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ZEH(ゼッチ)住宅とは、断熱性、省エネ、創エネを実現し、使うエネルギーより生み出すエネルギーが多い住宅のこと。「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略して言う。そんなZEH住宅のメリットとデメリット、種類や基準について紹介する。
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ZEHは「net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」を略した言葉で、読み方は「ゼッチ」となる。
「net Zero Energy House」は、つまり「エネルギー収支をゼロ以下にする家」のこと。太陽光発電などでエネルギーを生み出し、“住宅で使用するエネルギー”よりも、“創り出すエネルギー”を多くする。ZEH住宅とは、「消費するエネルギーの量を実質的にゼロ以下にする家」と言える。
ZEH住宅は、2008年頃からアメリカで注目されてきた。日本では、2014年に策定された「エネルギー基本計画」のなかで、「2030年までに新築住宅の平均でZEHを目指す」と言及。経済産業省は「ZEHロードマップ」を立ち上げて、普及に向けて取り組みを進めている。
ZEH(ゼッチ)住宅とは、次の3つの要素を満たしたものを指す。
エネルギーの使用量を少なく抑えるために、省エネの要素が必要だ。照明にはLEDを使い、電化製品には省エネタイプのものを利用するなどが求められる。また消費電力の量などが目で見てわかる専用のシステム「HEMS(Home Energy Management System)」が必須だ。
屋外の気温に左右されにくく、室温を一定に保ちやすい断熱性も必須。高性能の窓、断熱材の使用などで、エネルギー効率のいい住宅を目指す。
家庭内でエネルギーを消費するだけでなく、自然の力を使ってエネルギーを創り出すのが、ZEH住宅だ。もっともメジャーで利用しやすいのは、屋根などに太陽光発電パネルを設置して太陽光エネルギーを得る方法だ。
ZEH(ゼッチ)住宅は、日本政府(経済産業省、国土交通省、環境省)が普及を進めているように、さまざまなメリットをもたらす。
断熱性の高いZEH(ゼッチ)住宅は、屋外の気温によらず、室内の気温を一定に保ちやすい。夏は涼しく、冬は暖かく、快適に過ごせる。一般の住宅では、冬になると浴室やトイレなどの気温が下がり、ヒートショックを起こしやすいが、ZEH(ゼッチ)住宅ならそのようなリスクも減らせるだろう。
ZEH(ゼッチ)住宅は、断熱性が高いことから、冷暖房の使用を抑えられる。おまけに太陽光発電などで、自分で自然からエネルギーを得られるため、実質的にかかる光熱費を減らせるだろう。ロシアによるウクライナ侵攻で、世界のエネルギー価格が高騰するなか、光熱費を抑えて生活できることは、大きなメリットになるはずだ。
日本は地震をはじめとした自然災害が多い国で、近年は気候変動の影響で、そのリスクが高まっている。ZEH(ゼッチ)住宅では、自然からエネルギーを得ているため、非常時用に電力を蓄えられる。そのため、災害などが発生したときにその電力を使える。
ZEH(ゼッチ)住宅を建てるためには、さまざまな設備投資が必要となり、従来の住宅建設よりもコストがかかりやすい。しかし、経済産業省をはじめ、環境省、国土交通省が連携して支援を展開。各種の補助金制度を利用することができる。
菅首相が2020年、国内で排出する温暖化ガスを2050年までに実質ゼロとする「脱炭素」宣言を行った。二酸化炭素などの温暖化ガスは、地球温暖化を加速させ、気候変動などを引き起こす大きな要因となる。私たちの暮らしもできるだけ温暖化ガスを排出しない方向へシフトしなければならない。
そこで、「住まい」の面から考えるなか、省エネ・創エネ住宅であるZEH(ゼッチ)住宅が注目されるようになっているのだ。使用するエネルギーを抑え、さらに自然からエネルギーを創り出すことで、温暖化ガスを従来よりも抑えられる。
反対に、ZEH(ゼッチ)住宅のデメリットを見てみよう。
光熱費を抑えて快適に暮らしやすいZEH(ゼッチ)住宅だが、太陽光発電のパネルや、高品質の断熱材を使用するなど、設備面にかかる費用が高くなる。長期的に見れば、これは光熱費を抑えることにつながるのだが、コスト面でデメリットと言える。だが、「ZEH住宅のメリット」で触れたように、補助金制度があるため、それらを利用するとこのデメリットはカバーできるだろう。
十分な断熱、省エネ性能を持つ住宅にするためには、間取りやデザイン面にも考慮する必要があり、場合によってはそれらに制限が出てしまうことも考えられる。建築士等によく相談して、ぜひ理想の家づくりを目指していきたい。
太陽光発電を取り入れる場合、そのメンテナンスが必要となる。近年は、太陽光パネルの寿命が延びて、一定期間の無料点検保証をつけているメーカーもある。設備を選ぶ際は、そのようなメンテナンスや無料点検サービスの有無、それらにかかる費用なども考えておく必要があるだろう。
