イミ消費とは エシカル消費やSDGsとの関係と私たちができる具体的な11の行動

お店でリンゴを選ぶ男性の様子

時代の流れとともに変わってきた消費傾向。"モノ消費""コト消費"に続き、いま注目を集めるのは"イミ消費"。その意味と登場した背景、さらにはSDGsとの関係を解説。私たちが具体的にできる"イミ消費"行動も紹介していこう。

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2024.02.17
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"イミ消費"とは

"イミ消費"とは、商品・サービスを購入するとき、その商品が付帯的に持っている"社会的・文化的な価値"に共感し選択する消費行動のこと。その価値に対価を支払うことに満足感や貢献感を得られることが特徴だ。

社会正義的な価値観が消費の動機付けになり、"地球市民として、正しい消費であるか?"が判断基準となる。環境の保全につながるか、地域の活性化に貢献できるか、誰かの支援になるか、自身の健康維持に効果的か、動物愛護に反していないか。そして、同じ物を買うなら、このような価値が付加されているものを選ぶのが“イミ消費"だ。

1970年代以降、"モノ消費"や"コト消費"など、その時代の消費傾向を表す言葉がたびたび登場してきたが、2010年代以降に見られる消費傾向として"イミ消費"は用いられるようになった。ホットペッパーグルメ外食総研エヴァンジェリストの竹田クニ氏が提唱したのがはじまり。

時代とともに変化する"○○消費"の変遷

時代とともに変化する消費傾向の図 link

Photo by ホットペッパーグルメ外食総研

1970・80年代は"モノ消費"

80年代のマイカーが並んでいる様子

Photo by Evgeni Adutskevich on Unsplash

70年代80年代は、"モノ"を手にすることで満足感、充実感を得た"モノ消費"の時代。商品のモノ自体に価値を見出し、所有することに重きをおく消費行動だ。

それまでの高度経済成長期、物のない時代から欧米式の大量生産・大量消費の時代へと進む。はじめは生活に必要最低限なもの、そこから”三種の神器"と呼ばれる家電をはじめ、生活がより便利になるもの、バブル期にはマイカーやマイホームなど"さらにいい暮らしをするためのもの"が求められた。

ひと通りのモノで満たされた80年代以降は、"自分だけの"、"特別感"に価値が見いだされ、大量生産から、差別化や多様化、ブランド志向へとシフト。他の人とは違うもの、他の人より新しいもの、他の人が持っていない珍しい物が求められた。

時代ごとに消費傾向は異なるものの、総じてモノ自体に価値をおく、モノを手にすることで満足感と充実感を得るのが"モノ消費"だ。

1990年代後半〜は"コト消費"

川でカヌーを体験している様子

Photo by Filip Mroz on Unsplash

バブルが崩壊し、モノへの異常な欲求から人々が目覚めたあと、モノ自体ではなく"体験=コト”に価値がシフトしていく。物を所有するだけでは得られないような体験や思い出に価値を見出し、対価を払うのが"コト消費"だ。

商品やサービスの購入により得られる、体験や経験を重視する消費行動であり、例えば、日本の伝統芸能を習ってみる、舞台観賞に行く、山や川や海のアクティビティに参加する、国内や海外へ旅行する、日本文化の体験教室に参加する、フェスやライブなどのイベントに参加する、アート系のワークショップに参加する、乗馬を習うなど。

人とは少し違う、自分の経験値が上がるような、ふだんはなかなか体験できないことに触れ、心を踊らせるコトに対価を支払うのが“コト消費"。

"トキ消費"や"エモ消費"も

大きな分類は"モノ消費"、"コト消費"とそれに続く"イミ消費"だが、そのほかにも"トキ消費"や"エモ消費"と呼ばれるものがある。

"トキ消費"

"トキ消費"は、博報堂生活総合研究所が2017年から提唱している消費潮流。「その時・その場でしか味わえない盛り上がりを楽しみたい」という欲求から生まれる消費のことで、時間や場所が限定されていて同じ体験が二度とできないという「非再現性」、不特定多数の人と感動をわかちあう「参加性」、盛り上がりに貢献していると実感できる「貢献性」が3つの要件とされている(※1)。

例えば、コスプレ、声出し、手拍子などで賑やかに観る映画鑑賞会の応援上映、観客も歌って踊って、場を盛り上げるフェスやライブ、テーマパークに仮装した来場者が集まり一緒に盛り上がるハロウィンイベントなど。

