異なる2つの価値を掛け合わせて、想像を超える「第3の価値」を生み出すというというコンセプトで2009年に誕生したTHREE。スキンケアの代表ラインであるバランシングシリーズをはじめ、ブランド全体を通して要となるのは「人も自然のひとつである」という思想だ。これは、THREEが進めるあらゆるサステナブルな取り組みの基点となっているようだ。
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<SUMMARY>
◆取組の概要:国産の植物原料やアップサイクル原料を採用
◆きっかけ:創業当初から掲げる「人も自然の一部」の考えを再解釈したこと
◆背景にある課題:現代人は“自然欠乏症”であり、使わずに廃棄されている素材があった
ブランド誕生から14年目を迎えたTHREE。以来、ブランドの象徴ともなっているスキンケアラインがバランシングシリーズだ。精油をはじめ植物の力を通して、肌だけでなく、からだ、心のバランスも前向きな状態へ整える。THREEのブランドフィロソフィーであるホリスティックケアを具現化する商品で、2023年2月に3度目のリニューアルを果たした。
今回のリニューアルは、新型コロナによるパンデミックがひとつの契機となった。2度目にリニューアルを行ったのは2019年。その後、世界は未曾有のパンデミックに見舞われ、人々のライフスタイルは大きく変化した。
スマホやパソコンのデジタル画面を一日中ながめ続け、忙しさに追われる日々のなかで、「私たち現代人は、“自然欠乏症”になっている」と、THREEマーケティング部ゼネラルマネージャーの桝浩史氏は語る。
「不安やストレスの多いこの過酷な状況を生き抜くためには、自然の力がより重要になるだろうと考えました。そこで立ち返ったのが、THREEの原点である『人は自然の一部』という考えです」(桝氏、以下同)
バランシングシリーズに使われているサフラン。
新ラインのアイテムはいずれも、自然成分の割合を示す「ISO自然由来指数(ISO16128)」が90%以上の成分がベース。そこにサイエンスをかけ合わせることで、品質の安全性や安定性、確かな実感を叶える現代人に最適な処方を開発した。
「本来、自然の中で生きていた私たちは、スキンケアを通して植物の恵みを取り入れることで、まるで自然と一体化していくような感覚を覚えます。自然との触れ合いが不足している私たちに必要なのは、まさにそんな瞬間だと思うんです」
実際、新バランシングシリーズを肌につけると、肌との一体感を感じられる。ユーザーの多くが香りの良さを評価するように、スキンケアしながら深呼吸したくなる心地よさがある。
それもそのはず、THREEでは肌にだけ着目するのではなく、心とからだも含めたバランスを大切にしている。新バランシングシリーズでは、そのコンセプトはそのままに、より「心・からだ・肌」のバランスを整えることを目指したという。
ポイントとなるのは、THREEが大切にするホリスティックケアの考えだ。ホリスティックとは、「全体的」「包括的」を意味する言葉。肌だけではなく、心やからだ、ひいてはその人の暮らしや、それを取り囲む地球環境まで、広い視点に立ってアプローチしていくことが、その人本来の美しさを引き出すことにつながると桝氏は言う。
「健やかな肌や心、からだがあれば、自然と前向きになれたり、自信を持てたりしますよね。ホリスティックケアは、現代を豊かに、しなやかに生きるうえで、大きな力になると思うんです」
シソ科のホーリーバジル。新バランシングシリーズでは、ホーリーバジルから抽出した精油を採用している。
ホリスティックケアの鍵となるのが、精油の存在だ。精油は、植物の花びらや茎、根から抽出される成分で、たった一滴に100〜400もの複合成分が含まれているという。「香りとしてだけではなく、鼻や皮膚を通じで全身を巡ることで、心身へホリスティックにアプローチしていく」と、桝氏は語る。
さらに、できる限り、国産原料にこだわるという点も、THREEのホリスティックケア開発基準のひとつ。そこには、創業当時から大切にしてきた「人と人が暮らす土地は切っても切り離せない関係である」という“身土不二(しんどふじ)”の考えがあるという。
「キーとなる精油や植物原料はなるべく国産にこだわって、その土地のいいものを厳選して採用しています。国内産の原料を多く使用すれば、輸送時のCO2排出量の削減、地域活性化やトレーサビリティ確保などのメリットにもつながります」
例えば、今回の新バランシングシリーズで使用している、スパイシーな独特の香りが特徴のホーリーバジル。
「抗酸化作用や抗ストレス作用が期待できるハーブとして知られ、インドの伝統美容アーユルヴェーダでもよく使われています。そんなホーリーバジルを沖縄県今帰仁村で育てている生産者さんに出会えました。熱帯や亜熱帯で栽培されることが多く、日本で生産されているとは知らなかったので、初めは驚きました」
この国産ホーリーバジルとの出会いは、THREEの「ホリスティックケアセンター」のネットワークで生まれたそうだ。同センターは、ホリスティックケアの概念をさらに掘り下げるべく設立。
社内外のエキスパートや研究機関とアライアンスを組み、精油をはじめとする植物から得られる、心・からだ・肌への影響についての研究や、地域社会との取り組みを通じた植物原料のリサーチ、開発を行っている。
