健康経営や働き方改革を取り入れる企業が増えるなか、ウェルビーイングが注目されている。従業員の人生全体の幸福度が仕事のパフォーマンスに直結するという考え方であるウェルビーイングは、昇給や福利厚生制度の導入とは一線を画す。ウェルビーイングに取り組む企業の事例を紹介する。
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ウェルビーイングとは、身体的、精神的、社会的によい状態にあることを意味する言葉。「幸福と」訳されることも多い。
初出は1946年の世界保健機関(WHO)憲章。草案の中で「健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態(well-being)にあることをいいます」と定義された(※1)。
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2020年3月に国連の持続可能な開発ソリューションネットワークが発表した「世界幸福度報告書」で、日本の幸福度は153カ国中62位となった。
G7メンバーをはじめ、他の先進国の多くが日本よりも上位であることをふまえると、日本の幸福度は決して高いとは言えない。日本の幸福度が低い原因はさまざま考えられるが、日本社会や企業経営者の間に社員一人ひとりの幸福度が会社の業績に影響するという考え方が浸透していないことがその一因と見られる。
2019年の「働き方改革関連法案」の施行に伴い社員の健康や労働環境を是正する取り組みも見られるようになってきたものの、昇給や福利厚生制度の導入から抜け出ていないところは少なくない。
世界でも従業員のウェルビーイングが高い企業は13%しかないと言われる。そのめずらしい存在の一つが米国のIT企業であるGoogleだ。同社の社内チームによる組織研究は、組織の生産性の向上には従業員のウェルビーイングの向上が欠かせないと結論付けた。
2012年から心理的安全性に着目した同社は生産性向上計画「プロジェクト・アリストテレス」を導入している。
幸福度の低い会社で働く従業員には次のような特徴がある。
・キャリアパスが明確でなく、自分が何を期待されているかわからない
・組織のミッションやバリューが共有されていない
・仕事をうまく行うために必要な材料や道具を与えられていない
・職場で自分が得意なことをする機会が与えられていない
・定期的に社員の行動や実績を褒める風土がない
・上司や同僚から一人の人間として気にかけられることがない
・職場で自分の意見が尊重されているという感覚や成長を実感できることがない
・職場に信頼できる友人がいない
・職場の同僚が質の高い仕事をしようとしていない
社員の幸福度が低い会社は、生産性が低く、離職率も高いという特徴がある。上記の指標は、欧米のウェルビーイングのものであり、日本には文化的になじまないとの考え方もある。
しかし、これからの時代に必要なのは会社から与えられるESではない。従業員一人ひとりが自律的・自発的に自分の属する組織と仕事に関われることだろう。
反対にウェルビーイングが高い企業では、社員の創造性や生産性が高まり、業績アップ、退職率・病欠率の低下が起こっている。幸福度の高い人はそうでない人に比べて生産性は30%以上向上するという報告もある。
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ウェルビーイングとは、仕事や労働環境への満足など部分的なものではなく、私生活も含めたその人個人の人生全体の幸福度を指す。人生で幸せを感じている人こそ、企業の戦力にもなるということだ。事例をいくつか見てみよう。
健康経営が注目を集める前から取り組んできた同社は、2018年5月に「味の素グループ健康宣言」を策定。セルフケアを核とした取り組みを行っている。
全従業員を対象にした産業医・保健スタッフによる個別面談を毎年行うことで従業員一人ひとりのセルフケア度を可視化。
健康宣言を導入した年の売上高は前年比5%増加、早実労働時間は74時間元を達成した。経済産業省の「健康経営優良法人2020」に認定、東京証券取引所の「健康経営銘柄2020」にも選定されている(※2)。
健康第一主義を理念に掲げる同社では、従業員が安心して働ける企業文化が根付いている。短時間睡眠がメタボの原因となっていることに注目したキヤノンは、2007年から「睡眠キャンペーン」を展開。
その結果、「睡眠による休養がとれている者」の割合は取り組み開始当初から10%以上改善した。東京証券取引所の「健康経営銘柄2020」にも選定されている(※3)。
※1https://japan-who.or.jp/about/who-what/identification-health/
※2https://www.ajinomoto.co.jp/company/jp/nutrition/health/
※3https://global.canon/ja/news/2020/20200302.html
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