エコマークとは、生産から廃棄にわたる過程の中で環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品(製品およびサービス)につけられる環境ラベルだ。エコマークに込められた意味や認定基準、認定対象商品、今後の課題などについて紹介する。
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エコマークとは、生産から廃棄にわたるライフサイクル全体で環境への負荷が少なく、環境保全に役立つと認められた商品につけられる環境ラベルのこと。持続可能な社会づくりを目的としており、このマークがあることで消費者自身も環境を意識した選択をしやすくなり、企業側の環境改善努力につながる。
はじまりは、1987から1989年に環境庁(現在の環境省)の委託により、当時の日本環境協会が「環境保全型商品推進事業に関する調査」を行ったことがきっかけだ。このとき、ブルーエンジェルと呼ばれる西ドイツの環境保護ラベルなどを参考に、「エコマーク」の基本的な考え方が示された。
これらを受け、1989年2月から日本環境協会がエコマーク事業を開始。「特定フロンを使用しないスプレー製品」など7種類の品目を対象として同年にスタートし、46商品が認定された。
2021年10月時点で認定事業者数は1,345件、認定商品数は44,880点にのぼる。(※1)
エコマークのデザインには「環境(Environment)」と「地球(Earth)」の頭文字「e」を表した人間の手が地球をやさしくつつみ込んでいるすがたがイメージされている。さらに「私たちの手で地球を、環境を守ろう」という願いが込められている。
日本環境協会が1988年に一般公募したデザインの中から、環境庁長官賞として選ばれた作品をもとに制定されており、消費者自身の想いもマークに込められている。
エコマークの認定基準は、商品のライフサイクルに注目しているのが特徴だ。ライフサイクルとは、商品の一生のこと。すなわち「資源採取」から「製造」「流通」「使用消費」「リサイクル」「廃棄」までの一連の流れである。
そして、商品のライフステージの各段階において、下記にある4つの環境評価項目を重点的に評価している。
・省資源と資源循環
・地球温暖化の防止
・有害物質の制限とコントロール
・生物多様性の保全
消費者にとってイメージしやすいのは、「使用消費」や「リサイクル」などの一部分の工程かもしれない。しかしエコマークでは、ライフサイクル全体を通した環境への影響を総合的に判断し、認定する仕組みとなっている。
省エネルギーで使用できる製品であっても、製造時や廃棄時に多大な環境負荷がかかったりエネルギーが発生したりする場合、それは地球にやさしいと一概に言えない。そのため、このライフサイクル全体に着目して評価している。
また、これらを評価しているのは日本環境協会だ。中立である第三者機関が審査することで、公平性・透明性を保っている。
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認定対象となる商品には日常的に使用する製品から土木建設資材、サービスなど、あらゆるものが該当し、具体的には下記のようなものがある。
カバン・スーツケース/衣服/家庭用繊維製品/衛生用紙(ティッシュペーパー、トイレットペーパーなど)/生ごみ処理機/日用品/時計/靴・履物など。
文具・事務用品/パーソナルコンピュータ/インクカートリッジ/海洋プラスチックごみ、漁業系プラスチック廃棄物を再生利用した製品(2021年2月制定)など。
家庭用繊維製品/建築製品/家具/電球系LEDランプ/テレビなど。
工業用繊維製品/タイル・ブロック/木工事用資材/ガラス製品/塗料/ノンフロン加煙試験器/海洋プラスチックごみ、漁業系プラスチック廃棄物を再生利用した製品(2021年2月制定)など。
印刷インキ/生分解性潤滑油/包装用紙/紙製の包装用材/プラスチック製品/飲料食品、化粧品、家庭用品などの容器包装など。
損害保険/小売店/ホテル・旅館/飲食店/電力プラン/シェアリングサービス/商業施設/清掃サービス
海洋プラスチックごみ、漁業系プラスチック廃棄物を再生利用した製品や清掃サービスが2021年2月に認定対象として新たに制定された。ホテルや旅館、電力プランなどのサービス分野も認定対象となっている。