国産の茶の実から低温圧搾で抽出したティーシードオイル。2009年のTHREE創業時から多くの商品に配合している。
THREEの植物原料のなかには、アップサイクルされたものもある。例えば、ブランド創業時からバランシングシリーズをはじめ、ほぼすべてのスキンケア商品に配合する「ティーシードオイル」。これは、これまで活用されずに畑に捨てられていたお茶の実から搾り取られたオイルだ。
また、新バランシングシリーズで新たに採用した「サフラン&バードックコンプレックス」は、高級スパイスとして知られるサフランの花びらをアップサイクルして使用している。
サフランの花。赤いめしべは、スパイスとして料理に使われるが、花びらは廃棄されていた。
「このサフランは、大分県竹田市で生産されているものです。苦労して栽培してもスパイスとして使用されるのは、サフランのめしべだけ。生産者さんは、捨てられてしまうサフランの花びらをどうにか有効に使えないかと、ずっと試行錯誤していたそうなんです。
そして気がついたのが、花芯と花びらを取り分ける作業をする間は、生産者の方の指先がツルツルになるということ。これは何かパワーがあるに違いないと調べたところ、抗酸化や抗炎症作用などがとても高いとわかったんです」
東北産のバードック。サフランの花びらから抽出したエキスに、バードックの成分を組み合わせ、オリジナルの成分を開発した。
そこにバードックという植物の根から抽出したエキスを組み合わせたところ、肌が生まれ変わるリズムをサポートする働きが期待できるとわかった。サフランの可能性に情熱を注ぐ生産者とTHREEの出会いが、新たなオリジナル美容成分の開発へとつながったのだ。
植物としてこの世に誕生したお茶は、飲料という第2の価値を与えられる。サフランであれば、スパイスに。THREEは、そこから第3の価値を生み出す。廃棄されたものに、知恵や技術をかけ合わせ、「もう一度息吹を吹き込む」のだと桝氏は語る。
「今まで目を向けられていなかったところに着目し、まだ世の中にない新しい価値や発想を見出す。これは、『1×1から3を生み出す』というブランドの由来につながります。SDGsの観点から近年注目されているアップサイクルですが、この言葉が生まれるずっと前から、THREEではその考えがあったんですよね」
人は自然の一部であり、身のまわりにある自然の恵みをあますことなく活用する。そんな精神の表れといえるだろう。
目を向けられていなかったものから新たな価値を生み出す発想は、新バランシングシリーズのパッケージにも表れている。少しくすんだ色合いが美しいガラスのボトル容器は、市中回収したリサイクルガラスを80%以上使用している。
「化粧品の容器にリサイクルガラスが使用されたとしても、一般的な配合率は30%前後だと言われています。それは、単純に見た目が美しくないから。化粧品では、透明感やクリーンなイメージが重要視されます。そのため、独特のくすみや濁り、凹凸感を持ったリサイクルガラスは、あまり良しとされないんです。
でも、THREEでは、その表情や佇まいを活用できないかと考えました。人間も、“奥行き”や“揺らぎ”を持った人には、色気を感じませんか? 画一的ではないからこその美しさや魅力をパッケージで表現したいと思ったんです」
そうして生まれたガラスボトルには、スモーキーピンクや深いグリーンの色をのせ、さらにTHREEらしい世界観を感じるパッケージに。光を通すと、淡い色彩に彩られた影が美しい。ちなみにこの色は、光に弱い精油を守る役目も果たすそうだ。
植物原料をベースに、自然の恵みをふんだんに取り入れたTHREEは、創業当初から地球環境への負担を極力減らすことを意識してきた。
現在、ショッピングバックは配布を一部終了。ギフトなどで対応するバッグは、古紙を40%以上配合したTHREEオリジナルのペーパーを使用。アクリルやポリエステルを使用せず、ハンドル部分も紙に変更した。
また、紙箱には森林認証紙、再生紙、非木材紙を使用している。さらに、今回のバランシングシリーズから、リフィルの発売を開始(ポイントメイクアップリムーバーと洗顔料以外)。これは、ユーザーからの「リフィルの種類を増やし、継続販売してほしい」という声が多く寄せられたことから、生まれたそうだ。
新バランシングシリーズで生まれた待望のリフィル。
こうしたTHREEの取り組みについて、最近はサステナブルの観点から注目が集まるようになった。そこで、ブランドとしてのあり方や姿勢を改めて考えたところ、こんな答えに至ったという。
「創業した当初から大切にするTHREEの感性や美意識の中に、すでにサステナブルな視点が含まれていることに気がつきました。地球環境のために、ということが前にあるよりも、使う人がまずプロダクトの美しさに高揚でき、肌への効果を実感したり、それによって心身が元気になったりする。そのサイクルこそがTHREEらしいサステナブルの形なんじゃないかなと思うんです」
タイや香港に続き、2022年より中国ローカルでの展開も始まったTHREE。このサイクルを、日本の自然の恵みや美意識、パワーとともに伝えることができたらと桝氏は語る。
執筆/秦レンナ 企画・編集/佐藤まきこ(ELEMINIST編集部)
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