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MSC認証とは、世界の水産資源を守るための持続可能な漁業に対する認証制度。またMSC「海のエコラベル」とは何か、制度・ラベルの背景や、認証の種類・基準について紹介する。またMSC認証のメリットやASC認証との違いを解説。日本の企業による取得事例を知り、持続可能な漁業を応援しよう。
ELEMINIST Editor
エレミニスト編集部
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MSCとは、世界の水産資源の回復を目指し設立された国際非営利団体、海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)。1997年にイギリスのロンドンで設立され、将来の世代まで水産資源を残していくために活動している。
MSCが管理・推進しているのは、持続可能な漁業のためのMSC認証制度だ。厳格な規格に適合した漁業で獲られた水産物にのみ、MSC「海のエコラベル」と呼ばれる認証マークをつけることが認められている。MSC「海のエコラベル」がついた製品は、世界約100ヶ国で承認・登録されている。
世界中の海で獲れる水産物は、我々人間の食生活を支えている。とくに日本では、多種多様な魚介類は食文化から切り離せない存在だ。
しかし、国連食糧農業機関(FAO)が発表した「世界漁業・養殖業白書 2020年」によると、世界の水産資源の34.2%が“獲りすぎ”の状態であるという。(※1)
このままのペースで漁獲が進めば、魚類の種類はどんどん減少してしまうだろう。実際、1970年から2012年までの間に、海洋生物個体群の規模が49%減少したと報告されている。(※2)
漁業を生業とする人や企業にとって、「大量に獲って大量に売りたい」と思うのは、ある意味で当然のこと。実際に日本は、世界でも多くの水産物を消費する国として知られている。しかし、持続可能な漁業を続けていくためには、一定のルールを守る必要があるだろう。
このような状況を改善するために必要なのが、MSC認証制度である。
近年注目されるSDGsにおいても、「海の豊かさを守ろう」という目標が設定されている。海に流れ込むごみや水辺の環境問題が注目されがちではあるが、水産資源と種そのものを守るための取り組みも忘れてはいけないのだ。
MSC認証には、「MSC漁業認証」「MSC CoC認証」の2つがある。これらは、水産物にMSC「海のエコラベル」をつけるために必要となるものだ。海藻を対象とする場合は「ASC-MSC海藻(藻類)規準」をもとに、審査が行われる。
「MSC漁業認証」は、漁業が適切な管理のもと持続可能に行われているか、第三者機関により審査される認証だ。認証の規格は、以下の3つの原則にもとづき、これらをすべて満たす必要がある。
・資源の持続可能性
・漁業が生態系に与える影響
・漁業の管理システム
過度な漁獲によって資源を枯渇させないことや、生態系の構造や多様性を維持できる形で漁業を行うこと、またこれらを管理するために適切なシステムを有していることが必要。審査でこれらを満たしていると認められると、MSC漁業認証を取得できる。
海で獲れた水産物は、さまざまな段階を経て、消費者のもとまで運ばれる。この複雑なサプライチェーンに関する認証が、「MSC CoC認証」だ。審査は、以下の5つの原則にもとづいた規格を用いて行われている。
・認証製品は認証取得サプライヤーから購入されなければならない
・認証製品であることが識別できなければならない
・認証製品は分別されなければならない
・認証製品は追跡可能であり、数量が記録されなければならない
・事業者の管理システムは、本規格の要求事項に対応するものでなければならない
製品にMSC「海のエコラベル」をつけるためには、サプライチェーンのすべての企業が、CoC認証を取得する必要がある。
「ASC-MSC海藻(藻類)規準」は、ASC(水産養殖管理協議会)とMSC(海洋管理協議会)が共同で作成した規準で、海藻生産の環境に対する持続可能性と社会的責任に焦点を当てている。
海藻を対象とする場合は、「MSC漁業認証」の規格ではなく、「ASC-MSC海藻(藻類)規準」の以下の5つの原則を満たす必要がある
・持続可能な天然資源
・環境への影響
・効果的な管理
・社会的責任
・地域社会との関係と相互作用
消費者にとって、いまある水産資源を未来へとつなげていくことは、意味のある行動だ。MSC「海のエコラベル」は、環境問題や水産資源に対して、適切な取り組みを行っている商品を見分けるための目印と言っていいだろう。
MSC「海のエコラベル」がついた商品を積極的に選択すれば、需要が増え、より多くの漁業関係者や企業が認証を取得するようになるはずだ。将来にわたって、安定的においしい水産物を楽しめる可能性が高まることが、消費者にとっての最大のメリットと言える。
漁業者にとってのメリットは、MSC漁業認証を取得することによって、水産資源と環境に配慮した持続可能な漁業であることが裏付けされ、新規市場の開拓などにつながることだ。
CoC認証取得企業にとってのメリットは、環境問題や水産資源に対する取り組みを、内外に向けて積極的にアピールできる点にある。SDGsが注目を集めるいま、企業が果たす社会的役割に注目し、商品を購入する企業や利用するサービスを選定する消費者が増えてきている。
MSC CoC認証を取得し、MSC「海のエコラベル」つき製品を取り扱うことが、こうした層に対する、効果的なアピールとなるだろう。
日本国内で承認・登録されているMSC「海のエコラベル」つき製品は、約900品目。MSC CoC認証取得事業者は、300社を超えた。MSC認証制度は世界約100ヶ国で導入されており、水産資源の持続可能性や環境保護に向けた認識が高まっていると言えるだろう。
日本で積極的にMSC「海のエコラベル」つき製品を扱っている事業者としては、大手スーパーのイオンが挙げられる。MSC認証、ASC認証の水産物を非常に早い段階から扱っており、その種類も多岐にわたる。一般消費者の意識向上に対して、非常に大きな役割を果たしていると言えるだろう。(※3)
MSC認証が天然の水産資源を対象にしているのに対して、ASC認証は養殖による水産物を対象にした認証制度である。2010年に設立された国際的な非営利団体であり、WWFとIDH (オランダの持続可能な貿易を推進する団体)の支援を受けている。
養殖は、我々人間が安定的に水産資源を得るための、極めて合理的なシステムである。しかし行き過ぎたシステムによって、環境や生態系に悪影響を及ぼすケースも少なくないのが現実だ。こうした状況を改善するために、ASC認証制度が設立された。ASC認証に関する詳しい情報は以下の記事を参考にしてみてほしい。
MSC認証は、水産資源を枯渇させないための認証制度である。持続可能なMSC認証漁業で獲られた水産物にはMSC「海のエコラベル」がつけられている。
日本の食文化と水産資源は、切っても切り離せない関係にある。だからこそ我々はふだんの生活で魚介類を購入する際、それらがどのような方法で獲られたのか考え、MSC「海のエコラベル」が貼られた商品を選ぶことが大切なのではないだろうか。
情報提供:MSCジャパン
※1 The State of World Fisheries And Aquaculture | FAO
http://www.fao.org/3/ca9229en/CA9229EN.pdf
※2 危機に直面している海|MSCジャパン
https://www.msc.org/jp/what-we-are-doing/ourapproachJP/oceansatrisk
※3 MSC/ASC認証|トップバリュ
https://www.topvalu.net/brand/kodawari/csr/mscasc/
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