"エモ消費"

"エモ消費"は、「emotional(エモーショナル=感情的)」が語源の、精神的な満足度に価値を置いた消費行動。コラムニストの荒川和久氏が生み出した言葉で、"ロジカルには説明できないけれど、なぜだか嬉しい、楽しい"ことや、"手間隙とお金をかけて、けっして効率的ではないけれど、なぜか感情が盛り上がること"などのために対価を払う消費行動を指す。

例えば、推しの誕生日に手づくりグッズや手づくり誕生日ケーキと一緒に写真を撮りSNSにアップする、スマートフォンではなくあえてフィルムカメラで撮影する、デジタル音源ではなくレコードで音楽を聴く、青春18切符を使って鈍行で旅をするなど。

"イミ消費"が活発になった背景

農産物が並んでいる様子

Photo by Peter Wendt on Unsplash

2010年代以降の消費潮流として注目される"イミ消費"。その大きなきっかけになったのは2011年の東日本大震災や新型コロナウィルスの蔓延といった大規模な自然災害だ。

東日本大震災後には、被害を受けた地域の復興に向けて、現地の農産物や海産物を積極的に購入する応援消費やクラウドファンディングによる応援、旅行に行くことで現地の経済を活性化させるなど、自分の消費行動で"応援"、"支援"する動きが活発になった。

コロナ禍では経営の打撃を受けた企業の商品を購入することで応援したり、経営に苦しむ飲食店にお金を落としたりといった応援消費も広がった。

2015年に採択されたSDGs(持続可能な開発目標)への関心の高まりも影響しているといえる。こういった背景から、商品・サービスを購入するとき、その物自体の価値と合わせて、社会貢献的な付加価値があるかを判断基準に含む購買志向が増えつつあるのだ。

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"エシカル消費"と"イミ消費"

東日本大震災後から活発になった"応援消費"も大きな括りでは"イミ消費"。さらにもうひとつ、"エシカル消費"という言葉を耳にしたことがある人もいるのではないだろうか。

"エシカル消費"とは、地域の活性化や雇用などを含む、人や社会、地域、地球環境に配慮した消費行動のこと。安心・安全・品質・価格に次ぐ第4の尺度とも言われ、持続可能な消費のひとつの物差しとして注目されている。

"エシカル消費"は、環境だけでなく、貧困や児童労働、福祉、食品ロス、生物多様性の損失、地域の課題などの社会全体に関わる問題を、倫理的な消費行動によって解決していこうという点が特徴だ。

こちらも社会貢献的な観点から消費を決定するという点で、"イミ消費"のひとつと言えるだろう。

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私たちの日常にある"イミ消費"の具体例

どのような購買行動が"イミ消費"なのか、具体例は次のようなもの。

被災地の商品を買う

東日本大震災や阪神・淡路大震災、能登半島地震など、災害が多い日本には各地に被災地が存在する。そのような地域でつくられたものを購入することは、被災地の人々を支援できる、社会貢献的な"イミ消費"のひとつ。

売上の一部が寄付になる製品を選ぶ

売上の一部を、環境問題や人権問題の解決を目指し活動する団体に寄付している場合もある。そのような商品やサービスを選ぶことは、それらの活動を支援することにつながる。

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フェアトレード商品を買う

フェアトレードとは、発展途上国でつくられた農作物や製品などを適正な価格で継続的に購入することで、生産者の生活を支える仕組み。フェアトレード製品には認証ラベルが付いており、日本ではコーヒーやチョコレート、コットン製品などで多く目にすることができる。フェアトレード商品を優先して購入することで、途上国における労働搾取や児童労働など、社会的課題の解決へとつながる。

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ふるさと納税の支援型商品を買う

応援したい自治体に寄付ができるふるさと納税。そのなかでも、障害者支援や地域の経済弱者支援などの目的で、返礼品なしで寄附金を募集している商品もある。

クラウドファウンディングに参加する

インターネットのサイトをとおして、支援を企画したい人と支援したい人をつなぐクラウドファウンディング。なかには地域貢献や社会的正義を感じられる商品も多く出ている。

使用しているプラスチックが少ない商品を買う

環境配慮の観点から、プラスチックをできる限り使用していない商品も多く登場している。植物性の代替素材を使用したものや、リサイクルプラスチックを使用したものなどを選ぶことは"イミ消費"のひとつだ。

