オフィスビルの環境認証とは? 制度の種類・取得メリットを解説

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この記事では、オフィスビルにおける環境認証の種類と特徴を解説。CASBEE、ZEB、LEED、BELSなど主要認証の違いや取得メリット、コスト、既存ビルでの取得可能性、SDGsとの関連についても紹介していく。

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2026.01.29

オフィスビルの「環境認証」とは

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環境認証の基本的な考え方

環境認証とは、建築物の環境性能やエネルギー性能を、第三者機関が客観的に評価・認証する制度のことを指す。エネルギー消費量、CO2排出量、水資源の利用効率、室内環境の質など、複数の観点から建物の環境配慮レベルを評価し、その結果をわかりやすく可視化できる点が特徴である(※1)。

なぜいま「オフィスビルの環境認証」が重要なのか

2015年の国連総会においてSDGs(持続可能な開発目標)が採択されて以降、世界的に脱炭素社会の実現に向けた取り組みが加速している。こうした流れの中で、日本における建築分野のCO2排出量は全体の約3分の1を占めており、住宅・建築分野での対策が脱炭素実現の鍵を握っているのだ(※2)。

また、近年はESG投資への関心が高まり、投資家は企業価値を判断する際に、環境や社会への取り組み姿勢を重視するようになってきた。この動きは不動産投資にも波及しており、環境認証の取得状況が投資判断の重要な指標の一つとして位置づけられている。

オフィスビルの環境認証が必要とされる理由

環境認証は単なる環境配慮の証明にとどまらず、ビジネス上の実利をもたらすことが期待されている。CBREの調査(2023年)によると、グリーンビルディングは一般的な物件と比べて賃料プレミアムが約5.4%〜6.4%高くなる傾向が示されている(※3)。

また、テナント企業にとって環境認証ビルへの入居は、自社のScope3排出量(サプライチェーン全体での排出量)の削減につながり、ESG評価の向上にも寄与する。こうした環境配慮の姿勢は、投資家や取引先からの信頼向上にもつながると考えられている(※4)。

さらに金融機関においても、環境・サステナビリティを評価指標としたグリーンローンやサステナビリティ・リンク・ローンなどの融資商品が拡充されており、環境認証ビルは資金調達面でも優位性を持つケースが増えている(※5)。

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オフィスビルで使われる主な環境認証一覧

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ここからは、オフィスビルで使われる主な環境認証を紹介していく。

国内の主な環境認証制度

まずは、国内の主な環境認証制度についてみていこう。

CASBEE

CASBEE(建築環境総合性能評価システム)は、国土交通省が支援する日本独自の建築物環境性能評価制度である。省エネルギー性能に加え、室内の快適性や景観、防災性などを含め、建物の品質を総合的に評価する点が特徴だ。評価は「環境品質(Q)」と「環境負荷(L)」の2軸で行われる(※7)。

ZEB

ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とは、高断熱化や高効率設備の導入によりエネルギー消費を大幅に削減し、太陽光発電などによる創エネルギー(エネルギーを自ら生み出す仕組み)を組み合わせることで、年間の一次エネルギー消費量の収支を実質ゼロ以下にすることを目指した建築物を指す。

定量的な定義(判断基準)は、①基準一次エネルギー消費量から50%以上の削減②基準一次エネルギー消費量から100%以上の削減、の両方に適合した建築物であること(※8)。

BELS

BELSとは、建築物の省エネ性能を第三者機関が評価し、星の数などのラベルでわかりやすく表示する制度である。

主に、一次エネルギー消費性能(空調・換気・照明・給湯などを含めた建物全体のエネルギー効率)と外皮性能(※住宅の場合) の省エネ性能で評価される(※9)。

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eマーク

eマーク(省エネ基準適合認定マーク)は、既存建築物を中心に、省エネ基準への適合状況を示す制度であり、既存ビルの省エネ改修促進を目的としている。

建築物の所有者は申請により、建築物が省エネ基準に適合している旨の所管行政庁による認定を受けることができる(※10)。

既存ビルの省エネ改修を促進することを目的としており、省エネ診断と改修計画の策定を通じて、エネルギー使用量の削減度合いを評価する。

DBJ Green Building認証

DBJ Green Building認証は、株式会社日本政策投資銀行(DBJ)が2011年に創設した認証制度で、環境・社会への配慮がなされた不動産を5段階で評価・認証している。

