CDPとは? 仕組みと質問書の内容、スコア、メリットについて解説

空とビル群

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環境問題が深刻であるいま、企業の責任として環境への取り組みは欠かせないものとなった。CDPは、この取り組みを情報化して開示する環境報告のグローバルスタンダードである。この記事では、CDPとは何か、仕組み、3つの質問書、スコアリング、メリット、評価の高い日本企業を紹介する。

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2024.08.21

環境情報開示を推進する国際組織「CDP」とは

パソコン

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CDPとは、2000年にイギリスで設立された国際的な環境非営利団体(NGO)である。カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト:Carbon Disclosure Project(二酸化炭素情報開示計画)の頭文字をとっており、環境に与える影響、環境インパクトの情報開示を、投資家や企業・自治体に働きかける活動をしている。

活動拠点は50カ国にあり、日本では2005年より一般社団法人 CDP Worldwide-Japanが活動を開始している。CDPにより情報開示を行った企業は2020年までに9600社以上にのぼり、世界の時価総額の50%以上に相当する。(※1)

CDPの目的

CDPの活動の目的は「人々と地球にとって、健全で豊かな経済を保つ」ことである。いまやCDPの情報開示システムは、環境報告のグローバルスタンダードとなっている。世界の抱える環境問題に向き合うためには、世界経済の一端を担うCDPの活動が重要だ。

CDPが注目される社会的背景

CDPが注目される社会的背景には、パリ協定やSDGs、ESG投資の流れがある。パリ協定は、地球温暖化対策に関する国際的な枠組みだ。気候変動への対策として、各国は温室効果ガスの削減目標を設定する。これは環境に対する積極的な取り組みの1つである。

SDGsは、持続可能な社会を実現するために掲げられた経済・社会・環境に関する目標だ。2030年までの達成を目指し、各国が取り組んでいる。そしてESG投資は、投資先を選ぶ際に、環境・社会・企業統治の3つの要素を考慮する投資手法だ。近年、環境問題への関心の高まりに伴い、ESG投資は重要視される傾向にある。

こうした環境と経済の関わりが問われる社会的背景の中で、環境インパクトの情報開示を促すCDPの活動はますます注目されている。

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CDPの情報開示システムと仕組み

並んだ付箋

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CDPの内容について理解したところで、情報開示システムとはどのようなものなのか、その仕組みを見ていこう。

CDPの情報開示システムには3者が関与する。要請元、CDP、要請対象だ。

・要請元:機関投資家、サプライチェーンメンバー
・CDP
・要請対象:回答要請を受けた企業

3者は次のような仕組みでCDPの情報開示を行う。

CDPの情報開示システム

【要請元】CDP質問書を通じた情報開示を企業に要請

【CDP】CDP質問書の作成、情報開示プラットフォームの提供、要請対象に回答の要請

【要請対象】CDP質問書に回答し情報を開示(非公開回答も可)

【CDP】質問書への回答を基にスコアリング・分析の実施

CDPは、要請元から依頼を受けると、要請対象に対して質問書に回答するよう要請する。そして要請対象は、これらの質問に対してオンライン回答システムを使用して回答するという流れだ。CDPは、要請元と要請対象との間に立ち、情報開示までのサポートを行っている。

CDPが企業に送付する3つの質問書

付箋に書かれた電球のイラスト

Photo by Absolutvision

CDPは、要請対象に対して3つの質問書に対する回答を要請する。この3つの質問書の内容について紹介しよう。

気候変動質問書

気候変動質問書には、次のような内容の質問がある。

気候変動質問書の主な質問内容
ガバナンス
リスク・機会
事業戦略
目標と実績
排出量算定方法
GHG排出量
排出量詳細
カーボンプライシング
エンゲージメント(協働)

気候変動質問書は、すべての要請対象が回答しなければならない。

水セキュリティ質問書

水セキュリティ質問書は、次のような内容の質問書である。

水セキュリティ質問書の主な質問内容
現状ビジネスへの影響
リスクと機会
施設別水のアカウンティング
ガバナンス
ビジネス戦略

水セキュリティ質問書は、関連のあるとCDPが判断した組織に対して回答を求めるものである。

フォレスト質問書

フォレスト質問書は、次のような内容である。

■フォレスト質問書の主な質問内容
コンテクスト
トレーサビリテイ
ターゲット・認証基準
リスクと機会
森林減少に関係する4つのコモディティ
木材、パーム油、牛製品、大豆(+天然ゴム、ココア、コーヒー)

