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プラントベースフードとは、より多くの植物を積極的に摂取するスタイルのこと。疾病予防や健康増進にフォーカスする人々の間で注目されている。環境負荷や宗教面でもメリットがあり、幅広い層にマッチする可能性も。プラントベースの定義や注目される背景、ヴィーガンとの違いなど幅広く解説する。
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プラントベースフードとは、「プラントベース」から生まれた食品をさす。いわばプラントベースの概念を根源とした食品だ。
プラントベースは健康増進・環境負荷の軽減を目的とし、植物性食品を積極的に摂取しようという考え方、及び植物性食品そのものを指す言葉である。
1980年代、アメリカの栄養学にもとづいてプラントベースの食生活が健康的だと定義された。近年では植物性食品を健康管理やダイエットに取り入れる人も多い。
2016年には「The Permanente Journal」で医師に向けた論文「プラントベースの食事: 医師のためのガイド(Plant-Based Diets: A Physician’s Guide)」が発表された。プラントベースの食事が健康にメリットをもたらすという内容だ(※1)。
論文では過去数十年にわたって説かれてきた植物性食品のメリットを認めるとともに、虚血性心疾患による死亡率の低下、体重管理、投薬の必要性を減らすなどさまざまな事例をエビデンスとして取り上げている。
そのプラントベースの考えかたを受けて誕生したのが「プラントベースフード」だ。具体的には野菜、果物、全粒穀物、植物油、ナッツを積極的に摂取する食生活が推奨される。
健康志向の推進とプラントベースフードの浸透を受け、近年では植物性食品のニーズが高まっている。メリアム・ウェブスター辞典にも「植物由来(プラントベース)」が追加され、今後も植物性食品の需要は増加すると考えられるだろう。
プラントベースフードは、以下のように定義されている。
・動物由来の原材料を使用していない
・植物由来の原材料を使用している
この定義をもとに、大豆・小麦などから動物由来食品の代替となる加工食品がつくられることが多い。「肉・卵・ミルク・バター・チーズ」を模した代替加工食品が有名だ。たとえば、日本の食品店でも見かけるようになった大豆ミート、オーツミルクなどは、いずれもプラントベースの代替加工食品である。
一部の飲食店ではこれらの代替加工食品がメニューのひとつとしてサーブされるケースもある。(※2) プラントベースフードの広がりは、動物由来食品を食べられない環境の人にとって新たな選択肢をもたらしたとも言えるだろう。
プラントベースは植物性食品を多く摂取するため、ヴィーガンやベジタリアンと同じカテゴリーの食生活だと思われるかもしれない。だが実際には、プラントベースはヴィーガンやベジタリアンと明確な違いがある。
プラントベースは前述のとおり、「より多くの植物性食品を摂取する」という点にフォーカスしている。場合によってはプラントベースフードの原材料のひとつとして乳製品や卵を摂取することもあり得るのだ。
いっぽう、ヴィーガンやベジタリアンは「動物性食品を可能な限り摂取しない」という点を重視している。避けるべき食品には乳製品や卵も含まれており、プラントベースとは一線を画した食生活だ。
また、プラントベースは健康増進・疾病予防などフィジカル面に強い関心を持った上で選択される傾向がある。それに対し、ヴィーガン・ベジタリアンはアニマルウェルフェアや宗教の教義など精神的な目標が選択理由であることが多い。無論例外はあるが、一般的にはそのような傾向が見受けられる。
近年、プラントベースフードに注目が集まっている。その背景にはサステナブルへの関心、健康意識の高まり、宗教上の理由が大きく影響しているようだ。
温室効果ガスの削減
地球温暖化の原因である温室効果ガスは畜産でも大量に排出される。
環境省が作成した「UNFCCCへの報告および審査_温室効果ガスインベントリ」(※UNFCCC=気候変動に関する国際連合枠組条約)によると、2020年、畜産をふくむ農林水産部門では約1,688万トンの温室効果ガスが発生した。(※3)
プラントベースフードの普及により畜産のバランスが無駄のないものへと変化すれば、温室効果ガス削減につながる。アメリカでは畜産業から環境負荷の少ない農業へ転職したい人を支援する試みが開始された。
水資源の保護
飼料の栽培、家畜の飲み水、加工用など、畜産には大量の水が使われている。1キロの牛肉をつくるためにはじつに1万5,400リットルもの水が必要だ。
日本は水資源が豊富な国だが、世界には水資源の枯渇と闘いながら生活している地域もある。プラントベースフードのさらなる普及で畜産とのバランスが好ましいものになれば、水資源の保護が進む可能性を高められるだろう。
人口増加による食糧問題への貢献
