代替タンパク質とは? 種類やメリット、開発に取り組む企業を紹介

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持続可能な食料生産システムを構築するべく、いま注目を集めているのが代替タンパク質だ。この代替タンパク質とは何なのか、主な種類やメリット、課題を解説する。また代替タンパク質商品の開発・普及に取り組む企業も紹介する。

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2024.09.19
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代替タンパク質とは

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まず代替タンパク質とはなにか、日本や世界の市場規模などを解説しよう。

代替タンパク質の定義

代替タンパク質とは、食肉や魚、鶏卵といった従来のタンパク質に代わる新しいタンパク質のことを指す。具体的には、植物由来のタンパク質、動物性タンパク質に似せて人工的につくられたもの、これまでタンパク源としてあまり食べられてこなかったものなどを材料に、タンパク質を摂るための食料にしたものである。

日本や世界の市場規模

日本での代替タンパク質の市場規模は、正確に把握されていない。ただし2023年から2024年にかけて事業者の新工場が稼働予定であることから、規模拡大が想定されている。なお日本植物蛋白食品協会によると、2023年の植物性タンパク質(大豆系と小麦粉系の合計)の生産量は48,128トンであったと報告されている。

世界の市場規模(植物由来肉、植物由来シーフード、培養肉、培養シーフード、昆虫タンパク計)は、メーカー出荷金額ベースで、6,395億7,300万円と推計されている(2022年時点)。​今後需要が伸長する見通しであることから、拡大していくと予想される。(※1、※2)

代替タンパク質の主な種類

代替タンパク質にはいくつか種類がある。どのような種類があるのか見ていこう。

植物性タンパク質

大豆やえんどう豆など、植物由来の原料からつくられるものだ。大豆を原料にした代替タンパク質は多く商品化され、代替肉や代替シーフードなどが登場している。

昆虫タンパク質

2015年に開催された国連サミットで「昆虫は貴重なタンパク源である」と推奨されたことから注目されているのが昆虫タンパク質だ。昆虫のなかでもタンパク質が豊富なのが、コオロギやイナゴ、カイコなどだ。そのまま調理して食べることもできるが、見た目に対する心理的抵抗感からパウダー状にして食品に利用されることが多い。

培養肉

培養肉は、動物の細胞からつくる人工肉のことだ。実際の動物から生きている細胞を培養し、筋繊維を成形し、それを積み重ねることで筋組織をつくり、それが肉になる。本物の肉と同じ味や食感、成分を再現でき、動物の犠牲を減らせることなどメリットがたくさんある。

藻類タンパク質

藻類タンパク質は、スピルリナやクロレラといった藻類を使った代替タンパク質だ。代替肉や代替シーフードをつくったり、パウダー状にして食品に加工したりして活用する。

菌糸由来

真菌の一種を発酵させ、マイコプロテインを生成し代替肉をつくる研究も進んでいる。マイコプロテインによる代替タンパク質は、赤身肉に似た食感や豊富なタンパク質をふくむことが特徴だ。

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代替タンパク質が注目されている背景

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なぜ代替タンパク質が注目されているのか。その理由を説明する。

世界人口の増加と食肉需要の拡大

2024年現在の世界人口は82億人とされ、今後60年間で増加し、2080年代なかばに103億人でピークに達すると見込まれている。人口が増えれば増えた分だけ食料も必要となり、途上国の生活水準が向上することで食肉需要も拡大していくことが考えられる。そうすると、将来的にヒトの体に必要不可欠な栄養素であるタンパク質は不足する恐れがある。その救世主となるのが代替タンパク質といわれている。(※3)

食の持続可能性の追求

代替タンパク質は、限りある資源の効率的な利用や温室効果ガス排出削減、生物多様性の保護など、食の持続可能性を追求するうえで重要な役割を果たす。こういった持続可能な未来を実現するためにも、代替タンパク質が注目されている。

食料安全保障の課題

昆虫タンパク質や細胞培養肉は、厳しい環境条件でも生産できる。そのため代替タンパク質は、気候変動の影響を受けにくい安定的な食糧供給源として注目されている。

食肉製造における環境負荷

食肉を製造する畜産業は、温室効果ガスの排出、大量の水資源の消費、森林伐採による生物多様性の喪失など、環境に大きな負荷をかけている。代替タンパク質は製造の際に環境にあまり負荷をかけることがないため、このような環境負荷を大幅に軽減できると期待されている。

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代替タンパク質のメリット

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代替タンパク質のメリットを紹介しよう。

健康に配慮した食事に有効

三大栄養素のひとつであるタンパク質は、骨や筋肉・臓器などをつくる役割があり、人間が生きていくうえで欠かせない栄養素である。代替タンパク質の多くは、畜産物由来のものより脂質やコレステロールなどが抑えられ、タンパク質の含有量が豊富で、健康に配慮した食事に有効と考えられる。

持続可能な食料供給につながる

代替タンパク質は、食料供給の安定性を高める可能性がある。従来の畜産業は病気や気候変動によるリスクが高いが、代替タンパク質はその影響を受けにくいというメリットがある。また人口増加に伴う食料需要の拡大に対応するための、持続可能な解決策としても注目されている。

