有機JAS制度とは有機食品を認証する制度だ。有機JASマークがついた食品は、「有機」「オーガニック」とうたうことができる。そこで認証対象になる食品と、農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないことを基本とした基準をわかりやすく解説。認証を受けるメリットや認証手順についても紹介する。
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有機JAS制度とは、JAS法にもとづき有機JASに適合した生産が行われていることを、第三者機関が検査・認証する制度のこと。認証された事業者は、有機JASマークの使用が認められ、「有機」と表示することができるようになる。
農畜産業において、化学合成肥料や農薬を使用しないことを基本として、遺伝子組換え技術の使用禁止など、環境への負荷をできる限り低減しながら持続可能な生産ができるような基準を規定している。
有機JAS制度がスタートしたのは、2001年のことだ。それまでは「有機」や「オーガニック」といった有機食品に関する表示ルールがなく、不適切表示や生産基準の不統一が問題視されていたことが背景にある。
有機JAS制度がスタートする以前の1992年、「有機農産物等に係る青果物等特別表示ガイドライン」が制定され、これによって表示の適正化が図られてきた。しかし、ガイドラインには強制力がなく、消費者に誤解を与えかねない状況が続いていたのだ。
一方世界では、食品の国際規格を定めるコーデックス委員会が1999年に、有機食品の国際的な基準「有機的に生産される食品の生産、加工、表示および販売に係るガイドライン」を制定した。
これを受けて、日本国内での表示の適正化を図るべく、日本でも2001年より有機JAS制度がスタート。日本の有機JASは、国際基準であるコーデックスガイドラインに準拠して定められている。
有機JASマークは太陽、雲、植物をイメージしてつくられている。
JAS(Japanese Agricultural Standards、日本農林規格)とは、食品や農林水産分野において農林水産大臣が定める国家規格だ。そのなかでも有機JASマークは、有機農産物、有機加工食品、有機畜産物、有機飼料につけられる。
農林水産省に認可された第三者機関による認証を受け、統一的な基準にもとづいて生産された有機食品であり、有機JASマークが貼付されているもののみが「有機」「オーガニック」という表示を使えることになっている。逆をいえば、有機JASマークが貼付されていないものを「有機〇〇」「オーガニック」などと表示することは禁止されており、処罰の対象となるのも特徴だ。
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有機JASマークの認証対象は、有機農産物、有機畜産物、有機加工食品、有機飼料、有機藻類の5つだ。
農産物に対しては、ほ場や種子・苗、肥培管理、防除、収穫以降の工程管理などに関して、以下のような基準が設けられている。
・ 堆肥等による土づくりを行っていること
・播種・植付け前2年以上(多年生作物の場合は収穫前3年以上)、原則として化学的肥料および農薬は使用しないこと
・ 遺伝子組換え種苗は使用しないこと
・周辺から使用禁止資材が飛来・流入しないように必要な措置を講じていること
・有害動植物防除において、農薬に頼らず、耕種的防除、物理的防除、生物的防除、またはこれらを組み合わせた方法で行うことを基本とすること など
・有機飼料を基本的に与えること
・野外の飼育場に自由に出入りさせ、飼料や新鮮な水を自由に摂取できる環境を用意するなどして、ストレスを与えずに育てること
・病気の予防目的で抗生物質等を使用しないこと
・遺伝子組換え技術を使用しないこと など
・原材料の95%以上(食塩・水を除く)が有機農産物・有機畜産物または有機加工食品でつくられていること
・化学的に合成された食品添加物および薬剤の使用は極力避けること
・ほかの農畜産物や加工食品が入らないように管理すること
・製造・加工された食品が、農薬、洗浄剤、消毒剤などで汚染されないように管理すること
・遺伝子組換え技術を使用しないこと など
・原則として有機農産物と同じようにつくられていること
・使用が認められた原料だけを配合すること など
2022年1月より、わかめ、こんぶなどの藻類も有機表示の対象となった。
・使用禁止資材による汚染のおそれがない水域で採取されていること
・海面養殖及び内水面養殖の場合,栄養素(窒素,リンなど)となる資材を使用していないこと など