2022年11月、世界人口は80億人に到達した。国連によると、2057年には97億人、2080年には104億人に達する見込みだ。(※4) 人口の増加には必然的に消費食糧の増加もともなう。安定した食糧供給をはかるには生産性の向上が必要だ。
たんぱく質の供給源になる畜産の拡大は広い土地や大量の飼料(穀物)を要する。植物性食品はそのような生産リソースを畜産よりも節約しやすい。また、動物性食品に勝るとも劣らないすぐれたたんぱく質を有している。植物性食品生産の推進は、生産性・栄養面とともに将来的に案じられる食糧問題の解決に貢献できるだろう。
前述のとおり、プラントベースの食生活は健康増進を意識する人のライフスタイルと親和性が高い。
プラントベースフードを好む人は肉を食べる人よりもBMI(肥満度指数)が低い傾向がある。糖尿・心疾病が少ないのも特徴だ。
数々の病気を遠ざけやすいプラントベースフードは、QOL(生活の質)向上のサポートになるだろう。
宗教上の理由で動物性食品全般、あるいは一部が摂取できない人もいる。たとえばイスラム教では豚肉、ヒンドゥー教では牛肉の摂取が厳格に禁じられるとともに、基本的には豚肉の摂取も禁じられている。
しかしプラントベースフードが普及すれば教義に反することなく食事を楽しめる。教義に細かく配慮していない環境でも、プラントベースフードを選べば安心して生活できるだろう。
「Impossible Foods(インポッシブル・フーズ)」が提供する代替加工食品は、牛肉・ソーセージ・鶏肉・豚肉などの肉類に近い味と食感を味わえる。
たとえば牛ミンチの代替として提供されている「Impossible Beef」は、原材料に大豆を使う。肉独特の風味は鉄分にふくまれる「ヘム」であることから、大豆と酵母でヘムをつくり出し、フレーバーとして大豆にプラスした。ココナッツオイルとサンフラワーオイル、でんぷんで肉ならではのジューシー感と食感を再現。
実際に製品を食べた人の間では「驚くほど肉らしい」という声も。プラントベースのライフスタイルの人だけではなく、病気やアレルギーで肉が摂取できない人も楽しめそうだ。
ヴィーガンスタートアップ企業「Grounded Foods(グラウンデッド・フーズ)」は、販売基準を満たせなかったカリフラワーとヘンプシードからつくったチーズの代替加工食品をリリースしている。
原材料はカリフラワーとヘンプシードのほか、ココナッツオイル、サンフラワーオイル、でんぷんなど100%植物由来だ。チーズならではの香りの再現にはチャイブやディルのようなハーブが使われている。
味はもちろん、クリームチーズやチーズソースなどバリエーション豊富なラインアップもプラントベースの食生活に彩りを与えてくれるだろう。
アメリカのスタートアップ企業「Oggs(オッグス)」では、植物性のプロテインを原材料にした「JUST Egg」をリリースしている。
原材料は緑豆プロテイン、圧搾キャノーラオイル(菜種油)がメインだ。そのほか植物由来の天然成分を使用し、卵液に寄せた色・食感を生み出している。
従来の卵のようにスクランブル・エッグやオムレツなど、幅広いレシピでの使用が可能だ。プラントベースでは卵の摂取も可能だが、より植物性食品を求める人にとって食卓のバリエーションが広がる製品だろう。
関心が高まるプラントベースフードは身近な食品店でも手に入れやすくなりつつある。プラントベースフードを選ぶ際、気をつけておきたいポイントを紹介する。
店によってはプラントベースフードと一般的な肉類を並べて販売していることがある。食品ラベルを見て、プラントベースフードの基準を満たしている旨を確認しよう。
プラントベースフードのなかには添加物を使用した製品がある。市場に出ている以上、基準をクリアしたもののみが使われているが、添加物の摂取を望まない人は注意が必要だ。
プラントベースフードは加工品のため、糖分・塩分が高い傾向にある。食生活に取り入れる際には栄養バランスを考える必要があるだろう。
プラントベースの健康増進効果が広く知られるようになった。代替加工食品も数多くリリースされ、今後は消費者が楽しめるバリエーションがさらに増えそうだ。
健康増進効果だけではなく、プラントベースはサステナブルに大きく貢献する画期的なライフスタイルだと言える。健康とサステナブルの両立という選択肢は、わたしたちの生活の幅を広げてくれるだろう。
※1 Plant-Based Diets: A Physician’s Guide|National Library of Medicine
※2 プラントベース食品ってなに?(2ページ目)|消費者庁
※3 第 2 章 温室効果ガス排出量及び吸収量の推移(5ページ目)|環境省
※4 世界人口は2022年11月15日に80億人に達する見込み(2022年7月11日付 国連経済社会局プレスリリース・日本語訳)|国際連合広報センター
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