環境負荷を軽減できる

食肉用の家畜を飼育するための水や飼料、土地、生産に使われるエネルギーを大幅に削減できるのもメリットだ。大豆からつくられる代用肉や、施設内でつくられる培養肉・微生物肉は、生育するための飼料、放牧地、飼料作物のための耕地が不要だ。また、畜産による温室効果ガス排出などの環境負荷も低減できる。

食糧危機や飢餓問題の解決につながる

代替タンパク質は生産に必要な資源が少なく、効率よく供給できる。また肉や魚に代わるタンパク源の選択肢となることで、食料供給を多様化してリスク分散を図れるのもいい点だ。これらは人口増加による食糧危機や、飢餓などの問題解決につながる。

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代替タンパク質の課題

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代替タンパク質にはメリットがある一方、課題もある。どのようなものか見ていこう。

価格の高さ

代替タンパク質の一番の課題は、一般的な食肉にくらべて価格が高いことだ。それには、生産コストや生産効率が響いていると考えられる。代替タンパク質の食品の普及が広がれば、価格も下がっていくことだろう。

味や食感の問題

肉やシーフードの代わりとなる代替タンパク質は、味や食感が実物とは異なることが課題である。こうした味や食感は研究開発によって努力されているが、どうしても違和感が残ることがあるのは課題だ。

生産コストと効率

一般的な家畜の肉やシーフードにくらべると、やはり生産コストがかかるのがネックだ。また、生産効率ももっと上げることが期待される。これは培養肉や微生物由来の代替タンパク質の多くが、開発研究の段階であるためだ。これらがいずれ解消される可能性は十分にある。

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代替タンパク質を使った食品の例

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ここでは、代替タンパク質を使った食品を紹介する。

無印良品の大豆ミート

無印良品では、大豆ミートを使った商品を展開している。商品ラインアップには、肉が好きな人にも違和感ない食感とおいしさにこだわった「ハンバーグ」や「ミートボール」、水戻し不要で料理にすぐ使えるよう加工した「ひき肉タイプ」と「薄切りタイプ」がある。常温保存可能かつ、水戻し不要な商品であるため、大豆ミートを手軽に取り入れられるのがポイントだ。(※4)

モスバーガーのソイパティ

モスバーガーは、肉の代わりに大豆を使った「ソイパティ」のハンバーガーを提供している。このソイパティは、豆の臭みを消すために入れる野菜ブイヨンや、相性のいい野菜の組み合わせなどを試行錯誤し開発された。また肉の食感に近づけるため、サイズの違う大豆たんぱく質が使われている。(※5)

SILKFOODのシルキープロテイン

SILKFOODでは、低糖質かつ高タンパク質な蚕を使った食品をつくっている。代替タンパク質としての蚕は栄養素が豊富で旨味成分もあり、ナッツのような風味が特徴だ。商品ラインアップには、蚕ペーストを配合したグラノーラやチョコレート、プロテインパウダーなどがある。(※6)

グリラスのプロテインバー

徳島大学発ベンチャー企業として、食用コオロギに関連する品種改良・生産・原料加工・商品開発・販売を行うグリラスでは、国産食用コオロギを使ったプロテインバーをつくっている。コオロギパウダーを使用することで、タンパク質、鉄、カルシウム、ビタミンB12などの栄養素も摂れるのが魅力だ。(※7)

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代替タンパク質の開発・普及に取り組む企業の例

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代替タンパク質の開発・普及に取り組む企業を紹介していこう。

Beyond Meat

アメリカの「ビヨンドミート」は、植物由来のタンパク質をもとに代替肉を製造している企業だ。代替肉には、えんどう豆やココナッツオイルを使用している。なお代替肉製品には、バーガー、ソーセージ、ミートボール、パテ、ひき肉などがある。(※8)

Good Catch Foods

アメリカの「グッドキャッチ」では、代替マグロを中心に水産物の代替商品を開発している。水産物といっても、主原料となるのはえんどう豆、大豆、ひよこ豆などの豆類だ。ラインアップには、ツナ、クラブケーキ、バーガー用のフィッシュパテなどがある。(※9)

日清食品グループ

日清食品グループは、2017年から東京大学と「培養肉」の共同研究を開始。動物の細胞を体外で組織培養することでつくられる培養肉の研究を進めている。培養肉の研究を通じて新たな食文化の創造と持続可能な社会の実現に挑戦し、2024年度中に基礎技術の確立を目指している。(※10)

Sophie's Bionutrients

シンガポールの「ソフィーズ・バイオニュートリエンツ」は、さまざまな種類の微細藻類をバイオリアクターで発酵させ、タンパク質を豊富にふくむ粉末を抽出してパテを完成させた。これは微細藻類を使った世界初のハンバーガーパテで、パテ1枚あたり25グラムのタンパク質が含まれている。(※11)

Meati Foods

アメリカの「Meati Foods」は、菌糸体から植物性ステーキを開発している企業だ。製品の成分表示には、Mushroom Root (mycelium:キノコの根)と標記されており、糸状菌の1種であるアカパンカビを使用している。(※12)

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代替タンパク質を選択肢のひとつに

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代替タンパク質は環境負荷の軽減や食糧問題の解決にもつながる、持続可能性がある食品だ。代替タンパク質を選択肢のひとつにすることで、SDGsや環境アクションへの貢献につながるだろう。

※掲載している情報は、2024年9月19日時点のものです。

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