ステークホルダーの利益を守る「コーポレントガバナンスコード」の重要性 基本原則と企業統治のあり方

「コーポレートガバナンスコード」とは、上場企業が守らなければならない企業統治方針のことである。外部に取締役や監査役を設置することで企業を監視し、暴走を防ぎ、すべてのステークホルダーの利益を確保するという狙いがある。コーポレートガバナンスコードについて詳しく見ていこう。

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2021.02.10
SOCIETY
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エシカルマーケティングとは? メリットや実例をわかりやすく紹介

コーポレートガバナンスコードとは

パソコンのキーボードを入力している手

Photo by Glenn Carstens-Peters on Unsplash

「コーポレートガバナンスコード」とは、金融庁と東京証券取引所が策定した、上場企業が守るべき企業統治方針のことである。外部に取締役や監査役を設置して企業を管理することで、不祥事などを起こさせないなどのメリットがある。

コーポレートガバナンス(corporate governance)は、企業の不正行為を防止し、長期的な企業価値向上へとつなげる企業経営の仕組みをいう。法律で定められたものではないが、東証一部上場企業は上場規則でコーポレートガバナンスコードを守ることが義務付けられている。

コーポレートガバナンスの最大の目的は、社外取締役・社外監査役を設置し経営を監視させることだ。

社外取締役・監査役は経営陣を監視する。経営陣は株主の権利を保護し、適切な情報開示を行い透明性を確保する。そして、企業は株主以外のステークホルダーと力を合わせて働くことで、社会や経済全体へと利益を還元する。

コーポレートガバナンスコードの基本原則

コーポレートガバナンスコードの基本原則は、「株主の権利・平等性の確保」「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」「適切な情報開示と透明性の確保」「取締役会等の責務」「株主との対話」の5つの基本原則と、内部通報制度の整備や買収防衛策についての説明など、基本原則を詳細化した30の原則で構成されている。

詳細の原則には、社会・環境への対応やダイバーシティの推進など、サステナビリティに関する内容も多い。

制定の背景

誰もいない会議室

Photo by Brusk Dede on Unsplash

コーポレートガバナンスは、日本では1990年代から広まった言葉である。1990年代までは企業統治の役割は主に銀行が担ってきたが、バブル経済崩壊後に銀行の力が弱くなり、企業の不祥事が多発した。これによってコーポレートガバナンスが注目されるようになった。

1994年にNGO「日本コーポレート・ガバナンス・フォーラム」が発足し、コーポレートガバナンスに関連する議論が行われるようになる。2004年には東京証券取引所が「上場会社コーポレート・ガバナンス原則」を策定した。2006年からは上場会社は「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の開示が求められるようになり、2015年に「コーポレートガバナンス・コード」が公表、適用された。

ステークホルダーの利益を守るうえでの重要性

コーポレートガバナンスコードは、ステークホルダー(利害関係者)の利益を守るために重要な役割を担う。株式会社は、株主が会社を所有し、経営者に経営を委任する(所有と経営の分離)。株式会社には株主だけでなく、従業員や取引先など、多くのステークホルダーが関与している。

コーポレートガバナンスがない場合、会社が株主の利益だけを追い求めて従業員や顧客に不利益を与える危険性が出てくる。また、経営陣の独裁を許して不祥事が発生するリスクも高まる。これらの事態を避け、すべてのステークホルダーが正当な利益を得るためにも、コーポレートガバナンスが必要なのである。

前述したように、日本では上場するためにコーポレートガバナンスの導入が必須である。一方、非上場の中小企業は「株主=経営陣」である場合が多く、一般的にコーポレートガバナンスは導入されない。しかし、ステークホルダーへの利益確保や、グローバル化への対応のために、コーポレートガバナンスを導入する場合もある。

日本企業の課題

書類に記入をする女性

Photo by Romain Dancre on Unsplash

日本のコーポレートガバナンスは、法律で定められていない点と、会社は株主だけでなく、従業員や取引先、社会全体のものだと考えられている点に特徴がある。とくに、後者は「コーポレートガバナンスの主権者」をわかりにくくするという問題がある。

日本には終身雇用や年功序列など独自の慣行があり、「会社は株主のもの」という意識は希薄で、「会社は従業員やそのほかのステークホルダーのもの」という認識が根強い。

そのため、株主の利益確保のために経営陣を監視する欧米流のコーポレートガバナンスでは、真にガバナンスが徹底されない危険性もある。

日本の場合、株主と企業の関係にとどまらず、従業員やそのほかのステークホルダーも包括するような、独自のコーポレートガバナンスが求められている。

※ 参照サイト
コーポレートガバナンス・コード|株式会社東京証券取引所
https://www.jpx.co.jp/news/1020/nlsgeu000000xbfx-att/nlsgeu0000034qt1.pdf

※掲載している情報は、2021年2月10日時点のものです。

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