日本発の水産エコラベル「MEL認証」とは? 取得条件とメリット、事例を解説

水中の魚

Photo by Jakob Owens on Unsplash

持続可能な漁業や養殖業によって生産された水産物を認証する水産エコラベル。MEL認証は世界に多数ある水産エコラベルのなかでも、高い信頼度を誇る。この記事では日本生まれのMEL認証とは何か、生まれた背景、認証条件、取得するメリット、取得するまでの流れ、販売者の事例を紹介する。

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2024.08.02

MEL認証とは

光りの射す水の中

Photo by Krystian Tambur

MEL認証とは、持続可能な漁業や養殖業によって生産された水産物を認証する、日本発の認証制度。同時に、世界水産物持続可能性イニシアチブ(GSSI)に承認されている国際的に信頼性の高い水産エコラベルだ。

なお、水産エコラベルとは、水産資源や生態系などに配慮した環境にやさしい方法で行われている漁業や養殖業で生産された水産物を消費者が選んで購入できるように商品にラベルを表示する仕組み。(※1)MSC認証やASC認証などが世界的に知られており、さらに世界には140個ほどの水産エコラベルが存在しているという。

MEL(メル)は、Marine Eco-Label Japan(マリン・エコラベル・ジャパン)の略称。「未来につなげよう海と魚と魚食文化」「多様性豊かな日本の海の恵みを世界へ」をスローガンに掲げている。

MEL認証を得るには、漁業者や養殖業者、流通・加工事業者が認証機関に申請し、認証基準に基づいた審査を受け、認証される必要がある。

MEL認証の運営主体は

MEL認証の運営主体は、一般社団法人マリン・エコラベル・ジャパン協議会である。この会は水産業の振興を図る大日本水産会の事業として運営されていたが、2016年に分離し、MEL認証の認定基準や判定基準の作成・管理などを行う現在の体制になった。

ロゴマークの意味

MEL認証のロゴマークは、eの文字を魚で表現した黄色いマーク。MEL認証を受けた水産物に付与される。消費者はMELロゴマークの付いた水産物を選ぶことで、豊かな海を守り、日本の水産業と魚文化の発展に寄与することができる。

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MEL認証が生まれた背景

海上の漁船

Photo by Aleksey Malinovski

MEL認証が生まれた背景は、水産エコラベルの歴史とつながっている。1990年代、漁業の乱獲が世界的な問題になった。当時カナダ近海のマダラが乱獲され、資源が減るという事態が起きた。これを受け、1997年にMSC認証という国際非営利団体、海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)による水産エコラベル認証の取り組みが始まった。MSC認証は、水産資源と環境に配慮した持続可能な漁業により生産された水産物の認証ラベルだ。

その後、国際連合食糧農業機関(FAO)が、2005年に漁業、2011年に養殖業と内水面漁業の国際的なガイドラインを策定した。これにより、水産エコラベル認証の標準的なあり方が示されることになった。

日本でも、国内の漁業の実態を考慮した認証スキームであるMELが2007年に発足された。MELは国際標準であると同時に、漁業資源管理や環境への配慮など、日本の水産業の特徴を反映した仕組みになっている。

以降、世界で多数の水産エコラベルが誕生している一方で、国連食糧農業機関(FAO)が発表した「世界漁業・養殖業白書 2020年」では、世界の水産資源の34.2%が“獲りすぎ”の状態であると示された。(※2)実際、1970年から2012年までの間に、海洋生物個体群の規模が49%減少したと報告されている。(※3)

このままのペースで漁獲が進めば、魚類の種類はどんどん減少してしまう。このような状況を改善するために必要なのが、MEL認証をはじめとする水産エコラベル認証制度だ。

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MEL認証の3つの種類と満たすべき要件

ノートとペン

Photo by Aaron Burden

MEL認証には、生産段階(漁業・養殖)と流通加工段階の2段階がある。このうちのいずれかではなく、両方を取得することで認証を受けられる仕組みだ。

なお生産段階には漁業と養殖の2種類があるため、認証の種類は合計3つある。それぞれの内容と満たすべき要件を見ていこう。(※4)

漁業認証の内容と条件

漁業認証は、漁業を行う際、次の認証基準を満たすことで受けられる認証である。

漁業の認証基準
1.資源管理がしっかり実施されているか(環境にやさしい漁業)
2.対象とする水産物の資源量は十分であるか(十分な資源量)
3.対象とする水産物以外の生態系にも悪影響を与えていないか(混獲の防止)

