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近年耳にする機会も増えている「QOL」という言葉。具体的に何を意味しているのか、わかりやすく解説。セットで使われることが多いADLについても、あらためて確認しておこう。具体的な評価方法や、QOLに関わる要因も紹介する。
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QOLとは、「Quality Of Life(クオリティ・オブ・ライフ)」の頭文字をとってつくられた言葉である。クオリティオブライフ、つまり「生活の質」もしくは「生命の質」「人生の質」と訳されている。その人の生活や人生の豊かさを示す際の、指標となる概念と言えるだろう。QOLでは、物質的な豊かさだけではなく、精神的な豊かさや満足度も、非常に重要な意味を持つ。
QOLという言葉は、近年さまざまなシーンで活用されている。
・医療
・福祉
・企業活動
たとえば、がんと診断され各種治療を受けるようになれば、身体的な苦痛や制限も増えるだろう。とはいえ、病気の治療を進めるためには、避けて通れない道でもある。このような場面で重視されるのが、患者自身のQOLである。QOLを維持したり向上させたりするためには、どういった治療法を選択するのがベストなのか、考える余地があるだろう。
また近年、企業が従業員の健康管理や環境整備をする上でも、QOLという言葉がよく使われている。従業員一人ひとりのQOLが高まれば、心と体を健やかに保つことにつながるだろう。ワークライフバランスが保てる環境であれば、幸福度の向上や離職率の低下につながる可能性も高い。社員のQOLが向上し、日々生き生きと働けるようになれば、多くの人材が集まってくるだろう。優秀な人材を確保しやすくなるはずだ。
ADLとは「Activities of Daily Living」の頭文字をとった言葉で、「日常生活動作」を意味している。食事や着替え、排せつや入浴など、私たちが日常生活を送るためには、さまざまな動作をする必要があるだろう。こうした動作全般をどの程度まで問題なくこなせるかを示す指標が、ADLである。
ADLとQOLはまったく異なる意味を持つものの、とくに医療・福祉・介護分野においては、両者は密接に関わっている。なぜなら、ADLを高めることがQOLを高めることにもつながるからだ。日常生活動作の中で、自分でできる範囲が広がれば、行動の自由度も増す。ADLについて正しく理解し、どういった動作をどの程度まで高める必要があるのか、しっかりと把握する必要があるだろう。
とはいえ、たとえADLが低くても、QOL向上をあきらめる必要はない。日常的な基本動作が難しくても、没頭できる趣味や周囲とのコミュニケーションによって、生活の質を向上させられる事例は少なくない。ADLとQOL、それぞれの意味だけではなく、両者の関連性についても知っておこう。
QOLは、より充実した人生を生きるために重要な指標である。一方で、個々の感覚によるところが大きく、目に見えにくいという特徴を持っていた。しかし近年、「SF-36」など、QOLを客観的に評価するためのツールも公開され、注目を集めている。
SF-36は、健康関連QOLを測定するための包括的な尺度であり、もともとはアメリカで作成されたものだ。現在では、日本語を含めた170か国語以上に翻訳され、世界中で広く使用されている。36項目の質問内容をもとに、回答をスコア化。100点満点でQOLが数値化される仕組みだ。(※1)
SF-36は、以下の8つの健康概念を測定するための、36の質問で構成されている。
・身体機能
・日常役割機能(身体)
・体の痛み
・全体的健康感
・活力
・社会生活機能
・日常役割機能(精神)
・心の健康
それぞれの質問には細かな選択肢が用意されていて、自分に合うものを選択する。質問への回答が詳細であればあるほど、精度の高い結果が得られる仕組みである。
SF-36を使えば、QOLに関するより客観的な視点を手に入れられるだろう。たとえば、異なる病気を抱える患者同士を比較する、患者と健康な人との間で比べるといった作業も簡単にできる。相手のQOLを客観的に見つめ、よりいいケアにつなげられるだろう。
では、なぜいま、これほどまでにQOLが注目されているのだろうか。その背景には、高齢化や世界的な経営トレンドの変化といった影響がある。
QOLが最初に注目されるようになったのは、医療や福祉、介護に関連する現場である。高齢化に伴い、医療と患者をめぐる状況は変化した。慢性疾患に対する治療法は数多く確立され、選択肢は増加した。加齢による身体機能の衰えが問題視されるケースも増えてきている。
こうした状況の中で、「何を重視してどう生きるのか?」によりいっそう注目されるようになったのだ。選択肢が増えたとはいえ、治療のために人間らしい生活を犠牲にするのは本望ではないはずだ。治療効果と生活の質の両方を見定めて、最善の方法を選ぶスタイルが主流になっている。
一方、企業経営においてQOLが注目される背景には、働き方改革や人材不足、ESG経営など、さまざまな要因が絡んでいる。一昔前までは、「社員は会社のためにただがむしゃらに働くのが望ましい」という価値観があった。しかし、ブラック企業や長時間労働が問題視されるようになったいま、よりいい人材を確保するためにも、QOLの視点が欠かせないという実情がある。
社員のQOL向上に向けて、企業として何ができるのか。これから先の時代も企業が成長し続けていくために、真剣に向き合うべき時期に差しかかっている。
言葉で表現すれば、非常にシンプルなQOL。とはいえ、具体的に何をどうすれば向上させられるのか、悩む人も多いだろう。QOLを上げるために有効な方法を5つ紹介するので、ぜひ参考にしてみてほしい。