ふだんの生活や街中で見かけるようになった製品やサービスもあり、幅広く認定されている。
日本環境協会エコマーク事務局が2021年2月に、全国の消費者約1,000名(20代から70代)に調査を実施した。結果、エコマークの認知度は80%を超えた。また、エコマークを取得している企業に対して、「環境問題に積極的に取り組んでいるイメージがある」と約60%が答えている。(※2)
環境に配慮した製品につけられるマークは数多くがあるが、そのなかでもエコマークの認知度はとても高く、広く浸透していることがわかる。
一方で「エコマーク商品がどのように環境によいのかわかるように表示してほしい」、「厳しい基準をクリアしているイメージがない」などの意見もあった。
エコマーク取得にあたっての細かな基準や、第三者視点で決定されていることなど、エコマークに関するさらなる情報の周知が、今後の課題といえるかもしれない。
国連で2015年9月に持続可能な開発目標(SDGs)が採択され、2030年までに達成すべき目標に向けて取り組みが始まった。さらにパリ協定の発行を受けて、地球温暖化対策など環境への取り組みも世界規模で始まった。
国際規格にもとづいて運営されるエコマーク制度は、環境配慮型商品を認定する環境ラベルとして、SDGsの達成にも貢献している。
例えば、SDGsの目標12は「つくる責任 つかう責任」だ。限られた資源を有効に活用し、一人ひとりが責任をもって生産・消費の方法を変えていく必要がある。そのような場面でエコマークのついた商品を選ぶことが、役立つだろう。
またエコマークの商品を選ぶことは、温室効果ガスの削減を目指す「目標13」や、持続可能な地球の実現に向けて、企業や個人が協力する「目標17」にもつながるだろう。
エコマークの使用・表示には、まずエコ商品として審査委員会で認定を受ける必要がある。認定された後は、日本環境協会と「エコマーク使用基本契約」を締結。申請からエコマークの表示までにかかる期間は、最短で約1ヶ月だ。
申し込み商品に商品類型がない場合は、年に1回行われる「新規商品類型の提案」の募集に応募する。この場合は認定までに1〜2年程度の時間を要する。
また、エコマークの商品類型は以下の方針に沿って選定されている。
・社会に大きな影響を与えることができる
・環境への負荷を大幅に低減できる
・より多くの事業者の行動を転換、誘導できる
・より多くの消費者の行動を転換、誘導できる
重視すべき環境問題や消費トレンドなどの社会動向やヒアリング結果などを踏まえ、新たな商品類型化の候補を検討する。商品分野別基準策定委員会の設置が可能となった時点で、新たな商品類型として選定・公表される。
そして、商品類型は制定から原則5年間、最大7年間の有効期限が設定され、期限内であっても認定基準は必要に応じて改定される。その際に「全面的な改定」、「有効期限をもって終了」、「有効期限の延長」を判断している。
商品認定審査料は、20,000円。エコマーク使用料は、認定商品の合計売上高により異なるが、年間10,000円~3,000,000円だ。使用料支払いの際には、対象となる商品の認定基準への適合状況の確認を求めている。
私たちの生活のなかに溶け込んでいるエコマーク。環境に良さそうというポジティブな印象はありながらも、どのような認定基準なのか、環境問題にどのように結びついているのかなど、知らないことが多かったのではないだろうか。
日々、エコマーク認定商品・事業者数は増え、商品類型の幅も広がっている。現在も認知度自体は高いが、私たち消費者も企業もエコマークの仕組みや意味を理解することが大事だ。そうすることで、エコマークがついた商品を利用しようという選択の意識が生まれるだろう。
記事監修:日本環境協会 エコマーク事務局
参考
※1 エコマーク事務局(商品の認定基準)
https://www.ecomark.jp/nintei/
※2 エコマーク事務局(エコマーク表示に関するイメージ等調査結果)
https://www.ecomark.jp/pdf/2020shouhisha-report.pdf
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