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「Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)」の略である、「TCFD」。本記事では、企業がTCFDで開示する情報や、TCFDに準拠するメリットやデメリットについて解説していく。
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「TCFD」とは、「Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)」の略。G20の要請を受け、気候関連の情報開示および金融機関の対応をどのように行うかを検討するために金融安定理事会(FSB)によって設立された。(※1)。
簡単にいうならば、各企業の気候変動への取り組みを明確に開示する国際組織である。
TCFDは、投資家に適切な投資判断を促すための一貫性、比較可能性、信頼性、明確性をもつ、効率的な気候関連財務情報開示を企業へ促すことを目的としている(※2)。
概要がわかったところで、TCFDが生まれた背景についても説明しよう。
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TCFDが生まれた背景には、地球温暖化をはじめとする気候変動などの環境問題の深刻化がある。
環境問題が深刻化するとリスクも大きくなり、その影響は世界経済にもおよぶ。そこで、環境問題に対する気候関連の財務情報開示が求められているのだ(※3)。
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パリ協定での「1.5℃目標」の合意と各国のカーボンニュートラル宣言を機に、世界中で環境問題への取り組みが行われ、注目されている。これによって、企業価値の判断基準にも変化が生まれているのだ。
財政状況以外にも、環境への配慮や問題改善への取り組みなどが、投資家たちから重視されるようになっている(※4)。
企業がTCFDで開示する情報は、以下の4つの基礎項目。それぞれにおいて、「気候関連リスクと機会」の考え方に基づく説明が求められている(※5)。
「ガバナンス」では、気候関連リスクと機会に関する組織のガバナンスについて、情報開示が求められている。
具体的には、リスクと機会に対する取締役会の監督体制や、リスクと機会を評価・管理する上での経営者の役割などが該当する。
組織の事業・戦略・財務への影響(重要情報である場合)を説明する項目が、「戦略」である。
ここでは、短期・中期・長期のリスクと機会や、2℃目標等のさまざまな気候シナリオを考慮した組織戦略の強靭性などについて説明する。
「リスク管理」では、気候関連リスクの識別・評価・管理の状況について説明。
リスク識別・評価のプロセスや、リスク管理のプロセス、組織全体のリスク管理への統合状況などについて情報を開示する項目である。
「指標と目標」では、気候関連リスクと機会の評価・管理に用いる指標と目標について情報開示を行う。
具体的には、組織が戦略・リスク管理に即して用いる指標、温室効果ガス排出量、リスクと機会の管理上の目標と実績などについて説明する。
ここからは、企業がTCFDに準拠するメリットについて紹介しよう。
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企業がTCFDに準拠するメリットについて、まず挙げられるのが、企業価値の向上である。
前述したTCFD設立の背景にもあるように、環境問題への取り組みは、企業の評価基準の重要なポイントとなっている。
気候変動に関する取り組みを推進し、TCFDに準拠することで、気候関連の情報開示および金融機関の対応を明確に示すことができ、企業の価値向上につながるのだ。
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TCFDに準拠して環境問題の深刻化に対する今後の戦略やリスク管理について公表することで、投資家や金融機関との信頼関係強化にもつながると考えられている。
信頼関係が強化されることにより、多くの投資を受けられる可能性もあるため、企業にとってメリットといえるだろう。
TCFDに準拠して環境問題の深刻化に対する今後の戦略やリスク管理について公表するためには、まずは企業の気候関連のリスクについて現状をしっかり把握する必要がある。
その上で、今後に向けて戦略を練ったりリスク管理を行ったりすることが求められるため、“TCFDに準拠すること”が最初の目的であっても、結果的には企業の気候関連のリスク管理につながる。
メリットがあれば、デメリットもある。ここからは、企業がTCFDに準拠するデメリットを紹介していく。
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TCFDに準拠するためには、気候関連のリスクについて考えたり戦略を立てたりと、本来の業務以外にやることがたくさん発生する。