フォレスト質問書についても水セキュリティ質問書と同様に、関連のあるとCDPが判断した組織に対して回答を求めるものである。

以上の3つの質問書は、TCFD(気候変動関連財務情報開示タスクフォース)の提言に沿った質問内容であることが特徴だ。

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CDPのスコアリングについて

白い棒グラフ

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CDPは、企業からの質問の回答に基づきスコアリングを行っている。どのような目的と方法で行われているのかを確認していく。

スコアリングの目的

スコアリングの目的は、企業の環境問題への取り組みを評価することだ。CDPは、市場原理や市場関係者と協働して、環境への影響に関する情報を開示することを促している。スコアリングを通じて、企業が環境への悪影響を軽減する行動を起こすことがCDPのミッションでもある。

スコアリングの方法

スコアリングは、質問書に対する企業の回答に対して、採点基準に沿って得点をつける方法で行われる。

得点は「情報開示」「認識」「マネジメント」「リーダーシップ」それぞれの項目の得点率(パーセント)で評価される。例えば情報開示80%、認識50%、マネジメント20%、リーダーシップ10%といった具合だ。これらの得点率に応じて、最高評価のAから最低評価のD-、無回答のFというスコアが付けられる。

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CDPへの参加で得られるメリット

パソコンの画面

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続いて、CDPへの参加で得られるメリットを紹介する。CDPの質問に回答することで、どのような効果が期待できるのだろうか。3つのポイントを確認していく。

企業価値の向上

1つ目は企業価値の向上だ。環境インパクトに関する情報を開示することで、環境に取り組む企業の姿勢をアピールすることが可能だ。その結果、企業の評価を高めることができる。

環境リスクの早期発見と対策

2つ目は、環境リスクの早期発見と対策だ。CDPの質問書に回答することで、自社が抱える環境リスクを可視化できる。そこで明確になったリスクに対して、早くから対策できる。

投資家からの評価

3つ目は、投資家から高い評価を受けられる可能性があることだ。環境への取り組みを行うことに加え、高いスコアを獲得できれば投資家からの評価も上がる。投資を呼び込む機会になるだろう。

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CDP評価の高い日本企業

上空から見た東京

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最後に、CDPスコアリングの最高評価を受けている国や企業を紹介しよう。

Aリストの選抜企業数は日本が最多

2023年時点で、スコアリングで最高評価であるA/A-を受けているAリスト企業は21,000社を超える。気候変動で362社、森林で31社、水セキュリティで103社という内訳だ。

日本は、約2,000社が情報開示を行った。そのうち、気候変動では112社、フォレストでは7、水セキュリティでは36社がAリストに認定されており、いずれの分野においても世界最多である。(※2)

3分野すべてでAスコアは2社

CDPスコアの気候変動、フォレスト、水セキュリティの3分野すべてでAスコアであるトリプルAを獲得したのは10社だ。そのうち花王と積水ハウスの2社が日本の企業である。

花王は、製品のライフサイクル全体を通じた環境負荷の低減に積極的に取り組んでいる企業だ。トリプルAの獲得の理由は、バリューチェーン全体で取り組んだ結果であると報告している。

積水ハウスは、ESG経営のリーディングカンパニーを目指す企業だ。トリプルAは、サプライヤーとの協業や都市のネイチャー・ポジティブの推進、水のサステナビリティにも力を入れている。

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CDPは環境報告のグローバルスタンダード

高層ビル群

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CDPは、2023年時点で21,000社を超える企業が情報開示を行う、環境報告のグローバルスタンダードである。日本は各分野でA評価を獲得する企業も多く、環境への取り組みを積極的に行っている。CDPの情報開示を通じて環境リスクに対処し、企業の競争力を強化することで、企業の躍進につなげていきたいところだ。

※掲載している情報は、2024年8月21日時点のものです。

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