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自然災害やコロナなどの環境変化、世代交代がきっかけで拡大する「応援消費」。消費者が自分で判断し生産者や提供者を支援する応援消費は、買う側のメリットだけでなく、新たなビジネスチャンスを生む。これまでの単なる「モノ消費」から、ストーリーのある「コト消費」への移行と現状、展望を考える。
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メディアやSNSで頻繁に聞こえてくるようになったワード「応援消費」とは、消費者が商品やサービスを購入することで、生産者や提供者を支援する消費行動のこと。単に商品やサービスを購入するだけでなく、生産者や提供者にエールを送ることが含まれている、新しい消費スタイルだ。
たとえば、被災地の農産物や海産物、風評被害を受けた地域や企業の商品を購入することや、売上が低迷する飲食店や観光地を積極的に訪れることなどが挙げられる。
応援消費は、消費者にとって、ほしいモノを得る満足とは別の、他者を支援し自分をも支援する喜びやメリットが含まれている。事業主やサービスを提供する側にとっても、SNSで広告費をかけず、多くの人に情報を発信し、応援消費の関心を引き寄せることができる。
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「応援消費」という言葉は、2011年3月11日に起きた東日本大震災以降に頻繁に使われるようになった。被災地の特産品を買うことや、購入金額の一部が寄付される商品を選ぶこと、チャリティーイベントに参加するなど、被災地の人々や経済を直接的に応援・支援する消費行動がきっかけとなった。
東日本大震災の際には、消費による経済的支援だけではなく、被災地の産業に対する風評被害の払拭にもなったという。さらに、10年後に起こった新型コロナウィルス感染症の拡大で、応援消費が再び注目されるようになった。
応援消費をすることは、結果として自分の活力になったり、誰かの役に立っている実感を得られること、恩返しや好意の伝達ができるといった意味づけがあり、顧客満足度が非常に高いという。応援消費をビジネスチャンスとして捉える企業や生産者も増えている。
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応援消費のように、人がお金の使い方にこだわる傾向は加速している。その理由として、以下のような特徴が挙げられる。
世界的にも、社会や他者、環境への配慮が高まっているなか、消費行動を通じて社会を変えようという試みや考え方は拡大している。
応援消費は、誰かの役に立てたという満足感や、誰かを助けたいというモチベーションを満たしてくれる。消費者が自分で判断して行うものであり、必ずしも購入した商品のクオリティーや価値が保証されるものではないにも関わらず、自分の活力になると感じている人が多い。
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応援消費は、テレビや新聞・ラジオはもちろん、ブランドや著名人の情報発信や、SNS上での情報拡散が大きな影響力を持つ。世代により利用するメディアやツールは違えど、消費者は生産者や提供者を支援するための情報を簡単に得ることができる。(※1)
とくにSNSは、広告費をかけず、多くの人に直接情報を発信できるメリットがある。商品やサービスを提供する側は、SNSを有効活用することで、知名度や利益アップにつなげることができる。
被災地の生産者が再起する物語や、歴史ある伝統品を次世代に繋げる物語、まだ世に知られていない優れた商品を発掘する物語などは、多くの人々の心を揺さぶり、感動を呼ぶ。
単純にモノを購入するのではなく、そこに存在するドラマに自分も参加している臨場感や特別な喜びを感じられる=ストーリー性は、消費者を引き付け、応援消費を促進する。
モノがあふれる時代においては、「なぜ、それを購入するのか」「なぜ、そこで買うのか」「誰から買うのか」という意味づけが強く行われる。
単なる「モノ消費」から、消費者が体験や思い出を重視する「コト消費」への移行で、モノの品質だけでなく「いかに共感を得られるか」が新たなビジネスチャンスの鍵となった。
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応援消費には、商品を購入して応援する、場所で消費をする応援する、好きな対象に関する商品を購入する、金銭的な支援で応援するなど、いくつかの方法がある。
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風評被害を受けた地域の特産品、大量廃棄になってしまう農産物や海産物、誤発注や予約のキャンセルで行き先を失った食材など、生産者や提供者が処分に困っている商品を積極的に購入することで応援する。
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例えば、コロナ禍で減収した飲食店を利用したり、自然災害で訪れる客が激減した温泉地や観光地を訪れる、その時、その場所でしか体験できないスポーツイベントやフェスに行くことなど、「場所」に行って消費行動をする。
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アイドルやアニメ、ゲームのキャラクターや鉄道など、自分の推しや大好きな対象にお金を使う「推し活」は、2021年の流行語にもなった。(※2)
クラウドファンディングやふるさと納税など「金銭的な支援」をする行為も、「推し活」と同様に応援する人と応援される人のつながりをつくったり、ゼロから未来を一緒につくっていくような楽しみがある。
売上が振るわない高級レストランのお取り寄せや、必ずしも必要ではない憧れの品や希少性の高い品を購入するなど、購入する商品が多少高額でも、頑張っている自分へのご褒美ととらえ、自分を応援する意味での消費行為。
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応援消費は、生産者や提供者の成長や復興を支援することで、日本経済の底上げに貢献する可能性がある。SNSやスマホ決済などのネットやデジタル技術の普及によって、今後ますます拡大していくだろう。
実際に、消費者が生産者や提供者を支援するための情報や応援消費のきっかけ、参加や一体感などのモチベーションは、SNSで拡散されることが多く、応援消費を促進している。
とくに、デジタルネイティブといわれるミレニアル世代や、物心ついたころからスマホやSNSにふれる環境があるZ世代は、応援消費に対して強い関心を持っている。(※3)
「お金は、誰かのために使いたい」「共感できるものにお金を使いたい」「応援消費をすることで、消費者が生産者や提供者と一体となり未来を創る」というニーズは、広がる一方だ。
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応援消費をするためには、生産者や提供者の情報を収集することから始めよう。SNSやWebサイト、新聞、テレビなどから、自分の趣味や嗜好に合う商品が支援や応援につながっているものが見つかるだろう。
応援消費の代表的な方法は、まず商品を購入すること。たとえば生産者や提供者が販売に困っている商品を購入するだけで、支援につながる。
コロナ禍で制限されていた外食を積極的に楽しんだり、観光地を訪れたり、クラウドファンディングやふるさと納税などの金銭的支援も、難しい手順は必要ない。自分にあった応援消費を探ってみよう。
応援消費をしたら、その商品やサービスを口コミで広めることも忘れずに。SNSや口コミサイト、ブログなどで商品やサービスの良さを紹介することは、この国の経済を活性化することに貢献できるのだから。
参考
※1 RECRUIT|飲食店や生産者の支援が目的「応援消費」の意識・実態を調査(2020年10月実施)
※2 消費者庁|第1部 第2章 第2節 (1)若者の消費行動
※3 マイナビニュース|ミレニアル世代の特徴・消費行動とは? Y世代やZ世代との違いも解説
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