サステナブルシーフードとは、安心・安全な生産方法や流通経路で提供される海産物のことだ。私たちがサステナブルシーフードを選択することで、世界の海の生態系を守り未来の地球へ豊かな水産資源を残すことにつながる。この記事では、持続可能な社会をつくるサステナブルフードについて解説する。
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サステナブル・シーフードとは、水産資源の持続可能性を考慮し、環境や生態系に配慮した漁業や養殖で得られた海産物のことだ。限られた資源を守り、将来世代にも豊かな海の恵みを届けるために始まった取り組みである。またサステナブル・シーフードは、天然水産物と養殖水産物に分類され、それぞれに認証制度が設けられている。
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サステナブル・シーフードには、信頼性の高い認証制度が存在する。世界には約140の水産エコラベルがあり、そのなかでも信頼されているのがWWFジャパンや世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI)に認証されたものだ。(※1)
この二つの認証機関は、漁業や養殖の持続可能性、環境や地域社会への影響、労働条件などを基準にした厳格な審査に基づき水産エコラベルを付与している。このラベルを確認することで、水産物が適切な方法で生産され流通していることの証明となるため、消費者は安心して購入できる。
MSCラベルは、持続可能な漁業で獲られた天然の水産物に与えられる認証だ。(※2)このラベルが付いている商品は、漁獲量が管理され生態系への影響を最小限に抑えた漁業から得られたものである。MSC認証は資源の持続可能性、生態系への配慮、そして適切な漁業管理の3つの原則に基づいており、厳しい審査をクリアした漁業のみが認定される。
ASCラベルは、責任ある養殖で生産された水産物に与えられる認証だ。(※3)養殖は環境や社会へ与える影響が大きいため、ASC認証では環境保全、資源の効率的利用、労働者の権利保護など、7つの原則に基づく厳しい基準を設けている。認証を取得した養殖場では、飼料や薬品の使用が適切に管理されて天然個体群への影響が最小限に抑えられる。
MEL(マリン・エコラベル・ジャパン)認証は、日本発のサステナブル・シーフード認証制度で、国際基準をベースに、日本の漁業や養殖業に適した基準を設けている。(※4)この認証を取得することで、日本国内の生産者は国内外での信頼性を高め、サステナブル・シーフードとしての価値を持つ商品を提供可能だ。また消費者にとっては、国内で安全に生産された海産物を選択する目印となっている。
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ここでは、サステナブル・シーフードが注目され始めた背景について紹介する。
IUU漁業とは、違法(Illegal)、無報告(Unreported)、無規制(Unregulated)な漁業のことを指し、海洋生態系に深刻な影響を及ぼしている。(※5)
さらにIUU漁業には、労働者への人権侵害が関連するケースも多い。彼らの乱獲によって生態系が破壊されるだけでなく、多くの漁業者の生計が脅かされるのだ。世界的にIUU漁業の撲滅運動が進むなか、サステナブル・シーフードの認証制度は「買わない」「選ばない」という消費行動によって私たち一人ひとりができる対策となっている。
違法ではないものの、人間の活動の変化による乱獲も起こっている。過去数十年で技術が進化して漁獲量は急増したが、その一方で生態系への負荷も増大した。また新興国の漁業への参加や人口増加も、世界的な需要を高めている要因である。国連食糧農業機関(FAO)の調査によると、ここ半世紀で一人当たりの魚の消費量は2倍になっている。(※6)
サステナブル・シーフードの認証制度を設けることで、各国が適切な漁獲量を確保し、生態系を保護することが求められている。
サステナブル・シーフードの普及は、SDGs(持続可能な開発目標)への貢献にもつながる。なかでも目標14「海の豊かさを守ろう」との関連性は高く、健全な海洋環境の維持と水産資源の持続可能性を推進する取り組みの一つである。
また労働環境や地域社会への配慮も評価する認証制度があることで、目標8の「働きがいも経済成長も」や目標12「つくる責任、つかう責任」へ貢献している。
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サステナブル・シーフードには多くのメリットがあるが、デメリットも存在する。どちらの面も認識し、考えて選択したい。
サステナブル・シーフードの最大のメリットは、海洋生態系や水産資源を保護しながらこれまで通り魚を味わえることだ。認証ラベルが付いた商品は、適切な漁法や養殖手法で生産されている。安心して魚介を消費しながら、将来的にも安定した水産物の供給が期待できる。消費者がこうした商品を選ぶことで、環境保護と経済活動の両立が実現できるだろう。
一方で、サステナブル・シーフードにはデメリットもある。まず認証を取得するための基準が厳しく、漁業者や養殖業者にとってハードルが高いことだ。認証取得にかかるコストや手続きの複雑さが課題となり、多くの事業者が取り組めていない。実際に市場に出回る認証取得済みの商品はまだ多いとは言えず、消費者が手に取る機会が限られているのが現状だ。認証までの支援や啓蒙活動も、並行して行う必要がある。