費用がかかることもあり、その上、手間や時間もかかることはデメリットといえるだろう。
もうひとつ挙げられるTCFDに準拠するデメリットは、気候変動に関連する測定の難しさである。
気候変動は長期的な問題であり、気象や自然災害などの要因は多岐にわたるため、今後どうなるか正確に予測することが困難だ。そのため、企業の気候変動に関連する戦略やリスク管理についても予測が難しいのである。
具体的に、企業がTCFDに対応するためのステップを見ていこう。
企業がTCFDに対応するにあたり、まず必要なのが現状のリスク評価とデータ収集である。
気候関連リスクを評価するためには、気候変動やそれに対応するための長期的な政策動向などが経営環境をどのように変化させるかを予想し、そのような変化が自社の経営戦略にどのような影響を与えるかを検討する「シナリオ分析」の導入が重要だ。
企業のガバナンスの確認と戦略の見直しをすることも大切。
組織の戦略立案やリスク管理プロセスにシナリオ分析が組み込まれているか、然るべき取締役会委員会または小委員会に監視活動が任じられているか、などを確認する必要がある(※6)。
外部ステークホルダーとの協力も必要不可欠だ。シナリオ分析の結果をさまざなステークホルダーにわかりやすい指標である営業利益への影響として開示するなど、投資家や規制当局と連携した気候リスクの開示や、ESG投資の観点からの対話も重要である。
日本における、企業のTCFDへの取り組みの現状と事例を紹介しよう。
TCFD賛同数は年々増加傾向にあり、2023年10月12日時点で、TCFDに対して世界全体では金融機関をはじめとする4,872の企業・機関が賛同を示し、日本では1,470の企業・機関が賛同の意を示している(※7)。
西松建設株式会社や、キリンホールディングス株式会社、株式会社ニッスイ、株式会社サンゲツなど、幅広い業界で多くの企業がTCFDに取り組んでいる(※8)
TCFD提言を踏まえ、経済産業省が日本企業の開示促進を目指してTCFD研究会を設置し、2018年末にガイダンスを公表している(※9)。
また、企業がTCFDの報告書に沿ったシナリオ分析を円滑に実践できるようにするため、環境省では平成30年度から気候変動の影響を受けやすいとされる業種を中心に「TCFDに沿った気候リスク・機会のシナリオ分析支援事業」を実施。支援事業における実例等を実践ガイドとして取りまとめている(※10)。
2015年に設立したTCFDは、想定していた役割を終了したとして2023年10月に解散。2024年からは、企業の気候変動に関わる情報開示への監視や指導を、IFRS(International Financial Reporting Standards)によって設立されたISSB(International Sustainability Standards Board)へと引き継いだ。
IFRSに引き継いでからは、TCFDをベースにつくられた基準である「IFRS S1,S2」が世界共通の開示基準として活用される。IFRS S1,S2では、TCFDの項目に準拠した開示が義務付けられている(※11)。
世界共通の基準がつくられたことで、企業に対する開示要請が強まる可能性もあると見られている。
世界中が気候変動や地球温暖化など、環境問題への取り組みを進めているが、短期的に解決できるものではなく、今後もあらゆるリスクが予測される。TCFDを意識して気候関連のリスクについて対策をとることは、手間や時間、費用がかかるというデメリットもあるが、それ以上に企業にとって有益であるといえるだろう。
※1 TCFDとは|TCFDコンソーシアム
※2 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の 概要資料(2ページ目)|環境省
※3 TCFDとは?概要・国内外の事例まで総解説【2022年版】|The Finance
※4 TCFD開示で企業に求められる対応とは|NTTデータ - NTT DATA
※5 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の 概要資料(5ページ目)|環境省
※6 TCFD Why it Matters and What You Need to Know|Persefoni
※7 日本のTCFD賛同企業・機関 |METI/経済産業省
※8 記述情報の開示の好事例集2023(6ページ目)|金融庁
※9 TCFD開示促進に向けた取組(2ページ目)|経済産業省 産業技術環境局 環境経済室
※10 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)|環境省
※11 TCFD(IFRS S1,S2)開示コンサルティング|ブルードットグリーン株式会社
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