「環境性能」「快適性」「防災・防犯」「地域社会・コミュニティへの配慮」など、多面的な視点から建物の価値を総合評価する点が特徴だ(※11)。

海外・国際的な環境認証

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日本国内の環境認証に加え、オフィスビルの評価においては海外・国際的な環境認証も重要な指標となっている。ここからは、海外・国際的な環境認証を紹介していこう。

LEED

LEEDは、米国の非営利団体USGBC(米国グリーンビルディング協会)が運営する、国際的な建築物の環境性能評価制度である。新築・既存建築物・内装など用途別に複数の認証区分が用意されており、国や地域を問わず共通の基準で評価される点が特徴だ(※12)。

LEED認証を取得するためには、備えるべきいくつかの必須条件(Prerequisite)を満たし、選択項目のポイント(Credit Points)を選んで取得することが必要である(※13)。

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GRESB

GRESB(グローバル不動産サステナビリティ・ベンチマーク)は、不動産ファンドや企業の保有物件を対象に、環境・社会・ガバナンス(ESG)の取り組みを評価する国際的なベンチマーク制度である。2009年に欧州の年金基金などを中心に創設され、投資家がポートフォリオのESGリスクや機会を比較・分析するために活用している。

評価項目は、ESGに関する社内体制や方針の制定状況、ESG情報の開示状況をはじめ、気候変動リスク評価の実施状況、グリーンビル認証の取得実績、保有不動産物件を通した環境負荷削減への取組みやテナントとの環境・社会配慮の協働、従業員やテナント等への健康・快適性の取組み、サプライヤー・エンゲージメントなど、多岐に渡る(※15)。

WELL

WELL認証は、建物利用者の健康・ウェルビーイングに焦点を当てた国際認証制度である。省エネや環境負荷低減を主軸とする他の認証とは異なり、「人」に与える影響を重視している点が特徴だ。

WELL認証には2種類あり、「WELL Building Standard v2(WELL v2)」は、健康的に働ける環境を評価するWELL認証制度。このWELL v2は「健康で安全・快適な環境に関する10のコンセプト+イノベーション」を総合的に評価する。10のコンセプトには、「空気」「温熱快適性」「光」「音」「心」「水」などが含まれている。

もう1つは、感染症対策に特化した「Health-Safety Rating」。評価内容は、「清掃・除菌の手順」「緊急時対応計画」「医療サービスリソース」「空気質・水質管理」「ステークホルダーエンゲージメントとコミュニケーション」の5つにイノベーションを加えたものだ(※14)。

それぞれの認証が評価するポイント

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環境認証制度はそれぞれ評価の重点が異なる。

たとえば、エネルギー効率についてはZEB、BELS、LEEDがとくに重視している。空調・照明・給湯などの設備効率、断熱性能、再生可能エネルギー導入などを評価する。

また、CO2排出量はCASBEE、LEED、GRESBが評価。運用段階での削減やカーボンニュートラルへの取り組みも評価される。

そして、LEEDとWELLが評価項目に含んでいるのが、水資源管理。節水設備、雨水利用、排水管理などが対象となる。

資源循環に関しては、CASBEEとLEEDが評価し、建設時の廃棄物削減やリサイクル材の使用、建物の長寿命化などがポイントとなる。

空気質、温熱環境、照明環境、音環境など、利用者の健康・快適性に直結する要素を評価し、重視しているのがWELL認証だ。

運用管理はDBJ Green Building認証とGRESBが重視しており、エネルギー管理体制、テナントとのコミュニケーション、データモニタリングなどの運用面を評価する。

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環境認証ごとの違いと選び方

「省エネ重視型」「総合評価型」「健康配慮型」の分類

オフィスビルの環境認証は、評価の重点に応じて大きく3つのタイプに分けられる。

省エネ重視型

ZEBやBELSは、「省エネ重視型」に該当する。エネルギー消費削減に特化しており、光熱費削減効果が明確。定量的な省エネ率で評価されるため、目標設定がしやすく、補助金制度とも連動しやすい特徴がある。

総合評価型

CASBEE、LEED、DBJ Green Building認証が、「総合評価型」のカテゴリーに当てはまる。環境性能だけでなく、快適性、防災性、地域貢献など多面的な価値を評価し、不動産としての総合的な価値向上を目指す場合に適している。