有機食品を輸出する場合、EU、アメリカなどの輸出国で「有機」表示を行うためには輸出先国の認証が必要だ。しかし有機JAS制度は、以下の国の有機認証制度と同等と認められている。そのため、有機JAS認証を受けていれば、輸出先国の認証を受けなくても「有機」表示を行って輸出することが可能だ。
2021年4月現在、有機同等性に関する国は以下である。
・EU
・イギリス
・アメリカ
・スイス
・カナダ
・台湾
※EU、イギリス、台湾に関しては、有機農産物・有機農産物加工食品に限る。(※1)
・EU
・イギリス
・オーストラリア
・アメリカ
・スイス
・アルゼンチン
・ニュージーランド
・カナダ
・台湾
※EU、イギリス、アルゼンチン、ニュージーランド、台湾に関しては、有機農産物・有機農産物加工食品に限る。(※1)
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「有機」や「オーガニック」と混同されがちな言葉に「無農薬」がある。有機JASマークの貼付がない食品は「有機」や「オーガニック」と表示できないことを紹介したが、「無農薬」の表示もガイドラインによって禁止されている。
生産者と消費者の間で「無農薬」という言葉の認識に誤差があり、優良誤認を招く可能性があるためだ。
2007年に改正された「特別栽培農産物に係る表示ガイドライン」では、地域で一般的に使われる節減対象農薬と化学肥料の使用をそれぞれ5割以下にして栽培された農産物を「特別栽培農産物」と定義している。節減対象農薬とは、これまでの「化学合成農薬」から「有機農産物のJAS規格で使用可能な農薬」 を除外したものが該当する。(※2)
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厳格な審査を経てはじめて使用が認められる有機JASマークには、どんなメリットがあるのだろうか。消費者側と生産者サイドの双方について考察する。
・わかりやすい
有機JASマークによって有機認証を受けていることが目で見てわかるので、買い物時の参考にできる。細かな知識がなくても、一定の基準をクリアしたオーガニック食品だと判断できる。
・安心感を得られる
第三者の審査によって生産工程が評価されているので、工程が見えない生産品を選ぶより安心感がある。
・モチベーション高くつくられた生産品を選べる
有機JASの認証を受けるためには手間も費用もかかるという点から、生産者の姿勢や想いが伝わり、高い価値を感じられる。
・「有機」「オーガニック」と表示できる
有機JASマークを貼ることができ「有機」「オーガニック」と表示できて、ほかとの違いをアピールできる。
・生産物への信頼性を高められる
農薬や化学肥料に頼らないことを基本として環境に配慮している点が目に見えてわかる。生産において厳しい基準をクリアしているということが証明されているので、信頼性が高まる。
・顧客を獲得できる
食に関して意識が高い層や安心・安全を求める層に購入してもらえる可能性が広がる。
・販売ルートを拡大できる
市場出荷のほか、インターネットを使った販売やマルシェ、イベントなど、販売チャネルを広げられる可能性が増える。
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生産品に有機JASマークを表示するためには、農林水産大臣によって登録された登録認証機関から認証を受ける必要がある。認証は農林物資の種類ごと、事業内容(生産、小分け、輸入)ごとに取得する必要があり、認証を受ける種類によって細かな基準が異なる。
主な認証の流れは以下のとおりだ。
(1)申請書類の作成、提出
(2)書類審査
(3)実地調査
(4)判定
(5)認証証明書の交付
認証を取得した後も、認証基準に適合し続けることが求められる。最低年に1回は登録認証機関による調査が行われ、不適合が確認された場合には改善が必要だ。改善が見られない場合は認証が取り消されることもある。
化学物質に頼らないことを基本として、自然の力を活かした生産を促す有機JAS制度。この制度は消費者に「安全・安心」というイメージを与えているだろう。そして有機JAS制度を突き詰めていくと、近代農業の見直しや持続可能な生産といった考えに行きつくのではないだろうか。
私たち消費者が有機JASマークの意味を知り、マークがついた商品を選択することがSDGsの取り組みにつながることを心に留めておきたい。
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