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オーガニック製品を選ぶ

オーガニック製品とは、化学成分を使用せずに自然由来の原材料からつくられ、環境に配慮された製品のこと。化学成分のなかには、健康に悪影響を及ぼすものもあり、排水を通じて海に流れ出た成分が自然界に戻され環境に悪影響を及ぼすこともある。そのため、オーガニックの食品や衣類、化粧品を選択することは、消費者だけでなく生産者の健康を守ることにもつながる。

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アニマルウェルフェア(動物福祉)の商品を買う

「アニマルウェルフェア(Animal Welfare)」という言葉は、日本語では「動物福祉」「家畜福祉」と訳される。感受性を持つ生き物として家畜をとらえ、快適な環境のなかでストレスを減らし、人も動物も幸せな関係を結ぼうという飼育方法。飢えや渇き、不快、痛みや外傷や病気、本来の行動の制限、恐怖や苦痛などを排除した飼育が目指される。こうした配慮をしている商品を選択しよう。

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地産地消の物を買う

その地域でつくられたものを消費することは、地域社会の支援になる。また遠方から商品を輸送すると、多くの温室効果ガスが排出され、コストもかかってしまう。

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伝統工芸品を購入する

日本の伝統工芸品は、後継者不足や需要の減少により失われつつあるのが現状だ。そのため、各地域の工芸品を購入することは、日本の文化を守り、持続していくことにつながる。また、工芸品の多くは天然素材を用いてつくられているため、環境への負荷が少なく、サステナブルな商品とも言える。

認証マークがついた商品を購入する

エシカル消費の目安になるのが、環境や人に配慮した認証ラベルやマーク。環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられる「エコマーク」や、農林水産大臣が定めた品質基準や表示基準に合格した農林物資の製品につけられる「有機JASマーク」、社会的・経済的・環境的基準を満たし、公平な取引が行われていることを認証する「国際フェアトレード認証ラベル」などがある。

"イミ消費"とSDGsの関係

SDGs目標12つくる責任つかう責任のアイコン

2015年に採択されたSDGsは分野ごとに17の目標が設定されており、その12番目が「つくる責任 つかう責任」。

開発途上国では、いまだに多くの人々が生活に必要な資源を使用できていない。一方で、先進国では大量に資源を入手しながら資源を有効に活用できず、大量に廃棄している状況だ。このまま大量生産・大量廃棄の風潮が続けば、地球の資源は早晩枯渇し、生産過程や廃棄処理などによって、地球環境はさらに汚染されていくだろう。

将来の持続可能な社会・経済の発展を実現するためには、わたしたちは限られた資源を有効に活用し、一人ひとりが責任をもって生産・消費の方法を変えていく必要がある。

購入の際には、使い終わった後のリサイクルまで設計されている雑貨か、適切な賃金と労働環境で生み出されている衣料品か、自然環境に負担をかけない方法で生産されている食品か、などをチェックし、地球環境や人権、地域や社会にやさしい製品を購入する。

このような消費行動の先に目標12「つくる責任 つかう責任」の達成があり、つまりは"イミ消費“は目標12に密接に関連しているといえる。私たちが"イミ消費“を行う際にポイントとなるのは、いつ、どこで、誰によって、どのようにつくられたかを知ること。

"イミ消費"が当たり前になる時代

"イミ消費"という言葉を知らなくても、こういった消費行動をとっていたという人も多いのではないだろうか。

自然災害や紛争で被害を受け、困っている人たちを目の当たりにしたとき、自分ができることで何か応援できたらと思う。はたまた環境破壊や世界各地で起こる異常気象のニュースを耳にしたとき、自分の行動で少しでも環境負荷が改善できたらと思う。そうしたときに、日常のなかですぐに行動に移せるのが"イミ消費"だ。

"イミ消費"は社会貢献につながると同時に、買った側も"地球市民としての正しい消費"を選択したことによる満足感や肯定感が得られるというメリットもある。私たちひとりひとりの消費行動に定着すれば、変遷していく"○○消費"の潮流のなかで、"イミ消費"は消えずに当たり前になる日が来るかもしれない。

※掲載している情報は、2024年2月17日時点のものです。

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