健康配慮型

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「健康配慮型」は、WELL認証が代表的。従業員の健康とウェルビーイングを重視し、人的資本経営との親和性が高い認証だ。採用力強化や従業員満足度向上を重視する企業に適している。

オフィスビルの用途・目的別おすすめ認証

自社ビル

自社ビルの場合は、CASBEEやZEBがおすすめだ。長期的な運用コスト削減と企業のESG評価向上の両方を実現できる。また、自社で設計から運用まで一貫して管理できるため、高いレベルの認証取得も比較的容易といえるだろう。

賃貸ビル

賃貸ビルには、DBJ Green Building認証やLEEDが適している。テナント誘致力の向上と賃料プレミアムの獲得が期待でき、投資家へのアピール材料となる。

投資用不動産

投資用不動産には、GRESBがおすすめだ。多くのグローバル機関投資家がGRESBデータを投資判断に活用しており、GRESBスコア向上には個別物件の環境認証取得率(延床面積ベース)が評価基準となる。機関投資家からの資金流入とグリーンボンドによる低金利調達を実現するため、ポートフォリオ全体での環境認証取得が不可欠だ。

複数認証を取得するケース

近年、複数の環境認証を同時に取得する「マルチ認証」のオフィスビルが増加している。

ダブル認証の代表例が、LEEDとWELLの組み合わせである。環境性能と健康性能の両面をアピールでき、グローバル企業のテナント誘致に有効だ。また、CASBEEとZEBの組み合わせも多く見られ、総合評価と省エネ特化の両方の強みを示すことができる。

トリプル認証には、LEED・WELL・CASBEE、あるいはLEED・DBJ Green Building認証・BELSといった組み合わせがある。国際基準と国内基準の両方をカバーすることで、多様なステークホルダーへの訴求力が高まる。

ただし、複数認証の取得には注意点がある。認証取得や更新にかかるコストの増加、管理負荷、基準の重複といった課題が生じやすい。投資家、テナント、従業員など想定するステークホルダーを明確にしたうえで、それぞれの認証がもたらす具体的なメリットを整理することが重要である。

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オフィスビルが環境認証を取得するメリット

不動産価値や賃料への影響

環境認証の取得は、不動産の経済的価値に影響を与える要素の一つとされている。CBREが2023年3月末に公表した調査によれば、グリーンビルディングは一般的なオフィスビルと比べて賃料プレミアムが+5.4%〜+6.4%となる傾向が示されている(※3)。また、国土交通省主催の委員会で発表されたデータでは、環境認証を取得している物件は取得していない物件に比べ新規成約賃料が平均4.4%高いことが確認されている(※16)。

さらに、不動産業界やESG関連の各種レポートでは、環境性能や環境認証への対応が進んだオフィスビルほどテナントからの評価が高まり、空室率の低下や安定的な需要の確保につながる可能性があると指摘されている。企業のESG対応が進むなか、環境認証ビルへの入居を社内基準の一つとする企業も増えており、こうした動きが中長期的な稼働率の維持・向上や不動産価値の安定に寄与する要因となり得る(※17)。

テナント企業にとってのメリット

環境認証ビルへの入居は、テナント企業にとってESG対応、脱炭素、人的資本経営といった複数の観点でメリットをもたらす。

まず挙げられるのが、ESG評価の向上である。環境認証ビルへの入居は、企業の環境配慮への取り組みとして対外的に説明しやすく、統合報告書やサステナビリティレポートにおいても具体的な施策として記載可能である。そのため、投資家や取引先、その他ステークホルダーからの評価向上につながりやすい。

また、GHGプロトコルに基づくScope3(カテゴリ8:リース資産)の排出量削減にも寄与する。多くの企業が2030年や2050年を目標にカーボンニュートラルを掲げる中、オフィス利用に伴うCO2排出の管理は重要な課題となっている。環境性能の高い認証ビルへの入居は、Scope3排出量削減に向けた実務的な対応策の一つと位置づけられるのだ。

さらに、WELL Building Standardなどの健康配慮型認証を取得したビルでは、空気質、照明、温熱環境、音環境といった執務環境が一定の基準で整備されている。これにより、従業員の快適性や満足度の向上が期待され、結果として働きやすい職場環境の形成につながる可能性があるのだ。

投資や金融面での評価

環境認証は、不動産投資や金融取引においても重要な評価要素となっている。近年、多くの機関投資家がESG投資方針を採用しており、環境配慮への対応状況は投資判断の前提条件の一つとなりつつある。そのため、環境認証を取得した不動産は、投資対象としての評価が高まりやすいのだ。

