙などの別の素材を使ったストローがつくられるなか、JR東日本サービスクリエーションでは間伐材などをもとに木製ストローをつくって試験導入したことがある。
動植物などから生まれた生物資源であるバイオマス。その生物資源を燃焼したり、ガス化したりするのが、バイオ発電だ。間伐材のような木材は、そのようなバイオ燃料(バイオマス燃料)として利用することもできる。
間伐材のなかでも良質な状態のものは建築材に利用することもできる。また、小さな木材を貼り合わせて板にした「集成材」として利用することも可能だ。
そのほか、紙コップ、紙皿、コーヒーのペーパーフィルターなどのキッチン用品から、割りばし、うちわ、トレーなどの生活用品、ハガキ、封筒、名刺などのオフィス用品などにも利用されている。
間伐は森林を健康的に保つためには欠かせない。そのため間伐材を利用することは、森林を守ることにつながるうえ、林業従事者の収入源にもなる。一方、間伐材を利用する側から見ると、比較的安い金額で購入しやすいメリットがある。とはいえ、安く仕入れられる輸入材などの影響で、間伐材の利用が少ないという面もある。
間伐材は、サイズがまちまちで加工しづらい、細いといった理由があることから、一般的な建材として使いにくいデメリットがある。また、曲がったり、節が多かったり、利用しにくいものが多いという点もある。
だが、決して質が悪いということではなく、森林を守るために間伐材を利用しようという動きが広がっているのだ。間伐材をより積極的に使うことは、森林を守る間伐などの作業を行っている人々に収入が入ることで、それはつまり森林を守る活動につながっていく。
間伐を行って森林を守り、さらに間伐材を利用していくこことは、SDGs(持続可能な開発目標)につながる。目標15「陸の豊かさも守ろう」では、森林保全や野生生物の保全を目標として掲げており、間伐はこの目標に通じている。
日本は森林大国であり、昔から住居や身近なアイテムに木材が使われてきた。だからこそ、間伐という森林保全には必要不可欠な作業について学び、その重要性に目を向けていくことが大切なのではないだろうか。
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