養殖認証の内容と条件

養殖認証は、養殖を行う際、次の認証基準を満たすことで受けられる認証である。

養殖業の認証基準
1.養殖場環境を適切に管理運営しているか(環境にやさしい養殖場)
2.対象とする養殖水産物が適切に飼育管理されているか(適切な飼育管理)
3.水産用医薬品や飼料等が適切に管理されているか(適切な医薬品管理)
4.労働に関する環境・衛生・安全が適切に管理されているか(労働の安全)

流通加工段階認証の内容と条件

流通加工段階認証は、流通加工業を行う際、次の認証基準を満たすことで受けられる認証である。

流通・加工業の認証基準
1.認証された水産物以外の水産物の混入、混在が防止される管理体制になっているか(認証水産物とそうでないものの混合防止)
2.認証された水産物のトレーサビリティが確保されているか(認証製品が追跡可能)
3.ロゴマークが適切に管理されているか(ロゴマークの適切な管理)

以上が必要な条件である。認証の申請は、1段階ごとでも一括でも可能だ。

MEL認証を取得するメリット

海岸線

Photo by Luc Dobigeon

MEL認証には満たすべき条件があるが、取得するメリットも大きい。なぜなら、事業者と消費者の双方に利点があるからだ。MEL認証に限らず、水産エコラベル認証などの認証という視点で、それぞれの立場からメリットを見ていこう。

消費者:環境にやさしい製品を選びやすい

消費者のメリットは、水産物製品にMEL認証のログマークが表示されていることで、環境にやさしい製品であることが一目でわかることだ。日常の買い物の中で、環境保全に貢献できるほか、信頼のできる事業者の生産品を購入できる。

事業者:環境にやさしい漁業・養殖業が展開できる

事業者のメリットは、購入するバイヤーや消費者が増えれば、増益につながることだ。増益分は、より環境にやさしい漁業・養殖業の取り組みに使用できる。その結果、豊かな水産資源に恵まれ、さらなる増益を期待できる。

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MEL認証取得までの流れ

次に、MEL認証取得までの流れを確認していこう。審査の内容と必要な手続き、費用について触れていく。

取得には厳正なる審査が行われる

MEL認証を申請すると、認証基準に適合しているか、実際に取り組みが行われているかを認証機関の認める審査員が審査する。この結果は、審査報告書に取りまとめられ、判定委員会により審議される。

ただし公正な審査を行うために、審査員が判定に関係することは禁じられている。審査は厳正に行われている。

必要な手続き

MEL認証に必要な手続きは次のとおりだ。

(1)審査契約の締結
(2)書面審査
(3)現地審査
(4)認証の判定
(5)認証の登録・証明証の発行
(6)ロゴマークの使用契約

ただし(2)(3)の審査に通らなかった場合は再審査となる。

かかる費用

MEL認証を受けるためには、審査費用を支払う必要がある。審査費用は、認証機関により異なるが、目安は次のとおりだ。

MELの審査費用の目安(2023年2月時点)
初回:漁業85万円~、養殖70万円~、流通加工35万円~
※いずれも審査サイト1カ所の場合の基本料金

上記のほか、取得後に行われる年次審査や、数年に一度実施される更新審査でも費用がかかる。(※5)

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MEL認証商品を販売している企業の例

最後に、MEL認証商品を販売している2つの企業・組織の例を見ていこう。

イトーヨーカドー

イトーヨーカドーは、全国に223店舗を展開する総合スーパーである。(2024年6月時点)「安心・安全でおいしいお魚をお届けします」という理念のもとでオリジナルブランド商品「顔の見えるお魚。」シリーズを販売している。

2020年には、日本の大手小売業としては初のMEL認証を取得。ぶり、かんぱち、真鯛、平目に認証ラベルを付与して販売している。(※6)

日本生活協同組合連合会

日本生活協同組合連合会は、コープ商品の開発と全国の生協への供給を行う組織だ。SDGsやエシカル消費の発展のため「海の資源を守る」「森の資源を守る」「オーガニック」「リサイクル材使用」の4つのテーマを「コープサステナブル」シリーズとして展開している。

このシリーズより誕生したのが、MEL認証を受けた商品である。しらす干しやサーモンなどの商品が展開されている。(※7)

MEL認証は水産資源を守る取り組み

日の出と海の風景

Photo by Frank Mckenna

MEL認証は、持続可能な漁業や養殖業を認証する水産エコラベル認証制度である。事業者が取得することで、海の環境や水産資源を守る重要な取り組みだ。

そして消費者である私たちも、MEL認証に貢献する大きな役割を担っている。MEL認証のロゴマークの表示された水産物を購入することで、大切な水産資源の保全に貢献できる。商品購入の基準の1つにしてみてはいかがだろうか。

※掲載している情報は、2024年8月2日時点のものです。

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