また、環境省が運営する「グリーンファイナンスポータル」によれば、一定の環境認証を取得したビルは、グリーンボンド(環境債)やグリーンローンの資金使途として位置づけられるケースが多い。こうした金融商品では、環境配慮型プロジェクトであることを前提に、金利優遇や調達条件の改善が図られる場合があるとされている(※18)。

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認証取得のデメリット・課題

コスト・工期・設計制約

コストのイメージ

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環境認証の取得に伴う課題は、新築ビルか既存ビルかによって性質が異なる。

新築ビルの場合、設計初期段階から環境認証を前提に計画できるため、基準対応そのものは比較的スムーズに進めやすい。一方で、高効率設備の導入や断熱性能の強化、再生可能エネルギー設備の設置などにより、初期建設コストが増加しやすい点が課題となる。また、認証取得を見据えた検討や第三者審査を組み込むことで、設計・確認プロセスが複雑化し、工期が延びる可能性もある。

既存ビルの場合は、建物構造や設備条件がすでに固定されているため、認証基準を満たすための改修に制約が生じやすい。とくに、設備更新や断熱改修が必要となるケースでは、改修コストが大きくなりやすいほか、テナントが入居したまま工事を行う場合には、工事期間や運用面での調整負荷も発生する。また、すべての評価項目に対応することが難しく、取得できる認証やランクが限定されることもある。

取得後の運用負荷

環境認証は取得して終わりではなく、継続的な管理が求められる。多くの認証制度では、エネルギー使用量や水使用量、廃棄物量などの環境データを継続的に把握・管理することが前提とされており、運用段階の実績が評価対象となる。

ZEBでは実際の一次エネルギー消費量の把握が重視されており、LEEDの運用・保守(O+M)認証でも、エネルギーや水使用量などの実績データを年次で報告する必要がある(※19)。

また、多くの環境認証は有効期限つきであり、定期的な報告や更新手続きを怠った場合、認証が失効する可能性がある。とくにLEED O+Mでは、基準を満たさない状態が続くと認証維持が難しくなるため、取得後も一定の運用コストや管理体制を確保することが不可欠だ。

認証が「形骸化」するリスク

環境認証の取得が目的化し、実質的な環境改善につながらない「グリーンウォッシュ」のリスクも指摘されている。

ESG評価や広報のために認証を取得するものの、運用段階で十分な環境管理が行われず、期待された環境効果が得られないケースがある。とくに、複数の認証を取得することで「見栄え」をよくしようとする動きには注意が必要だ。

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既存オフィスビルでも環境認証は取れる?

既存ビル向け認証・評価制度

環境認証は新築ビルだけのものではなく、既存ビルを対象とした認証制度も充実している。

たとえば、CASBEE不動産。既存ビルの環境性能を評価する制度で、不動産鑑定や投資判断に活用されている。建物の仕様だけでなく、運用管理の実態も評価対象となり、エネルギー実績データの提出が求められる。

BELSは、新築だけでなく既存建築物も評価対象だ。省エネ計算を行い、現状の省エネ性能を星の数で表示することができる。改修前後で評価を取得することで、改修効果の可視化にも活用可能である。

LEED O+M(運用・保守)も、既存ビルの運用・保守に特化した認証プログラム。建物の物理的性能に加え、清掃、保守、エネルギー管理、廃棄物管理などの運用面を重点的に評価する。

改修やリニューアル時のポイント

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既存ビルで環境認証を取得する際のポイントは、建物全体を対象とした大規模改修を行わなくても、設備更新や運用改善といった段階的な対応によって、認証取得を目指せる点にある。

たとえば、照明のLED化や、ビルのエネルギー消費の中で大きな割合を占める空調設備を高効率機器へ更新することで、一次エネルギー消費量の削減が期待できる。これらは多くの環境認証制度において、省エネ性能向上を図るうえで基本的かつ代表的な評価対象となる施策だ。

さらに、ハード面の改修に加えて、運用面の改善も重要な要素となる。エネルギー管理体制の構築や運用ルールの見直し、テナントとのグリーンリース契約の締結、定期的なエネルギーデータの分析と改善活動、清掃・保守スタッフへの環境配慮に関する教育など、日常の運用を通じた取り組みも評価に反映される。

