地球も人も持続可能な食生活の実現を目指して 「GREEN KEWPIE」のおいしく新しいプラントベースフードの提案

プラントベースフード「GREEN KEWPIE」のドレッシング
未来への一歩

健康志向の高まりや環境問題に対する意識の高まりから、近年ますます注目を集めているプラントベースフード。今後さらなる市場拡大が期待されるなか、2023年にデビューしたのが、マヨネーズでお馴染みのキユーピーが展開する新ブランド「GREEN KEWPIE(グリーンキユーピー)」だ。第一弾の植物性原材料でつくったドレッシングのほか、2024年1月にはマヨネーズタイプとパスタソースを発売。「サラダと卵のリーディングカンパニー」としての知見や技術を生かし食の新たな選択肢を広げようと挑戦する、その背景や想いを聞いた。

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2024.06.24

広がる多様な価値観 卵のリーディングカンパニー、キユーピーだからこその挑戦

キユーピーの「HOBOTAMA(ほぼたま)」調理例

キユーピーグループのプラントベースフードの始まりは、2021年6月に業務用として発売された「HOBOTAMA(ほぼたま)」だ。卵を使わず、植物性の原材料だけでつくられているのに、「見た目も、味も、ほぼ卵」と話題を集め、卵アレルギーの家族を持つ人からたくさんの反響の声が届いたという。そのなかには、気候変動など環境配慮への意識から、食生活を見直しているという人からの声もあった。

「2割程度ではありましたが、実際に環境のことを理由にプラントベースフードを求めている人がいるのだと、確信することができました。そんな人々が見据える食の未来を、私たちも一緒に見ていきたいと考えたんです」 

そう語るのは、「HOBOTAMA」の企画・開発に携わったGREEN KEWPIEプロジェクトリーダーの綿貫智香氏だ。 

キユーピーの「HOBOTAMA(ほぼたま)」調理例

「HOBOTAMA」でつくった卵焼き風

当時、健康思考の高まりや環境配慮といった観点から、植物由来の原料を使用したプラントベースフードは、畜産物由来食材に比べて温室効果ガスの排出量を抑え、また将来的な人口増加による食糧危機への打開策としても注目を集め、日本では大豆ミートや植物性ミルクなどが徐々に広がりだしていた頃だった。

食に対する人々の価値観も多様化するなかで、キユーピーグループでは、2018年に策定した長期ビジョン「2030年ビジョン」をもとに、「サラダと卵のリーディングカンパニー」として、いま取り組むべきことを考えた。

キユーピーの「HOBOTAMA(ほぼたま)」調理例

「HOBOTAMA」でつくった卵チャーハン

「日本で生産される卵の約1割を使い、卵の魅力や楽しみ方を伝え続けてきたキユーピーだからこそ、さまざまな理由から卵を食べられない人に寄り添い新しい選択肢をつくることが必要なのではないかと考えました」 (綿貫氏、以下同)

卵を楽しむ文化を大切に維持し、誰もが日々続けられる食生活を実現したい。そうした想いで開発したのが、「HOBOTAMA」だ。その反響を受け、キユーピーグループは本格的にプラントベースフードの商品開発を開始。2023年3月、プラントベースフードを中心に、‟サステナブルな食”を展開する新ブランド「GREEN KEWPIE」を立ち上げた。

“おいしい”が大切 技術を駆使してプラントベースフードのイメージを払拭

キユーピーの「HOBOTAMA(ほぼたま)」調理例

「HOBOTAMA」スクランブルエッグ風メニュー例

プラントベースフードというと、味に不安を感じる人が少ないのではないだろうか。しかし、「GREEN KEWPIE」の一番のこだわりは、“おいしさ”にあるという。 

「将来的に選択肢がなくなって、仕方なくプラントベースフードを選ぶということではなく、今から『こんなにおいしく食べられるんだ』と知っていただきたい、『これがいい!』と満足していただけるものをつくりたい、という想いがありました」

キユーピーの「HOBOTAMA(ほぼたま)」

「HOBOTAMA」加熱用液卵風(左)とスクランブルエッグ風(右)※発売当時のパッケージ

「GREEN KEWPIE」の“おいしさ”を支えるのは、これまで培ってきた食品加工技術や知見だ。とくに最初のプラントベースフード「HOBOTAMA」の開発には、さまざまな苦労があったと綿貫氏は振り返る。

マヨネーズの乳化技術や、卵の加工技術、味の設計技術など、これまで培ってきたノウハウを活かしながらも、すべて植物性の原料で、卵らしい食感や風味を再現するには、新たな技術も必要になった。

「植物由来の食材のなかで、卵らしい固まり方(熱凝固性)を再現するために、いろんな食材のスクリーニングをして工夫しました」2021年に発売された「HOBOTAMA」スクランブルエッグ風では、139回もの試作を繰り返したそうだ。

「当時はプラントベースフードというものが広く認知されていなかったこともあり、『卵の会社が、なぜ卵を使わないのか?』と、社内の理解を得るにも時間がかかりました。それでも商品化を実現できたのは、この挑戦に賛同し、努力を注いでくれた、若い仲間の支えがあったからこそ。一人じゃないんだと、心強く感じました」

「HOBOTAMA」の反響を受けて、いまでは社内全体でプラントベースフードが求められていることを認識しているそうだ。

食卓の選択肢を広げる「GREEN KEWPIE」の魅力

キユーピーのプラントベースフード「GREEN KEWPIE」

「GREEN KEWPIE」シリーズ

日々の食生活を豊かにすることを考えると、卵だけでは十分とは言い難い。そこで、料理の幅を広げ、生活にも馴染みやすい調味料があれば、プラントベースフードがもっと身近なものになると考えた。

