PRI(責任投資原則)とは? 6つの原則と日本と世界の現状、メリットを解説

硬貨から芽生える植物

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PRI(責任投資原則)に署名する日本の機関は100を超えた。世界でもその数は伸びており、今後さらに増えると予想される。PRIによる持続可能な社会の実現は可能なのだろうか。この記事では、PRIとは何か、6つの原則、世界と日本の現状、参加すること・投資することのメリットを紹介する。

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2024.08.03

PRI(責任投資原則)とは

国連本部

Photo by Mathias Reding

PRI(責任投資原則)とは、機関投資家が投資先や所有する株式を決める際に、ESGの視点を取り入れる考え方を示す6つの原則をいう。Principles for Responsible Investment(責任投資原則)の頭文字をとった言葉であり、2006年4月に国連が公表してから、日本をはじめ世界各国の組織が参加している。

機関投資家は、PRIに署名することで責任投資を行うことを表明する。こうして集まった機関投資家は、責任ある投資を推進する自主的な団体として活動している。

PRIの目的とは

PRIの目的は、豊かな社会の実現のために、投資家に持続可能な市場づくりを目指してもらうことだ。具体的には、長期的な価値を追求する投資家をつくり出すこと、経済効率性が高い金融システムを構築すること、気候変動対策やSDGsの実現に貢献する投資活動を支援することなどである。

PRIが生まれた背景と成り立ち

PRIは、2005年に当時の国連事務総長であったコフィ・アナン氏が、世界の大手機関投資家に対して責任投資原則の策定に参画するよう要請したことからはじまる。その結果、12カ国の機関から選ばれた20名と、投資業界、政府間組織、専門家の70名の国際的なグループによりPRIが策定された。

なぜ責任投資が必要なのか

世界は、気候変動をはじめとした環境問題を抱えている。こうした状況の中、環境や社会全体に利益をもたらす長期的な投資が求められている。投資家がこれを実行するためには、経済的な効率の良さに加えて、持続可能な金融システムの構築が重要だ。PRIは、これを実現するための原則である。

ESGとは何か

ESGとは、環境(E: Environment)、社会(S: Social)、ガバナンス(企業統治)(G: Governance)を指す。PRIは、これらESGの視点を取り入れることを原則としている。

具体的には、気候変動や生物多様性(環境)、人権や多様性(社会)、取締役会の構成や税の公平性(企業統治)などであり、これらをESG課題と呼ぶ。PRIでは、ESG課題に配慮した責任投資を行うことを宣言する。

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PRIの6つの原則と機関投資家に求められる行動

ノートとペン

Photo by Zoran Borojevic

次に、PRIの6つの原則と機関投資家に求められる行動を確認しよう。行動についてはいくつかあるが、ここでは一部を紹介する。(※1)

原則1:投資分析と意思決定のプロセスにESG課題を組み込む

機関投資家は、投資をする際の方針にESG課題を取り入れるほか、ESGの測定基準や分析方法の開発を支援するなどして投資先を決める。

原則2:株式の所有方針と所有習慣にESG課題を組み入れる

機関投資家は、株主として積極的に権利を行使し、本目的に沿った方針を策定・開示するほか、ESG課題に対する企業の取り組みに協力する。例えば、長期的視点に立った ESG に配慮した株主決議案を提起する、ESG 問題について企業と話し合い、働きかけ(エンゲージメント)を行う、など。

原則3:投資先にESG課題に関する開示を求める

機関投資家は、標準化された報告書や年次会計報告書にESG課題を組み込むように求めるほか、開示を促す株主のイニシアティブや決議を支援する。

原則4:資産運用業界において本原則の実行を働きかける

機関投資家は、提案依頼書(RFP)に本原則に関わる要件を含めるほか、期待するESGを満たしていない金融情報サービスの提供者などとの関係を見直す。

原則5:本原則の効果を高めるために協働する

機関投資家は、学習に活用できる共有のネットワークやツール、資料などの情報プラットフォームに参画するほか、新たに発生する課題に協働して対処する。

原則6:本原則に関する活動状況を報告する

機関投資家は、本原則に関して金融情報サービスの提供者などが必要としている情報を開示するほか、報告書を利用してステークホルダーに通知する。

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増える署名機関数 PRIの世界と日本の現状

世界の国旗

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続いて、世界と日本のPRIの現状を取り上げていく。PRIには、90カ国以上、5,000以上の署名機関が参加し、(2024年7月時点)(※2)2021年4月時点の運用資産は120兆米ドル以上である。(※3)PRI発足当初の2006年以降、署名機関数は伸び続けている状況である。

日本では、2024年7月時点で138の機関が署名している。PRIが設立されて間もない時期に署名した機関に、ニッセイアセットマネジメント株式会社、太陽生命保険株式会社、日興アセットマネジメント株式会社がある。一方、2024年と比較的新しく署名した機関は、国民年金基金、KKR-国家公務員共済組合連合会、三井物産アセットマネジメント・ホールディングスなどだ。(※4)

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企業がPRIに参加することのメリット

都会のビル群

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日本では先述のとおり、100を超える企業や団体がPRIに署名しており、その数は増え続けている。PRIに参加するメリットとは、一体何なのだろうか。3つのポイントを取り上げる。(※5)

グローバルネットワークにアクセスできる

1つ目のメリットは、グローバルネットワークにアクセスできることである。投資家のコミュニティーに参加し、成功事例を共有するなどの交流が可能だ。

最先端の研究を知ることができる

2つ目は、最先端の研究を知ることができることだ。PRIにある事例研究や業界レポートなどにアクセスできるほか、共同プロジェクトに参加することもできる。

透明性のある報告書を提示できる

3つ目は、透明性のある報告書を提示できることである。PRI署名者は、活動内容を毎年報告することで、ステークホルダーに対して取り組みを示せる。

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責任投資のメリットと注意点

画面に映し出されたチャート

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企業がPRIに参加することのメリットを取り上げた。ここでは投資家の立場から、責任投資のメリットと注意点を確認していこう。

責任投資のメリット

責任投資のメリットは、投資家と企業の双方が価値を創造できることである。その理由は、ESG課題と財務パフォーマンスには、相互関連があると考えられているからだ。

また投資活動は、持続可能な社会の実現にプラスの結果をもたらすことがある。その結果、投資を通じて社会に貢献できるのメリットだ。

責任投資の注意点

責任投資の注意点は、リスクがあることである。投資先が災害による被害を受けたり不正があったりした際には、リターンに大きな影響を受ける可能性がある。

また投資活動は、持続可能な社会の実現にマイナスの結果をもたらすことがある。その結果、社会に悪い影響を与える可能性があることを心に留めておく必要がある。

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PRIは今後も成長を続ける

空と雲

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PRIは、2006年の発足以降着実に成長し、署名機関数の増加に合わせて運用資産総額も過去最高を記録している。この背景には、気候変動や人権、公平性といったESG課題が投資に大きな影響を与えると考えられている実情がある。

日本政府は、PRIへの署名機関が増えることを推奨している。持続可能な社会の実現に向けて、PRIは今後も成長を続けていくだろう。

※掲載している情報は、2024年8月3日時点のものです。

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