段階的取得という考え方

既存ビルで環境認証を目指す場合、「一気に最高レベルの認証取得を目指す」のではなく、段階的なアプローチを取る方が現実的だ。建物の築年数や設備状況、予算制約を踏まえると、環境性能の向上は中長期的な取り組みとして計画するケースが多い。

たとえば、以下のようにフェーズを分けて進める方法が考えられる。

フェーズ1(準備期間)
まずは、現状のエネルギー使用状況を把握・分析し、省エネ診断を実施する。そのうえで改修計画と予算を整理し、比較的取得しやすいBELSなどの省エネ性能表示制度から取り組みを開始する。

フェーズ2(初期改修)
照明のLED化やBEMS(ベムス)の導入など、投資回収期間が比較的短い改修を優先的に実施する。同時に、エネルギー管理体制の整備を進め、CASBEE不動産やDBJ Green Building認証など、運用面も含めた評価を行う認証の取得を目指す。

フェーズ3(本格改修)
大規模修繕や設備更新のタイミングに合わせて、高効率空調設備の導入や再生可能エネルギーの活用を検討する。これにより、ZEB ReadyやLEED O+Mなど、より高い環境性能を求める認証へのステップアップが可能となる。

このような段階的アプローチを取ることで、財務負担を分散しながら環境性能を着実に向上させることができる。また、国土交通省では「既存建築物の省エネ改修支援事業」などの補助制度を整備しており、これらを活用することで改修コストの負担軽減を図ることも可能だ(※20)。

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環境認証とSDGs・ESGの関係

SDGs(7・11・13)との関連

SDGs7(エネルギーをみんなに そしてクリーンに)

ZEBやBELSなどの省エネ認証は、エネルギー効率の改善とクリーンエネルギーの利用拡大に直接貢献する。太陽光発電などの再生可能エネルギーを導入したビルは、このSDGs7の達成に大きく寄与するのだ。

SDGs11(住み続けられるまちづくりを)

環境認証ビルは、都市の環境負荷を低減し、持続可能な都市開発を推進する。とくにCASBEEやLEEDは、周辺環境や地域コミュニティへの配慮も評価項目に含まれており、持続可能な都市の実現に貢献する。

SDGs13(気候変動に具体的な対策を)

建築物セクターのCO2排出削減は気候変動対策の重要な柱といえる。環境認証を通じて建物の環境性能を向上させることは、パリ協定の目標達成に向けた具体的行動となるのだ。

企業のESG開示とのつながり

環境認証の取得は、企業のESG情報開示においても重要な役割を果たす。

統合報告書・サステナビリティレポートなど多くの企業が年次で発行するこれらの報告書において、オフィスビルの環境認証取得は具体的な環境取り組みの成果として記載される。定量的な削減実績とともに、第三者認証を受けていることは、情報の信頼性向上につながるだろう。

また、企業の気候変動対応を評価する国際的なイニシアチブ「CDP」も、世界の主要投資家が参照している。CDP気候変動質問書では、自社が所有・使用する不動産のエネルギー効率や環境認証の取得状況が問われており、高評価を得るためには環境認証の取得が有効だ。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言では、企業に気候変動リスクと機会の開示を求めている。環境認証ビルの保有は、気候変動への適応策として位置づけられ、将来的な規制強化や炭素税導入といったリスクへの備えを示すことができる。

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今後の制度や規制動向

脱炭素社会の実現に向け、建築・不動産分野でも環境規制の強化が進んでいる。日本では、国土交通省を中心に建築物の省エネ基準適合義務化やエネルギー性能表示制度の整備が進められており、既存建築物を含めた環境性能の可視化が重要視されている。

また、不動産分野におけるESG対応は、投資家や金融機関からの要請によって加速している。環境認証は、SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」や目標13「気候変動に具体的な対策を」との整合性を示す手段であり、ESG評価の客観的な根拠として活用されるケースが増えている。

今後は、環境性能への対応が「付加価値」ではなく、不動産の市場競争力や投資適格性を左右する前提条件となり、環境認証の重要性は一層高まっていくと考えられる。

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オフィスビルの環境認証を価値創造につなげる

オフィスビルの環境認証は、義務ではなく経営判断の一部。環境対応をコストではなく投資と捉え、価値創造につなげる視点が重要だ。目的・規模・将来戦略を整理し、自社に合った認証を段階的に選択・取得する戦略が求められているのではないだろうか。

※掲載している情報は、2026年1月29日時点のものです。

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