「調味料のなかでもサラダに使うことが多く、野菜との親和性が高いドレッシングは、とりわけプラントベースフードへの期待や利用意向が高いことがわかっています。キユーピーの人気商品であるドレッシングやマヨネーズを、これまで食べられなかった人にも、『私も食べられる、選択できる』と喜んでいただけるのでは、という思いがありました」

グリーンキユーピーの「植物生まれのシーザーサラダドレッシング」使用例

アボカドと豆と穀物のシーザーサラダ(「植物生まれのシーザーサラダドレッシング」使用)

そこで、「GREEN KEWPIE」の商品第一弾として発売したのが、2種のドレッシング「植物生まれのシーザーサラダドレッシング」と「植物生まれのごまドレッシング」だ。

「シーザーサラダドレッシングは、キユーピーの調理技術が存分に生かされています。豆乳を発酵させたり、隠し味に味噌を使ったりして、チーズ独特のクリーミーさや旨味を再現し、驚くほどのチーズ感を楽しめます。

グリーンキユーピーの「植物生まれのごまドレッシング」使用例

焼きにんじんとケールのサラダ(「植物生まれのごまドレッシング」使用)

ごまドレッシングは既存のものと違い、卵黄を使っていません。その分ごまの味がダイレクトに感じられ、しっかりとした味わい。サラダだけでなく麺類などにもおすすめです」

ドレッシングはいずれもカロリーを25%カット。たっぷりかけたいけれど、健康面がちょっと気になるという人にも嬉しい。

「植物生まれのマヨネーズタイプ」

「植物生まれのマヨネーズタイプ」(左)と、使用例(クレソンのポテトサラダ)

キユーピーの代表的商品であるマヨネーズには、やはりこだわりが詰まっている。

「長年のマヨネーズ類の研究で培った技術を用いて、マヨネーズらしいコクとうま味にこだわりました。味の決め手となっているのが、お酢です。何種類かをブレンドし、キユーピーマヨネーズと同じ酢を用いて、しっかりとした酸味があり、さっぱりとしていながら満足感のある味に仕上げています」

パスタソースは、麺を茹でてあえるだけ。温めずに使える手軽さが魅力だ。味は、ボロネーゼとカルボナーラの2種。ボロネーゼには大豆ミートを使い、カルボナーラには「HOBOTAMA」の技術を使用しているという。

「なめらかなコクの秘密は、アーモンドです。お客さまからは、プラントベースのカルボナーラを自宅で再現するのはなかなか難しく、こうしたソースがあれば我慢せずに食べられると、喜ばれています」

無理なく楽しく続けられるように 目指すのは地球も人も持続可能な食生活の実現

グリーンキユーピーのプラントベースフード調理例

サステナビリティ志向の高まりのなかで、今後、さらなる市場拡大が期待されるプラントベースフード。さまざまな商品が登場するとともに、味や品質も進化しているという。しかし、日常の食卓に浸透するにはまだ課題もあるようだ。

「日本では、まだプラントベースフードを知らないという人も多く、『味が不安』というイメージも根強くあると感じます。その理由として、通常の食品に比べて割高だったり、売り場が少なかったりして、気軽に試せる機会があまりないことが挙げられると感じます」

そこで、「GREEN KEWPIE」は、“日頃の食生活に馴染む”価格設定にもこだわる。また、試食イベントなどにも積極的に参加し、プラントベースフードを体験してもらう機会も広げているそうだ。

「食事は毎日続けていくことで、それが積み重なって健康や地球環境に影響を与えます。だからこそ、私たちキユーピーが大切にしたいのは、年に数回のハレの日ではなく、日々の食生活に馴染むものなんです」 

毎日続けられるおいしさと手軽さ。日々の食卓を豊かにする調味料をつくり続けてきたキユーピーだからこそ、そうしたプラントベースフードをつくることに意義があると考える。それは、「GREEN KEWPIE」が目指す「地球と人の双方が持続可能で、日々続けられる食生活」にも通ずるだろう。

「GREEN KEWPIE(グリーンキユーピー)」ロゴ

「私にも子どもがいますので、この子たちのために、今ある食生活や環境を未来に残してあげたいと考えています。おそらく多くの人が、そんなふうに社会や地球環境のために『何かしたい』と考える瞬間があると思うんですよね。

でも、そうしたやさしい気持ちを抱いても『何をしていいかわからない』『何もできることがない』となってしまっては、もったいない。『GREEN KEWPIE』は、そうした気持ちに寄り添い、後押しするような存在でありたいと思うんです」

一人ひとりの気持ちを尊重し、「それなら」と差し出せる選択肢があるということ。それこそが「GREEN KEWPIE」の役目なのだろう。綿貫氏はさらにこう語る。

「プラントベースフードを選ぶ生活をしていたとしても、普通のマヨネーズを食べたいと思うときもあるでしょうし、いつもとは違う味のドレッシングを試したいときもあるでしょう。でも、それでいいと思うんです。大切なのは、無理なく楽しくプラントベースを取り入れた食生活を続けることだと思います」

今後は、「GREEN KEWPIE」の海外展開も予定しているという。

「やはり海外は、プラントベースの食生活に感度が高い方が多いと感じます。そのなかで、国や地域の特性に合わせて、どんな寄り添い方ができるのか、模索しています」

プラントベースフードが当たり前になり、私たちの選択肢がさらに増えていけば、その先にはもっと自由で楽しい食卓があるはずだ。「GREEN KEWPIE」は世界の食卓を豊かに変えていくための、大きな一歩だ。

執筆/秦レンナ 企画・編集/佐藤まきこ(ELEMINIST編集部)

※掲載している情報は、2024年6月24日時点のものです。

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