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「アカウンタビリティ」とは「説明責任」のこと。SDGsや気候変動に対する意識が高まるなか、企業は業績向上だけでなく、透明性の高い経営体制や情報開示が求められている。アカウンタビリティの定義や概要、混同しやすい関連用語とともに、アカウンタビリティを果たさない場合のリスクも解説する。
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アカウンタビリティ(accountability)とは、会計(accounting)と責任(responsibility)を組み合わせた言葉で、経済学から生まれた概念。企業においては、経営者が株主や投資家、顧客などのステークホルダー(利害関係者)に対して、経営状態や財務状況などを説明する義務を指す言葉であり、「説明責任」と訳される。
アカウンタビリティとは、「説明すること」自体を指すのではなく、その後の具体的なアクションや対策を指す言葉でもある。現在では、会計情報にとどまらず、ESG情報(環境:Environment、社会:Social、統治:Governanceの観点から事業活動を行うことを指す)のような非財務情報の開示までも広く含むキーワードとして認識しておこう。
アカウンタビリティと似た用語で、「レスポンシビリティ=実行責任」という言葉がある。たとえば、ある仕事を遂行することがレスポンシビリティであり、責任を担うのは、プロジェクトを実行する社員たちや複数人のメンバー。一方、アカウンタビリティは「成果責任=結果に至るまでの責任」とも呼ばれ、プロジェクトの成果説明や対策の実施までを含み、上司やリーダーが担うものだ。
アカウンタビリティを果たすためには、さまざまな手段がある。たとえば、法令で定められた会計情報の開示のほか、株主に企業活動を報告するIR活動、企業の社会的責任であるCSRの報告書作成などが該当する(※2)。
会社法では、株主や債権者に対して、計算書類(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表などの財務諸表)および、事業報告や附属明細書などの開示を求めている。とくに株主については、株主総会に際して企業が直接開示しなければならないルールがある。
金融商品取引法では、上場企業に有価証券報告書(貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュ・フロー計算書、附属明細書など)の提出を義務付けるとともに、内閣総理大臣に提出することが義務付けられている。
提出された有価証券報告書等は、株式の円滑な流通や公正な価格形成を図るため、「EDINET」と呼ばれる電子開示システムで公開されるほか、企業の自社ホームページでもIR情報「Investor Relations(投資家向け広報)」として公開されるのが一般的。国内外の投資家を保護するとともに、日本の経済成長につながる重要なアカウンタビリティである。
IR活動とは、企業が株主や投資家に対し、財務状況などの情報を提供していく活動全般を指す。
外国人投資家の増大や日本企業の海外での資金調達が進んだことから、IR活動に積極的に取り組む企業が増えた。具体的な例としては、企業説明会・決算説明会・起業ホームページ上での情報公開・レポートの発行のほか、工場・施設の見学会など独自のIR活動を行う例もある。
IR活動は、法令で義務付けられてはいないが、自社の事業活動について投資家に情報を提供し説明を行うことを通して、健全な経営がおこなわれている信頼できる会社という印象を与える効果がある。 マーケット当事者から得られる有益なフィードバックを経営に生かすことで、企業価値の向上や株価の上昇も期待できる。既存の投資家との良好な関係を築くことは、新規投資家へのアプローチ、すなわち新たな資金調達も可能にする。
SDGsや気候変動に対する意識の高まりとともに、企業の社会的責任「Corporate Social Responsibility(CSR)」が問われている。CSR報告書とは、企業が持続可能な社会を実現するために、環境、社会、ガバナンス(ESG)に関する活動をまとめたもの。投資家や顧客、社会に対して企業の取り組みをアピールすることが目的であり、企業評価の指標としても利用されている。
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企業がアカウンタビリティを果たすことは簡単ではないものの、持続的な企業活動のためには、避けられない。ステークホルダーからの信頼を得るためにあらゆる情報を開示し、成果に対する説明を続けていくことで、自社や投資家のみならず、社会にとっても以下のようなメリットが生まれる。
社外のステークホルダーとのコミュニケーションでは、投資に関する意思決定や判断に必要な情報の格差をなくし、適切に企業活動の内容を開示・報告していくことで、理解と信頼が促進される。結果として、株式の長期保有や企業の発展につながる。
ステークホルダーにとって、法律で決められた以外の情報も、企業価値を知る重要な材料となる。企業側は、利益追求のみならず、社会問題やSDGsなどに取り組む企業としてアカウンタビリティを果たし、ブランディングを強化することで、ESG投資を呼び込むことにもつながる。ちなみに、アカウンタビリティを果たすために必要な実施形態や方法に決まりはないため、トップと従業員全体で協力し、検証していくことが求められる。
社外へのステークホルダーへの情報開示とあわせて、社内に対してもアカウンタビリティを果たすことが重要だ。社員・従業員へ向け自社の取り組みついての情報開示を行うことで企業としての透明性を高められる。また、ガバナンスを強化し、より健全な組織を目指すことにもなり、採用活動でのアピールになることも見過ごせない。
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アカウンタビリティは、企業の透明性を高め、社会的な信用を得られるだけでなく、人材の確保に寄与したり、従業員エンゲージメントの向上につながったり、多くのメリットがある。逆に、企業がアカウンタビリティを果たさない場合のリスクやデメリットは、以下のような例が挙げられる。
法律を守るコンプライアンスの面においても、アカウンタビリティを果たす必要がある。たとえば、すべての株式会社は原則として、決算報告書の提出は義務である。上場企業であれば、金融商品取引法にもとづき、有価証券報告書を財務局と金融庁を通して内閣総理大臣に提出しなければならない。
コーポレートガバナンスコード(企業経営を行う上で、経営者や企業全体の不正や情報漏洩などのリスクを未然に防ぐ仕組みで、金融庁と東京証券取引所が公開しているガイドライン)に沿った情報も開示しなければならない。 法令で定められている説明責任を果たしていない場合は、開示義務違反に抵触する恐れがあるため、現在の自社のステータスで開示するべき情報が何なのかを的確に判断したい。
投資家は、企業が開示する情報を投資の判断材料としている。資金調達を受けるためには、透明性や納得感のあるアカウンタビリティを果たすことが不可欠だ。たとえ景気が低迷するなかであっても、事業成長のために投資をしてもらう必要があり、法律で規定されていない部分の情報も公開する企業が増えている。
報道によるブランドイメージの低下も、リスクとして捉えておく必要がある。たとえば、不正の事実はなく、憶測による誤情報であっても、メディアやSNSなどで拡散された内容をすべて訂正することは難しい。意識的に情報発信・開示を行なわず、情報がコントロールできていない状態が続いてしまうと、被害が拡大していく可能性があるので注意したい。顧客離れや倒産の危機を回避するためにも、継続的な社会への情報開示と対話を続けることだ。
多くの企業が、法令が定める会計情報の開示に加え、IR活動やCSR報告書の作成、情報開示の充実に努めている。 さらにアカウンタビリティは、現在、政治・教育・看護・福祉・広告・メディアなど、さまざまな業界で通じる幅広い概念となっていることも押さえておかなければならない。
アカウンタビリティを果たすには、経営陣だけが意識していても意味がない。従業員、や顧客、採用候補者もアカウンタビリティを果たすべき先であり、全社をあげて体制を構築することが求められている。
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