気候変動・地球温暖化が深刻化する一方で、多くの企業や団体がサステナビリティを推進することとなった2022年。今年一年を振り返りELEMINIST編集部がもっとも注目したトレンドニュースをピックアップする。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
日本をはじめ、世界中から厳選された最新のサステナブルな情報をエレミニスト独自の目線からお届けします。エシカル&ミニマルな暮らしと消費、サステナブルな生き方をガイドします。
「藻」から化粧品づくりに挑むサキュレアクト ELEMINISTからアンバサダー10名が就任
みなさんにとって、2022年はどんな一年になっただろうか。今年は年の初めから世界を揺るがす大きなニュースが続いた。新型コロナウイルス感染症の流行が続く中、ロシアによるウクライナ侵攻、さらに世界各地での異常気象や自然災害など、地球にとって激動の年であった。一方で多くの企業や団体が一層サステナビリティを推進していた。そんな今年一年のニュースをELEMINIST編集部が振り返った。
Photo by © Campbell Brewer
今年もっともセンセーショナルでポジティブなニュースとなったのが、「パタゴニア」の新たな会社の所有形態の発表だ。創業一族シュイナード家は、所有する株式を慈善トラストである「パタゴニアパーパストラスト」と環境保護を目的としたNPO団体「ホールドファストコレクティブ」に譲渡。これにより、パタゴニアの事業に再投資されない資金のすべてが地球を守るために使われることとなった。
Point
これまでも地球温暖化や環境破壊へのインパクトある働きかけを行なってきたパタゴニアの新たな決断に、経済活動と地球との共生のかたちが実現されたのではないかと、編集部でも驚きとともに明るい話題となった。
Photo by Karsten Winegeart on Unsplash
2022年は世界中で「これまでにない」気象の変化が報じられた年でもあった。降るはずの雨が降らず、干ばつ、森林火災を引き起こし、別の地域では記録的な豪雨が続き、洪水が発生。いまでも多くの人々が家を失い、避難を余儀なくされている。
夏には世界全体で猛暑が続き、各地で40℃を超える観測史上最高気温が続出した。日本でも7月、熱中症による死亡者数が過去最多となり、気候変動が身近に迫ってきていることを実感する年となった。
Point
ELEMINISTでも気候変動による被害のニュースに注目しており、実際昨年、一昨年よりも記事として届ける機会も多くなっている。温暖化が進めば、これからもこうした災害は増えつづける。これまで目標としてきた平均気温上昇を1.5℃に抑えることが危ぶまれるいま、日々できる小さなことからでも始めなければならない。
Photo by CFCL
企業のサステナビリティを認証する世界基準、B Corp(Bコープ)を取得する日本企業も続々と出てきている。今年7月に「CFCL」が日本のアパレルブランドとして初めて認証を取得した。環境や社会に配慮した事業をおこなっているかどうか、原料調達の透明性、説明責任など厳しい審査基準が設けられ、取得には1年以上かかる。
他にも、3月に未利用資源を自社の発酵技術でアップサイクルしている「ファーメンステーション」、化粧品製造販売の「mayunoWa」が、6月にはフードロス削減に取り組む通販アプリを運営する「クラダシ」がそれぞれ取得。
Point
今年に入って日本企業も積極的に申請に向けて動き出しているようだ。社会や環境に配慮した企業を明確に知ることができるB Corpは、生活者であるわたしたちにとっても大きなメリットとなる。今後、買い物やもの選びの基準となっていくだろう。
Photo by Sigmund on Unsplash
一年を通して編集部でもっとも多く話題にのぼったのが、循環型経済への移行だ。昨年までは海外ニュースでのトピックが多く、ヨーロッパや米国などのブランドが率先しているイメージであったが、今年は日本の企業やブランドも積極的に回収、リペア、リセール開始のニュースが相次いだ。
日本国内でもアパレル各社、セレクトショップなどの衣料品の店頭回収に加え、不要になったコスメや「タイガー」ステンレスボトルなども回収・再資源化できるようになってきている。
海外ではバレンシアが、サンローランなどを傘下とする「ケリング」が中古市場へ参入。グッチは二時流通企業とパートナーシップを結んだ。他にも「IKEA」、「ルルレモン」、「ZARA」などが下取り・リセールを始めた。ロンドンの「ユニクロ」ではリペアとリサイクル専門の店舗がオープンした。
POINT
新しいものをつくり、買い替えるのではなく、一つのものを長く使うことができる仕組みが整ってきている。そのなかでも自社のプロダクトにこだわらずリペアしたりリセールしたりと、ブランドの垣根を超えて取り組む企業もあり、循環できるかどうかが新しい経済価値となっている。
Photo by Elena Mozhvilo on Unsplash
11月6日から20日までエジプトで開催されたCOP27(第27回国連気候変動枠組条約の締結会議)。期待されていた化石燃料の削減や1.5℃目標に向けた各国の目標の見直しなどは進展がなかったが、気候変動が直接の原因となり、自然災害を被った発展途上国を支援する「損失と損害」基金の創設が初めて議論され、合意された。その詳細は来年開催されるCOP28で決議されることとなった。
POINT
COP27の成果については賛否あるが、1.5℃の目標を達成しなければならない期限が迫っていることに変わりはない。わたしたちは小さいながらも解決のために行動し、世界の状況を常に知っていかなければならない。来年のCOP28で発表される、気候変動対策の進捗レポート「グローバル・ストックテイク」が次のステップの鍵となるだろう。
COP27の開会式で国連事務総長のアントニオ・グテーレス氏は次のように述べている。「人間の活動は気候問題の原因です。そのため、人間の行動が解決策にならねばなりません」※。
2022年は、気候変動が遠い国のできごとではないということを実感する年となったのではないだろうか。地球の状況は刻々と変化しているが、すべての解決策をやり尽くしたわけではない。いま行動することで変えられることもまだたくさんある。わたしたち一人ひとりが地球課題の解決の一つとなるような行動していくことが求められているのだ。
ELEMINIST Recommends