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ZEH(ゼッチ)住宅は、集合住宅、戸建て住宅、さらに一次エネルギー消費量に応じて、いくつかの種類に分類され、利用できる補助金も異なる。ZEH(ゼッチ)住宅の補助金制度は、経済産業省、国土交通省、環境省が連携していることから、対象となる事業名が異なることも注意したい。(※1)
対象:戸建て住宅
一次エネルギー消費量:省エネ基準から20%以上
創エネを含む省エネ率:省エネ基準から100%以上
補助額:注文・建売住宅は一戸あたり55万円(環境省「戸建住宅 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」)
対象:戸建て住宅
一次エネルギー消費量:省エネ基準から25%以上
創エネを含む省エネ率:省エネ基準から100%以上
補助額:一戸あたり100万円(環境省「戸建住宅 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業」)
対象:戸建て住宅
一次エネルギー消費量:省エネ基準から25%以上
創エネを含む省エネ率:省エネ基準から100%以上
補助額:一戸あたり100万円(経済産業省「次世代ZEH+ 実証事業」)
※ZEH+とは異なり、次世代ZEH+では、蓄電システムや燃料電池などを導入することも条件となる。
対象:集合住宅
一次エネルギー消費量:省エネ基準から20%以上
創エネを含む省エネ率:省エネ基準から100%以上
補助額:補助対象経費の1/3~1/2以内(環境省「集合住宅の省CO2化促進事業」等)
対象:戸建て住宅・集合住宅
一次エネルギー消費量:省エネ基準から25%以上
創エネを含む省エネ率:省エネ基準から75%以上
対象:戸建て住宅・集合住宅
創エネを含む省エネ率:再生可能エネルギーを加味しない
対象:戸建て住宅・集合住宅
一次エネルギー消費量:省エネ基準から25%以上
創エネを含む省エネ率:省エネ基準から100%以上
LCCMは、ライフ・サイクル・カーボン・マイナスの意味。
ZEH(ゼッチ)住宅の建設には、従来の住宅よりもコストがかかるが、政府は補助金を交付するさまざまな制度を設けている。新築の住宅を建設する場合は、ぜひこれらの補助金制度を活用して、ZEH(ゼッチ)を検討しよう。
大きくわけで、以下のような制度がある。それぞれで、対象となる住宅や条件が異なるため、事前にくわしく確認することが大切だ。
・環境省:戸建住宅ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(ZEH)化等支援事業
・経済産業省:次世代ZEH+ 実証事業
・国土交通省:地域型住宅グリーン化事業
ZEH(ゼッチ)住宅の補助金を申請するときの具体的な流れは次の通りとなる。
1 設計を行う
2 金融機関でローンの審査を行い契約する
3 ZEHの補助金の申請を行う
4 補助金の交付が決定する
5 着工する
6 工事完了後に実績報告書を提出する
7 補助金が入金される
ZEH(ゼッチ)住宅の補助金を申請するためには、「ZEHビルダー/ZEHプランナー」制度に登録している住宅メーカーや業者に依頼しなければならない。補助金の申請も、「ZEHビルダー/ZEHプランナー」が行うこととなる。
経済産業省の資料によると、2021年度の戸建住宅におけるZEH(ゼッチ)住宅の普及率は、以下の通りだ。(※2)
・注文戸建住宅 26.7%
・建売戸建住宅 2.6%
注文戸建住宅では、およそ4件に1件がZEH(ゼッチ)住宅となっているが、建売住宅については普及率が低い。建売住宅でのZEH化推進が必要となるだろう。
ZEH(ゼッチ)の普及拡大を図るため、政府は「ZEHビルダー/ZEHプランナー」制度を設けている。これは、登録の要件を満たしたハウスメーカーなどを「ZEHビルダー/ZEHプランナー」として登録して、補助金の対象をそのようなメーカーに依頼した場合に限定とするものだ。
ZEH(ゼッチ)住宅と同様に、省エネ住宅として注目されている「パッシブハウス」についても紹介しておこう。パッシブハウスとは、一定の基準を満たす省エネ住宅のことで、ドイツ・パッシブハウス研究所が1991年に基準を確立させた。
ZEH(ゼッチ)住宅はエネルギーを創り出すことにも焦点を当てているのに対し、パッシブハウスはエネルギー消費量を減らすことを目的としている違いがある。
二酸化炭素排出量を減らし、地球温暖化のスピードを少しでも遅くするためには、私たちが毎日の生活で使用するエネルギーについても考えなければならない。ZEH(ゼッチ)住宅という選択肢が日本に広がり、エネルギーの使用を抑えて、自然からエネルギーを創り出すことが当たり前になっていくことも必要なはずだ。
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