仕事中心の生活を送っていて、精神的な余裕が感じられないときには、仕事以外の生きがいを持つことがQOL向上に役立つだろう。仕事以外の社会に所属すれば、新たな役割や関係性が生まれる。それが生きがいになれば、ハリのある毎日を送れるだろう。何も楽しみがない状況でただ淡々と仕事をこなすよりも、「仕事のあとは○○を楽しむ」と決めていたほうが、心の余裕も生まれやすい。
仕事以外の生きがいは何でもいい。新たな趣味をスタートしたり、ボランティア活動に参加したりするのもおすすめだ。
QOL向上のためには、まず健康的な肉体と精神を維持することが重要である。まずは良質な睡眠を毎日きちんととれるよう、意識してほしい。睡眠不足になれば、物事に集中できなかったり、多少のトラブルにもイライラしてしまったりと、生活に与えるマイナスの影響は極めて大きい。将来的に見れば、病気のリスクも高まるだろう。
また日々の食事を大切にすることも、QOL向上の重要なポイントである。
・誰かと一緒に楽しく食事をする
・好きなものを口にして「おいしい」と感じる
これらの行動には、幸福感が深く関わっている。睡眠と食事、そしてそれらの質を高めるための適度な運動についても、ぜひ意識してみよう。
先ほども解説したとおり、ADLとQOLには深い関わりがある。病気やけがによって身体が不自由な場合にはリハビリをして、自分でできる行動を増やすことで、QOL向上につなげられるだろう。
とくに排せつや食事、入浴に関わるADLは、日常生活の中で抱ける幸福感との関連性が深い。できる限り自分でできる範囲を広げること、そして周囲がそれをしっかりと理解し、適切な範囲内でサポートすることも重要なポイントである。
人間の心を健康的に保つために「笑い」は欠かせないものだ。意識的に笑う時間を増やせば、QOL向上につなげられるだろう。人とのコミュニケーションの中で笑える時間を増やすのはもちろん、映画やテレビ番組を観て思いきり笑ってみるのもおすすめだ。心も軽くなり、リフレッシュできるだろう。
日々忙しく過ごす現代人にとって、考えごとから解放される時間も、QOL向上のために必要なものだ。ただボーっと過ごす時間をつくってみたり、瞑想(めいそう)に取り組んだりしてみよう。心の負担を軽くして、リラックスさせてくれるはずだ。
では反対に、我々のQOLはどのような場面で低下してしまうのか。5つの事例を紹介する。
職場や家庭で受けるストレスは、QOL低下を招く要因のひとつである。完全にストレスフリーで生活するのは難しいが、負担が大きくなれば、心のバランスを崩してしまう恐れもある。日常生活から過度なストレスを切り離せなければ、QOLは大幅に低下してしまうだろう。
気分の落ち込みや強い不安感、解決できない悩みなどもQOLを低下させる。精神的なダメージは、生活のさまざまな問題に直結する恐れがあるだろう。企業経営を行う上では、社員のメンタルヘルスに気を配り、具体的な対策を講じることが重要である。
QOLは、収入の状況とも関連して上下する。収入が減り、生活への不安が大きくなれば、QOLは低下するだろう。借金問題やローン返済への不安を抱えている場合も、注意が必要だ。家計を見直すほか、場合によっては法的手段もとりながら、不安を軽減する必要がある。
病気やけがの治療は、生きていくために必要なもの。とはいえその内容によっては、肉体的・精神的苦痛が大きくなり、QOLが低下してしまう事例も少なくない。治療法を選択する際には、「どの方法をとればQOLを維持できるのか?」という視点も大切にしなければならない。
睡眠や食事、運動といった基本的な生活リズムが乱れると、QOLが低下することがわかっている。生活の乱れは心身の乱れに直結し、生活全体の質が低下してしまうからだ。何が原因かわからない場合には、「いつもより早く眠る」「朝少しだけ運動する」など、無理のない範囲から生活改善をスタートするといいだろう。
従業員のQOLを向上させるため、具体的な取り組みをする企業も増加中だ。具体的にどのような取り組みで、QOLを向上させられるのか。3つの具体例を紹介しよう。
従業員のQOLを向上させるためには、メンタルヘルスマネジメントが重要である。定期的なストレスチェックはもちろん、「メンタルヘルス研修」を取り入れるのも効果的だ。従業員向けのカウンセリング窓口や、悩みごとに相談窓口を用意する企業も多い。
個々のライフスタイルが多様化するいま、理想の働き方に対する考え方もそれぞれで異なっている。従業員が無理のないスタイルで働き続けられる環境を用意することも、QOL向上につながるだろう。子育て世代向けの時短勤務制度の導入やテレワークの推進も、働き方の選択肢を増やしてくれる。
従業員のスタイルに寄り添った働き方を導入すれば、QOLだけではなく、効率性や生産性の向上にもつながるだろう。
QOLを向上させるため、従業員が家庭と仕事を両立できる仕組みを企業が導入する事例も目立つ。残業時間削減のために具体的な取り組みを行ったり、年次有給休暇を気兼ねなく取得できるよう環境を整えたりする企業も多い。
仕事の負担を軽減できれば、空いた時間を、従業員はQOL向上のために費やせるだろう。働きやすい環境は、採用活動時にも強力なアピールポイントになるはずだ。優秀な人材を集めやすいというメリットも生まれる。
生活の質、人生の質を意味するQOL。目に見えにくいポイントではあるが、意識するのとしないのとでは、生活全体の捉え方も大きく違ってくるだろう。自分自身の人生の質を見極め、どうすればさらに向上できるのか、考えてみてほしい。より自分らしく、毎日イキイキと過ごすためのヒントになってくれるだろう。
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