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ここでは、サステナブル・シーフードを取り入れている日本の企業を紹介する。
イオンリテール株式会社では、2006年からMSC認証商品(たらこ、明太子、鮭)の取扱いをスタートし、継続して水産資源の持続的な管理を支援している。適切な管理が高品質な鮮魚の安定供給につながるとして、安心安全な食品の提供のために今後もMSC認証商品を増やしていく計画だ。
株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、2020年4月に大手小売業として初めてMEL認証を取得し、サステナブルな水産物の取り扱いを強化している。稚魚から完全養殖された真鯛や、持続可能な原料を使って育てられたししゃもなどの幅広い商品を提供しており、未来世代への豊かな海の継承に貢献している。
日本マクドナルド株式会社は、人気商品のフィレオフィッシュ®に使用する白身魚にMSC認証を取得している。持続可能な漁業で獲られたスケソウダラを使用し、環境保護に配慮した商品を提供している。
日本生活協同組合連合会(日本生協連)は、2007年からMSC認証商品を取り扱い始めている。2017年には取り扱い魚種を拡大し、MSC認証とASC認証の商品供給比率を20%以上に引き上げる目標を掲げて取り組んでいる。
パナソニック株式会社は、2021年から社員食堂でMSCおよびASC認証のサステナブル・シーフードを導入している。社内でのサステナブル・シーフードの理解と認知を高め、社員の消費行動の変革を促すことが目的だ。また2020年からはコーポレートショールームでもサステナブル・シーフードメニューの提供を開始し、より活動の幅を広げている。
株式会社シーフードレガシーは、2021年からBtoB向けの「サスシーカタログ」を提供しており、サステナブル・シーフードの売買をサポートしている。このカタログは、持続可能な水産物の供給を広めるために活用され、百貨店各社のお歳暮・お中元ギフトにも採用されている。
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ここではサステナブル・シーフードを選ぶことに加え、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の達成に向けた個人としての取り組みを紹介する。
サステナブル・シーフードを選ぶことで、持続可能な漁業の実現に貢献できる。認証されたシーフードを選ぶことで、環境への負担を減らし、将来の海の資源を守ることにつながる。
日本では、年間約9,400千トンのプラスチックが廃棄されている。(※7)排出されたごみは、海の生態系に大きな影響を与える。プラスチックごみを減らすためには、日常生活の中での工夫が必要だ。例えば、マイバッグやマイボトルを持ち歩くことで使い捨てプラスチック製品を減少させられるだろう。また詰め替え用製品を選ぶことで、プラスチック容器の使用を抑えることが可能だ。
基本的なことだが、ごみを正しく処分することも心がけたい。ごみは指定された分別方法に従い、適切な容器や回収所に捨てることが求められる。ポイ捨てや不法投棄をせず、正しい方法で処分することは、海洋環境の保護のみならず地球全体の環境保護にもつながる。
生分解性のある洗剤を使用することで、化学物質が海洋に与える影響を最小限に抑えられる。生分解性の洗剤は自然に分解され、環境負荷が低い日用品だ。洗剤以外でも、日頃から環境にやさしいアイテムを選ぶことが大切である。
地域で行われている海洋清掃活動に参加することで、自らの手で直接海のプラスチックごみを減らせる。自分の手で海岸をきれいにすることで、環境に関わる意識や達成感も高められ、地域の環境保護に貢献可能だ。自治体や団体が開催している活動をこまめにチェックしておこう。
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私たち消費者にとっては、サステナブル・シーフードは消費行動によって環境負荷を削減する手段の一つである。トレーサビリティに配慮して、毎日消費するアイテムを選ぶことはこれからの社会に必要な取り組みだ。また一人ひとりが持続可能な選択をすることで、これまで私たちが培ってきた食文化を守ることにつながるはずだ。
スーパーやコンビニに行った際は、ぜひ認証ラベルをチェックしてみてほしい。一人ひとりの行動が、豊かな食卓を維持しつつもエコな社会を実現する助けとなるだろう。
※1 MSCがGSSIに承認|一般社団法人 MSCジャパン
※2 MSCについて学ぼう|一般社団法人 MSCジャパン
※3なぜASCロゴを使用するのか|水産養殖管理協議会
※4マリン・エコラベル・ジャパン(MEL)認証について|日本水産資源保護協会
※5 (5)国際的な資源管理|水産庁
※6 令和4年度 水産の動向|農林水産省
※7プラスチックごみ問題の現状|消費者庁
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