人間開発指数(HDI)とは、健康・教育・所得の面から国の発展レベルを測る指標のこと。所得水準や経済成長率といった数値だけでは、国の豊かさや人々の幸福度は測ることはできないとして、1990年から新たに導入されている。本記事では2019年版の「人間開発指数」ランキングを紹介する。
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人間開発指数(HDI:Human Development Index)とは、健康、教育、所得という3つの側面から、その国の発展レベルや豊かさを測るための指標のこと。1990年にパキスタンの経済学者・マブーブル・ハックによって考案され、国連開発計画(UNDP)が毎年発表している。
国や地域の発展の度合いは、物質的・経済的な豊かさだけでは測ることができず、そこに住む人々の生活の質こそが、発展レベルの指標となるべきだ。
例えば、「健康で長生きできること」「教育を受けられること」「犯罪や暴力のない安全な生活が送れること」「自由に政治的・文化的活動ができて意見が言えること」などといった要素が指標に取り入れられる必要がある。
人間開発指数は、これらの要素を取り入れようとする新しい指標だ。所得水準や経済成長率など、それまで国の発展レベルを測るために用いられてきた指標にとって代わり、「国の本質的な豊かさ」を示す指標として導入されている。
人間開発指数は、その国や地域における平均寿命や、教育指数(成人識字率・就学率)、国民1人当たりの国民総所得(GNI)といったデータをもとに値が決定される。0と1の間の数値で表され、1に近いほど開発レベルが高いとされている。
基本的には、平均寿命は国連人口部、教育指数はUNESCO統計局、国民1人当たりのGNIは世界銀行と国際通貨基金(IMF)から入手した国際データに基づいている。
国民総生産(GNP)や国内総生産(GDP)は、その国や地域の経済的な豊かさを知ることができるが、そのお金がどのように分配されているかを知ることはできない。
一方で人間開発指数からは、その国や地域がどのような分野の開発に力を入れているのかを読み取ることができる。また、他の国との開発の度合いを比較をすることで、自国の開発における課題を発見できるようになった。
例えば、所得が同じ2つの国を比較したときに、一方の国のHDIが極端に低ければ、教育分野や保健分野の政策に優先的に力を入れるべきだということがわかる。
順位 | 国名 | 指数 |
---|---|---|
1 | ノルウェー | 0.957 |
2 | アイルランド | 0955 |
2 | スイス | 0.955 |
4 | 香港 | 0.949 |
4 | アイスランド | 0.949 |
6 | ドイツ | 0.947 |
7 | スウェーデン | 0.945 |
8 | オーストラリア | 0.944 |
8 | オランダ | 0.944 |
10 | デンマーク | 0.940 |
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180 | エリトリア | 0.459 |
---|---|---|
181 | モザンビーク | 0.456 |
182 | ブルキナファソ | 0.452 |
182 | シエラレオネ | 0.452 |
184 | マリ | 0.434 |
185 | ブルンジ | 0.433 |
185 | 南スーダン | 0.433 |
187 | チャド | 0.398 |
188 | 中央アフリカ | 0.397 |
189 | ニジェール | 0.394 |
2019年には、189の国の人間開発指数が算出された。以下は、そのうちの上位と下位の10カ国だ(※1)。
ランキングを見ると、1位のノルウェーを筆頭に、4位のアイスランド、7位のスウェーデン、10位のデンマークなど、北欧諸国が上位に多い傾向にある。
とくにノルウェーは、健康・医療サービス、教育をはじめ幅広い福祉サービスが公的資金でまかなわれており、平均寿命や教育指数といったHDIの数値に大きく影響していることが予想できる。
一方、下位にランクインしているのはすべてアフリカ地域の国々。新興国や発展途上国が多い地域であり、貧困・医療サービスや教育の不足といった問題などがHDIの数値に影響していると言える。
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1990年に0.818であった日本の人間開発指数は、2019年には0.919となり、12.3%の改善を見せた。また、1990年から2019年にかけて、日本人の平均寿命は5.6歳、平均就学年数は3.2年、1人当たりのGNIは約32.8%伸びている(※2)。
189の国と地域の中ではイスラエルやリヒテンシュタインと同じ19位。人間開発最高位グループに属している日本だが、ここからさらに順位を上げていくには、北欧諸国のように教育や医療サービスの無償化や減免といった福祉面を充実させる必要があるだろう。
人間開発指数を用いることによって、経済的な豊かさだけでなく、健康・教育・所得といった側面から国の発展レベルを測ることができるようになった。
その一方で、この指標はジェンダー平等や政治の透明性、環境への考慮が取り入れられておらず、まだまだ完全ではないといった指摘もある。人々がより自由で幸福な暮らしを手に入れるためには、さらに多様な側面から国の発展レベルを測る必要があるだろう。
※1 人間開発報告書 2020(p.28-30)/国連開発計画(UNDP)駐日代表事務所
https://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2020/HDR20%20standalone%20overview_JPN_web.pdf
※2 2020年版人間開発報告書に関する国別ブリーフィング・ノート(2ページ目)
https://www.jp.undp.org/content/dam/tokyo/docs/Publications/HDR/2020/HDR2020_Japan.pdf
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