世界基準の省エネ住宅「パッシブハウス」 その特徴や導入コスト、メリットは

夕景のヨーロッパの住宅

パッシブハウスは、近年注目されている省エネ住宅の一つである。ZEHや低炭素住宅など、その他の省エネ住宅とは、いったい何が違うのだろうか。パッシブハウスの特徴や、建築メリット・デメリット、補助金や依頼先の探し方まで幅広く学んでいこう。

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2021.11.30

パッシブハウスとは

パッシブハウスとは、一定の基準を満たす省エネ住宅を指す言葉である。パッシブハウスとして認定されるのは、ドイツ・パッシブハウス研究所が、1991年に確立した住宅性能基準を満たす住宅だ。具体的な基準は、以下の3つである。

・冷暖房負荷が各15kWh/㎡以下であること
・気密性能として50Paの加圧時の漏気回数が0.6回以下であること
・一次エネルギー消費量(家電も含む)が120kWh/㎡以下であること(※1)

ドイツ・パッシブハウス研究所が提示している基準は、世界的に見ても非常に厳しいものである。基準をクリアするために、最新技術だけではなく、自然がもたらすエネルギーも最大限に活用される。パッシブハウス基準をクリアして建てられた住宅は、次世代省エネルギー基準をクリアして建てられた住宅の、3倍近い断熱性能を有していると言われている。

パッシブハウスとは、エアコン1台を稼働させれば、夏も冬も快適に過ごせる住宅だ。アクティブ(自発的)に暖房や冷房を使わなくても、パッシブ(受動的)な形で快適な生活を実現できることから、「パッシブハウス」という名が付けられている。

一般的な住宅よりも高価格

性能にこだわったパッシブハウスは、日本の基準で建てられる一般的な住宅よりも、建築費がアップしがちだ。一般的な建築費と比較すると、1~2割ほどのコストアップが見込まれる。日本の基準なら3,000万円で建てられる家が、3,300万円~3,600万円程度になる計算だ。(※2)

ただし、パッシブハウスを手がける工務店や設計事務所によって、費用は大きく違ってくる。内装に工夫を凝らせば、コストダウンも可能だろう。また今後、導入が進んでいけば、さらにコストダウンにつながっていくと予想される。

環境問題への効果と利用できる補助金

パッシブハウスが増えれば、冷暖房に必要なエネルギー量が低下する。エネルギー消費量の低下は、温室効果ガス削減につながっていくだろう。重要なのは、「人々が我慢して何かを行う必要がない」という点だ。パッシブハウスに住んでいれば、無意識で節電・CO2削減に向けた取り組みができるのだ。

非常に魅力的なパッシブハウスではあるものの、パッシブハウス独自の補助金は用意されていない。建築する住宅が、ネット・ゼロ・エネルギー・ハウスZEH支援事業の基準を満たしていれば、ZEH向けの補助金を受けられるだろう。2021年度の補助金額は1戸あたり60~105万円。また条件によっては、地域型住宅グリーン化事業の対象になる可能性もある。(※3)

ZEHや低炭素住宅、その他省エネ住宅との違い

省エネ住宅は、パッシブハウスだけではない。ここで気になるのが、それぞれの違いについてである。代表的な省エネ住宅とパッシブハウスとの相違点を解説しよう。

ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)

ZEH(ゼッチ/ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、住宅の断熱性能を大幅に向上させた上で、高効率な設備システムを導入。さらに再生可能エネルギーの導入によって、年間の一次エネルギー消費量収支をゼロにする住宅を指す。パッシブハウスが、家電も含めた一次エネルギー消費量を「減らす」ことを目的にしているのに対し、ZEHでは「創エネ」によって、エネルギー収支をプラスマイナスゼロにすることを目的にしている。(※4)

低炭素住宅とパッシブハウスの違い

低炭素住宅は、二酸化炭素の排出を抑制した住宅であり、政府が積極的に後押ししている。低炭素住宅として認められるためには、断熱等性能等級4+一次エネルギー消費量等級5を満たした上で、HEMSの導入や節水対策の実施など、一定の措置が求められる。基準となる数値は、パッシブハウスよりも低い。低炭素住宅の基準をクリアしていれば、住宅ローンなどでさまざまな優遇を受けられる。(※5)

パッシブハウスのメリット

省エネ住宅に関する、さまざまな名称が乱立する住宅業界。パッシブハウスを検討するメリットは、以下のとおりだ。

・少ないエネルギー量で快適な空間を維持できる
・安全性の高い家を作れる(冬季のヒートショックの予防)
・光熱費の負担が軽減できる
・地球環境に配慮した生活を実現できる

長い期間使い続ける「住宅」だからこそ、そのメリットは非常に大きい。

パッシブハウスのデメリット

一方、パッシブハウスのデメリットは、以下のとおりだ。

・建築時のコストアップ
・工期が長い

住宅建築時に、潤沢な予算を用意できる人は多くない。そこをどう賄うのかが、大きな問題となるだろう。

また、パッシブハウスには間取りの制限がなく、オーダーメイドで設計するため、工期もまちまちだ。

暮らしやすさと性能、そしてコストについて、折り合いの付け方が難しい点が、パッシブハウスのデメリットと言えるだろう。

日本でパッシブハウスを扱うハウスメーカー

日本国内では、まだまだ認知度が低いパッシブハウス。土地ごとの条件に合わせて、オーダーメイドでの対応を求められるため、大手ハウスメーカーでの対応が難しいという特徴がある。対応できる工務店や設計事務所を探す際には、一般社団法人パッシブハウス・ジャパンのサイトを参考にするのがおすすめだ。以下はその一例である。

・棟晶株式会社(北海道札幌市)……日本で初めて、リフォームによるパッシブハウス認定を受けた工務店
・鳳建設(岐阜県岐阜市)……2017年10月、日本で初めてのパッシブハウスプラス認定を受けた工務店

このほかにも、パッシブハウスの施工実績がある工務店は、日本全国に存在している。まずは一度、話を聞いてみるのもおすすめだ。(※7)

次世代の省エネルギー住宅へ

我々日本人が、「省エネ性能に優れた住宅を手に入れたい」と思ったとき、注目するのが次世代省エネ基準だろう。しかし世界基準で考えると、この次世代省エネ基準でさえ、決して十分とは言えない現実がある。さらに高性能な家を求めるなら、パッシブハウスに注目してみてほしい。

パッシブハウスは、自然の恵みも最大限取り入れつつ、最小のエネルギーで快適な空間をつくり出すための基準である。今後、家づくりの新たな指針となるのかもしれない。

※掲載している情報は、2021年11月30日時点のものです。

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